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荻原浩(旅先で読む文庫本)

2016年 - 『海の見える理髪店』で第155回直木三十五賞受賞おめでとう!!!

荻原浩は多才な作家だ。

シリーズ物は少なく、毎回趣向を凝らした題材が展開する。
ミステリーとは言い難い作品が多いのだが、好きな作家だからこの欄に登場してもらった。
ランダムに読んでいるので順不同で感想を書く。

「オロロ畑でつかまえて」は、人口わずか三百人、超過疎化にあえぐ日本の秘境の村が村おこし作戦に立ち上がる話。企画の依頼先は倒産寸前の弱小プロダクション、ユニバーサル広告社という設定自体が面白いから、馬鹿馬鹿しく、だが笑ってばかりいられない話に仕上がる。
「なかよし小鳩組」は、このユニバーサル広告社にヤクザの小鳩組からイメージアップ作戦が依頼される話。これも笑える話なのだが、主人公のコピーライターに社の将来と自分の再生をダブらせて泣ける話に変わっていく。
「花のさくら通り」は、シャッター通りが続く東京都下の某市での活性化について、都落ちしたユニバーサル広告社と地元の新旧の店舗の主やさくら通りの上にあるニュータウンのいろいろな店舗との対立を軸に「さくら祭り2012」復活に向けて話がクライマックスにいたる。

「僕たちの戦争」は、2001年9月の日本で、サーフィンをしていたフリーターの健太は大波に飲み込まれ、気が付くと1944年(昭和19年)の世界にタイムスリップしていた。
一方、戦時中の1944年、霞ヶ浦予科練で飛行訓練をしていた吾一は現代へタイムスリップしてしまい、フリーターの健太になってしまう、というお話。時代と立場が変わってしまうが二人は何とか相手方の人格になりきろうと努力する様が滑稽でまた健気で可愛らしい。
どたばたの喜劇だが、それでいて何故かリアリティを持つ。

「オイアウエ漂流記」は、日本人乗客を多く乗せた小型飛行機が、南太平洋上空で雷雨に見舞われ、絶海の孤島にたどり着く。漂流生活は現代人に取ってなかなかなじめないのだが、何とか生活を確保する。登場人物が現代日本の典型的な人間像で、描かれてみるととてもいびつな人間達なのだが何故か現実に居そうな人達で、その人達が過酷な現実にやむなく順応していく様が悲しくてかつ面白い。

「幸せになる百通りの方法」はシニカルに現代の日本を描く。いろいろな登場人物の生き方が妙に現実的で、どこにでも居そでいて居なさそうでいて面白い。

荻原浩は作中の人間像を的確に、滑稽に、カルカチュアして描くのだが、現代日本の社会の中に必ず居そうな人間として提示し、どこがいびつかをあぶり出してくれる。


<集英社文庫>
(ユニバーサル広告社シリーズ)

オロロ畑でつかまえて
なかよし小鳩組
花のさくら通り

(最上俊平シリーズ)

ハードボイルド・エッグ<双葉文庫>
サニーサイドエッグ<創元推理文庫>


(シリーズ物でない作品)

噂<新潮文庫>
誘拐ラプソディー<2004年10月 双葉文庫>
母恋旅烏<2004年12月 双葉文庫>
コールドゲーム<2005年11月 新潮文庫>
神様からひと言<2005年3月 光文社文庫>
メリーゴーランド<2006年12月 新潮文庫>
僕たちの戦争<2006年8月 双葉文庫>
明日の記憶<2007年11月 光文社文庫>
さよならバースディ<2008年5月 集英社文庫>
あの日にドライブ<2009年4月 光文社文庫>
ママの狙撃銃<2008年10月 双葉文庫>
押入れのちよ 他< 2009年1月 新潮文庫>
四度目の氷河期<2009年10月 新潮文庫>
千年樹 他<2010年3月 集英社文庫>
さよなら、そしてこんにちは 他<2010年11月 光文社文庫>
愛しの座敷わらし<2011年5月 朝日文庫【上・下】>
ちょいな人々 他<2011年7月 文春文庫>
オイアウエ漂流記<2012年1月 新潮文庫>
ひまわり事件<2012年7月 文春文庫>
砂の王国<2013年11月 講談社文庫【上・下】>
月の上の観覧車 他<2014年2月 新潮文庫)>
誰にも書ける一冊の本 他<2013年9月 光文社文庫>
幸せになる百通りの方法< 2014年8月 文春文庫>
家族写真< 2015年4月 講談社文庫>


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