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トマス・H・クック(旅先で読む文庫本)

トマス・H・クックの作品は旅先で読むには少々重い。例えば,パトリシア・コーンウエル の小説もこの部類に入るのではないか。
小説として良くできているので,読み始めると熱中して,景色などは目に入らなくなるし、 旅を味わう感覚が散漫になる。

筋立てが良いから面白いとか、話のスケールが大きいからわくわくするのではない。
むしろ,話としては地味だし、過去と現在が混然として話が展開するので、注意深く読まなければ ならない,という点で熱中せざるを得ないというのが本当のところか。

作品の舞台は,フランク・クレモンズ警部が主人公の三部作,「だれも知らない女」, 「過去を失くした女」,「夜 訪れてきた女」以外は,地方の小都市が多い。
実在の場所か架空の場所かは定かではないが,街の描写が優れており,あたりの様子が 目に見えるようだ。

近年,本国アメリカの書評家たちは,クックの作品を,「雪崩を精緻なスローモーションで 再現したような」と表現しているという。
確かにクックは,すばらしい描写力でミステリーの醍醐味を味あわせてくれる。

作品は

<文春文庫>

だれも知らない女
過去を失くした女
熱い街で死んだ少女
夜訪ねてきた女
鹿の死んだ夜
闇をつかむ男
緋色の記憶
死の記憶
夏草の記憶
夜の記憶
心の砕ける音
神の街の殺人
闇に問いかける男
蜘蛛の巣のなか
緋色の迷宮
石のささやき
沼地の記憶


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