Boulder滞在記

※注意

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September 10〜19, 2000

Prologue

29歳。12月。ホノルル・マラソンに参加するためにハワイへ行った。
それが後にも先にも唯一の海外旅行経験。
ハワイなんて半分日本みたいなもの。 日本人も多いし、日本語の通じるお店もたくさんある。 そんなところに英語の話せる友人数名と行ったわけだから、それはもう海外旅行経験なんて呼べるようなものではない。

時は流れ32歳の夏の終わり、突然海外出張のチャンスが降って沸いてきた。
行き先はアメリカ、コロラド州のBoulder(ボルダー)。 期間は最長2週間。 そこに単身で渡り製品の試験を行ってくるというもの。

ずっと海外出張には憧れていた。
仕事では自分の方が上だと思っても、相手が一度でも海外出張の経験があると、とてもかなわない気がした。 英語で仕事をしてくる。それは僕の中ではとてつもなく大きく困難な試練なのだ。

もし海外出張に行けるとしても、誰か行ったことのある人と一緒がいい。 そうすれば、何があろうと最低任務は達成できる。 しかし今回はたった一人。 向こうに日本人が待っているわけでもない。

自分の英語力で目標を果たすことが本当に可能なのか。 それ以前にちゃんと目的地にたどり着くことが出来るのだろうか。 不安は山ほどある。

「おまえが行け」
と命令されれば、もう少し気が楽だったかもしれない。 誰かがポンッと背中を押してくれさえすれば...。
だけど今回は、自分で進んで希望しなければならない。 行きたいと言えば行かせてもらえるし、希望しなければ他の誰かが行く。 自分で足を前に踏み出さなければ、決して前進できないのだ。

ひたすら悩んだ。 悩んで悩んで悩み続けた。 しかし実は頭の中ではすでに一つの答えが出ていた。

「今行かなければ」

この先いつ海外出張のチャンスがめぐってくるか分からないし、いつまでも海外出張経験者に対しコンプレックスを抱き続けるのはもうごめんだ。 自分は所詮言葉が通じる日本の閉じた世界でしかやっていけない人間なのか、それとも世界に出ていきグローバルにやっていける人間なのか。
自分を試したかった。
例え言葉がうまく通じないところでも、やるべき事はちゃんとこなしてくる。 そういう人間であるのか。
自分を試したかった。

「行かせていただきます」

自ら志願した。
例えどんな困難が待ち受けていようとも、いつかは越えなければならない山。 それなら先延ばししたりしないで、チャンスがあるなら今越えておこう。

こうして僕の初海外出張にして初一人海外、初アメリカ本土上陸という何もかもが初めてづくしの旅が始まった。 これはまさに僕にとって人生のターニング・ポイントと言っても過言ではない。 自分を変えることができるかどうかの大勝負。

いったいどうなることやら。 うまく無事仕事を済ませてくることが出来るのか、それとも悪戦苦闘の末、仕事も中途半端で帰ってくることになるのか。

まさに「一寸先は闇」状態。 濃い霧の中の船出だった。

To be continued...




※ちょっと表現がいちいちオーバーですが、実際行く直前の僕の頭の中はこんな感じでした。 もう一杯一杯ですね。


ところでBoulderってどこ?
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