連日眠れない日々が続く。 眠れてもBoulderに行く夢ばかり。 夢の中で何度Boulderに行ったか分からない。
威勢よく
「行きます!」
なんて志願したのはいいけど、実は自信なんてこれっぽっちも無い。
あるのはただただ不安だけ。
そんな日々もアッと言う間に過ぎ、いよいよアメリカに旅立つ日。
大きい荷物をゴロゴロ引っ張りながら、ユキちゃんと2人で大和駅へ。
そして駅でユキちゃんとお別れ。
「それじゃ、がんばってきてねー」
あっけないくらいいつもと変わらない別れ。
相鉄線で横浜へ出て、そこから成田エクスプレスで成田空港へ。
空港にてチェックイン、ドルへの換金、手荷物検査、出国手続き、全て順調。
まだここは日本国内、当たり前だ。
ドルへは1万円分を換金してもらう。
$10紙幣8枚と$1紙幣12枚、おつり\32。
全てが終わり、あとは飛行機に乗り込むだけ。
いよいよ日本を離れる時が近づいてきた。
「もしかしたら、もう2度とこの地を踏むことはないかもしれないな...」
ちょっとオーバーだが、このとき本当に自分の中でこれくらいの覚悟をしていた。
ユキちゃんに
「マモナク シュッパツ」
と最後のショートメールをうつ。
すぐに
「ガンバッテコイヨー」
という返事が入った。
搭乗開始。
2-5-2のシート配列。
僕はそのちょうど真ん中。
しかし両隣は空き、さらに通路側両方に一人ずつの乗客がいるのみ。
とりあえずトイレは行きやすそうだ。
全ての席の前のシートの背中の部分にLCDの小型テレビが付いている。
すばらしい、今どきエコノミーでもこんなのが付いてるの?
今までスチュワーデスさんと言えば若くて綺麗なお姉さんいうイメージがあったが、この飛行機には感じのいい白髪のおばさんを始め、若い人があまりいない。
おじさまもいる。
日本の航空会社とは違うねー。
実は日本の航空会社とかそういう問題ではなく、国際線というのはだいたいこういうものだということを後で知った。
しかしみんな親切。
だてに歳はとっていない。
機内放送はまずは英語での放送があって続いて日本語での説明が入る。 特に困ることはない。
飛行機に乗ってしばらくすると飲み物が配られた。
ちょうど真ん中の席だと、左右どちらからもらえばいいのか迷う。
右側の外人さんのスチュワーデスさんから話しかけられた。
「飲み物は何がいいですか?」
もちろん英語だが多分こんな内容だと思う。
「Beer.」
「クリン?」
「く、くりん???」
何を言っているのか分からず一瞬あせったが、どうやら「キリン?」と尋ねているらしい。
「Yes.」
よ〜く聞いていると他のお客さんには「バドワイザー?」とか尋ねたりしているので、客によって銘柄を変えているのかもしれない。
バドワイザーにすればよかったか、と一瞬思ったが、日本のビールもしばらく飲めないだろうと思いよく味わって飲むことにした。
これが今回の旅行で交わした記念すべき最初の英会話(?)。
その後も夕食やらなにやら配られるが相変わらず真ん中の席だとどっちからもらうのか迷う。
その時々によって右と左でもらえる側が変わったりするのだ。
機内でアメリカの入国カードが配られたときは結局右からも左からももらい損なってしまった。
事前にJTBからすでに記入済みのカードをもらっていたので特に問題はなかったが、ここで意を決した。
待っていてはだめだ。
積極的に自分からアピールしなければ。
それ以降はスチュワーデスさんが来る度に自分からアピール。 以降問題なく事は進んだ。
途中機体が揺れ始めるとシートベルトのサインが点灯するとともに必ず機長から
「シートベルトをお締め下さい」
と一言放送が入る(もちろん英語)。
面白い。
成田からSeattleまで、フライト時間は約8時間。 Seattle時間で午前10:30に無事Seattle/Tacoma国際空港に到着。 まずはここで入国審査がある。
Seattleは細かい霧雨が降っていた。
飛行機を降りさっそく入国審査の場所へ。
ものすごい人。
ゲートがいくつもあって比較的すいてると思われる列へ並ぶ。
日本人だらけ。
しかしよりによって、たまたま並んだその列の進みが異常に遅い。
気が付くと周りにはほとんど人がいなくなってしまっていた。
いよいよ自分の番。
アメリカ人の偉そうなオヤジにパスポート、入国カードを渡す。
それらをチェックしながらオヤジが何か聞いてきた。
???
全く分からん。
「Pardon?」
「....カンパニー?」と言われたように聞こえた。
「ア...IBM」
「No, no, no」
こいつはだめだというように苦笑いしながら、オヤジは首を横に振る。
「Why are you .........?」
オー!入国の目的を聞いてるんだ!
「On business.」
「Oh! Business! Okay.」
なんとか納得してくれたらしい。
なんとか入国審査をパスし自分の荷物を受け取り税関へ。
もうほとんどの人が通関を済ましてしまっていてあたりは閑散としている。
入り口にオヤジが一人立っている。
ここはちょっと心配な所。
本来申告が必要な出張先で使う試験用のスペア・パーツがバッグに入っているのだ。
中身を調べられたらどうしよう。
そんな心配をよそにオヤジは通関用のカードにちらっと目をやっただけで何も言わず返してくれた。
どうやらOKらしい。
気が抜けるほどあっけない。
こんなもんか。
その先にいたもう一人のおじさんにカードを渡す。
再び荷物を預ける。 ベルトコンベアの前に立っていたオヤジに荷物を渡すと、なんとそのオヤジ、僕の見てる前でバッグをベルトコンベアの上に放り投げやがった。 人の荷物投げんなよな!
Seattle空港の中は3本の地下鉄が走っていてそれに乗って各ターミナル間を移動する。
大きめのエレベーターの扉かと思っていたら、それが地下鉄の乗り口だった。
まずは南メインターミナルへ。
降りてすぐに乗り換え。
北メインターミナルでもう一度乗り換えて北サテライトへ。
やっとここで空港らしいところに着いた。
ショップやスターバックスコーヒーやバーガーキングなどのお店がある。
Denver行きの飛行機が出るのは午後2:30。
10:30にここに着いたんだから、なんと4時間も足止め。
ぶらぶらお店をのぞきながらとある雑貨屋さんへ。
雑誌がいろいろ並んでいる。
Yahooの雑誌があった。
アメリカでネットに接続するためのフリーのプロバイダー情報が欲しかったので買うことに。
初めての買い物でちょっと緊張。
雑誌を手に取りレジのあんちゃんへ。
何かごにょごにょと話しかけられたが、よく分からずにとりあえず$10札を出す。
もっといやな顔されるかなと思ったけど、親切にお釣りを用意してレシートと見合わせながら目の前でお釣りの確認をしてくれた。
続いてスターバックスコーヒーへ。
列に並んで前の人の行動を観察。
みんな何を頼んでいるのかよく分からなかったがなぜか$7とか$8とか払っている。
みんなクレジットカードだ。
自分の番、お店の人がにっこり
「Hi!」
と話しかけてきた。
引きつった表情で
「Hi.」
と返す。
本日のコーヒー(もちろん英語で書いてある)のリストの一番上の"Breakfast Brend"を指さしながら
「May I have ... Breakfast Brend?」
一瞬とまどったような表情をされたが、
「Which size?」
と横に並んでるカップを指さしながら聞かれた。
日本だったら「レギュラー」だ。
「れ、レギュラー」
「???」
通じない。
「Small.」
と言いながら一番小さいカップを指さした。
何とか通じたみたい。
正確には"Short"だったらしい。
こうして無事(?)アメリカで最初の買い物を済ますことができた。
思った以上に英語が出てこない。 ちょっと自信をなくす。 明日から大丈夫かな...。
何気なく買ったこれらの買い物。 しかしこのときお釣りとしてもらった硬貨が後に重要な役割を担うことになる...。
2時になってDenver行きの飛行機に搭乗。
ゲ!
想像はしていたもののネイティブ・アメリカンばっかり。
しかもなぜかお年寄りが多いぞ。
僕の席は相変わらず真ん中。
すでに両隣2名ずつしっかり座っている。
「Excuse me.」
手前2人がしぶしぶ席を立ってくれた。
真ん中の席に座ろうとすると、もう反対側にいた品のいいおばあさんが、僕のシートの上に置いてあったクッションと上掛けを僕のために持ってくれている。
ええ人や。
「Thank you.」
にっこり笑って言いたいのだが、慣れないせいか顔が引きつる。
う〜む、両隣、前も後ろもスチュワーデスさんに至るまで外人ばっかり。 アナウンスだって日本語でなんか言ってくれない。 いよいよアメリカ本土に来たって感じ。
離陸後しばらくして軽食が配られる。
軽食とは言っても豚肉か何かの焼いたのを挟んだパンとポテトサラダ、ちょっとしたケーキまで出てなかなかあなどれない。
さっきのおばあさんがテーブルを出そうと苦労している。
膝の上に大きい荷物を載せていて、それが邪魔になっているらしい。
降ろせばいいのに。
荷物を足下に置いたほうがいいよ、と身振りで伝えると、にっこり笑って
「Thank you.」
と言ってくれた。
「You are welcome.」
と気恥ずかしく小声で答える。
スチュワーデスさんが飲み物を配りに来たとき、おばあさんは僕に
「何がいいの?」
と聞いてくれた。
コーヒーが欲しくて
「コフィー」
と言ったつもりだったがおばあさんは「コーク」だか「コーヒー」だがよく分からなかったらしい。
余談だが昔会社の人に聞いた話で、アメリカでコーヒーを頼むとき「コーヒー」と言うと「コーラ」が出てくるらしい。 最初の「コー」で「コーク」と判断されてしまうというのだ。
そんな話を聞いていたので、気を遣って「コフィー」と言ったのだが結局だめ。
おばあさんが自分で飲んでいた目の前のコーラの缶を指さして
「これ?」
と聞いてきた。
「No.」
と答える。
しかし実はこのときすでにスチュワーデスさんは僕の意図を理解してくれていてホットコーヒーをカップに注いでくれていた。
それに気づいたおばあさんは
「Oh, sorry...」
とスチュワーデスさんに言う。
なんか悪いことをしてしまったような気がした。
おばあさんに
「Thank you.」
と言うとまたにっこり笑って
「You are welcome.」
と返してくれた。
しばらくたって軽食の空き箱を回収に来た。
おばあさんとは反対側の通路だ。
さっきのお返しにと、おばあさんの空き箱も一緒にスチュワーデスさんに手渡す。
またにっこり笑って
「Thank you.」
と言ってくれた。
なんか、現地の人と意志疎通ができてる。
うれしい。
Denverまでのフライトは約2時間ちょっと。 長いような、短いような...。
もうすぐ到着と言うところで、老婆が何か話しかけてきた。
よく聞き取れなかったが
「.......Denver?」
と言っていたので、
「Boulder.」
と答える。
すると
「School?」
と聞いてきた。
「On business.」
意外そうな顔でぼくを覗き込む。
僕が学生くらいの年齢に見えたのだろうか。
それともこんな英語もろくにしゃべれない日本人が仕事で来ているのが意外だったのだろうか。
前者であると思いたいが、なんとなく後者のような気がする。
Denver国際空港に到着。
現地時間夕方6時ちょっと前。
おばあさんにお別れの挨拶をしようと思ったが、何も言わず行ってしまった。
ちょっとがっかり。
Denver空港は広い。 例のごとくメインターミナルまで地下鉄で移動。 荷物の引き取り場所が何カ所もあって最初はとまどったが、冷静に表示板を見てなんとか自分の便の場所を探し当て荷物を受け取ることができた。
次はレンタカーだ。 Hertzのオフィスはすぐ見つかったが、なんだかすごい行列。 並ぶしかない。
なかなか前に進まない。 明るかった空がだんだん暗くなっていく。 不安。
1時間程度待たされてやっと受付。
例のごとく向こうの言ってることの半分くらいしか聞き取れなかったが、聞き返したり分かったふりなどをして、手続き終了。
空港を出るとちょうどHertzのシャトルバスが来た。
バスのところにいた人にさっきの受付でもらった紙を見せると取られてしまった。
いいの?
ちょっと不安がよぎったが他の人も渡していたので、大丈夫そう。
5分ほど走ってHertzの駐車場へ。
ばかでかい。
広大な駐車場に、車がびっしり並んでいる。
すげー。
自分の車の近くで降ろされる。
さっき取られた紙もちゃんと返してくれた。
車にはすでに鍵がついている。
赤いマツダのファミリアに似た車。
日本車っすか。
でも小さくて乗りやすいかもしれない。
あたりはすっかり真っ暗。
よーし、いよいよ運転だ。
左ハンドル車の操作を事前に頭にたたき込む。
おそるおそる、そろりと出発。
駐車場の出口で、女の人にHertzの受付の紙と国際免許証を見せるとゲートをあげてくれる。
げ!
いきなり左折。
向こうの左折というのは日本の右折に等しい。
反対方向の車線を一本またがなければいけない。
左右から車が来ないのをよーく確認してスタート。
あまりスピードを出さないようにしながら、慎重に運転。
後ろから車が急速に間を詰めてくるが無視。
悪いがしばらくがまんしてもらおう。
以前Boulderに行ったことのある人から道を聞いていたのでその通りに走る。
「フリーウェイを西に走り2番目の出口を右に降りて北に向かう。 その道は"Tower Road"という一般道。」1個目の出口を通過。 陸橋をくぐってすぐに2個目の出口が見えてきた。 道の名前はよく確認できなかったが"T"から始まっていたはずだ。 よ〜し、こいつを右に...ん? 様子が変。 右に曲がった道はそのまま大きなループを描き3/4回転して南に向かう大きな道路に出てしまった。 行きたいのは北。 まったく正反対。 しかも一般道ではなくハイウェイだ。
ハイウェイなのでUターンもできない。
見ず知らずの地でどこに通じるのかも分からない道をひた走る。
心細い。
最近ウチの会社の社員がUS出張で道に迷ったあげく交通事故を起こしたという話を思い出す。
僕も同じ運命をたどるのか...。
パニックを起こしそうになる気持ちをなんとか落ち着かせ冷静を保つよう努力した。
Uターンもできずにしばらく走り続けて、やがて右への出口が見えてきた。 やった! 降りれる。 ウィンカーを出して右へ。 ん? "Toll Gate"って書いてあるぞ。
しばらく進むと赤信号が灯った無人の小屋が見えてきた。
その小屋にはコインを投げ入れるところがあって50セントと書いてある。
なんと今走っていたのは有料道路だったのか。
最初に見た道路標識にはきっと"Toll Road"って書いてあったのかもしれない。
無人小屋の前方には赤信号が灯っているだけでゲートも何もない。 周りに誰もいないので、無視して通り過ぎることもできそうだが、カメラか何かでモニターされていて、あとで捕まってもいやだ。 しょうがなく払うことに。 確かSeattleで買い物したときのお釣りの小銭があったはずだ。 向こうのコインはどれがいくらなのか数字が書いてないので分かりづらい。 お釣りをもらったときにどれが何セントか確認しておいてよかった。
一番大きいのが確か25セントだ。
25セントコインを2枚投げ入れる。
さあ信号よ青になれ。
でもいっこうに赤のまま。
残金を表示する表示板を見るとさっきまで「50セント」だったのが「25セント」に変わっている。
コインが1枚しか認識されなかったようだ。
どこかに返却されているか探したが見あたらない。
しょうがないので25セントコインをもう1枚投げ入れる。
やっと信号が青に変わった。
後で確認してみたら、ちゃんと財布の中身の金額はあっていた。
あまりの動揺で何枚投入したのか混乱していたようだ。
しかしSeattleで買い物して小銭を手に入れておいてよかった。 無かったら今頃どうなっていた事やら。
Toll Gateを通過して今来た道を引き返そうかとも思ったが、ずっとほぼ真南に走ってきたはずだからこのまま西に向かえば最初に出たかったTower Roadに出るはずだ。 なーに、こんな時のためにちゃんと方位磁石も持ってきている。 なんとかなるさ。
西に向かう道をゆっくり進み始めると、なんとそれは砂利道。 暗くてよく分からなかったが周りは一面の原っぱみたい。 周りに車や建物、街灯らしきものもまったくいない。 どうしようかちょっと迷ったが遙か遠くに車の往来の激しい道路が見える。 あれがTower Roadか? よし行っちゃえ!
砂利道なんて走るのは何年ぶりだろう。
でもそんなに悪い道ではなかった。
あたりは真っ暗、遠くにおそらくDenverの灯りだろう。
街の光が見える。
ずいぶん長いこと走り続けたような気がする。
その間辺りは真っ暗。
街灯もなければ建物もない。
車だって1台も見かけない。
心細いことこの上ない。
やっとそれらしい道が見えてきた。
南北にのびている。
車通りもそこそこある。
おそらくこれだろう。
間もなくその道路に出るという直前で、地面がおおきくうねった。
ゴツ!
鈍い音がした。
車のどこかが当たったらしい。
やべー。
とりあえず走るのに支障は無かったので、道路を右折してやっと北に向かう。
しばらく走っているうちに道路標識が見えて、その通りがTower Roadであることが確認できた。
ちょっと安心。
ここをしばらく走っていれば、次に西に向かう104号という道に出るはずだ。
交差点の度に注意深く道路標識を見てなんとか無事104号に乗ることができた。
あとはひたすら西に向かう。
スピード・メーターがマイルなのでいったい何キロくらい出ているのかよく分からない。
後ろからは車がせまってくるし、前には車はいないし。
自分の運転は速いのか遅いのか...。
やがて道路の横に"SPEED LIMIT 45"とか書いてある道路標識があるのに気が付いた。
そうか、別に何キロ出ているのか分からなくても、その標識に書いてある数字をスピード・メーターが越えないようにすればいいわけだ。
前に車が現れたときはほっとした。
この車と同じスピードで走っていればいいのだ。
その道は一車線になったり二車線になったり、一番右の車線が右折レーンだったり、最初は結構とまどったがそのうち慣れた。
信号待ちの度にHertzでもらった地図で現在地を確認。
ずいぶんと走ったが、それ以降は特に道に迷うことなく走れた。
どうやらBoulder市街に入ったようだ。
Hertzの地図を見ながら慎重に車を進める。
そろそろホテルのある場所のはずだ。
道路脇に注意していると、やっと目指すホテル"Holiday Inn EXPRESS"が見えてきた。
着いたー!
ホッとした。
どっと肩の荷が下りる。
もう時間は夜の9時半を回っている。
荷物を持って受付へ。
若い兄ちゃんが立っている。
予約の紙を渡すとすんなりチェックインできた。
ここが今までで一番スムースだったかもしれない。
なんたってほとんど何も聞かれなかった。
部屋は313号室。 鍵は磁気カード方式。 入るとセミダブルくらいの大きさのベッドが二つある部屋。 まあまあ広い。 まずはトイレ。 ずっと我慢していたのだ。
一息つくのもそこそこに、まずは会社に連絡を入れなければ。 日本ではもう月曜日のお昼過ぎ。 みんな心配しているかもしれない。
ThinkPadを取り出しモデムの電話線を部屋の電話器の横に付いている"Dataport"の口に差し込む。
最初外線のかけ方がよく分からなかったが、部屋に備え付けの説明書をよく読んでやっと分かった。
ゼロ発信ではなく8発信だった。
あとはあらかじめ会社の人に教えてもらった通りモデムの設定をアメリカに変えて、会社のフリーの電話番号にダイヤルし接続。
意外とあっさりつながった。
電話代がタダなので基本的につなぎ放題でもいいのだが、日本で慣れてしまっているせいか手短に切らないといけないような気がする。
貧乏性だなー。
無事会社にメールを送ることもできた。
ビールでも飲んで寝るとしよう。
しかし部屋に冷蔵庫は無く、ホテル内にもビールを売っている自動販売機は見あたらない。
全てソフトドリンクのみ。
ガーン!!
ビール飲めないのー?
明日どこかで買ってくるしかないな。
後で聞いたら、USのホテルではビールはまず売っていないらしい。
子供が買えないようにということだ。
もうくたびれ果てた。
明日からはいよいよ仕事が始まる。
こっちのエンジニアと果たしてうまくやっていくことができるだろうか。
考えれば考えるほど不安は広がる。
とにかく寝よう。
おやすみなさい...。
To be continued...