※注意
Boulderに来て3回目の朝、初めて目覚まし時計に起こされる。
寝てから朝まで一度も目が覚めなかった。
寝不足が続いていたためか、寝る前にビールを飲んだのが良かったのか。
久々によく寝た気分。
シャワーを浴びて着替えて下に降りる。
さすがにまだ6時前。
コーヒーの支度はしてあったが、パンはまだ出ていなかった。
と言うより、コーヒーは一日中飲み放題なのだ。
部屋に戻りもうちょっと待つことにする。
6:10くらいにもう一度見に行ったがやっぱりまだパンは無い。
しょうがない、食べるのはあきらめてコーヒーを一杯もらい、支度をして6:30に部屋を出る。
地平線の彼方から太陽がちょうど顔を出したところ。
朝日が気持ちいい。
すっかり運転にも慣れ、余裕で仕事場へ。
7時前に到着。
今日はRogerさん、ちゃんと来てるかな。
期待していなかったもののやっぱり誰もいなかった。
相変わらず僕のバッジではドアは開かない。
どうしようか考えていると、実験室のドアが閉まりかけの状態にあることが分かった。
誰かが気を利かせてくれたのか。
お陰で無事実験室に入ることができた。
7:30になってもRogerさんは現れない。
7:30から試験を始めるって言ってたよね〜?
7:45になっておもむろにRogerさん登場。
「試験は8:00開始だ」
オイオイ、初めから言ってくれよ。
こっちは7:00から待ってたんだぞ〜。
8:00になり試験開始。
マシンは問題なく稼働を開始した。
さあ、もうこれで当分の間やることがない。
Rogerさんに聞いたら、あと8時間試験は続くそうだ。
つまり4時までやることが無いということ。
Rogerさんにことわって一人でカフェテリアへ行く。
朝食べていないのでお腹がすいた。
ドーナツのような形のパンとジュースを取る。
$2弱。安いねー。
見かけに寄らずそのパンは結構食べ応えがあった。
味は特についていない。
バターを塗りながら食べた。
帰りがけCoffeeを買って帰る。
値段は分かっている。
$1.05だ。
この際、昨日ATMから出てきた$20紙幣をくずしてもらおう。
$20紙幣を出してレジのお姉ちゃんの顔を伺うと、「OK」と言ってお釣りをくれた。
小銭がジャラジャラ。
しまった!
5セントくらいこまかいので払えば良かった。
もう僕の財布の小銭入れはパンパンだ。
実験室に戻ると、なんだか大勢集まってワイワイガヤガヤ話し声が聞こえる。
見ると話しているのはDavisさん。
白熱して話しているが、ふと僕を見つけてニッコリ笑って中へ通してくれた。
例のかっこいいマネージャーさんもそこにいる。
僕が前を通り過ぎようとすると「オハヨゴザイマス」と声をかけてくれた。
「Good morning.」と返す。
僕が中に入ってもDavisさんの話は止まらない。
マネージャーさんはじきにいなくなってしまったが、RogerさんとGaryさんに熱く語っている。
声も大きいし身振りもでかい。
相当興奮しているようだ。
昨日の会議で何かあったのかな。
何を話しているのか理解しようと聞き耳を立てたが、早口なので分からなかった。
数分後やっと話は終わった。
Davisさんが僕の所に来てずっと話しっぱなしだったことを詫びる。
何の話をしていたのか説明してくれたがよく分からない。
印象に残った単語は「my land」「gas」「drill」。
これを結びつけると、「Davisさんの土地で天然ガスを掘っている」ということになる。
Davisさんのそぶりもまさにそんな感じだった。
それに関して何らかのトラブルがあったみたい。
自分の土地で天然ガスを掘る。
アンビリーバボー!
「今日でやることは全部終わりだね」と言ってくれる。
実はこれが大問題。
仕事が順調に進んだことは喜ぶべきことなのだが、これでは明日には帰国しなければならない。
当然会社の上司は、仕事が済み次第すぐに帰ってこいと言う。
しかし会社の同僚は、せっかくのチャンスなんだから何かしら用事を作って週末までいろと言ってくれる。
もちろん僕だってそうしたいのは山々。
だけどいくら考えても用事が見つからない。
ちょっと迷ったが思い切ってDavisさんに相談してみることにした。
「週末をBoulderで過ごしたいのだが、もし仕事が全て終わってしまえば、僕は日本に帰らなければならない(という内容を実にたどたどしい英語で説明)」
Davisさんはすぐに事情を察してくれたらしい。
何か考えているが、やっぱりなかなかいいアイデアが見つからないみたい。
「ちょっと考えてみるよ」なんだか悪かったかな。
やることがないので昨日試験の終わったマシンの梱包に入る。
しばらくRogerさんとあれこれ話していたDavisさんが、「オカーダ!」と声をかけてきた。
「それ梱包しなくていいよ。」
???
いろいろと説明してくれたが、細かい話はよく分からない。
とにかく今日の試験が終わったらもう一度昨日試験を行ったマシンを試験するというのだ。
テストは金曜日に行うという。
どうやら無理矢理、金曜日まで試験を続ける口実を作ってくれたらしい。
うれしい。
本当にええ人や。
とにかく今日は暇、暇、暇。
"My home"でずっとPCをたたいている。
今日のお昼は、ゆでた魚にチリソースをかけたものとライス。
ほとんど何もしゃべらず、指でそれとそれって指し示しただけでオーダーしてしまった。
あとはサラダとジュース。
サラダはもちろん小さいプレート。
今日は$5ちょっと。
だいぶ安い。
また小銭が増えた。
ライスはタイ米のような感じでパラパラしていて、あまりおいしくなかった。
食後に再びCoffee。 $1.05であることが分かっているのであらかじめ小銭の準備をしてレジへ。 ペニーが5枚ほど減った。
午後も暇だ。
しばらくPCをやった後で、Davisさんに今回の試験に関して2,3質問しておかなければならない事があるのを思い出した。
これらは曖昧にはしておけない。
あらかじめに紙に英作して持っていった。
最初はそれを見ながら口で言おうと思ったが、結局はDavisさんに見せてしまった。
Davisさんも多分僕に口で説明しても理解しきれないだろうと思ったのか、それらの紙に答えを書いてくれた。 助かる。 用件は無事済んだ。
それからまたしばらく、暇な時間が過ぎる。
実験室の前を通り過ぎようとしたときに、中にいたDavisさんに「オカーダ」と呼び止められる。
「大きいチャンバーを見たいかい?」
「Oh, Yes!」
「かなり歩くけど平気?」
「No problem.」
チャンバーとは今回の試験を行う試験漕のこと。
僕が昨日今日とやってもらっている装置はどちらも小さいので、机の上に乗るようなチャンバーで試験が出来るが、中には一部屋分もあるような大きな装置の試験もあるので、そのための大きなチャンバーがあと2つあるのだ。
それを見せてくれると言う。
もちろん見てみたい。
Davisさんが言っていたとおり、そこまでの道のりは遠かった。
カフェテリアを抜け中庭を通り、さらにビルを1個か2個歩く。
途中遠くの建物を指さし、「あそこでプリンターの部品を造っているんだよ。」と教えてくれる。
知らなかった。
この敷地内に工場があったなんて。
さらに数分歩いて、倉庫のような場所の片隅にやっと目的のチャンバーがあった。
1つはとにかく馬鹿でかい。
日本の僕たちの実験室一つ分は余裕でありそう。
それなのに、そのチャンバーでもぎりぎりの大型プリンターもあるそうだ。
想像もつかない。
もう一つのチャンバーはその約半分の大きさ。
それでも日本にある別の用途の大型チャンバーより一回りでかい。
どっちもその時は使われていなく、イスやら段ボールが置いてあった。
チャンバーの外にある装置に関しても説明してくれる。
「ここから外の空気を取り入れて、除湿して、いくつもいくつもフィルターを通して中に入る」
非常にわかりやすい説明。
帰り道、通路の脇に巨大な機械の固まりが置いてあった。
カラープリンターのようだ。
「これは..........で作られているんだ。」
よく聞き取れない。
「ベル........」
もう一度繰り返す。
どこかの国名のようだがやっぱりわからない。
「ベルジャン」と言っているようにも聞こえる。
すると紙に地図を書き始めた。
イギリスとフランス、そしてドイツ。
フランスとドイツに挟まれた小さなエリアを指してまた「ベルジャン」と言った。
う〜、知らない国だ。
恥ずかしい。
地理に疎いことがばれてしまった。
Davisさんもあきらめたようだ。
今日になってちょっと違う感情がわいてきた。
今まではとにかく今回の出張の目的を果たすことだけ考え、Davisさんには申し訳ないが僕のままならない英語をなんとか理解してもらい、通じればそれで良しとしていた。
しかし今はDavisさんとは仕事を離れ、友人としてもっと会話をしたいと思い始めている。
Davisさんともっと心を通じ合いたい。
Davisさんだってきっと、もっと僕に話しかけたいに違いない。
でも僕がなかなか英語を理解できないから、あまり話しかけないのだ。
大型チャンバーからの帰り、何か話しかけたいのに何も話せず二人で無言のまま歩きながら、つくづくそう思った。
チャンバーから戻ると「ちょっと僕の部屋に来て」とそのままDavisさんの部屋に行く。
壁には大きな世界地図が貼ってあった。
さっき僕が分からなかった、フランスとドイツに挟まれた小さな国を教えてくれる。
その国の名はベルギー(Belgium)。
確かに地図を書いてもらって答えられなかったボクも恥ずかしいが、「ベルジャン」って言われてもね〜。
発音が違いすぎる。
それからはその地図を見ながら2人でしばらく話が盛り上がった。
Davisさんは中国に旅行したことがあるとか、「僕のHometownはここで、Boulderから車で片道26時間かかるんだ。」とか、「おまえは日本のどの辺から来たんだ?」とか。
僕がHawaiiを指さし「Honoluluマラソンに出たことがある。」と言ったが、いまいちピンと来ていないみたい。
日本ではあれほど有名なHonoluluマラソンだが、アメリカ人の間ではそれほど有名ではないらしい。
Davisさんの話では、アメリカで最も有名な市民マラソンは、ダントツでNew York Cityマラソンだそうだ。
でも僕がフルマラソンを完走したと聞いて、「Very good!」と何度も言ってほめてくれた。
その後Davisさんは一冊のパンフレットをくれた。
"Rocky Mountain National Park"と書いてある。
「明日ここに行くといいよ。」
エッ!?
明日?
「金曜日の再試験のために、明日装置をもう一度チャンバーに入れてもらう。
それが済んだらもうやることはない。
そんなに遠くないから行って来ればいい。
景色は最高だよ。」
明日はただの木曜日。
いいんだろうか。
Davisさんは構わず説明を続ける。
どうやって行けばいいか。
Rocky Mountain National Parkは、Estes Parkという町から入るのだが、そこにはいいおみやげ屋さんがたくさんあるとか。
こと細かく観光ガイドをしてくれた。
Rocky Mountain National Parkは、アメリカで最も標高が高い舗装道路があり、普通の乗用車で登ることが出来るらしい。
そこの標高はなんと4,000メートル!
富士山より高い。
標高が高くて頭が痛くなるといけないからと頭痛薬までくれた。
「この薬2錠を2リットルの水で飲むこと。」
確かにそう言ったように聞こえた。
水2リットルですかい。
しかしDavisさんは本当にいい人だ。
今日の試験がやっと終わった。 最後まで何も問題は起こらなかった。
チャンバーの蓋を開けた状態をDavisさんがいつもデジカメで撮影するのだが、その日はRogerさんにやらせた。
僕の想像通りRogerさんはメカ音痴のかわいいオヤジ。
Davisさんにひとつひとつ操作を教えてもらいながらどうにかこうにか撮影完了。
取った画像がすぐ見れることにいたく感動していた。
デジカメ初めて触ったのかな?
明日は装置をチャンバーにセットするだけだから、何時に来てもいいよとDavisさんに言われる。 確かDavisさんが普段会社に来るのは8:30頃のはずだ。 8:30に来ると答える。
「今日はどこのレストランでディナーを食べるの?」
Davisさんが聞いてくる。
そう、それを聞こうと思ってたんだよね。
「何料理が食べたい?」
「う〜ん、初日はステーキ、昨日はイタリアンだったから、今日はー......フレンチ」
別にそれほどフランス料理が食べたかった訳ではないのだが、何か言わなければならずとっさにそれしか思い浮かばなかった。
そしたらDavisさん、考え込んでしまった。
スージーさんの所に行き「Boulderでフランス料理のお店知らない?」と訊ねる。
「フランス料理はよく分からない。
イエローページで調べてみたら?」
と答えるスージーさんは、僕と目があってニッコリ笑う。
Davisさんは、僕が昨日スージーさんにレストランを教えてもらったことを知らないのだ。
Davisさん、今度はイエローページを見ながらいろいろ調べてくれる。
そしていくつかのページをコピーしてくれた。
それらを僕に渡しながら、「ここは何料理ですごくおいしい。」、「こっちはシーフード。」と説明してくれる。
途中通りかけた格好いいマネージャーさんがその内の一軒を指して「ここはおいしいよ。本当にお薦めのレストランだ。」と言ってくれる。
マネージャーさんまでボクのこと気遣ってくれている。
みんな、済まないね〜。
結局どのレストランもおいしいくてお薦めのところばかりらしい。
地図でどの辺かも教えてもらった。
コピーしてくれたお店の中で一件だけフランス料理の店があったが、「そこは誰も行ったこと無いからおいしいかどうか分からない」と言った。
「おまえが行って、どうだったか教えてくれよ。」
「そうだね。」
Davisさんにお礼を言って帰る。
時間はもう夕方の5:15を回っている。
こっちにいると5時を過ぎると帰らないといけないような気になってくるから不思議だ。
たくさん教えてもらったレストランの中でどれにしようか迷ったが、マネージャーさんがお薦めの"JOHN'S"というお店に行くことにする。
Davisさんのメモによると「European and American, very good」と書いてある。
場所は...またしてもPearl Street。
会社を出てすぐの大通りを走っていると、目の前の空にグライダーが飛んでいた。 熱気球といいグライダーといい、リゾート地だねー。
大まかに教えてもらった"JOHN'S"の場所は、昨日停めた駐車場からはちょっと遠い。
おそらくレストランに駐車場があるはずだ。
車で走りながら探すことにする。
JOHN'S、JOHN'S...
ダメだ。
見つからない。
同じブロックを2周ほどして裏通りの空いているスペースを見つけて路駐する。
こうなったら歩いて探そう。
昨日も歩いた道を、今日も地図を片手に歩く。
ちょっと歩いたところで前から真っ白なTシャツ短パンがお洒落な、サングラスをかけたオヤジが歩いてくる。
思い切って「Exccuse me?」と声をかけると、「オゥ、どうした?」と明るく答えてくれた。
「Do you know "JOHN'S" near here?」
お決まりのセリフをDavisさんにもらったコピーを見せながら訊ねる。
「ん〜、多分道の反対側だな。
道路を横断して1ブロックほど歩いた所にあると思うよ」
「Thank you very much!」
「Good luck.
そこの料理はおいしいよ!」
ええ人や。
親切な人が多い。
言われたとおりに歩いて行くと、やがて"JOHN'S"というお店を見つけた。
というより、昨日も見て印象に残っていたお店だ。
ちょっとボロッちくて小さくて、こんなお店にお客さん入るのかなと勝手に心配していた店だった。
専用の駐車場は無さそうだが近くに停められそうな場所があったので、車を移動させる。
ドアの前に立つがやっているのかどうかもよく分からない。
1つ目のドアを開け2つ目のドアを開けると意外な光景が広がっていた。
外見とは裏腹にちょっと薄暗くてすごくしゃれた感じの店内になっていたのだ。
大人のムード満点。
お客さんはまだ一人もいなかった。
一人の女性が優雅にやってくる。
軽く挨拶を交わし「Dinnerを食べれますか?」と訊ねるがうまく通じなかったようだ。
「Dinner?」
「Yes.」
「お一人ですか?」
「Yes.」
「予約はされていますか?」
「No reservation.」
「少々お待ちください。」
と奥に戻っていってしまった。
予約がないと食べれないお店だったのかな。
それならしょうがない。
今日はあきらめるか。
と考えていると部屋の奥からマダムのような貫禄のあるおばさまが現れニッコリ笑って「Hi.」と言ってくる。
こっちも笑って「Hi.」
マダムはそのまま隠れてしまったが、さっきの女性が戻ってきてMenuを持って僕を席まで案内してくれた。
どうやら食べられるらしい。
食事をさせても大丈夫な人間かどうかチェックされたのだろうか。
こんなレストランに1人で来るなんて、やっぱりどう考えても怪しい。
Menuを見る。
大まかに前菜とメインディッシュに分かれているようだ。
比較的わかりやすい。
やがてウェイトレスが来た。
「Good evening.
How do you do?」
「Fine thank you.」
「何か飲み物はいかがですか?」
食べ物のMenuばかり見ていて飲み物の方は見ていなかった。
Wineと書いてあるMenuが一緒に置いてあった。
どうせ見ても分からないだろうと思って、初めから見る気もなかった。
一応Menuを開いて選んでいるふりをする。
すると「こちらはグラスワイン、あとカクテルもございます」と説明してくれた。
「Beer?」
「Oh, beer...」
どうやらビールはあまり種類が無いみたいだ。
一通り名前を挙げられたが、今日は知っている名前が一つも出てこない。
どうやって頼もう。
そう思っていたところ、最後に一つ名前が挙がった。
「それを下さい」という英語が出てこなかったので、人差し指を一本上げ相手の目を見て「じゃそれを」と思わず日本語で言ってしまったが、なんとか通じたらしい。
しばらくしてPILSNERと書かれたビールが運ばれてきた。
丁寧にグラスに注ぐと、「お食事は決まりましたか?」と聞いてきた。
もうだいたい決めていたので「I choose this one, a〜nd this one.」とMenuを指さしながら頼む。
「OK」
実にスムースに事は運んだ。
僕が頼んだのは多分シーザーサラダとサーモンの黒胡椒焼き。
多分というのはシーザーサラダの綴りを知らなかったからだ。
"C"から始まる綴りだったっけ?
店内に流れるBGMがすごくいい。 ピアノソロのゆったりしたメロディー。 しかもほとんど聞いたことのある曲だ。
やがてサラダとパンが運ばれてくる。
サラダはシーザーサラダだった。
例のごとく量が多い。
パンも熱くておいしそう。
シーザーサラダはちょっとビネガーが強すぎるような気がしたが結構おいしかった。
パンもおいしい。
ちょっとずつお客さんも増えてきて、だんだんにぎやかになってきた。
なんとかサラダを平らげる。
お皿を下げられた後に出てきたのは、意外にもサーモンではなくスープだった。
色はグリーン、どこかで味わったことのあるような無いような味。
スパイスが利いていておいしい。
スープを飲み終わっていよいよメインディッシュの番。
オレンジ色に焼けたサーモンの上に黒胡椒と思われるものが真っ黒になるほどかけられている。
おいしそう。
別の皿には焼いた野菜が載っている。
ちょっと辛目だったが、実においしい。
今日の食事は当たりだな。
最後の方はお腹が苦しかったが、なんとか野菜まで残さず食べることができた。
別のウェイトレスがMenuを持ってきて「いかが?」と聞いてくる。
恐らくコーヒーかデザートだろう。
お腹をさすりながら「No thank you.」と言うとニッコリ笑って戻っていった。
いよいよ会計の時間。
例のごとく最初に持ってきた明細書には、チップの欄はない。
カードを挟んで置いておくとマダムが取りに来た。
しばらくして戻ってきた明細書を見る。
今度はチップとTOTALの欄がちゃんとあった。
Sub totalは、$40,90。
ポケットから電卓を出して計算する。
TOTALの欄に$46と書き込み一番下にサインをする。
これでいいはず。
これでいいはずだよね。
もう黙って出ていってもいいんだよね。
何度も自問自答し、自分を言い聞かせ、そのまま黙ってお店を出る。
どうもこのやり方、馴染めない。
外はもう薄暗い。 酔いざましにセブンイレブンまで歩くことにする。 今日こそは洗濯しなければ。 洗剤を買おう。
セブンイレブンに着いた。 昨日のお姉ちゃんはいないみたいだ。 せっかく昨日道を教えてくれたお礼を言おうと思ってたのに。
洗剤はあるにはあったが、普通サイズしかなかった。
しょうがない。
レジのお兄ちゃんは例のごとくアルバイトのあんちゃんばかりで結構怖い。
ここでもがんばって小銭を減らす。
レジのあんちゃんは洗剤の箱を袋に入れてくれようとしない。
袋はあえて頼まなかった。
オレンジ色の洗剤の箱を小脇に抱え車へと急ぐ。 どう見ても怪しいよな、この格好。 車までの道のりは長かった。
車にたどり着き、道に迷うことなくホテルへ。
さあ、いよいよ洗濯に挑戦。
洗濯物をセブンイレブンの袋に入れ洗剤を抱えランドリーへ。
幸い空いている。
ン?
昨日見かけた洗剤がそのまま置いてある。
しまったー。
個人のじゃなかったんだ。
考えてみればホテルに宿泊する客が洗剤持参で来るわけないもんね。
また無駄な買い物をしてしまった。
せっかく買った洗剤だが封を開けずに持って帰ろう。
おみやげだ。
洗濯物を洗濯機に入れ、置いてあった洗剤をカップ一杯入れ25セント硬貨を4個投入する。 洗濯のモードが4種類くらいある。どれがどれだか今一よくわからん。 いいや、"Color"モードで。 ボタンを押すと水が出始める。 表示板には「残り30分」と出る。 なんだ、簡単じゃん。
30分後、再びランドリーへ。 よしよし、ちゃんと終わってる。 乾燥機を使うか迷ったが、よく考えたらもう小銭がない。 こういうときのために洗濯ばさみを持ってきたから大丈夫。 部屋に戻り、パンツ、靴下を洗濯ばさみにつるしバスルームにかける。 Tシャツは、ハンガーへ。 部屋の中は乾燥してるから、すぐに乾くだろう。
ビール飲んでお休みなさい。
To be continued...