ジャズの即興を愉しむ法


 ジャズの魅力は、なんといっても即興性にあります。同時に、即興が苦手でジャズを聴かない人も多いかと思います。苦手ということにはいろいろあって、譜面がキッチリと決まっている音楽を好む人もいれば、即興の楽しみ方がわからないから聴かないという人もいることでしょう。前者に関してはしかたがないとして、後者の方の手助けとなるかもしれない、私流の即興の愉しみをお教えしたいと思います。ジャズの入門書というのもたくさんありますが、どうも音楽論的に難しいのが多いで、感覚的に書きたいと思います。専門家からすると邪道かもしれませんが…でも私は、こんなふうに聴き初めて愛しているのですから。

 実際にはどんな音楽も、ダンスでも絵画でも詩でもそうですが、すべての表現行為は即興に始まります。インスピレーションを形にする時に生まれる緊張感や幸福感が、芸術の基本だと思うのです。ジャズをはじめとする即興芸術は、アーティストのインスピレーションが生み出される瞬間に立ち合うことができ、新鮮で純粋なところが私は好きです。


繰り返されるフレーズ!?

 ジャズのアドリブで、同じフレーズを繰り返し繰り返し演奏するのがわからないという言葉を知人から聞いたことがあります。その曲本来のメロディーからはずれて、テンポの流れからもはずれて、唐突に現われるフレーズが何を意味するのかって私には答えられませんが、それはそのミュージシャンからのメッセージであると解釈するのが良いでしょう。聴く人に、あるいは一緒に演奏している人に対して、私は今この曲の中でこんなカンジでいるんだけど、どう?…って感じでしょうか。それは曲の解釈であったり感じ方であったりするのですが、繰り返すことによって、その人の小宇宙に引き込んでいくような効果を持っているように思います。そこで好き嫌いも当然出てきて、引き込まれる場合と妙に気持が離れてしまうこともありますが、良ければ拍手して良くなければむっつり聴いている、そんなミュージシャンとの素直な付き合いが楽しみになるのではないでしょうか。


セッションはプロレス!

 もう15年くらい前、大学生の時分に「プロレスはジャズだ」という文章を書いたことがあります。当時は日本のジャズにはまる前でしたが、事例として米国のマックス・ローチとクリフォード・ブラウンの演奏を引き合いに出しました。

 要するに、技の掛け合いということです。プロレスが他の格闘技と違うのは、あえて相手に得意技を出させて受けてみせ、今度は自分の得意技を出していくという、掛け合いの面白さにあります。今でもプロレスは八百長だと思っている人もいるでしょうが、少なくとも技の掛け合いにおいて、事前に筋立てを決めておくというようなことは不可能です。それでは何を頼りにドラマチックな攻防が生まれるかといえば、自分の肉体と技量を使いこなすアスリートとしての感性ということになります。相手との感性がピタリ合った時には名勝負が生まれますが、合うということはお互いを把握しているということです。

 ジャズのセッションというのも同じ様な感じだと思うのです。スタンダードでのアドリブとフリーでのインプロビゼーションではまったく演奏の方法が異なりますが、でも基本的なところでは、ミュージシャン同士が互いの力量を認め合った上で、感性を競い合うように自分の得意の楽器テクニックを繰り出し、そのフレーズを受けて別のプレーヤーが自分の得意技を出していく…そのプロセスで生まれる熱気や流れを感じることが、ストレートパンチを打ち合うだけのロックや集団で演武するようなシンフォニーにはない、ジャズならではの魅力です。

 そうした即興の場で生まれていくジャズを、レコードなどの録音だけで理解するのは難しいと思います。最近では衛星放送などで(あくまでもアメリカ中心ではありますが)一流のジャズメンたちの演奏する姿を見ることもでき、(あくまでもスタンダード中心ではありますが)即興の生成に触れることができます。でもやはり、微妙なミュージシャン同士の駆け引きというのはライヴの現場でなければ感じとれないように思います。

 もちろん、たまにはプロレスで言うところのしょっぱい試合のようなセッションもあります。フレーズの受け損ないや流れの読み違い、一人だけスタンドプレーに走ってしまうなど…楽譜通りでない演奏なので、それも実は仕方のないことと思いましょう。ハプニングを待つというのも、即興の楽しみです。

以下、執筆中…近日アップ予定

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