四国遍路 その4
高知県「最御崎寺から延光寺」早回り
第1日目,24番から26番まで
第2日目,27番から37番まで。
第3日目,39番。
1997年4月26日〜4月28日。家人との2人旅。
4月26日(土曜日)晴れ
(羽田→高知→24番→25番→26番→浜吉屋)
久しぶりの四国。
昨年11月に徳島の23番薬王寺までお参りが終わった。今回も、徳島から牟岐線を使って廻
れば線がつながるのだが、半日余分に掛かる。今の心境は、先ず88ヶ所を全部終わり,
その後2巡目で別のお参りの仕方を考えたい。 当初はもっとゆっくりと
お参りするつもりだったが,今の心境は当初のものとはかなり違ったものになっている。
四国は好天。気温も高く、快適。
国道までタクシーで行くつもりだったが、土佐電鉄の路線バスで空港経由があり、しかも高知→
室戸直通バスより30分前を走る。確かめるため案内所で時刻表をもらう。
9時49分、飛行場発。市内の渋滞で10分程の遅れ。
乗客は7〜8人。うち女の2人連れは遍路。男の1人(大阪の人)は釣りか昆虫採集らしい。
後は地元の人。地元の人は高齢者ばかり。車社会になじめない人だ。
市内から郊外に出るに従って、家々に鯉のぼりが見られる。ほとんど忘れていた景色だ。
海沿いを走るのだが海はほとんど見えないが,山が迫って道がアップダウンし始めると海が輝い
て見えるようになる。
安芸市でバスは一息入れる。
ここから先は海の展望が良くなる。ビワの産地で紙袋を掛けたびわの木が多い。安田を過ぎ、
元橋で女遍路の2人連れが降りる。後は我々夫婦が2人だけ。
室戸から室戸岬はほんのすぐ。
運転手に道を聞き、戻りのバス停はどこがよいか聞いて登りにかかる。熱帯植物園の中のよう
な急坂を、大汗をかいて登ること20分。
古めかしい山門があって、第24番・最御崎寺。
山門から正面の本堂が見える。お参りして、納経帳に印を貰う。参詣客は少なく、遍路姿もほと
んど居ない。
下に降りてから昼食を摂ることにして下山。半分まで下ると潮騒の音がする。下りは楽。
高知行きのバスが来たのであわてて乗る。持参の時刻表は県交通のみ書いてあるらしい。
室戸で下車。バスの時間を見、25番・津照寺へ。
港町の真ん中に津照寺。
急な階段は薬王寺のように1円玉が供えてある。手すりにすがって、お金を踏まないように登ると
右手が本堂。
大師堂は階下の納経所と同じ屋根の下にある。髭面のおじさんが達筆を揮う。
軒を借り、バスの時間を見ながら、パンとジュースの昼食。 のどかで質素。理想の生き方。
至福の時間。
高知の霊場は修行の道場とされるが、乗り物をフルに使った遍路旅では修行にならない
かも知れない。
バス停に戻る途中,団体の遍路さんとすれ違う。大型バス2台から下りて来た。
例によってバス会社の人が納経帳と掛け軸を抱えて走る。
元橋まで10分の乗車。
次のバスの時間をメモして歩き始める。同行は1人増え3人。札幌からの女遍路。我々が
この金剛頂寺で今日は終わりと言うと、その次の神峰寺まで今日中にお参りしたいので先に行
きますと自動車道をすたすた行ってしまった。 50がらみの小柄な人。
(26番・金剛頂寺のお遍路)
我々は遍路道をたどる。 道の急坂は室戸と変わらないが、樹相は全く異なりこちらは広葉樹林帯で
熱帯植物ではない。 25分位で広場。立派な石段があり、仁王門の上が本堂。左手下に大師堂。
大師堂はうしろ向き。 写真を撮っていると、団体がお参りを始めにぎやかになる。
札幌の女の人が到着。 我々が先に着いたのが信じられないとのこと。車道と遍路道の差だと思う
と説明する。
下りは一緒に話しながら歩く。 昨日来て、高知泊。朝一番のバスで室戸からお参りを始め今日はタクシーでも良いから神峰寺まで打ちたいとのこと。安田に2〜3軒のタクシー会社があると教えてあげた。
バスの中で地元のおじさんからみかんのご接待。 オバさんは札幌の昆布飴を振る舞う。
我々もご相伴。遍路姿にはみんな親切だ。
浜吉屋は,バス停では「唐の浜東」が近いとのことだが急行は止まらず「唐の浜中央」
で下車。札幌の人はそのまま乗車。
バス停にいた地元のオバサンに道を聞き,浜吉屋着。宿のおばさんが居ないので、荷物を置いて
散歩。国道をくぐり海岸に。遠く室戸岬がかすんで見える。土佐鶴の醸造所近くにある。
今日は客が少ないから1階でも2階でも好きなほうで良いとのこと。勿論2階。
今日は客が少ないから風呂は男湯だけとのこと。女湯が大きいのは遍路客は女が多いということ
だろう。妻とかわりばんこに風呂。食事は1階の座敷。客はおじさんの遍路1人。
食事しながら話すと。鎌倉の住人で大阪単身赴任の歩き遍路。昨年の連休に一番霊山寺から薬王寺
まで打ち、甲の浦まで歩いて帰阪。今回は今日、甲の浦までフェリーで来て40キロ歩いて安田ま
で来たとのこと。4年で完走予定とのこと。歩き遍路の他、造り酒屋を廻るのが趣味とのこと。
今回、奥さんが,間際で中止にしたとのこと。息子さんの就職赴任地が大阪だとのこと。5月4日
までに延光寺まで打ちたいとのこと。
こちらもぼちぼちと話をする。
食事中、もう1人が車で到着。サラリーマン。遊びか仕事か区別がつかない。
鰹のたたきと鰺の唐揚げなどの家庭料理。
夜、丸中タクシーから確認の電話。おばさんが取り次ぎ、36番までしか行かないのは、
もったいない、もっと先に行くか観光を織り込むか、経営者に話を付けて上げるという。丸中は
息子の代。
浜吉屋も跡継ぎ問題があるのか?。
暑いのと、翌日の予定をどうするか色々考えていたので寝不足。
4月27日(日曜日)晴れ
(浜吉屋→27番→28番→29番→30番→31番→32番→33番→34番→36番
→35番→37番→中村)
今日は丸中タクシーで高知県を縦断する。
今まで、公共の交通機関が主で、タクシーは補助的にしか使わなかった。高知も当然そうするつも
りだったが、寺と寺の間隔が空いており、つながりが悪い。
で今回は,タクシーの遍路を試してみようと言う訳。
朝6時40分に鎌倉のおじさんの出発を見送る。浜吉屋の前が遍路道の始まり。おじさんは4キロを
2時間見て歩くと言う。
我々は7時。丸中の車で出発。すぐにおじさんを追い越す。後ろめたい気持ち。細い道を15分
ほどで第27番・神峰寺。途中何人かの参拝客を追い越す。
この道は今までの遍路道では一番長そうだ。
27番・神峰寺は納経所の先に石段があり、本堂と大師堂はその上。本堂は修復中。
お参りを済ませ、写真を撮る。納経所の近くには、シャクナゲが満開。また庭の手入れも行き届いて
いる。車に戻り、運転手の小松さんに今日の予定と料金の確認。
予定は、36番でなく、37番まで行けるかどうか。料金は3万7千円でよいかどうか。
観光をやめれば37番はOK。37番まで足をのばした場合、料金は4万とのこと。丸中本社
と無線連絡して結局こう決まった。
来た細い道を降りる。車のすれ違いに時間が掛かる。朝だと団体が多い。
国道に出る前に右折し山沿いを進む。国道に出て、昨日の道を戻り28番を目指す。道々、小松さん
と世間話。
橋本知事の話。鉄道建設の話。鰹の話。安い鰹が余ったときの話。相撲の土佐の海の話。
大日寺も大きな寺。新築中の本堂はとても立派。高知の寺は点在している分それぞれ大きい。
物部川を渡り、JRをまたぎ、29番・国分寺。藁葺きの本堂はとても見事。札幌のオバさんを見
かける。
車に乗ったまま、道の心配もせず、バスの時間も気にしない遍路はなにか物足りない。寺の印象
も薄い。
山沿いを走り、刑務所の脇を通って、30番・善楽寺。
ここは団体のお遍路さんが多かった。
(30番・善楽寺のお遍路)
善楽寺と本家争いをした安楽寺の門前に乾仏具店がある。 荻窪の妻の母が,その夫(私の義父)と,戦後間もなくお遍路をした際、乾仏具店発行の道中記を入手し、それを貰ったのが我々の遍路の発端
だ。 今回、乾仏具店の訪問も目標の一つ。安楽寺へ行くには、高知の繁華街を通る必要があり
小松さんは気が進まない様子だがこれは2年来の夢。
線路を横断し、乾仏具店が見付かった。 道中記をしめすと70近いおばあさんは、亡くなった主人
が発行した物で、ここには一冊しか残っていないので、大切に保管して欲しいとのこと。 乾仏具店で値段の張るお線香を購入した。
高知駅前を通り、31番・竹林寺へ。
竹林寺は山の上で、石段が特にきれい。日曜なので人も多い。五重塔の前に構えたカメラマンに
シャッターを押して貰った。竹林寺は松山の石手寺のような市民の寺だ。
一昨年、竹林寺と足摺岬の金剛福寺を5月の連休を利用してお参りした。その時は
牧野植物園や桂浜の観光旅行した。今回は、先を急ぐ気持ちが強い
32番・禅師峰寺へは、ニュータウンを抜けて行く。武市半平太の旧宅の看板がある。当地の有
名人は、竜馬、中岡慎太郎、武市半平太。
仁王門から急な石段があり、上が寺。海岸べりだが山もある。ここで気になっていた宇佐の三陽荘
をキャンセルし、中村の第一ホテルを予約する。
先を急ぐ気持ちと、じっくり旅を味わう気持ちが入り交じる。
海岸線を西に向かい、浦戸大橋を渡る。
雪蹊寺は、平らな場所にある。木造で、佇まいが好ましい。
第34番・種間寺までは田園の中の細い道。
ここで団体さんと鉢合わせ。バス会社の人の後で納経帳に印をもらうには、忍耐が要る。ほんの
5〜6分が待てない自分が情けない。
昼食は、ドライブイン。 高知のチェーン店でしゃぶしゃぶ屋。
35番と36番は、36番を先行した。
(36番・青龍寺の大師堂)
仁淀川大橋で左折し、宇佐の町を抜け、宇佐大橋を渡ると
右手に三陽荘(キャンセルした民宿)。 ここで細い道に入り寺の前まで結構な距離を走る。
地図を見た限りのイメージでは、海岸縁りの寺を想像していたが、36番・青龍寺は、まるで最御崎寺のような山上の寺だった。
仁淀川大橋まで戻り、高岡の町を右折。
35番・清滝寺も山の上。 細い道で約10分。 歩けば1時間か。展望の良い山の上の寺。
今回の寺には藤の花が多く、ここも藤の棚。屋外の薬師如来の額の宝石が日光に当たってきらりと
光る。
小松さんは,下りも車同士のすれ違いに神経を使っている
高岡を右折、須崎に向かう。ガスが不足するというので、町のやや手前でガススタンドへ。
須崎を越し、30分ほどで窪川。
37番・岩本寺は町の中。団体客も多い。黒潮鉄道の線路が本堂のすぐ屋根の上を走っている。
窪川駅で小松さんと別れる。これから安田までゆっくり戻るという。料金を支払い、
労をねぎらう。
くろしお鉄道は16時に各駅停車の列車があるので、乗車する。ビールを飲む。今日の遍路
を終えたので、自主ルールでもビールはOK。
はじめて車遍路をした感想は複雑。無事所定のコースは回り終えたものの、旅のスタイルとして
は安易で平板。遍路なり、旅なりになにを求めるかによって評価は変わるが、もっと年齢をとっ
てからでも良さそうなスタイルだ。やはり1日に数時間は歩くスタイルが今の自分には好ましい。
くろしお鉄道は山と太平洋の織りなす景色の連続で、一時間はあっと言う間に過ぎる。
中村の第一ホテルは,以前観光で来たときと同じホテル。ホテルの風呂は民宿より頭を洗うのに
都合が良かった。
夕食も3年前と同じ谷口。6時過ぎから予報通り雨が降り始めたので、四万十川まで足を延ばさ
ず、朝食のパンを仕入れて谷口に直行。
定食を取って、好きな料理を追加する。川エビの唐揚にノレソレ、鰹のたたき。
料理を堪能して、外に出ると雨足が強い。妻は若干気分が悪いという。一日タクシーに揺られ、
小松さんに申し訳ないので居眠りを我慢した所為でもある。ホテルまで足を濡らしながら歩き,
すぐに寝る。夜中は強い雨音が窓をたたいた。
(代参)
38番/金剛福寺は友人に代参をお願いした。
遍路巡りを始める前年、妻と四国の観光旅行をした際、竹林寺、金剛福寺、観自在寺、石手寺など
を巡ったが、納経帳に朱印はもらわなかった。
友人と初めて遍路をしたとき、都合によっては、38番の代参をお願いする旨話しておいた。友人
の遍路のペースはかなり早く、96年夏には高知県を打ち終えたので、ここだけは代参を依頼した。
今回38番にはお参りしない。
4月28日 (月曜日) 曇り後晴れ
(中村→39番→中村→高知→羽田)
朝、雨があがる。
延光寺のお参りは1人で行った。
駅前のバス停は、宿毛高校に通う高校生の一群とおじさん遍路。
四万十川を渡り、宿毛に向かう。鉄道線路で所々工事中。寺山口でおじさんも降りる。相前後
して39番・延光寺へ。雨上がりの田圃でカエルの合唱。のどかな田園風景が広がる。
延光寺はすぐ。古い山門の奥に立派な寺。お参りを済ませ写真を撮っていると、おじさん
遍路がシャッターを押してくれという。機種は同じペンタックス。写真を撮りあい雑談。団体
が押し掛け、そちらにもピントを合わせる。
(39番・延光寺境内)
バス停では、おじさん遍路は宿毛へ、こちらは中村に戻る。バスを待つ間にまた雑談。
この人、公共の交通機関は使うが、タクシー、マイカー、遍路バスなどは一切御法度。
さらに有名区間は公共の交通機関があっても歩くとか。藤井寺→焼山寺、鶴林寺→太竜寺など。
今日は、42番までのつもりで、明石寺から岩屋寺も歩きたいとのこと。
歩くつもりなら、高知の寺の点在の様子は理想的という。
清滝寺から青龍寺もハイキングコースなどあって面白かったとか。
5月の連休を中心に数年かけて88ヶ所をお参りするつもりという。
中村→宿毛の鉄道開通は97年10月という情報もこの人から仕入れた。
中村に着く頃天気は完全に晴れ。荷造りをして宅急便を出し、特急の時間まで町の散歩。農
協の売店とスーパーを見る。スーパーはその土地がよく判る。ユズの佃煮と「ゆずす」を買う。
どちらも家に戻って食べてみたら絶品だった。
列車の中での昼食も,駅弁ではなくスーパーの製品。選択の巾が広く値段も安い。
特急は1時間半で高知に着く。途中、黒潮光る海が,緑の合間から見えて楽しい旅となった。
景色は、五能線よりきれいだったし、高知は結構山が多いのを実感した。
高知市内を見物する。といっても、海産物,特に鮮魚店を選って見て歩いた。
高知空港からは早い便で羽田に戻れた。
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