論客U氏東大医科研 )とのAufhebenなる対談>

(Aufheben(独):止揚すること。本当にぃ〜?)

「WWWの今後に関する一愚考」を読んで−

(一般公開:1995.8.28)
U氏:
こんにちは、X氏と同じ研究室に所属しているUです。

沼田:
お待ちしておりました。パフパフ V(^o^)V 



1.これまでの経緯について


沼田:
最近X氏から
「うちの研究部でもHome Pageを作ろう、という話がミーティングで提案されたけど、ウチの教授は乗り気じゃなかった。僕自身は沈黙していたけど、僕自身の考えとしては、うちの研究部の場合、対外性を考えるにHome Pageを作る意義は殆どないのだ。」
との話を聞きました。極めて断片的なコメントなので上記のコメントからある程度私が推測を加えるに、「研究成果のプライオリティを獲得するためにも、むやみに情報公開して同業者に読まれるのはよくない」ってことか「研究内容が専門的すぎて、一般の人が読んでもわかりにくい or 興味を持てない」のいずれかであろうと思いました。(単に面倒くさいからってのも大きいと思うけど。X氏はノウハウを身につけてないようだから、余計にね)

そこで私は、「Home Pageは自主的に作るモノだし、事情があるのなら無理に作らなくてもいいでしょうね。」と回答し、加えてWWWの学生ページへの不満や、企業のページの固定化した広告のようなつまらない内容に対する不満を述べて、そのまま往復書簡を編集してページに上げてみた、というのが件のページ「WWWの今後に関する一愚考」の発端です。ページ作成の提案者がU氏であること、私の件のページをU氏に読んでもらったことなどをX氏から随時教えて頂き、U氏はマスコミ批判を絡めて私の文章に対し批判的な感想を持っているようだ、と伺いました。


2.「WWWの今後に関する一愚考」についての感想


U氏:
「WWWの今後に関する一愚考」を、読んで・・・。
あの議論に参加してるのは、東大生だけですか?私は、別の大学に修士課程までいたので、同じ大学生でも私の出身大学東大とでは、こんなに感覚が違うものかと興味深く読みました。どうも、あのページを読んでいると、完全に体制に組み込まれた人たちの話を読んでいるようで違和感をおぼえました。

沼田:
ひゅーっ! (^^;…貴方はなぜ大学にこだわるのでしょう。あるいは「大学にこだわりたくもなる」としても、どうしていきなり我々を「東大生の集団」として分類して片づけようとするのでしょう。私は東大の看板をしょってるつもりも東大的意見をはく意図もありません。あくまで「沼田英俊」という一個人して堂々と発言しているのです。貴方は「体制的」という色分けをするつもりなのでしょうが、ここで人のコメントに対して「大学」を持ち出すのは筋違いです。ナンセンス極まりないです。

U氏:
私は、人間というものは、環境に強く左右されるものだと考えます。

沼田:
確かにそれはごもっともですね。

U氏:
博士課程から東大に来て、とても強く思いました。今までの常識が通用しないのですから。(もちろん東大が非常識だと主張しているのではありません。人によりその考える常識は違うはずです。)私の所属する研究室だけのことかなとももちろん考えましたが、東大の別の研究所に行った同輩も、今年新しくうちの研究所(別の研究部)に来た後輩もギャップに驚いていました。

沼田:
これはたいへん興味深いです。貴方のこの点についてのお話をもっと具体的に聴かせて頂けると嬉しいです。でもこういうのって言葉ではうまく説明できない何かだったりしますよね。

U氏:
そうですね。機会があれば是非。
また、個人という立場を強く主張しても、どうしてもそのおかれている環境、育った環境が見え隠れすると思います。東大は、その設置目的の一つに官僚の養成ということがあったはずです。その風土に染まらずに何年もいることは出来ないのではないのかと考えています。それに、あなた自身もあのページで、「毎日新聞勤務のの後輩とも話したように・・・」と、特定の組織を明記してその後輩との話を紹介しているではありませんか。

沼田:
Uさんはご自分の出身大学東大を両方見ているから、特別に感じられることもいろいろとあるのでしょう。私にははっきり感じられないようなものが。でもね、官僚の養成であるとか、体制的であるとかというのはいかにもステレオタイプで世間の受け売りの思いこみのようにも感じられるのです。私ら理科系の場合、官僚云々の世界とは殆ど無縁ですし。何より人の文章を読んですぐさま「東大生の考え」とフィルターをかけるのは思いこみ・妄想が強すぎるのではないですか?組織所属者であるまえに一人の人間としてありたいし、見てもらいたいですね。

以下は余談ですが・・・
人の意見の受け売りでしかなく、自分独自で消化し、こなれたものでない意見は、その組織なり人物なりの意見に便乗しただけの軽蔑すべきものだと私は常日頃から自分を戒めています。だからといって、私自身は大丈夫かと言われるとそうでもないけど。

U氏:
私自身すでに2年半東大で過ごして、「世間」よりは東大の中についてよく見られたと思っています。受け売りだとは、思っていません。ですが、上記の件については、確かに反省すべき点だと思います。

沼田:
あと、「あなたも『毎日新聞勤務のの後輩とも話したように・・・』と、特定の組織を明記してその後輩との話を紹介しているではないですか!」の箇所については、やや理解しがたいので補足説明しておきます。

サークルの後輩である毎日新聞社のS氏と今年の7月に会ったときに、私のページを見せながらInternet・WWWの紹介をしていました。そのときに私が、「まだこのWWWは意欲旺盛な一部の人が作ってる程度で内容もまだまだ薄く、体験・趣味の域を出てないね。何より実用性が乏しく固定的でInternetに乗せる必然性がないページが多い。もっと実用的かつうごめくページになって既存の媒体を越えて欲しい」と件のページと同様なことを述べてました。さらに「官公庁新聞社のように実用的な情報を大量にストックしているところも意欲的に取り組めば我々にとっても実用面で有用な大型の動的データベースとなるだろうに。」と述べました。そのときに彼は自分の勤務する会社の現在のとりくみ状況についてはよく知らないまま(その話をした数日後に毎日新聞のページは立ち上がった訳ですから)自分の会社のページについての展望を「戦後50年写真集にも云々」と応えた訳です。彼の場合、組織が見え隠れしたのでなく所属する組織について私に分析・解説してくれただけのこと。私があのページを読む人に向けて彼の所属組織を明記することに何の問題もありません。私が彼を会社の雰囲気に染まった人ととらえ彼の人格を飛び越えて毎日新聞社の意見と見て紹介した訳でもないし、くれぐれも誤解のないように。

U氏:
了解しました。


3.「WWW Home Page」作成のすすめ


U氏:
次に、私は「対外性を考えるに、うちの場合、紹介することに意義が殆どない。(by X氏)」なんて言う文章を読んだら、「何いってんだ。税金をしこたま使ってるくせに!」と言う感想を持ってしまいます。私自身は、我々には、自分のやってることを広く紹介する義務があると思ってました。

沼田:
確かに同感だと思います。オフィシャルな研究機関が持つ使命についての私の意見は、既に「WWWの今後に関する一愚考」で書いたとおりです。しかしこのX氏のコメントについては私は「それぞれの環境による事情」で片づけてみたし、上記のような経緯でもありますから、先述箇所をご理解の上で、改めてX氏を交えてお話ししましょう。

U氏:
そうですね。

沼田:
Uさんも、もしページを開設していないのであれば作成してみては如何ですか?それから、研究室ページについてもX氏と懸案の話をした上で貴方が率先して取り組まれては如何でしょう。作成ノウハウがなくて面倒くさかったり、あるいはWWW自体をよく理解してなくて、消極的な意見が多くなっているというのがUさんの研究部での実状だったりしませんか?案外、Uさん辺りが骨子だけでも実際に作ってみせてしまえば、みんな面白がるのでは?

U氏:
X氏からどう話が伝わっているのかがわからないのですが、この研究室で、ホームページを作ろうと言いだしたのは、私です。

沼田:
それはもちろん聞いてます。

U氏:
うちの研究所は、年一回の割で他の研究所ではやってる一般公開もしてないし、アニュアルレポートを刊行してはいるけどきっと十分量ではないだろうし・・・という状況で、先述したような、研究結果の報告の必要性を満たすため、研究室でホームページを作ることが出来るのだから(課金なしで)と思い、提案したのです。

沼田:
そうなんですか、それは確かに発展途上ですね。スタッフ・サイドでも、これまでにそのような積極的な動きがなかったわけですね。

U氏:
ただ提案するのも無責任と考え、HTMLの解説書を自費で購入して、提案に先立ち勉強しハードディスク上に構築もしました。リンクを張ったり、英語、日本語のページをそれぞれ作ったりして、小さいですが、ほぼ、この情報発信ツールの全容が掴める様なものに仕上がったとは思っていたのですが、みなさんには、理解していただけなかったようです。私の能力不足のせいだったりして。(T_T) 

沼田:
えー!そこまでやってたんですか?じゃあ、あと一歩じゃないですか。内容に特に問題がない限り、あとは世間でのWWWなど情報発信に関する最近の動きについて、啓蒙して(おそらくは生物系であることも影響してか、そのへんに踏み込むのがおっくうなだけなんでしょう?)、コンセンサスをとるべく強烈にプッシュするだけですよ。
それとも何か深い考えがあってストップかけているんですか?そちらのスタッフの方々は・・・。X氏からは教授が乗り気じゃなかったと聞いただけですが何かはっきりした反対理由をのべられたのでしょうか?あればお聞かせ願いたいですね、私としても。

U氏:
反対の理由は、外部との活発な交流がないので、意味がないのではないか?面倒だ。誰が内容をチェックするのか?といったところです。別に、研究成果をどこかに取られてしまうのでは・・・と言った危惧からの反対ではないと聞き取れました。

沼田:
なるほど。大した理由ではありませんね。単によくわからないから消極的なだけ。啓蒙すべき対象でしかないです。反論としてHome Page作成の利点を主張するならば、

1.大学院でU氏の研究所を志望する学生向け(特にU氏のように外部から来られる方で東大の研究施設など組織の情報にも疎い環境におられる方へ)の紹介
(何しろWWWは若い人なら抵抗なく取り込んでいる情報源ですから)

2.Uさんたち若い研究者同士の情報交換

でしょうか。面倒云々はUさんがすでにプロトタイプを作られたことでほぼ意味なし。技術的ノウハウもほぼクリア。内容のチェックといっても、研究内容の概要くらいはとりあえずは半固定的なものですから、大した労力じゃない。何らかの簡単な専攻・研究部紹介の文献(例えば院試受験案内とかに添付のモノ)があればそれを編集すればよし。がんばって説得しましょう。
うちの専攻でも大学院重点化に伴う組織変更を機会に、近く、ページを作る予定です。うちの教授が(主任を務めていることもあって)音頭をとっているのですが。ねらいとしては、(主に大学院を志望する学生に向けた)専攻紹介のパンフレットと等価なものを作ってURLもポスターなどにアナウンスし、パンフレット代の節約をも考えているようです。役立つことはあっても害になることは何もないですよ。

U氏:
進んでいますね。そういうのは、非常によいと思います。ウチの場合もしかしたら、技術が先走っていて、ついていけてないだけなのかもしれませんね。

沼田:
結局、それだけのことでしょう?っと私も思いますが。

U氏:
しかし、私たちのような、国(=国民)からの援助を受けて勉強研究しているもの(国立とか私立とか関係なく)が、技術についていく努力すべきなのではないかと、考えています。

沼田:
もう骨子が出来上がっているのなら画面を実際に見せて(既に見せた上で反対されたのかもしれませんが)、さらに東京大学内のWWW Servers駒場キャンパス内のHTTPサーバ一覧東大医科研病理学研究部ホームページなどを見せて、イメージをわかせ、併せて世間の動きというものを知らせてあげるべきですね。Negotiator(Lobbyistというべきか)としての力量の問題ですよ。タフに頑張ってみて下さい!

U氏:
周りにいる、少しは進んでいると思われるのを取り込んでいくように努力するつもりです。

沼田:
それから、HTMLの知識があるのでしたら、Uさんご自身の個人ページも(もしなければ)ご検討なされては如何でしょう。すくなくとも自分のテーマについては誰に遠慮することもなく情報発信できるのですから。ああ楽しみ楽しみ・・・ (^o^) 

U氏:
私も開設してみたいと思っているのですが、どこに問い合わせればいいのかご存じですか?勝手に開設するにしても、どこに、ファイルを置けばいいのかわからないのです。アカウントだけ与えておいて、問い合わせ先も知らされてないので、今まで放ったらかしになってしまったのです。
しかし、そろそろ熱い時期なんですよ、こっち(私、X氏)は。

沼田:
えー、 東大本郷ECCのサーバーを利用されるのも手。もちろんそちらの研究所にもWWWサーバがあるのですからそちらに問い合わせて載せてしまうのも手。本郷ECCのばあいは自分のHome Directoryの中に「public_html」(chmod 755 にして下さい)というSub Directoryをつくり、その中に「index.html」(chmod 644 にして下さい)という名でメインのページを構成するHTMLファイルをおいておけばいいです。それだけ。あとはHREFで自分の好きな構成で様々な自分のHTMLファイルをおいて拡張を図って下さい。研究所のサーバに載せる場合は管理者に聞いて載せ方を教わって下さい。ECCに載せるのなら本郷ECCのWWWサーバ管理者 www-admin@hongo.ecc.u-tokyo.ac.jpにメールで疑問点を問い合わせてみてもよいでしょう。
がんばって〜!  (^^)/~~ 
※後日談:U氏(東大医科研)のページは見事、1995年9月初めに立ち上がりました! パフパフ V(^o^)V


4. 官公庁 マスコミとWWWについて

4.1 マスコミ とWWWについて


U氏:
再び「WWWの今後に関する一愚考」についての感想です。
文中の「官公庁・マスコミとWWW」の箇所についてですが、以下のような疑問が、マスコミに対しては、わいてきます。沼田氏のご意見をよろしく。

Q1:マスコミは、本当に、彼らの流す情報に対して責任を持っているのか?

沼田:
責任は持ってないですね。垂れ流しに近いでしょう。とりわけTVでは。自分たちの立場が脅かされぬ程度の最小限の立ち回りで身をかわしはしてますが。数々の冤罪(最近なら松本サリン)にも見られるとおりです。謝罪は最小限にして主な批判の矛先を警察に向かわせるなんていう無責任・卑劣な手法もご存じの通り。

U氏:
Q2:広告(CM)収入が、経営に大きな割合を占めていると思われるマスコミが、まともな情報を流せるのか?

沼田:
商業的・体制的になっているのが現状です。これは現在の日本の社会構造上、避けられない状態ですね。でも今の社会において大手マスコミだけを血祭りにあげれば魔女狩りが済むわけでもないですしね。世論形成(操作)への影響度が多大であるからして当然、彼らを無罪放免にはできませんが。一方、いきなりマスコミなしの社会を想定するのも公の情報すら容易には安定獲得できず、社会が混乱するだけだから、これは現実には極論的な青臭い仮定でしょう。

U氏:
もっともですが・・・。これは、一般大衆(我々)が情報を要求してこなかった事に責任があると思います。「公の情報すら」獲得しようとしていなかったのがいけなかったと考えます。

沼田:
なるほど。ところで私の「公の情報」という表現もやや曖昧でしたね。補足しておきます。スキャンダルめいた社会面の娯楽記事などではなく我々の生活上必要な情報とでもいいましょうか。政治・経済・社会とまあ範囲は多岐に渡りますが。
ところで、体制ってやつは「お上」意識も高いので本当に我々にとって必要な情報であっても事前に知られてはまずい情報、あるいは詳細を知られてはまずい情報は隠すものですよね。情報公開の要求も社会運動の中で行ってみても壁を感じることはよくあります。環境問題でも多いです。まあ当然のことですが。(例として長良川※の環境調査とか原発関係であるとか)
※参照: 箕浦氏のレポート

U氏:
Q3:「情報が洪水のように・・・」とあるが、マスコミが何社もWWWでオーバーラップした情報を流すことに対しては、問題がないのか?

沼田:
ここでは、あえて誠意のない揚げ足とりなコメントをしてみましょう。実際に各新聞社のページ( 朝日新聞 毎日新聞 読売新聞 日経 共同通信 )をご覧になって如何でしたか?あるいは人々は通常、数社の朝刊を毎日購読していますか?新聞と同じ利用法で問題ないと思います。ネットサーフィンを暇つぶしに楽しむ時ならば「混乱」はナンセンスかつオーバーな表現ですし。

U氏:
Q4:情報を隠したり曲げたりするだけでなく、「創作」してしまうような日本のマスコミを本当にマスコミと呼んでいいのか?

沼田:
確かに一般的に、例えば朝日新聞のような立場をもって「左翼的」と分類するような見方は(本多勝一に代表されるような個人的レベルは別としても)お門違いでしょうね。かの新聞も十分に体制的でありむしろ代表格ですらあります(私自身は彼のこれまでの活動を大いに評価する立場をとっています)。戦後数々の冤罪事件やら原発に代表される環境問題への偽善的もしくは体制的な、信頼のおけないマスコミの態度には、私も十分辟易しています。


4.2 官公庁とWWWについて


沼田:
しかしその一方で、例えば官公庁(日本銀行(正確に言うと日銀は政府機関ではない)・総務庁・経済企画庁など)が行っているような経済統計調査・公表の仕事はいったい他のどこが使命感をもって行うというのでしょう?(官公庁自体以外ありえん)。日経新聞のような質量の経済情報を他のどこが毎日使命感を持って安定的に提供してくれるというのでしょう? 去年辺りから私は専ら日経のみを読んでいます。今となっては他紙は女性週刊誌と変わらぬセンセーショナルな見出しに満ちた内容の薄いモノにしか見えません。日経とて大企業中心の見方で「中立的」に経済記事を出している感は拭い切れませんが、この新聞の質量を凌ぐ信頼ある情報源は他に見あたりません。今の私には、必要以上に詳細な社会面は要らないし(オウムにもうんざりだ)。官公庁マスコミには、それぞれの役割があり、それはそれでビジネス上きちんと機能しており、不可欠な情報媒体であることも否めないと考えます。

U氏:
私は、公表までするのが官公庁の役割だと考えます。税金を使って、調査だけしておしまいというのはおかしいような気がします。これは、先の、研究成果の公表報告の件と同じ考えです。

沼田:
ああ、すみません。 (^^;
論点をズラしてしまったために少し誤解されたようです。大手マスコミは体制側であるってことから敷衍して、官公庁・マスコミをひっくるめて論じてしまいました。お詫びがてら、補足説明しておきましょう。

官公庁は基本的に自庁での統計調査については定期刊行物などを通して詳細な公表をきちんと行っています。例えば日本銀行では「日銀月報」をはじめとした数種の定期刊行物にて詳細な統計結果・分析を公表するほか(政府刊行物取り扱い書店にて容易に購買できます)、電話・FAXサービスも行っており、出向けばフリーペーパーとしても情報収集できます。ただそこまでせずとも日経朝刊をみれば前日マスコミに公表された内容は手短かな形で得られるので、この点で官公庁がマスコミも利用して情報を公表することは一番てっとりばやく我々にとっても便利かつ必要なルートであります。官公庁WWW利用して欲しいと要望しているのもマスコミを介する以外にも容易に、より詳細な情報を提供するルートを増やせって意図からなのです。

U氏:
私も知っていましたが・・・。しかし、どれくらいの人が、その存在(取扱書店、その他のサービスの存在)を知っているでしょうか?私には官公庁の努力の跡が感じられません。逆の立場をとれば、知ってる人もいるのだから、知らない人はその人の努力不足だとも言えるかもしれません。しかし、金(税金)の出所を考えたら・・・と思います。

沼田:
確かに情報公開については、もっと努力の余地がありますね。少なくとも現在は、受け身でいては情報はあまり入ってこない。もちろん、統計調査時に協力した先にはおそらく調査した官庁から報告がなされるでしょう。またビジネス上必要としている企業にとっては、入手手段は既に既知のこととして確定してなきゃ企業失格だし。ただ我々のような一般人の場合、自分で興味を持って入手方法を調べないとなかなか知る機会はないでしょうね。調査結果公表翌日の日経記事を読むか、あるいは新サービスなら開始時に日経などに出る紹介記事をチェックするか。まあ各省庁の出す白書(例:経済白書など)くらいは常識であって、知らない方が馬鹿にされますが。

U氏:
まさしく、この点が問題なのです。結局、意識を持っている人や組織(マスコミなど)を経由した情報が、巷にあふれかえると言うわけです。我々が、能動的に動きチェックしていかなければならないのです。

沼田:
ですから私としても、WWWを利用してマスコミを介する以外のルートでも各官公庁広く一般情報提供行うよう、「WWWについて」の中で呼びかけているわけです。その点、経済企画庁のページはかなりイイ線いけていると思っています。もちろん、ページだけでは肝心の相手に届かないですから、ページを作ってほしいなあと思う官公庁には私個人として要望書を郵送しています。

以下に、日本銀行情報サービス局広報課からの、私の要望書(HomePage作ってよ)に対する返事を紹介します。


 さて、このたびは今後の当行の情報サービスの在り方につき建設的なご意見を頂き、誠に有り難うございました。また、同封頂きました官公庁の情報提供内容を示す資料(註:経済企画庁のページNTTの官公庁ページリストを添付して郵送した)も大変参考となるものであり、是非活用させて頂きたいと存じます。
 私ども情報サービス局では、広報担当部署として一般生活者との接点の役割を果たすべく、これまで皆様からの照会にお答えしたり、各種資料等を作成、配布して参りました。PC通信やインターネットによる情報提供につきましても、今春より具体的検討を開始しております。沼田様をはじめ、出来るだけ多くの利用者に価値のある情報提供が行えるよう、努力して参りたいと考えております。今後とも皆様方から素直なご意見を賜りたく存じます。

とかなんとかいう当たり障りなき返信と共に自行紹介パンフレットが添付されていました。まあ、いつ頃要望が実現してもらえるのか、定かではないですが、行動を起こして要求を伝え、相手の意識を促すことができた点で、一歩前進ですかね。動いてほしければ、何か言わなきゃ、ってことかな。
(※日銀は1996年3月から金融研においてWebを開設、1996年8月末からは「貨幣博物館」のページも作成。またNIFTY(GO BOJ)においても各統計資料の公表を行うようになった)

U氏:
アクティヴですね。恐れ入ります。私も、もっと積極的にならなくては。 p(^^)q

沼田:
ということで、「官公庁とWWW」の件についてはおおかたコンセンサスが取れたように思います。私のWWWについてのキャンペーンについても基本的な動機は、納得して頂けたのではないでしょうか。


4.3 再・ マスコミとWWWについて


U氏:
では再び、「マスコミとWWW」についての話題に戻りましょう。
さて、先ほどの沼田氏の「日経新聞のような質量の経済情報を他のどこが毎日使命感を持って安定的に提供してくれるというのでしょう。」の件ですが・・・。これは確かに、考え付きません。「マスコミが、不可欠云々」の件も、そのとおりだと思います。私は別に、マスコミの存在を否定しているわけではありません。マスコミによって情報にフィルターがかけられるのは理解できるしマスコミに「不偏不党」であれとも要求はしません。しかし、マスコミ関係者が、情報媒体を秩序付けましょうというのを看過するわけには行きません。また戦争になって苦労するのは、結局一般大衆なわけですから。一言で言えば、ほんの半世紀前までは、戦争を賛美していたマスコミが一体、何様のつもりだ!と言ったところでしょうか?

沼田:
そお、中立的な立場などもともと幻想です。ある問題(そこには抑圧された弱者が存在するとしましょう)に対して、体制側にたつか反体制側にたつか、それはまさにリトマス試験紙のようにその人・機関を色分けできます。また、U氏はどうやら「秩序」に対して生理的な嫌悪感をもたれているようですね。貴方の思想背景が分からないこともあって、私の言葉の使い方にも難があったかも知れません。

U氏:
ちょっと違います。秩序があることはいいことです。そして、秩序がないと言うのは、困ったことです。しかし、ある特定少数によって、秩序が作られるというのが危険だと考えているのです。
例えば、いい例になっているかどうかわかりませんが、殆どの人は、自分の家、友人の家でごみ箱が見あたらないからといってそこらにごみを投げ捨てるということはしないでしょう。しかし、ひとたび、外にでると、道路はごみだらけです。また、シンガポールだったと思いますが、あそこは、ごみが全くなく、とてもきれいと聞いていますが、単に、法律で厳しく禁止されているだけのことなのです。

私が理想とするのは、1番目に挙げた例であり、2番目に挙げた例が秩序のない状態。3番目に挙げたのが、押しつけられた秩序、と言う感じでしょうか。(本当に、いい例かどうかは、わかりません。)押しつけられれば、秩序を保てるのであれば、我々がしっかりしていれば、押しつけられずに秩序を保てるはずなのです。

「可能な限りの権限権利を個人に」、と言うのが私の理想です。もちろん、現状でそんなことは出来ませんが。我々がもっと向上すれば、または、我々にもっと分別があれば、可能だと思うのですが・・・。

沼田:
なるほど、貴方の考え・理想はよく分かりました。ここから「人間性悪説」にもっていくのが「御用学者・評論家」の常套手段ですが・・・。なかなか容易にはいかないことですよね。自分たちが社会的意識を高めることがまず必要にしてかつ難しいことだし、さらには我々が体制を責め立てても強い抵抗・圧力がかかるだろうし。

まあ、この考えからも、あなたの理想のひとつの足がかりとして、我々個人が、世界に開かれた情報発信手段を手に入れたという意味でWWWは大いに有望ということなのでしょう。同感です。 (^^)

U氏:
この件は、最終的には、各個人の良心に訴えるというか、各個人の心の持ち方が変わらなければならないので、とても難しいことだと思います。本当に、個人個人のちょっとの努力で、大きな成果、進歩が得られるはずなのですが・・・。

沼田:
次に、「ほんの半世紀前までは戦争を賛美していたマスコミ云々」の件ですが、今のマスコミに対して「戦争賛美」云々の批判をしてみても、「だからこそ戦後、我々は・・・」と反撃してくるでしょうね。彼らなりの理論武装です。実際、マスコミに勤める個人・個人にこの言葉を投げつけても正直彼らにはピンとこないでしょうし、「何を極端なことを。この青臭い左翼かじり学生が!」とコケにされるだけかも知れません。(私やX氏はある程度スレてしまっているので、こんな正攻法のコメントはなかなかできなくなってしまいました。)

U氏:
そうでしょうね。まぁ、しかし、あの当時、少なくとも一般大衆よりは情報をたくさん握っていたであろうマスコミが、その情報をまともに解釈できず戦争を止める方向に動かなかったのは、情報を扱う機関として根本的に問題があると考えています。(もし、敗戦すること(これは、予見していたでしょう)も、自分たちが生き残ることも、そして、お調子よく立ち回れることも全てお見通しだったのなら、一般大衆が一本とられたと言ったところですね。取られた一本が、あまりにも大きすぎましたが。)個人レベルで、戦争に反対、と言うか、この戦争は必ず負けるからやめろと言っていた人はたくさんいたわけですから。そんなマスコミに、左だの右だの言われてもなんにも私は、感じません。

沼田:
あはは・・・ (^o^)、Uさんも自分が「左」だ「右」だと安易なレッテル張りをされるのを嫌ってるわけですね。これは失言でした。
マスコミもそうですが、政府 こそ、戦争責任についてはせめてドイツのようにきっちりと謝罪をすべきでしょう。未だかつて正式な謝罪をしてはいないし(自分が手を出しておいて、遺憾である、不幸なこと、残念なこと、はないだろう。)、今後も見通しが殆どないことはご存じの通り。若い世代でも「戦後文部省教育の勝利」として
「戦争に関係ないおれたちが今さら何で謝罪を考えにゃならんの?何で50年前のことでいつまでも日本が卑屈になって責められにゃならんの?戦争なんだからお互い様だろう?えー?韓国・朝鮮・中国さんよお」
という雰囲気が少なからず感じられるしね。体制も大したもんだよ、全く!

その点からもマスコミもまた、現在であっても責められてしかるべき対象ですね。もっとも彼らは反省は何回でもやってみせているが。逆に実体はますます体制の御用媒体になりさがっているのが現状です。記者クラブにつめて体制の「正式発表」だけ書いていれば楽ですからね。記者会見から閉め出されずに済むし。あはは・・・ (^^; 


5.最後に(WWWの今後について)


U氏:
最後に、WWWを利用した個人からの情報発信の意義について、展望をひとことでまとめたいのですが・・・。
もう少ししたら、この情報を取り扱う技術を有効に使うすべを我々個人は身につけるだろうと私は考えているのですが、それは買いかぶりでしょうか?

沼田:
いや買いかぶりってことはないと思います。むしろ将来の展望は明るいと信じています。私はこの新たに手に入れた情報発信のツールの意義ある利用法を今後じっくり熟成させていけると思います。双方向・個人レベルで発信・受信できるこのツールは他の将来性ある情報ツールとともに我々個人の社会への働きかけ方、情報に対する見方・考え方を革命的に変えうるものだと期待しています。それだけに情報発信に関する概念を各人が、じっくり考えながらやっていくべきでしょう。私自身も明確な回答を持っているわけではありませんが。

(文責・編集:沼田 英俊)


以下、さらに怒濤のディスカッションは続くかも??
もし、このテーマについて、ご意見がありましたら、

沼田英俊: numata@sakuraia.c.u-tokyo.ac.jp

までmailをお願い頂ければ幸いです。 (^^)

− Special Thanks to U氏東大医科研) !! −
※なお、このページの文責は全て作者に属し、協力されたU氏は発言内容に関して一切の責任を負っていないことをお断りしておきます。



numata@sakuraia.c.u-tokyo.ac.jp