第9話 手紙
5/27 お手紙ボックスを開ける。
レターセットとシールと切手が入っている箱だ。
どのレターセットで書こうかな。
季節に合わせて、相手に合わせて、気分に合わせて、
たくさんのレターセットの中から、ひとつを選ぶ。5/28 新緑の森のような便せんなら、 さわやかな印象の人へ。
バラの花の便せんなら、華やかな貴婦人のような人へ。
文章を考えていると、わくわくしてくる。
手紙を書くのは、楽しい。5/29 書いて、便せんを折って、封筒に入れて、
切手を貼って、ポストに出す。
この手順が大好きだ。5/30 切手もいろいろな種類を揃えてある。
記念切手をまめに買っているうちに、
自然に増えてしまっただけだが、
選ぶ楽しさは、ここでも発揮される。5/31 手紙を出したら、あとは返事待ち。
返事はすぐ来ても、時間が経ってから来ても、
同じように嬉しい。
もちろん返事が来ないときもあるけど、
そういうときは、また手紙を書く。
返事を催促するわけじゃなくて、
単に、新しい話題が出来たから書くのだ。6/1 さて、今日の手紙は誰にしようか?
そうだ、たまには投函しない手紙もいいかも。
お手紙ボックスへ、レターセットへ、
手紙を最初に考えた、大昔の誰かさんへ。
それとも木へ、花へ、地面へ。
もっと大きく、地球へ、遠くの星へ、はたまた宇宙へ。
はてはて、いったいどんな便せんが似合うのかしら?おわり