第6話 藤色のわっか


5/1  たとえば顔をケガしたときに、わっかがほしいと思います。
     傷口をさわったりしないように、
     治療中の動物がはめてるようなわっかがほしいと思います。

5/2  私は我慢がたりません。
     ついつい、カサブタをはがして治りを遅くしてしまいます。
     始終気にして、何も手につかなくなります。

5/3  とっくに治っているはずの傷を鏡で見ながら、
     わっかをはめた姿を想像します。
     おかしい、邪魔っけ、肩凝りしそう。
     はずしたいけど、はずさないでがんばります。

5/4  わっかは普通じゃ面白くありません。
     お花の形なんてどうかしら。
     色は、そうね、藤色がきれいかも。
     本物の花びらのように軟らかく見えて、
     でも実際はしっかりしていて、
     たまにはくるくる回って、空も飛べたりします。

5/5  空から見た景色は楽しくて、顔の傷なんて忘れています。
     そうして3日もしたら、いつの間にか治っていたりします。

5/6  わっかさん、ご苦労様。
     お庭の花壇でお休みください。
     そんなことを考えているうちに、
     本当に傷が治っていたらいいのにね。

 おわり

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