第3話 電車


4/3  電車に乗ると眠くなる。
     寝不足のときはもちろん、そうじゃなくても眠くなる。
     本を読んでいても、風景を眺めていても、いつの間にか眠っている。

4/4  それでも、なぜか乗り越したことはない。
     降りる駅では、目が覚める。

4/5  それはとても良いことだけど、暇な時なら、乗り越しちゃうのもいいかもね。
     ふと気がついたら知らない風景。
     とりあえず電車を降りて、駅のまわりを歩いてみる。

4/6  そこは一見普通の町。
     だけど最初の角を曲がると、いきなり広大なお花畑があったりして。
     そこでは小さな女の子が、お花に埋もれそうになっていて、
     きゃあきゃあ言いながら、走り回っていたりして。

4/7  それとも、迷路のような町。
     迷路じゃなくても迷子になるのに、初めて見る迷路に入ったら、
     きっと駅には戻れない。
     スリル満点、命がけ。

4/8  いいな、いいな、乗り越したいな。

4/9  「だけど本当に乗り越しちゃったら、次の駅から戻るよね」
     そんな夢のないこと言わないで!

おわり

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