競馬GAME大全・ファミリージョッキー




(4)井崎修五郎の競馬必勝学(ファミコン、1990年3月30日)


・概要

 大川慶次郎先生亡き今最も有名な競馬評論家である井崎修五郎先生が監修した、競馬予想SLG。もっとも、松本亨同様にどこまで製作に関わっているかは不明だが。



・周辺事情

 製作は1989年後半と、オグリキャップブームの真っ只中。「ファミリージョッキー」の頃と異なって、競馬ブームの便乗商品が登場しても不思議無い時代。

 また、光栄の「信長の野望」・「三国志」や、イマジニアの「松本亨の株式必勝学」等の大人向けSLGが(高い値段にもかかわらず)そこそこヒットを飛ばし、ファミコンにもその様な市場が存在する事が明らかになっていた事も大きい。

 本作品は、タイトルからも分かるとおりに「松本亨の株式必勝学」と同じイマジニアから発売された。「松本亨の株式必勝学」が2まで登場し、10000円近い定価でありながらそこそこヒットしたのを受けて、イマジニアがマネーGAMEシリーズとでも言うべきものを成立させようとしたのであろう。

 という事は、本作品がヒットしたら「〜の先物必勝学」とか、「〜の金融必勝学」とか、続編が次々と出たのであろうか。そして、今でもPSあたりで「〜(適当なサッカー評論家名)のTOTO必勝学」とか「〜のナンバーズ必勝学」とか出ていたとか…

 ともかく、本作品が外した事によりイマジニアはこの路線から撤退し、他のメーカーでもヘクトが「プレジデントの選択」とか「アメリカ大統領選挙」等で外し続けるなど、歴史物以外はことごとく敗れ去る。歴史物自体が、光栄の一人勝ちの結果が「決戦」シリーズに到るわけだが…



・GAME内容

 筆者も初プレイなので、リプレイ参照して下さい。



・データ

 レースは、おそらく当時の実際のJRAの条件から持ってきている。ただし、一月で11Rに短縮されており、9〜11Rが重賞となっている。

 また、関東・関西を最初に選択して、選択した方のレース以外は全く存在しない。例えば、関東を選択すると天皇賞・春や宝塚記念すら買えない。

 登場馬は、89年に実際走っていた馬ばかりで、例えば4歳戦ではサクラホクトオー・ウイナーズサークル・リアルバースデー・ドクタースパート・レインボーアンバー等が出走する。

 ちなみに、3歳戦では何故か過去の名馬が出走している。テンポイント・メジロティターン・クライムカイザー・シンザンなどが出走していて、騎手はセイシュン・アベコー・ヨシダキン・ヨーイチロー等と競馬予想家の名前が並んでいる。



 ついでに、ジャパンカップに出走する海外馬には、サンデーサイレンス・イージーゴア・ダンスホール等がいた。これって、当時の海外の活躍馬ですよね。要するに、89年夏位にデータ入れたので、これからデビューの3歳馬とか、ジャパンカップに来日する海外馬の検討がつかなかったのでしょう。

 ちなみに各馬の能力は、「ダビスタ」よりも信用出来ない程度。



・リプレイ

 その昔、筆者がまだ競馬始める前の頃に、このソフトをROM本体のみで中古屋で数百円で買ったまま、ほとんど触れる事無く終わった事があった。結局、今回のプレイが事実上初体験になる訳だ。つーか、説明書無しで分かるのか?

 確か「松本亨の株式必勝学」と同様に、馬券で金増やしていくのが目的だと思ったのだが、ほとんど分からないのでとにかく始めてみる。

 初めに、本拠地を関東か関西かを選択する。そういえば、当時は重賞以外は相互販売やってなかったもんな。今じゃ、PATで全部買えるけどね。

 ともかくGAMEスタートする。そういえば、名前入力とか全然なかったけど気にしない事にする。

 まずは、「1月1回中山」の表示が出る。そして「1R ダート1200m 4歳未勝利戦」が始まる。出走馬の各データが見られるが、そもそも名前が実在する馬なのかすら不明。[予想]欄には当然「井崎」の名前あり。それよりも、出走馬が8頭なのが気になるが、もしかして8頭立て?

 まあ、ファミコンでは「ダビスタ」も8頭立てだし、そもそも馬連無い時代だからどうでもいいけど。

 ちなみに、パドックや返し馬は無いらしい。「相馬眼」なんてパラメータがあって、レベルアップすると馬の状態・勝負気配が分かると面白い気もするけど。

 アイコンを選択すると色々と馬のデータが表示されるが、ここで[¥]を選択すると[予想屋]と[ローン会社]に行けるらしい。ついでに、現在の持ち金が20万円という事も判明。数千万の金が動いた「ファミリージョッキー」とは大違い。

 やはり日本の競馬は庶民のギャンブルで、馬主との落差は巨大な様だ。

 ここで[予想屋]を選択すると、「出目の金五郎」とか「ジョッキーX」とか、スポーツ新聞の電話予想の広告よりも胡散臭い名前が揃っている。

 ここは、もしJRAのジョッキーだったら新聞沙汰になりそうな「ジョッキーX」を選択する。「私は充分なデータを元に予想を立てる。従って、6レースからにしてくれますか。ジョッキーXは用心深い」だって…

 騎手(公営かもしれないけど)のくせに、未勝利戦じゃ分からないんですか。仕方ないので、「インテリのシュウ」を選択。すると、喫茶店の店内にて「私の予想はお高いですよ。2000円ですが、よろしいですか?」だそうで。

 一瞬「コーチ屋」という言葉が脳裏をよぎるが、電話予想よりははるかに安いので買ってみる。「血統的に見ると、次は3−8でしょうかね。」だそうで。

 「〜の父は○○、母父は△△」等と解説もしてくれる。父と母父の名前しか言ってくれない上に、最後に「まあ、他も似たり寄ったりですがね」とかぬかしていたが…

 ちなみに、[ローン会社]はA〜Cの3つ用意されていた。そんなところに凝るなよ…


 いよいよ馬券購入を行う。先程買った予想の通りに3−8の1点買い。筆者の実際の馬券通りに、このリプレイでも常に1点買いを貫く事にする。それよりも、馬券代と予想代のバランスが引っ掛かるけど…

 レースは「ダビスタ」よりも遥かにせこい画面。しかも、コースは一直線。先日開幕した、新装新潟競馬場ですか?

 ともかく、結果は3−8といきなり的中。バブル時代の申し子「松本亨の株式必勝学」並みに甘いバランスなのか?

 ちなみに、配当は780円でした。

 続く2レースも予想屋頼み。まずは「出目の金五郎」のところに行ってみる。「なんだなんだ、邪魔しないでくれよ。金五郎は取り合ってくれない。」って、たかが「出目予想」なのに条件必要なのか?

 仕方なく「トイレのチョーサン」を選択。読売帝国の某馬鹿監督風の男が、トイレで用を足しながら振り向いて応対してくれる。ちなみに、予想代は1000円。「そーですねえ。次のレースはいわゆるひとつの8,6ですかぁ。」って思いっきりベタな奴…

 ちなみに、彼はパドックの気配重視らしい。どうせなら、実績と値段重視の方がリアルなのに…

 しかし、さすがにあの予想家だけあって、あっさりハズレ。それなのに窓口に行って、オバちゃんに「あらやだカスリもしていませんね。お気の毒です」なんて言われる。毎回行くなよ…

 3Rは「4歳400万下戦」。このころは、まだ400万下条件だったのか。そういえば、「ファミリージョッキー」でもそうだった気が。

 今度の予想屋は「賽の目文太」。なんか、ヤクザ風の人が丁半博打の構えしているあたりでネタが見えた気がするが、一応買ってみる(ちなみに500円)。「Aボタンでサイを止めて下さい」って、振るのもこっちか…

 結局、7−8と出た。当然外れた事は言うまでも無い。2・3着と、結構惜しかったけど…

 続いて4レース、再び「出目の金五郎」のところに行くと「まだデータが足りないよ。6レースからにしてくんな。」だそうで。最初からそう言えよ。

 結局、再び「インテリのシュウ」のところに。予想は4−8だが、最後に「3枠は要注意ですよ」ってあんたね。まあ、予想屋なんて、こんなもんですが。

 ちなみに、結果は1−6。全然駄目やん。

 5Rは障害戦。今度は自分で予想の印・近2走を見て予想を立てる。そこで、3・6・8の3頭をピックアップして、最後にオッズ的な問題から(人気の)8を消す。なんか、段々実際の馬券みたいになって来た…

 レースは、ちゃんと障害のグラフィックが加わり、馬もちょっとだけジャンプしている。やるなイマジニア。もっとも、今回は落馬とか無かったけど、あるのか?

 結果は、3−5。5なんてノーマークだわ。

 続いては6R。いよいよ「出目の金五郎」のところに行く。新聞広げて客席に座ったおっさんが「おいらの出目表予想は500円だけどいいのかい。」

 遂に出た、ウインズ前の予想屋お馴染みのアイテム「出目表」。知らない人は、渋谷とかのウインズの周辺に行けば分かります。一言で言えば、中央・地方どころか競輪・オートレースでも使える便利なアイテムです。これ以上は聞かないで下さい。

 「今日は5がツキ目だ、押さえておくといいよ。金五郎は勝手に納得した。」だそうだが、そもそも「今日は」ってこのレースの話でいいの?
 ともかく、単勝5番を買うが4着に終わる。これで、気付いてみれば持ち金は166800円。そろそろ何とかせんと。

 7Rは、「ジョッキーX」の予想に挑む。なんか、サングラスかけたいかにも怪しい男が、建物の影に隠れるようにして応対しているが、予想は500円。いいんかそれで?

 「1枠のスガワラヤと8枠のマトバ、これで決まりですね。それから、3枠のヤスダトミは注目に値しますよ。4枠のナカダテはまず落としてもいいところでしょう。」これって、単なる騎手買い?

 結果は惜しくも2・3着に終わる。 やはり、知らない馬相手は厳しいので8・9Rは飛ばして重賞に挑む事にする。

 そして、10Rは京成杯。とりあえず、リアルバースデーは知っているが、1600mのここでは消し。しかし、他の馬は分からないのでこれも回避。そしたら、あっさり勝ってやんの…

 そして、11Rは金杯。そういえば、筆者が競馬始めたばかりの1994年までは、金杯は自分の地区の方しか買えなかったんだよな。「ネーハイシーザー」買いたいのにと嘆いていたら、3着に敗れてたけど…

 ここは、メジロアルダン・スルーオダイナ・ランニングフリー・イナリワン・レジェンドテイオーと、金杯の常識を遥かに超えた好メンバー。それでいて斤量が55〜57にまとまっているあたりが、ハンデ戦の常識も超えている。

 ここでやっとまともな予想を行う。メジロアルダンの軸は不動と見て、相手は単騎逃げ(多分)レジェンドテイオーが有力。ランニングフリー・スルーオダイナは距離不足で、イナリワンは安定度低く信頼出来ない。

 という事で、この2頭で5万円の大勝負を打つ事にする。5万円っていうと、筆者の今までで最高額の勝負馬券なんですが。ちなみに、当てた時の最高は3000円なんですけどね…

 レースは、レジェンドテイオーが逃げずに2番手に付ける。そして、メジロアルダンが順当に勝ち上がり、2着は逃げたコバンザメ。

 結局、持ち金を半分強に減らして本日のレース終了。続いては、「2月1回東京」。一月でレースは1日ですか?

 データ重視なので、知らない馬のレースはなるべく避ける筆者は、OPクラス以外のレースは回避する事にする。ちなみに、東京なので、コースは左向き。(もちろん直線)

 馬券買わなくても全レース見る事に耐えながら、何とか9RクイーンCに進む。ちなみに、落馬による競争中止はあった。それも、障害だけでなく平地にも。

 クイーンCは、知っている馬はメジロモントレー・ホクトビーナス・カッティングエッジの3頭。ホクトビーナスは、あくまでも繁殖牝馬としての知識なので、メジロモントレー・カッティングエッジで一万円だけ買う事にする。

 結果は、2頭共入着しないという、筆者の実馬券の如く悲惨な結果に終わる。

 続いては10R共同通信杯。マイネルブレーヴ・ドクタースパート・サクラホクトオー・ウイナーズサークルが出走。思わずある馬の名前を見て、このGAMEで初めて馬場状態をチェックしてしまう。晴れながら重馬場なので、サクラホクトオー消し確定。

 ここは、現実世界での皐月賞馬とダービー馬ドクタースパート・ウイナーズサークルで決まり。3万円程買ってみる。

 結果は1着・4着。ちなみに、サクラホクトオーは案の定末脚不発だった…

 続く11R目黒記念は、知らない馬ばかりなので回避。来月に賭ける事にする。

 3月2回中山の9Rは中山牝馬S。スカーレットリボンと金杯で逃げて好走したコバンザメで1万円買ってみる。結果はボロ負け…

 10Rは中山記念。トウショウマリオ・リンドホシ・ホクトヘリオスと、ファミコンだけに初期の「ダビスタ」が思い出される。トウショウマリオ・ホクトヘリオスで2万円買う。本命ホクトヘリオスが勝って、単勝で1100円付く。単勝にしておけばよかった…


 11R弥生賞は、ドクタースパートにレインボーアンバーが出走。再び馬場状態をチェックすると、重馬場なのでこの2頭で鉄板。残り36300円を全て注ぎ込む。あっさり外れる。

 すると、持ち金ゼロになったのでGAMEOVERらしい。「不運なおしまい」というメッセージと、背中を向けたうつむいた男のグラフィックだけが表示される。



・リプレイ2

 あれだけで終わると虚しいので、もう一度挑戦。まともにやっても勝てるとは思えないので、今度は色々と汚い手を使う。

 まずは、関西を選択する。そして、[ローン会社]に行って3社から限度一杯の合計140まねんを借りる。

 そして、4Rのレース結果を見てからLOADして再び4Rに戻り、先程の結果通りの馬券を目一杯(999900円)買う。これで、見事に持ち金を800万円強に増やす。

 もっとも、毎回微妙に結果が変わるので、数回やり直したが。

 結果は、毎回「微妙に」ずれるようなので、1・2着が以下をある程度離したレースに絞ってこの作戦を繰り返す事にする。

 結局1億円貯まったので、後は何もしないで1年終わらせたら、夕焼けの中でスタッフロールが流れてエンディング。

 ちなみに、この作戦は普通にSAVE→リセット→LOADでは通じません。何か、GAME中のSAVE以外の方法で状態を保存出来ないと不可能ですから中止して下さい。


ENDING画面その1 ENDING画面その2



・まとめ

 こんなの売れる訳無いって…

 「松本亨の株式必勝学」がそれなりに評価されたのは、人生GAME風SLGとかRPG風アイテムとかの要素が受けたのであって、単に株(土地)売買の部分が受けた訳ではない。

 それなのに、イマジニア自身がその事を分かっていなかったのか、当時のスタッフが流出したのか、元々別チームなのか、ともかくそのあたりの教訓をまるで生かされなかったのがこの作品。

 せいぜい予想屋が数人いる位で、単に馬券を買うだけのGAMEが面白い訳が無い。まして、当時のファミコンの表現能力・処理速度を考えれば、シミュレーションとしてもレース画面でも、大した事は出来ないのだから。

 まあ、その後数多く発売される競馬予想ソフトのコンシューマにおける魁とでも考えてけばいいのだろう。

 それにしても、井崎先生全然出番無し。まだ、スーパーファミコンソフト「スーパー競馬」の方が目立ってたぞ。




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