ルビオ弦楽四重奏団のショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲全集試聴記


【Disc1】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第1番・第14番・第15番
 ルビオ弦楽四重奏団
 録音:2002年

ルビオ・カルテットは1991年に結成されメロス・カルテットの薫陶を受けたベルギーの若手の団体。第1番は文句なしの名演。スタイリッシュなフォームから鋭利に弦を走らせるエマーソンのスタイルに近いが、テンポレンジはエマーソンの録音よりも広い。終楽章の表出力は見事というしかない。しかし第14番と第15番はイマイチか。このあたりになると音楽の深みをアンサンブルが汲み尽していない感があるし、濃密感ではボロディンに及ばず、峻烈性ではエマーソンに及ばずという印象があり、過去の名録音と比較するとどうしても遜色してしまう。それに第14番の第2楽章はテンポが遅すぎて少々もたれる。ここはエマーソンが9分、ボロディンでさえ10分を切っているのに、ルビオの11分というのは、ちょっとどうかと思う。

【Disc2】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第2番・第8番・第13番
 ルビオ弦楽四重奏団
 録音:2002年

この3曲では特に第2番が素晴らしく、第8番も悪くないが、第13番はいまひとつ。流暢なアンサンブル展開からスマートに音楽を紡ぎだすこのカルテットのスタイルはここでも健在。しかし第13番は総タイム21分というじっくりとした進め方で、エマーソンの19分、ボロディンの20分よりも長くなっているが、聴いているとじっくりという割には音楽に重みが不足し、少々もたれてくる感がある。もうすこしアンサンブルがどっしりとしていればさぞかしと思うのだが、、、

【Disc3】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第3番・第7番・第9番
 ルビオ弦楽四重奏団
  録音:2002年

ルビオ・カルテットのショスタコ全集の5枚中これがベストか。スタイルとしてはエマーソンのように現代的に洗練された解釈だが、速めのテンポに傾斜したエマーソンの全集よりは、ルビオの方がアレグロとアダージョでの緩急対比が大きい。たとえば第3カルテットの第4楽章と第5楽章など、エマーソンとのタイム差が歴然としている。エマーソンは少々速めで味気ないという気もするので、こちらのルビオの方が個人的にはしっくりくる。第7・第9カルテットも文句なく名演。ビート感あふれる鋭利な弦の刻みが素晴らしい。

【Disc4】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第5番・第11番・第12番
 ルビオ弦楽四重奏団
  録音:2002年

第5カルテットの演奏が絶品で、ことによるとルビオのショスタコ全集中ベストかもしれない。第1楽章や終楽章での聴かせどころでの表出力が半端なく、これには引きこまれてしまう。ザクザクとした張りのあるリズムから次第に狂気が迫りくる様は圧巻だ。第11カルテットの方もまずまず。第4・第5楽章のハードビート感が素晴らしい。第12カルテットはいまひとつ。技術的な最難関というべき第2楽章の前半部が全体的にもっさりしていて、エマーソンなどと比べると聴き劣る。後半部になるとかなり盛り返すのだが、、、

【Disc5】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第4番・第6番・第10番
 ルビオ弦楽四重奏団
 録音:2002年

最初の第4カルテットはいまひとつか。初期作品に相性のいいルビオなので期待したが、思ったより表出力が大人しい。この第4は謎めいた作品揃いのショスタコ全カルテットの中でもひときわ謎めいた作風なので、やはり特殊なのかもしれない。希望と絶望がゴチャマゼになったような第1楽章など、実に不可解だ。第6番の演奏は秀逸。第3楽章の深い悲しみの音楽には胸を打たれる。この楽章は4分で走りぬけるエマーソンより6分をかけたルビオの方が好ましい。第10カルテットも悪くないが、この第2楽章はエマーソンがずば抜けているだけに、それと比べると少し落ちる。

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