ボロディン弦楽四重奏団のショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲全集試聴記


【Disc1】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第1番・第2番・第4番
 ボロディン弦楽四重奏団
 録音:1978・82年

ボロディン弦楽四重奏団らしい、重厚濃密な味わいのショスタコーヴィチというべきか。ディベルティメント的な第1番ではボロディンの醍醐味が全開とはいかないが、第2番で早くも全開となる。この作品の狂気性が、野太いアンサンブルから強烈に押し出されていく様は圧巻だ。第4番は第2楽章の厚ぼったいメロディ・ラインの訴求力が素晴らしい。

【Disc2】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第3番、ピアノ五重奏曲、弦楽八重奏のための2つの小品
  ボロディン弦楽四重奏団、リヒテル(pf)、プロコフィエフ弦楽四重奏団
 録音:1964・83年

3曲とも名演。弦楽四重奏曲第3番は同じショスタコの第8シンフォニーを思わせる狂気性の発露が素晴らしく、このあたりの表現の冴えはさすがにボロディンSQというところか。弦楽八重奏のための2つの小品はプロコフィエフSQとの共演で1964年に録音されているが、弦のシビアな表出力が尋常でない。ピアノ五重奏曲はリヒテルとの共演で83年のライヴ。これは言わずもがな。

【Disc3】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第5番・第6番・第7番
 ボロディン弦楽四重奏団
 録音:1981・83年

3曲のうち5番と7番がスタジオでのセッションで6番のみライヴ録音。いずれもハイレベルな演奏だが、ライヴの音質的制約なのか、6番のみ若干だが表出力が落ちる感じがする。5番と7番は圧巻。5番の第1楽章の後半部クライマックスなど、ひりつくような緊迫感がさすがだし、7番の終楽章もボロディンならではの凄味に満ちた訴求力が素晴らしい。

【Disc4】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第8番・第9番・第10番
 ボロディン弦楽四重奏団
 録音:1978・81年

全体的にハイレベルな演奏内容ではあるが、弦楽四重奏曲第8番は、このカルテットの演奏水準からすると、少し物足りない気もする。肝心の第2楽章の表出力が伸び切らないのが不思議だが、あるいは音質の問題かもしれない。第9番と第10番は申し分なし。第9番の第3楽章、第10番の第2楽章、いずれもボロディンSQならではの狂気的楽想の訴えかけが凄まじい。

【Disc5】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第11番・第12番・第13番
 ボロディン弦楽四重奏団
 録音:1981年

3曲ともにボロディンSQならではの味の濃いアンサンブル展開の醍醐味が良く出た秀演。第11番は第5楽章などの峻烈な楽想での濃厚感が極めつきで素晴らしい。第12番は第2楽章冒頭のアレグレットでの緊張感が抜群だが、この曲に関してはエマーソンSQなどの技巧派カルテットの方が、より音楽が強く訴えかけてくる気もする。第13番ではボロディンの形成するシンフォニックなアンサンブルの表出力が良くものを言っている。

【Disc6】
・ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第14番・第15番
 ボロディン弦楽四重奏団
 録音:1981・78年

2曲ともにボロディンSQしか為し得ない珠玉のショスタコーヴィチというべきか。第14番は第2楽章の濃密な透明感に惹きつけられるし、終楽章の鬼気迫る緊張感もさすが。第15番も押し出しの強いアンサンブルの訴求力が全編にものを言っており、エマーソンSQなどの薄味表現とは一線を画した濃厚な虚無の凄味が表現されていて息を呑む。

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