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■ ちいさなちいさな時綴り ■
 

 世界の果ては、何処にある?
 世界のへそは、何処にある?

 この世が平らだと信じられていた時、その果てはどうなっているのだろうと誰もが思った。
 まあるい地球がこの世だと知られた時、じゃあ地球の外、星々の世界はどこまで続いているのだろうと皆が思った。
 宇宙が一つだけじゃないと分かった時、それならどこまでを「世界」と呼べるのだろうと疑問が生まれた。

 大きな世界は、更に一回り大きな世界の中にある。
 小さな世界もまた同じ。
 入れ子のように繰り返す、さながらマトリョーシカ人形のような箱庭。
 ひょっとしたら小さい方も大きい方も、際限なく繰り返し続いているのかも。
 答えを知る人はいない。賢い先生が講義をしても、理屈はいつか覆るかもしれない。
 だから、本当の答えなんて誰にも分からない。

 世界の果ては、何処にある?
 世界のへそなら、「此処」にある。

 ありとあらゆる概念が、ただ一点――より正確にはたった一つの特異球面から生まれ、果てなく拡散してゆく。
 あたかもそれはブラックホールのシュワルツシルト半径。事象の地平面。
 それより外には世界が広がり、それより中は誰も知り得ない。
 すなわちこの不思議な「球」の中が「世界の中心」。
 生まれゆく世界を観測する「始まりの鳥籠」。
 そして、あらゆる並行世界の全てが唯一交錯する「時の交叉点」。
 この世の「時」を編み綴り、「鳥籠」の外へと送り出す。
 あるいは、それは「神」と称すべき存在なのかもしれない。
 けれどあいにく。「鳥籠」の住人である「彼女」は、おおよそ「神」なんていう自覚もなく。
 綴るのはあくまでも「時」。鳥籠の外へ流れ出た「時」は、やがて成長と共に多様な世界の存在を内包してゆく。
 成長する「時」そのものが「世界」である以上、「彼女」はただ種を蒔いただけ。
 それがどう育つかなんて知る由もない。

 世界の果ては、時の果て。
 世界のへそは、あたしのお部屋。

 特異点……この「鳥籠」には、誰も入れない。
 始まりの舞台裏、ここは「世界」に在らず。
 だから、ここは秘密の部屋。「彼女」だけの特別な部屋。
 世界の源、時の流れを気まぐれに編み綴る、ちいさなちいさな「時綴り」の部屋。
 
 

 
Unit GrowSphereの二十二枚目、オリジナル第十六弾は「ちいさなちいさな時綴り」
折り畳まれた多次元とも三次元の空間とも異なる次元を構成する「時」という概念を軸に、
世界が綴られる舞台裏から垣間見える不思議な光景とお話を描いてみました。
果ての掴めぬ広大な宇宙、数も知れぬ無限の並行世界。
そうした一切合切が、実は気まぐれな観測者が住まう小さな部屋から生み出されている。
誰かの夢かもしれない。誰かの作品かもしれない。
神にも等しい、神らしからぬ観測者。世界のへそのおちゃめな住人。
そんな彼女が綴る「時」の織り成す世界とは……。
不思議でアンバランスな「舞台裏ファンタジー」です。

【トラック構成】
 Tr.1 マボロシ以上のセカイ未満
思い描いた妄想の種。広げる前の宝石箱。
育つ結果は人知れず。どんな世界に育ちゆく。
 Tr.2 籠の中の小鳥
決して出られぬ境界面。次元の源、始まりの部屋。
綴りし時を送り出し、小鳥はひとつあくびをする。
 Tr.3 Little Limited Limit
制限事項、カウント3。果てなく限られた小さな法則。
高密度に圧縮された限定時空、さながら宇宙のびっくり箱。
 Tr.4 観測対象、午前二時
お茶にしましょう、午前二時。世界の開闢から二周ほど。
昼も夜も区別のない。けれど一息、午前二時。
 Tr.5 時映しの泉 -World Noiz-
世界のへその片隅で、小さな泉が水面を揺らす。
無数の雑音が生まれ混じり、遠い何処かの景色を切り取る。
 Tr.6 永久機関の砂時計
終わることなき砂時計。彼女の自慢の砂時計。
七色の砂が煌き落ちる、この世全ての理の雛形。
 Tr.7 裏返しのキャンバス
人々が見るは素敵な絵画、その表面の色彩世界。
彼女が描くはその裏側。誰も覗かぬ悪戯描き。
 Tr.8 芽生えゆく歴史にさよなら
編まれた「時」は「部屋」から「外」へ。境界面の向こうへ芽吹く。
芽生えた先に待つ未来へ、あたしは笑顔でさよならを告げる。
 Tr.9 存在の不在 -nobody, nomind-
観測されなきゃ存在しない。あたしが「観る」から世界は「在る」。
あたしを「観る」人は何処にもいない。在るのに不在(いな)い矛盾の意識。
 Tr.10 i.
自我は何処から生まれゆく。自我は何時から育ちゆく。
自己という観測ポイントの数だけ、世界は無限の色彩を見せる。
 Tr.11 Cross Time -時の交叉点-
たったひとつの特異次元。あらゆる次元の交叉面。
ここは始まり、時綴る部屋。世界のへそが、ここにある。
 Tr.12 ちいさなちいさな時綴り
まぐれ気まぐれ、思いつき。彩り多彩な時糸(ときいと)綴る。
この世の全てが彼女の作品。お茶目で小さな「時綴り」。


【作曲・イラスト・設定・ジャケットデザイン】
諌月 呉霞 / Unit GrowSphere
【頒布予定価格】
500円

2010年5月5日(水) 、第25回M3の以下のスペースにて頒布予定です。
2階 I-18 「Unit GrowSphere」

[ 全曲クロスフェードサンプル( mp3 ) ]
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