さて、普段から軍事ネタをバンバン日記にも書いてるけど、
今回はチト話が長くなりそうなので、ここに別項にして書く事にしました。
まぁ、日記の時と同じくあんまり数字を使わず、専門用語は解説して、
軍事素人さんにも分かりやすく書くつもりです。あくまでつもり。
では…
で、戦車編です。
と言うのも、私が毎月買っていて、
なぜだか、横浜界隈では戸塚の有隣堂でしか手に入らなくて、
来月くらいに仕事場が東戸塚に移動になるので、出版社に定期購読を申し込もうか?と思ってる所の
月刊「軍事研究」誌にオモロイ記事が有ったので、皆さんにもご紹介って事です。
あ、横浜界隈の上記以外でこの雑誌置いてる書店を知ってたら教えてください。
(東戸塚の有隣堂でも横浜の有隣堂でも発見しました。有隣堂はスゴイネ)
軍事研究2001年4月号の記事「2025年の近未来戦車」
はナカナカにオモロイです。
そこには、2015年頃から次世代の戦車が形となって世に出始めるだろう、と書いてあります。
現在は第3世代が大体配備が終わり、それが第3.5世代に改良されつつある現状で、
次なる第4世代の戦車は現在の戦車とは大きくかけ離れた物になると思われています。
で、第4世代の前にまずは、現役の第3世代の話から
現在、第3世代の主力戦車(MTB:MainBattleTank)には
・アメリカのM1エイブラムス
・イギリスのチャレンジャー2
・ドイツのレオパルド2
・フランスのルクレール
・ロシアのT-80
・日本の90式戦車
等が有ります。
一応、以下の条件を大体満たしてると第3世代と呼んでもよさそうです。
1.120mm滑腔砲(もしくはそれ以上)を搭載
2.走行間射撃が可能
3.暗視装置等の搭載で夜間でも昼間同様の戦闘能力を有す
4.複合装甲、スペースドアーマーの採用
とまぁ、こんなカンジ。
厳密に言うならT-80はチト違うかもね。
滑腔砲と言うのは、従来のライフリング砲とは違って、中がすべすべしています。
ライフリング砲と言うのは、ライフリングを彫ってある砲身を使う砲、
ライフリングってのは映画の007シリーズのいっちゃん最初に、
ぐるぐる渦巻きがジェームス・ボンドを追いかけて、なのにやられちゃうってシーンが有るけど、
あれは拳銃の銃身を通してみるとああなってるってのは誰しも知ってると思う。(知らなかったらどうしよう…)
つまり、銃身にぐるぐるの溝をつけて中を通る弾丸を回転させて、
その回転で発生する遠心力で弾の直進性をよくしようと言う仕掛けです。
同じ物が戦車の主砲にも彫ってありました。ちょっと前までは。
陸上自衛隊の90式戦車の前の74式戦車に私は乗った事が有りますが、
(北海道への修学旅行で駐屯地見学を予定に入れた奴が居て(私では無いです)、
そこが第11戦車大隊の居る真駒内駐屯地だったので、戦車に乗せてくれた)
主砲の砲口は歯車みたいな、松本零二のメーターみたいな形してました。
ああ、あれよ、宇宙戦艦ヤマトの波動砲と一緒だわ。
でまぁ、従来はそうだったけど、第3世代では、
ライフリングは発射のエネルギーの一部を回転させるのに使うけど、
それはもったいないので、滑腔砲にして全エネルギーを弾速の向上に使おうと言う思想です。
従来にも同じ事を考えた人が居なかったワケじゃないけれども、
主砲の精度を出すのと、ライフリングが無い事での命中率低下を考えると
複雑な工程を経ても、命中精度の高いライフリング砲の方がワリが良かったワケです。
でも、第3世代で滑腔砲を採用したって事は、各国は精密な滑腔砲を作る事の出来る技術と、
滑腔砲でも高精度な射撃が出来る自信があるって事です。
ってトコで、2の走行間射撃の話に移るワケです。
で、走行間射撃と言うのは、移動目標をこちらも移動しながら射撃する事です。
これが、前述の高精度な射撃と結びついてきます。
第2世代の戦車ですでに主砲にはスタビライザーが付けられ、
激しい機動をしても目標を補足しつづける事が可能になりました。
例えば、テレビなんかで戦車が走ってるのを見てください。
砲塔を横に向けて不整地を走ってたらベスト。
例え、地形で車体がガッツンガッツン揺れてても、砲身だけはピタリと一点を指してるはず。
が、これはどちらか一方が動いている時の話。
双方が動くと一般的には当てるのは難しいとされてきました。
が、第3世代では、それが解決されています。
それはなぜかと言うと、一言で言うと電子技術の進歩です。
戦車の火器管制能力を「ベクトロニクス」と言いまして、
これは「バトルタンク」と「エレクトロニクス」の合成造語なんですが、
従来よりも多くの情報を射撃の際のパラメータとして取り入れ、
それで居て従来よりも早く計算できるようになったからです。
例えば、90式戦車の場合で言いますと、目標との距離とか移動速度とか一般的に必要とされる以外の情報では
気温:砲弾の装薬の燃焼速度に影響
湿度:同上
風速:戦車砲弾でも風に流される
砲身の歪み:砲身は太陽光とかで上半分だけが膨張する事が有ります。
等の情報を取り入れて射撃します。
第3世代での一般的な射程は5km程。
5km先の移動目標に初弾命中させる事が出来ると言うのが売りです。
そして、その能力は夜間でも劣る事は有りません。
暗視装置とレーザー測距で月の無い闇夜であっても、5km先の目標を初弾必中です。
意外に知られていないのは、戦争と言う物は大体において雨天中止です。
これは、雨でセンサーはよく効かなくなるし、レーダーと言うのは水を通して見えません。
以上により、飛行機は飛べないし、飛べても性能はがた落ちだし、
戦車出しても、敵が良く見えないし、何より歩兵がやる気ナシナシです。
同じ事が、霧や砂嵐の時でも言えますが、
第3世代では、そういった物に強い暗視装置と波長のレーザーを使う事によって、
正確に敵の位置を確定できるようになってます。
そして、攻撃一辺倒ではイケマセン。
攻守のバランスが取れて始めて戦力となるのです。
と言う訳で、装甲も一新しています。
従来は何mm厚の鋼鉄という形で防御してましたが、
120mmもの口径で、なおかつ滑腔砲は初速が早いために結果的に弾の運動エネルギーは段違いに大きいです。
もちろんこうなっても、鋼鉄を厚くすれば防げない事も無いですが、
それだと半端でない厚さが必要です。
そうすると、車体は大きくなるわ重くなって速度は落ちるわでいい事ナシです。
と言うので、第3世代では違う形の装甲が出てきました。
それが、積層装甲、複合装甲、チョバムアーマー、スペースドアーマー、リアクティブアーマー等です。
積層装甲、複合装甲、チョバムアーマーと言うのは、まぁ大体は同じ物です。
積層装甲の文字から分かる通り。層を積んでます。
それも、1段目は鋼鉄、2段目はセラミック3段目は…と言う風に違う素材を積み重ねてます。
と言うのも、こうした方が単一材料での同じ厚さの鋼鉄よりも対弾性能が増すからです。
と偉そうに言いましたが、はっきりした理由は知らないです。
おそらく、摩擦係数が違う材質を混ぜる事が有効なのだと、なんとなく思ってはいるんですがね。
で、複合した素材を使うから複合装甲。
そもそも、複合した素材を使うのが有効だと発見したのはイギリスのチョバム研究所なのでチョバムアーマー。
とまぁ、おそらく自国の研究所でもないのにチョバムアーマーって言うのが悔しかったんで、
積層装甲とか複合装甲って言葉が出来たんだと思うな。
最近では、1層目2層目と言うはっきりした境目が無く、鋼鉄からだんだんセラミックに変わっていく
と言うような装甲の開発が行われているらしいです。
これも、弾が入っていくにつれて摩擦係数が常に変わっていくから効果が高いんだと思うんだけど…
で、スペースドアーマーはこれも字の通り、スペースが有ります。
どこに有るかと言うと、装甲と装甲の間に意図的に隙間が有ります。
これはナンのためかと言うと、成形炸薬弾(HEAT)に撃たれた時に発生する高温のジェット噴流を
装甲の間の空間で拡散させてしまおうと言う目的です。
これを装甲に挟み込まないで、追加装甲で同様の働きをさせようと言うのが、
二次大戦ドイツ軍のW号戦車H型なんかに見られるシュルツェン装甲です。
車体の横の板がそう。
現代では、オプション装備ではなく標準装備になったって事ですね。
ほとんどが、積層装甲の内の1層って事で空間が設けられてたりします。
まぁ、鋼鉄、空間、鋼鉄だけってのは装甲車とかでは有っても戦車ではあんまり見ませんね。
で、最後にリアクティブアーマー。
これは湾岸戦争でのアメリカ海兵隊のM60ウォーカーブルドックや
ロシア製のT-72やT-80で良く見られる装甲で、
砲塔や車体にびっしり張り付いている弁当箱くらいの箱がそうです。
日本語で言うなら反応装甲とも言うべき物で、
あれには各々爆発物が入っていて、徹甲弾がぶち当たったら自身が爆発して、その矛先をずらすと言う、
ナカナカに男らしい装甲です。
で、男らしく自爆を果たしたら、そこには次の男が引っ付けられて、次に備えます。
勇ましい割には、簡単に使い捨てです。
小さなボックスになっているのは、反応して爆発したときに取り替え自由なようになんですね。
おまけに装甲の材質がどうこうと言う問題じゃないので、
古い戦車にも取り付けるだけで、防御力が大幅にアップ。
と言う事で、古い戦車を使っているんだけれども、新しい戦車を買う余裕はないって国なんかは、
ぺたぺたとこれを貼り付ける事になります。
現に、イスラエルや南アなんかが、古い戦車にスペースドアーマー代わりの追加装甲に
リアクティブアーマーを貼り付けて、ついでに火器管制とセンサーも新しくしちゃって、
お手頃価格であなたの愛車がよみがえります!みたいなビジネスをやってます。
これは新しい戦車を買うより遥かに安く付いて、性能も上がるし、
見た目も現用戦車っぽくなっていいカンジです。
お宅も1台M-60を持っているんだけど、向かいの山田さんはインド払い下げのT-72買うんですって、
あなたが甲斐性無しだから、ウチは新型戦車も買えないんだわ。と奥様に言われても大丈夫。
M-60のアップデートパックでカッコ良く生まれ変わります。
ちなみに、こっちが使用前。使用後。
ああ、私は前の仕事の関係で、イスラエルの軍事産業にチっとばかしコネが有るので、
連絡していただけると、何とかなるかもしれません。
無線LANなら何とでもなるんですけど。
ちなみに圧縮通信に周波数変換ととても民生品とは思えないほどの対電子戦能力です。(マジで)
ああ、話が逸れた。
まぁこんなにお手ごろなリアクティブアーマーですが、実はかなり高度な代物です。
と言うのも、普段の戦車の行軍では反応する訳には行きません。
例え、時速50kmで障害物を乗り越えて着地した時でも反応せず、
しかして、ひとたび敵弾と合いまみれるや、
敵弾が装甲にその刃を突き立てん内に速やかに爆発して、自身もって1発を葬るワケです。
しかも自車がその爆発で電子装置とか砲の調整が狂わないように、爆発方向も計算されています。
かなり高度な技術の要る微妙な代物である事は理解いただけるかと思います。
あと、ガンダム好きの中には
ガンダムアレックスのあのゴテゴテしい装甲がリアクティブアーマーだと言う者も居りますが、
誠に嘆かわしい事だと言わざるをえません。
以上に述べてきたように、
あれは追加装甲であっても形状や時代背景から見るに積層装甲の一種である事は明白です。
おそらくリアクティブとチョバムを取り違えたのでしょう。
仮にあのデカイブロックの1面がリアクティブアーマーだとしたら、
反応するとエライ爆発になる事は間違いなく、
しかもあのデカイ面積がマシンガン1発で無防備になってしまいます。
そんなんじゃ、クリスもビックリだし、バーニーも嘘だと言いたくなります。
ガンダム好きで戦車大好きな人はお間違えの無い様に…
散々第3世代の説明をしておいて、
第4世代に付いては「現在の戦車とは大きくかけ離れた物になると思われています」としか言っていません。
で、ここでようやく第4世代の話かと言うと、そうは問屋が卸しません。
じゃあ、卸問屋ってなんなんだよ!と詰め寄る人にも第3.5世代の話を聞いてもらわなくちゃなりません。
世の中、一筋縄では話しは通らないんです。
で、3.5世代の戦車です。
この移ろいやすい世の中、常に同じ姿ではオチオチ外も歩けないワケです。
第3世代の性能要求が出たのが冷戦真っ只中、
だんだん形になるにつけて、ソ連のベールも剥がれ始め、
配備が行き渡った頃にはワルシャワ条約機構軍など名前も忘れ去られてます。
この影響がどこに出るかと言うと、財布です。
ハラショーラポーダ(良き労働者)なタワリーシチ(同志)が
党の指示に基いて月産ン千台作っているソ連の戦車に対抗するには、
量より質!と言う事ことで、西側諸国はこぞって質の良い戦車を作り始めました。
1台あたりの値段が10倍でもソ連軍戦車を50台殺ればイイワケです。
ところが、気が付けば永遠のライバルソ連が倒れて、
モスクワの大統領の執務室にはウォッカ片手のアル中が居る始末。
国民生活もドン底で、こんなジョークが流行ったくらい。
「昔は、石鹸一つ手に入れるのにも半日行列したもんだが、最近商店に行列を見ないな」
「そりゃあそうさ!並んだって無い物は無いからサ!」
こんな国相手にすると言ったって、金をくれる議会などありゃしません。
おまけにソ連のタガが外れたために、各地で紛争が勃発。
ソ連は外貨稼ぎのために自軍の兵器を節操も無く売り払います。
そして、世に蔓延る対戦車兵器。
ちょっとゲリラ制圧に出かけたら、手痛いしっぺ返しを食らいます。
言わずもがなの事ですが、対戦車兵器は戦車よりも遥かに遥かに安いのです。
頑張れば、私にだって買えます。
しかし、出て行かない訳には行かない。
しかしながら、高い戦車を失うのは避けたい。
となると、現用戦車を安くアップデートしちまおうと言うのは、当然の論理の到達する所です。
と言う事で、3.5世代の戦車は生まれました。
新しく設計された戦車は何一つ有りません。
パーツを付けたり取り替えたりだけしかしてません。
では具体的にどう変わったのか見ていきましょう。
アップデートには3本の柱が有りました。
つまり、
・防御力の向上
・ベクトロニクスの向上
・攻撃力の強化
です。
まず、何としてもやられる訳には行かないので、真っ先に防御力を向上させます。
アメリカのM1エイブラムスA2は不安だった上面装甲を強化し劣化ウラン装甲としました。
ちょっと、ある意味で不安の残る装甲です。
ドイツのレオパルド2A5はもっと本格的です。
砲塔前面に楔型の追加装甲パックをつけました。
これは第2世代の戦車がそうであったように、敵正面に傾斜のある装甲を向けて、敵弾を弾くか、
敵弾に食い込まれても垂直に切り立った装甲よりも厚い装甲と同様の効果が有るためだと思われます。
(これは誤りで、この追加装甲パック(ショト装甲)は装甲を貫いた浸徹体の飛行方向を
一番装甲が厚く、また被弾しても被害の少ない砲塔中央部にまとめる為のものでした。
浸徹体が装甲に浸徹すると最短距離で装甲を貫ける方向にモーメントが働き
あのくさび形へ前方から浸徹した場合、その装甲の垂直方向へ弾道をねじ曲げられます。
その結果、ショト装甲を貫いた浸徹体は一番装甲の厚い砲塔前面中央部に誘導され、
結果的に被弾車の生存性を高める働きをしています。
また、中には空間が設けられ、HEAT等に対抗する空間装甲としても機能します。'03/12/23
追記)
そして、エイブラムスは統合化管理改修計画で、ベクトロニクスの向上を目論んでいます。
同様の計画をスウェーデン軍仕様のレオパルド、strv122でも実現しています。
これは、何が変わったかと言うと
データ通信バスの装備と言われますが、早い話が隊内LANです。もちろん無線。
これで、音声通信でしか情報のやり取りができなかったのが、いきなり情報共有です。
電話から一気にインターネットになるくらいの進歩です。
これで、分散した同じ小隊機の情報が手に取るように分かります。
例えば、映画版パトレイバー2のOPのジャングル戦のシーンで、
97式ローダーに乗ってる柘植隊長が、
ハンニバル改のコング2のセンサー映像を乗っ取って見てるシーンが有ります。
「コング2より警報、2時方向にRPGらしき熱源」ってトコな。
そこで、コング2の赤外線映像をコング0に居ながらにして見ている。
これが、データ通信バスの成せる技です。
現在では、これを使い極端な話、小隊長一人居れば小隊全車を制御する事が出来ます。
前進後進はもちろんのこと、射撃まで出来るらしいです。
そう言えば、ハンニバル改がRPGの雨あられに晒された後でも、
柘植隊長はコング2のセンサー映像でシルカを見ていたので、
もしコング2の胴体下部のバルカンが動作するなら、
ローダーに向かう対戦車ミサイルも柘植隊長の司令で撃破できたでしょう。
例え、コング2のパイロットが死んでいたとしてもです。
余談だけど、あのハンニバルのセンサーが生き残ってるとは考えられないよね。
音声通信が途切れてるのにデータリンクだけ生き残ってるのもおかしいし、
何より、ハンニバル改のマウンテッドセンサーの位置がもうおかしいよ。
あれじゃあ、センサーの反対側が見えないと思うんだよな。機体の左側。
どうせ置くなら一番高いトコに置けば良いのに。それだと凄くカッコ悪くなるけどね。
で、閑話休題。
次は攻撃力の強化です。
これもドイツのレオパルド2は計画にあがっていて、
従来の44口径砲を55口径砲に変えて、レオパルド2A6とするらしいです。
この場合の口径と言うのは、砲口の径ではなく、砲身長の方です。
具体的には55口径砲の砲身長は120mm×55で6.6mって事です。
砲身が長いほど装薬の加速が長い間受けられるので、結果的に初速が早くなり、
命中率が上がれば、運動エネルギー量も上がると言う良い事づくめです。
今回のは運動エネルギーは30%アップしてるんだと。
ただ、長砲身だと、加工が難しいのと、砲身寿命が短くなるのですが、
ソコントコはゲルマンの技術力で何とかしたんでしょう。
出てきたのは、MIエイブラムスとレオパルド2だけですが、
この2種類は第3世代の中でも比較的早く世に出てきたので、そうなってしまうのです。
イギリスのチャレンジャー2やフランスのルクレールも計画は有りますが、
出てきてからそう経ってないので、まだ計画段階です。
日本はこの辺の動きはホントに遅いですな。
と言った所が昨今の3.5世代戦車の動き。
次は、ようやく第4世代の登場です。
で、ようやく本命の第4世代の戦車です。
ここまで引っ張っておいて、何ですが、まずは姿から見てもらいましょう。
こんなカンジになる予定です。
どう?
ダサくない?めっちゃダサくない?
オレが歩兵だったら、こんなんに援護されたくないね。
と最初は思ったけど、これがドッコイ、凄い事になりそうです。
まず、見た目から分かる事。
完璧にステルスを意識した形ですね。
近未来では妨害を受けやすいレーダー誘導よりも赤外線イメージホーミングの方が多いだろうから、
当然、放射赤外線量も非常に小さくなっているのでしょう。
一言いっておきますが、ステルスと言うのは何もレーダーに映らない事だけでは有りません。
パッと見で発見されなければ良いワケですから、レーダーにはバリバリ映っていても、
肉眼ではどこに居るのかは分からないってのも十分にステルシーなワケです。
この場合はビジュアルステルスと言われますが。
そして、このビジュアルステルスに関して言うと第4世代の戦車、全高信じられないくらい低いです。
コレは米軍が開発中のヤツです。
まぁ写ってるのはアメリカ人だから、ちょっと高いと見ても2mは絶対越えてません。
これは驚きですな!
ちなみに、90式戦車は全高2.335m、戦車兵に身長制限が有ると噂されるT-72でも2.19mです。
脅威の低さといえましょう。
ひょっとすると米軍が低さを強調するために特別背の高い人を用意したかもしれませんが。
で、全高が低いと当然見晴らしが効かない訳で、それを補うために伸縮式のペリスコープ搭載です。
潜水艦みたい。
そして、次に砲塔が小さいですね。
現用戦車では一般的に乗員3名の内、2名(戦車長、砲手)が砲塔内に居ます。
残るドライバーは車体の前面。
ところが、これだとどうしても砲塔がデカくなるし、必然的に全高もデカくなるので、
一昔前までは、次世代では戦車長だけが砲塔に居るワンマン砲塔になるといわれていました。
サターンのゲーム、ガングリフォンのOPムービーで、
楔型装甲の付いた外人機甲師団の90式改をバカバカ撃破するレオパルド3(架空)がそうです。
砲塔小さいですね。
でも、この第4世代の砲塔は無人です。
すべての乗員は車体内の装甲に囲まれた安全な場所に居ます。
おまけにこれ見てください。その乗員もF-16チックにリクライニングしています。
これで、あの全高が実現できたのでしょう。
そして、その小さな砲塔から突き出てるステルシーな主砲。
これが、今回最大の目玉といっても良いでしょう。
主砲の形式には以下が上げられています。
・140mm滑腔砲
・液体装薬弾
・電子化学砲
・上記2つのハイブリッド砲
・電磁砲
上からいきましょう。
140mm滑腔砲はそのまんま。
現在主流の120mmを凌ぐって事で140mm。
しかしながら、戦車主砲としては140mmが上限だと言われています。
大きさと重さの点から。
現にこの140mm滑腔砲は、従来みたいな装薬と弾頭がセットになってるわけでなく、
弾頭を詰めて、その後に装薬を詰めるタイプです。
野砲のようなカンジですな。
この砲は、現在かなりの完成度らしいです。
口径が大きくなって装填が面倒になっても発射速度は上がり、
20mmしか大きくならないの?と言う声にも
発射された砲弾の運動エネルギーは120mmの2倍となり、十分応えていると言えましょう。
しかし、やはり弾頭、装薬の大型化から装備数が少なくなることと、
大きさ重さの点から、採用されるかは少し不透明です。
次、液体装薬弾。
読んで字の如しです。装薬が液体です。
スイマセン、詳しく知りません。
なんか、ちょっと開発に手間取ってるみたいです。
装薬が液体になるだけで、従来の砲でも撃てるというのが売りのようですな。
ちなみに、装薬というのは砲で爆発して弾頭を押しやる火薬の事。
炸薬は弾頭に詰められてて、目標で炸裂する火薬の事。
だから、タングステン鋼の徹甲弾(APFSDSの事が言いたいの)なんかだと、
炸薬は存在しないとなる訳です。
で、電子化学砲。
普通、砲弾はケツに雷管という部分が有りまして、装薬は火が点かないと爆発しませんが、
雷管に詰まってる雷薬というのは衝撃で発火します。
で、砲の撃芯が雷管をコーンと叩くと雷薬が発火→装薬に点火となるワケです。
雷管代わりに電流を使おうという事ですね。それで電子。
これは一般的に電気着火、エレクトリックプライマーと呼ばれてまして、
一部の対空砲などで実現されている事です。
で、化学反応の方は、当然、従来の火薬の爆発よりも反応速度の良い物を選べば、
火薬の量を増やしたり、長砲身にせずに初速があがり、それは戦車にとっては良い事です。
あとそのハイブリッドとして、液体火薬を電気着火させる案も有るそうです。
ふーん、あっそう、で?
で、これですよ!これ!
電磁砲です!電磁です!もっと分かりやすく言うとリニアキャノンですヨー!
電気を流すと磁力が発生して、フレミングの右手がFBIって奴ですよ!(混乱気味)
まぁ一応解説しておくと、電気が流れる所には磁界が発生します。
で、その磁界を使って、弾を加速させます。
ああっ!リニアモーターカーだって言えばインジャン!
つか、リニアモーターカーってどこがモーターなんだ?固体燃料ロケットでも使ってるんか?
まぁとにかく、この方法だと理論上加速力は無限大らしいです。
当然、実際には違いますが。
で、実験レベルでは成功してるらしいです。
しかも、実験レベルとは言え、口径90mmで運動エネルギーが32メガジュールだそうです。
で、気付かれましたか?
口径が小さいですよね?
現状でロシアなんか135mmの砲とか有るのに、90mm。
しかしながら、120mmよりも運動エネルギーにおいては凌駕してます。
ちなみに、従来の一般的な120mm砲で9メガジュールがイイトコ。
単純に3.5倍です。
ううーん、こうもパワーが違うと、従来の装甲じゃ防ぎようが無いから、
従来のは一気に時代遅れの役立たずになっちまいますなぁ。
あれだな、昔のドレッドノート級戦艦みたいだ。
ちなみに、超弩級って言葉の「弩」はドレッドノートの「ド」です。
つか、こんなリニアガトリングな構想も有りますよ。
なんで、口径の違うのをまぜこぜにするのかはチト分かりませんが、
ガトリングにする事によって発射速度を上げる事よりも、冷却効果を高めているのでしょう。
アメリカの戦闘機に載ってるM61バルカンもそうだしね。
あ、「バルカン」ってのは登録商標なんで、使う時は気をつけましょうね。
あと、有名だけど「キャタピラ」も登録商標です。ホント言うなら「トラック」が正しい。
で、これだけ計画が出てきてても実物にはまたチト問題が有りそうです。
と言うのも、実験では成功しててもまだまだ問題が有りそうです。
まずは砲身の耐熱性。
超高速で飛び出る砲弾との摩擦は半端でない熱を生み出します。
で、その熱で砲弾を加速させるレールが融けちゃうらしいです。
これはチト致命的ですね。
それと、急速充電性能。
多砲身にするのは良いけど、現状では、
とてもそこまでの発射に使う電力を急速に充電できません。
それより何より、そんな大容量のバッテリーがまだありません。
研究中のもので従来の10倍の電気容量を持つものがあるらしいですが、
それで追いつくかな?
しかし、現状では一番研究し甲斐のある、未来の明るい方法だと言えましょう。
さて、次はエンジンのお話。
現在は大体の戦車がディーゼルエンジンを搭載しています。
M1エイブラムスだけがガスタービンエンジンです。
まぁガスタービンエンジンは当初は燃費とか吸気の関係で危ぶまれてたけど、
湾岸みたいなトコで実戦に耐えたので、成功してると言えるでしょう。
極端な話、ガスタービンエンジンのダッシュ力だと、
最大射程に居る敵の発射炎を見てからアクセル踏んでも敵弾回避に間に合うそうです。
ディーゼルじゃこうは行かない。
じゃあ次世代はガスタービン一色か?と言えばそうでも無いです。
やっぱ、燃費は気になるらしく、今はタービンエンジンと電気モーターの併用が一番現実的らしい。
タービンエンジンで発電して、モーターを動かして動きます。
アレヨ、今の軍艦の静粛航行時と同じシステムです。
でも、このシステムを戦車の中に詰め込めるようになったんだなぁ。
あ、天才ポルシェ博士も二次大戦にドイツの戦車を作ってたんだけど、
同じコンセプトの戦車を考えてました。
これはディーゼルエンジンでUボートと同じ方式でしたが、
イザ作ったら、とんでもない代物が出来てポシャりました。
宮崎駿監督の「雑想ノート」のP虎の話はナカナカオモロイですヨ。
P虎とは「ポルシェタイガー」の事。
で、このエンジンシステムを使おうとポルシェ博士が思ったのは、
モーターで駆動する事によってギアボックスが不要になるからです。
あの頃のドイツ重戦車は「卵の上に乗った大砲」と言われた位足回りが弱くて、
それも殆どは重すぎる重量がフルに掛かるギアボックスとキャタピラが原因でした。
原因の半分を解決するためにディーゼル発電モーター駆動の戦車を作ったは良いけど、
結局、ギアボックスが無くなった分をモーターとバッテリーが占め、
また、結果的に重量が増えちゃって使い物にならなかったと言います。
でも、今回はより小型で強力なモーターも容量のバカデカイバッテリーも有ります。
で、現実的になってきたのでしょう。
思うんですけど、この駆動方式でモーターでの走行中って凄く静かになりませんか?
キャタピラを硬質ゴムか何かでコーティングしておけば、ほぼ無音で走れると思うんですけど。
うーん、ステルシー。
でもね、笑っちゃうんだけど、これが問題かも知れないよ。
と言うのも、PKOでショボイのを相手にしてる時とかって、
エンジンの咆哮やキャタピラの軋みが重要なんですヨ。
これが味方の士気を上げ、敵の士気をガタ落ちにするのよ。
対地攻撃機や対戦車ヘリ、安価な対戦車兵器が出回っても各国陸軍が戦車を手放さないのはここにあります。
しかも、相手がショボイほど効果倍増。
対戦車ロケット程度の装備で戦車に立ち向かうには相当の覚悟が要ります。
例えばクロースコンバットで装甲擲弾兵だけのカンプグルッペにM4シャーマンがチラリと見えたら
もう士気は萎え萎え、やってるオレまで憂鬱になるモノ。
パンツァーシュレッケを持ってるチームがいてもそう。
戦車に対抗できるのは、飛行機かより重い戦車のみ。
それが無い時は…
この憂鬱さは、パワードールでタカス ナミ(偵察要員)の視界を
対戦車ヘリがチラリと横切った時のそれに相当します。
ズーンと来るね。顔に縦線入っちゃう。
で、無音走行出来るとそう言う効果がなくなっちゃう。
そんな些細な、って思うかも知れないけど、
今の各国装備は戦力の国外派遣に特化しつつあります。
出来るだけ軽く、出来るだけ小さく、最低でも輸送機に何台か詰めれるサイズで、と言うのが今の主流です。
と言うのも、冷戦が終わり大草原での戦車戦と言うのが夢と消えた今、主な任務はPKOやPKFです。
それには、迅速に大量の装備を運び込む必要が有ります。
そして、運び込んだ装備は出来るだけ切り詰めて活動せねばなりません。
と言うのは遠くはなれた母国からの補給ラインへの負担をちょっとでも減らすために。
なので、ガスタービンとモーターのハイブリッドになります。
でもまぁ、現状ではバッテリーの電気容量がまだ足りないらしい。
そうだよなぁ。
画期的なバッテリーさえ出来れば、レイバーなんかもはや夢でもなんでもないワケだし。
あと、言い忘れてましたが、重量も軽くなってます。
現在、50t〜60tくらいですが、
第4世代の戦車は40tクラスを目指してます。
これも、輸送機で運びやすくって事だと思うね。
で、話は戻って、
そんな頼りにならないバッテリーの補助にマイクロウェーブが考えられています。
つまり、衛星軌道上のソーラー発電衛星から発電した電気を2450MHz波に変換して地上に照射
一方戦車の方では上面に集波板を取り付けてそれを受信、電力に変換して使います。
2450MHzに限定してるのは、雲や霧も突き抜けて戦車に届かすためにはこの辺がいいんだと。
で、将来的には、駆動の為だけでなく電磁砲やその他装備の電源にも使って、
完全に電動な戦車を作ろうと言う計画もあるみたい。
まぁ、当然問題は山積みで、まず衛星から照射してマイクロウェーブが地上に届くまでに大分減衰しちゃうこと。
これは、送信方式を換えれば何とかなりそう。
あと、マイクロウェーブから電気に戻す時に、エネルギー損失がデカイ事。
ちょっとこれは…
あと、最大の欠点として、ちゃんと戦車の上面にマイクロウェーブを安定して供給する手立てが無い事。
つまり、戦車ですから物陰に隠れます。
物陰って言うのはお日様から遮られてるから物陰なのであって、同時にそれは衛星からも…と言う問題。
あと、この手のエネルギー転送は安定して受ける必要が有るんですが、
戦車は不整地を行く物であり、上面がまっすぐ上を向いているとは限らない、と言う事。
と言うか、上面に劣化ウラン装甲を施した戦車の上面に
電力に再変換可能なパワーのマイクロウェーブを当てるだなんて事は、ボクはしたく無いです。
もし、劣化ウランがいいカンジに暖まったりした日にゃ、
むっすめさん〜、戦車兵には惚れるなよーってな具合です。
あ、そんな戦車は有る意味、存在自体がN兵器かも。
条約に引っ掛かるかどうかは、微妙なトコですな。
と、まぁこれまでは、従来の装備がどうなるかのお話。
当然、新兵器ですから新装備は完璧です。
ボタンひとつで発射です。
「ポチッとな」は必須です。
で、まぁ、前述の様にタービンエレクトリックな機関になったら、
どうも、スペースが余るみたいです。
で、隙間にしとくのも勿体無いし、色々詰めようか?って事で色々詰めるつもりです。
まず、対空対装甲ミサイル。
車体後部の今ならエンジンの有るあたりに、垂直発射システムを入れてミサイルを打ち上げるんだと。
なんか、それって、主砲が要らないんじゃ…?
あと、当然相手がそう言うミサイル撃ってきた時用に対空レーザー。
なんか、電磁砲に対空レーザーってホントに未来の車両な感じだけど、
レーザーに限って言えば、もはや未来じゃ有りません。
ジャンボに積んで、弾道弾を迎撃しようと言う計画はかなり進んでいるし、
米軍とイスラエル軍との共同開発のTHEL(戦術高エネルギーレーザー)は既に配備が始まっています。
これで、アラブゲリラのロケット弾を迎撃しようとしてます。
よって、戦車にも近い将来は搭載可能。
まーしかし、なんか、未来も近くなりましたネェ!
と言っても25年後に実用化されるかどうかもまだ不透明なんですけれども…
キットアレですよ。
25年後には、この絵見て「あははは!こんな馬鹿なこと言ってたんだネェ!」って言ってるんですヨ。多分。
つくば万博の頃の未来像と、今の現実を比べてみれば…
とまぁ、「明日はどっちだ 戦車編」はここでお終い。
なんか、内容的には昔の学研とかの「未来はこうなる!」と大して変わりませんな。
次回は「明日はコッチか? 機甲部隊編」をお送りする予定。
コッチは、兵器単体じゃなくて用兵的なトコも入れて、多少は専門的かも。
内容的には、アメリカ陸軍参謀長のシンセキ将軍の提唱する「ミディアム旅団」についてのお話を、
脱線しつつやるつもりです。
でも、あくまで予定。
いやね、そのネタ本にしようと思ってた「軍事研究」誌が本の山に埋もれちゃってて見付かんないんだわ。
でまぁ、まずは発掘してからって事で…