BEGININGS
時は偉大なるものを瓦礫と砂塵にしてしまう。しかし栄光は決して忘れられることはない。年老いたものは、その静寂に向けて過ぎ去った日の歌をよく通る声で口ずさむ。
-- Meer の諺より
Dasha は木の大きな枝にもたれかかって、黒い軍隊が彼女の方に行進して来るのに向かって微笑んだ。小さなクロスボウが傍に置いてあるのだが、彼女はそれを装填することさえしなかった。彼女は、森が苦痛から守ってくれることを知っていた。100 年間そうだったように、そしてこれからも。
谷の尾根から太陽が姿を見せ、黒い軍隊はまるで堰を切ったかのように一気に坂を駆け下りてきた。ヘルメットや槍の先端が、夜明けの光にに煌いた。空気が、装甲を施した無数のブーツの足音に揺れた。やがて谷底の森に絡まる巨木が、海を隔てる断崖のように、その前進を阻んだ。そう、軍の編隊が一列の隊列になるほどの、大量に折り重なった木々の障壁だった。男達と武器の一団は、森の内側の暗がりに消えていった。
木の裏側の端に近いところに隠れていた Dasha は起き上がり、彼女を支える大きな枝の下で足を組んだ。日の光のベールが、彼女の頬に当たった。その温もりに彼女は微笑んだ。銅のような光が毛皮の素晴らしいコートの上で、運動選手のような体格の彼女のズボンとは対照的に、デリケートな場所で光と陰が斑になってキラキラと輝いていた。若い Meer の女にとって、Dasha は非常に危険に見えた。彼女は、ドレスやスカーフではなく、一目で戦士だとわかる金属や革でできたものを身に纏っていた。バラ色の髪が、肩の上にまるで血のように流れていた。彼女の高く尖った耳は、朝の風にピクンと動いた。
彼女は思い出し笑いを飲み込み、もう一度笑い始めた。Juka は攻撃してくるだろう。私たちはそれを撃退し、永遠の均衡が改めて訪れるだろう。彼らが失敗の数世紀から学んだことを思い出すと、Juka は決して諦めないだろう。戦いは全く自然なことだ。遠い昔、そう先祖は書き記した。
彼女は、遠くどこかの悲鳴を聞いた。彼女は、頭上のとても高い枝を軽々と通り抜けて、高い止まり木から跳ね上がった。彼女は森の天辺から顔を出すと、小枝の海をじっと見つめ、音の出所を見定めた。深紅の火柱が、北側の葉から噴出していた。巨大な赤い翼が、空に旗のように広がった。その森からガーゴイルの種族が逃げていた。侵略者が彼らを追い払っていた。Dasha はしばらくの間、野蛮な生き物が朝霧の底へ向かって流れ込んでいく様子を観察していた。彼らは、不本意ながらも彼女が持っている野蛮な美しさを持っていた。
そのとき、森から何か他のものが昇ってきた。急速に広がる煙の柱だった。間もなく黒と灰色のカーテンが、遠くの青葉に漂い始めた。灰の匂いが彼女まで漂ってきた。Dasha は耳をピンと立ち上げた。キャンプ用の空き地だと思った。今 Juka は、長い戦いの計画を立てているに違いない。そしてなぜそうではないのか? 森は実りの秋。盛んな包囲攻撃が、季節にスパイスを加えるだろう。これを楽しもうじゃないか。不自由な足で家に戻る Kabur 将軍を送る前に、将軍にお礼を言うのを忘れてはいけない。
砦の長老は、この進展に興味を持っていた。ほとんど音を立てずに彼女は木の中に急いで隠れ、森の奥深くに向かって進み始めた。暗い海のような膨大な枝の絡まりの中を、Dasha は自由に動いた。彼女は、素早く動く目印をつけた筋になった。それは、古代に自然社会と手を取り合った、素早い Meer の性質だった。Meer は、どこであろうともその土地の友となり、風のように気ままに旅をした。
Meer の壮大な砦は、森の中心に島のようにそびえ立っていた。そのタワーと欄干は、驚異の魔法建築だった。建築物の全ての石にはルーン文字が刻まれ、魔法の力にみなぎっていた。何世代か前の珍しい出征で、Juka 軍が神秘の森に何とかたどりついた。しかしJuka の棍棒は、魔法の掛かった壁を決して突破することはできなかった。城は、古代文明の中心であり、Meer 文明の心の拠りどころだった。
その多数の小部屋の中には、灰色の毛皮を身に纏った長老、古代法の番人が住まい、立派なローブ、煌くシルク、金の刺繍が施されたマントに覆われていた。その中で最も偉大だったのは、魔法使い Adranath。大きく見事な銀色のコートを着て、コートを着るという何世紀も続く伝統の長い歴史を貫いて、精霊のように大股で歩いた。Adranath は、あらゆる法のマスターの最年長であり、砦自体の半分の年齢だった。彼の偉大な年齢は、彼に神秘の空気を与えた。彼の雰囲気と作法は、世界が悲惨な場所だった頃のものを真似ていた。
時々、彼が彼女を見ていないときに、Dasha は年月が老人の感覚にうんざりしているのではないかと想像してみた。その考えは、彼女を不愉快にした。ほどなく彼女は、雰囲気と香が漂う厳格な場所である、彼の謁見の間に報告書を届けた。剥き出しの壁が、まるで彼女が話すことを聞いているかのようだった。
Adranath はその知らせを聞くと、暗がりが彼の溜息を深いものにした。彼の古代人の瞳が暗い色になった。"お前は滅亡の兆しを運んできたのだ、我が子よ。我らが要塞の魔法は、森の生命力を源としているのだ。森がなければ、壁は崩れてしまうだろう。Juka が森を燃やせば燃やすほど、我々は弱くなってしまう。"
Dasha は頭を下げた。"尊敬すべきご主人様、私たちの壁がなくなってしまうには、Juka は森全体を焼き尽くさなければなりません。その前に、そんな残虐な行為をやろうとはしないでしょう。"
"ほう、彼らが今そうしないという自信があるのか?"
"彼らは好戦的で侵略的です。しかし名誉についての強い不文律があります。私は彼らがその価値を冒すようなことはことはしないと思います。私は多くの世代の Juka と戦ってきました。" 彼女は、その成果を誇るかのように鼻をツンと立てた。
Adranath は、背の高い椅子にもたれかかり、"お前は彼らの孤独な君主を過小評価している。彼は、この 10 年間で Juka に著しい変化をもたらしている。" と、うなるように言った。
"彼らが Exodus と呼ぶ者のことですか? 彼は私たちに顔を見せるのを恐れています。ほとんど脅威ではありません。"
"彼は Juka に魔術を教えているのだ。"
彼女は顔をしかめた。"治癒と取るに足りない魔法です。私でさえ、Juka の者よりも優れた魔法使いです。尊敬すべきご主人様、私にはあなたのご心配がわかりません。Juka と Meer の古代からのバランスは、これまで崩れたことはありません。何がこの攻撃を危険なものにしているのでしょうか?"
"Exodus が危険だからだ。" その魔法使いはつぶやいた。"彼は我らの世界の異端の者だ。彼が古いバランスを覆すかもしれないと恐れているのだ。厳しい冬が間もなくやってくる、我が子よ。そしてもし Juka が我らに勝ったなら、我々は破局に向かうだろう。我々は生き残れぬかも知れぬ。"
その瞬間、Dasha は Adranath の年齢が彼を弱気にさせていると思った。伝説でさえ、時間と共に色あせてしまう。魔法の力で、彼女は古い魔法使いの小部屋から自分自身を退出させ、仲間の戦士が彼らの魔法の家を守る準備を始めている森へと戻った。彼女は Adranath の老いた心の思い過ごしだと、その破滅の前兆を忘れようとした。
もうずっと以前に、先祖は長老の教えを破ることに警告をしていた。Dasha や仲間の戦士にとって、その教訓は破滅を証明したのだった。
恐怖は、その家に向かって進んでくる燃え残りの壁だ。数日のうちに、Meer は一度に 2 つの敵と戦った: Juka 戦士の容赦ない猛攻撃と炎の猛威がセットだった。Juka 軍は、この世の地獄を掻き消そうとする Meer の全ての努力を退けた。太陽が、暗黒の煙の嵐の向こう側へ消えた。恐ろしいことに、Dasha は、城が攻撃を受けていないことを知った。Juka のリーダーの Kabur 将軍は、古代の森自体のレベルのつもりだった。その罪は、Dasha が今まで知っていたような Juka の名誉を、辱めるものだった。
敗北が、熱の赤い突風として、そして灰と燃え殻の吹雪としてやってきた。Meer は彼らの崩れている砦を諦めると、Juka の戦士が煙から突撃してきた。そして Juka 戦士は、もろい木製であるかのごとく砦を打ち壊した。その大惨事が生い茂る森林を食い尽くしている間に、Dasha は生存者と共に逃げた。森は 100 年間、彼女の家だった。それが 1 週間も経たずに消えていた。
彼女と仲間の戦士は、長老を避難させることに成功した。今でさえ、魔術の逆襲を企てている者がいた。しかし Dasha は別の怒りを大きくしていた。彼女の黒曜石の瞳は、劫火の暗がりを走る抜けるにつれて鋭くなった。彼女は、何をすべきか知っていた。
Adranath はもちろん正しかった。Exodus と呼ばれる君主は、思いもよらない魔術によって Juka を腐敗させてしまった。その敵に対する戦略を構築するため、Dasha は Juka に起こっている出来事を知る必要があった。それは、彼らのリーダー Kabun 将軍自身にぶつけようとしていた質問だった。Dasha は直接将軍に会い、説明を求める。彼の答えが納得いかなければ、彼と決闘するつもりだった。
万が一そんなことがあれば、実行は彼女であることを自覚していた。その後、長老が Juka への大破壊に復帰し、永遠のバランスが改めて有効な状態になるだろう。そのようなことは歴史の完全な過程であり、覆されることはないのだ。だから先祖は、何世代も前に約束した。そうでなければ、Dasha はそもそも疑いなんて持っていなかっただろう。
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