ホスピス・緩和ケア病棟に関する質疑応答100問
広葉樹(白) ホスピスQ&A
2016/11/6 Update
      

出典:谷荘吉(元小松病院長)著「日本のホスピスQ&A」東京書籍発行(著者の許可にて掲載)〔管理者:伊能言天〕
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キ−ワ−ド
入院全般 治 療 痛 み 在宅ケア 生 活 食 事 建 物  家 族
病名告知 宗 教 心のケア 入院手続き  費 用  ホスピス(緩和ケア病棟)とは  ボランティア



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 入院全般 
【1】誰でも入院できますか?
【2】ホスピス(緩和ケア病棟)は何も治療できなくなった人が入院するところですか?寝たきりなど病状が悪くならないと入院できませんか?

【3】ホスピス(緩和ケア病棟)に入院した人は皆そこで死を迎えるのですか?死ぬまで退院できませんか?
【4】ホスピス(緩和ケア病棟)はがんの代替治療をしてくれるところですか?
【5】告知を受けていないと入院できませんか?
【6】主治医の紹介状は必要ですか?入院の可否はどのように決められるのですか?
【7】入院したいときにはいつでも入れるのですか?いつも満床で待たなければならないのでは?
【8】入院するときは本人の意思によるのですか、それとも家族ですか?

【9】入院中、元気になったらどうしますか?入院から在宅ケアに変えることはできますか?
【10】在宅のみのケアも受けられますか?
【11】外来のみのケアも受けられますか?
 治 療 
【12】治療のことはどんなことでも必ず知らせて選ばせてくれるのですか?
【13】治療はまったく受けられなくなるのですか?抗がん剤、点滴や輸血はしてもらえますか?
【14】民間療法は受けられますか?丸山ワクチンは投与してもらえますか?漢方はどうですか?
【15】リハビリもしてくれるのですか?
 痛みのコントロ−ル 
【16】痛みは必ず取ってくれるのですか?どんな薬を使うのですか?痛みは入院後どれくらいで取れるのですか?
【17】モルヒネを使うということは、もうダメな時期にきているということですか?
【18】モルヒネを使うそうですが、大丈夫ですか?副作用などは?
【19】モルヒネはどういう使い方をするのですか?
【20】モルヒネはすべての痛みに効くのですか?もし効かなかったらどうするのですか?
【21】痛み以外の不快な症状もすべてケアされるのですか?
【22】QOLとは何ですか?どう評価するのですか?
 在宅ケア 
【23】どのホスピス(緩和ケア病棟)でも在宅ケアをしてもらえるのですか?
【24】在宅ケアで医師の往診は受けられますか?ナースはどれくらい訪問してくれますか?

【25】在宅ケアでの痛みのコントロールやモルヒネの投与、点滴や輸血、ほかの処置はどうなりますか?
【26】在宅ケアでの最後の看取りはどうなりますか?自宅で最後を迎えるのはどれくらいの人(割合)ですか?
【27】在宅ケアに移るのはどんな場合ですか?在宅ケア中、ホスピス(緩和ケア病棟)に一時的な入院はできますか?
【28】在宅ケアを受けるためにはどんなことが条件になりますか?
【29】在宅ケアのメリット、デメリットにはどんなものがありますか?
 ホスピス(緩和ケア病棟)での生活 
【30】ホスピス(緩和ケア病棟)での1日や1週間のスケジュールはどうなっていますか?
【31】ホスピス(緩和ケア病棟)での行事にはどんなものがありますか?行事には必ず参加しなければなりませんか?
【32】1人きりで、あるいは家族水いらずで過ごすことができますか?
【33】マイペースで暮らせるのですか?お酒も煙草も自由ですか?
【34】外出、外泊も自由にできますか?
【35】お仕着せの寝まきを着るのですか?
【36】お風呂には入れますか?週に何回、どんなふうに入りますか?
【37】かなり悪い状態でも、希望すればお風呂に入れてもらえますか?
 食 事 
【38】病院食以外の食べ物や、家から運ぶものを食べてもいいですか?
【39】食事は食べたくなるような工夫をしてくれますか?食事について栄養士さんと直接話しあえますか?
【40】家族が料理を作る設備はありますか?患者と家族が一緒に食事をできますか?
 建 物 
【41】建物は構造としてどういう特色がありますか?
【42】病室の内装・備品・機能はどのようなものですか?
【43】患者の個室として和室もありますか?
【44】騒音に悩まされることはありませんか?逆に世間と隔離されていませんか?
【45】庭はありますか、どんなふうですか?
【46】自分の居室以外(共有部分)はどんなふうですか?どのように使えますか?
 家 族 
【47】家族の付添いはどの程度までなされていますか?
【48】付添いの家族の食事はどうなりますか?
【49】家族の宿泊設備はどうなっていますか?
【50】面会時間の制限、面会人の年齢制限はありますか?
【51】ペットは飼えますか?家族が訪問時に連れてきてもよいでしょうか?
【52】患者を抱える家族の悩みにはどんなものがありますか?入院、在宅を問わず、家族の健康にも注意し、援助してもらえるのですか?

【53】入院(在宅ケア)中、家族の精神的ケアはどの程度してもらえるのですか?
 病名告知 
【54】告知を受けていなくても入院できますか?
【55】入院すると必ず告知を受けるのですか?告知を絶対にしてほしくないと家族が考えていると入院は難しいですか?
【56】ホスピス(緩和ケア病棟)では皆、自分の病名、病状を知っているのですか?
【57】患者がホスピス(緩和ケア病棟)のことを知っていて、そこに移るのを躊躇しているときはどうすればよいですか?
【58】自分ががんだと知らずに亡くなっていくことも、その人のQOLにとって大切だということもあるのではないですか?
【59】告知しなくてもホスピスケアはできるのではないですか?
【60】海外では告知はどのようになされていますか?
 宗 教 
【61】ホスピス(緩和ケア病棟)には必ず宗教的基盤があるのですか?それはキリスト教だけですか?
【62】入院後、宗教を強要されたりしませんか?
【63】キリスト教の基盤のあるホスピス(緩和ケア病棟)でお坊さんの話を聞くことができますか?
【64】宗教をもっている場合、その儀式(お祈りなど)は自由にできますか?いわゆる新興宗教を信仰していてもかまいませんか?
 心のケア 
【65】患者の逝去の際、スタッフはどこまでつきあってくれますか?
【66】死別後、遺族のケアはどの程度してもらえるのですか?
【67】ホスピス(緩和ケア病棟)での患者、家族の満足度はどうですか?

【68】「死ぬのが怖い」といってもいいのでしょうか?自分の感情を爆発させられる場所はありますか?
【69】家族が患者と別れる日を思って、悲しんだり泣いたりしてもいいのですか?
【70】家族や親しい者が患者に「さよなら」をいえるようにしてもらえますか?
【71】ホスピス(緩和ケア病棟)のチャペルで患者の家族の結婚式をあげさせてもらえるそうですが、本当ですか?
 入院手続き 
【72】入院のための相談はどこにすればよいのですか?入院に限らず、とりあえずいろいろ相談してもいいですか?
【73】治療中の病院から転院できないとき、どうすればよいのですか?
【74】どのような経路で入院する人が多いですか?
【75】入院申し込みに際し、提示しなければならない情報はどのようなものですか?
【76】入院手続きに必要なものは何ですか?また入院時、持参するものは何ですか?
 費 用 
【77】ホスピス(緩和ケア病棟)の入院には各種健康保険がきくのですか?一般病棟と比べて、費用の負担はどうなっていますか?
【78】差額ベッド代(個室料金)は一日につきどれくらいですか?
【79】入院費用のほかに雑費はかかりますか?
【80】1日あるいは1カ月の出費はいくらくらいになりますか?
【81】費用が負担しきれなければ入院できませんか?
 ホスピス(緩和ケア病棟)とは 
【82】ターミナルケア、ホスピスケア、緩和ケアの違いは何ですか?
【83】厚労省認可緩和ケア病棟とは何ですか?
【84】厚労省および都道府県認可緩和ケア病棟はどの病院にありますか?
【85】ホスピス(緩和ケア病棟)の施設の形態にはどんなものがありますか?その例もあげて下さい。
【86】日本のがんの現状(死亡者数、罹患率)はどうなっていますか?
【87】世界のホスピスの歴史はどのようなものですか?
【88】外国のホスピスと比べた、日本のホスピスの特色は何ですか?
【89】ホスピス(緩和ケア病棟)はどれくらいの広さがあるのですか?
【90】ホスピス(緩和ケア病棟)の病床数(個室、相部屋)はどれくらいですか?
【91】スタッフの数、構成はどうなっていますか?
【92】どれくらいの患者さんをお見送りしているのですか?
【93】在院日数はどれくらいですか?
【94】「死への準備教育」とはどういうものですか?どうしたら受けられますか?
 ホスピスボランティア 
【95】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアはどういう人たちですか?
【96】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアはどんな活動をしているのですか?
【97】ボランティアの人数はどれくらいですか?どのような頻度で奉仕しているのですか?
【98】ホスピスボランティアは必ずベッドサイドへ行けるのですか?
【99】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアになるのに資格、試験などはありますか?カウンセリングの勉強をしておかなければいけませんか?
【100】実際にホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアをしたい。どうすればいいですか?

 入院全般 

【1】誰でも入院できますか?
 まず、厚生大臣または都道府県知事から緩和ケア病棟の認可を受けているホスピス(緩和ケア病棟)で入院できるのは、余命が推定六か月以内のがん患者、またはエイズ患者に限られます。ここではほかの難病による末期患者は対象外となります。

 緩和ケア病棟の認可を受けていないホスピスでも対象はがん患者が多いのですが、末期であれば病名ががんでなくても受け入れているところがあります。

 ホスピスの入院基準は一様ではなく、そのほかの条件はホスピスによって異なります。以下の告知と入院の可否その他をご覧下さい。



【2】ホスピス(緩和ケア病棟)は何も治療できなくなった人が入院するところですか?寝たきりなど病状が悪くならないと入院できませんか?
 ホスピスではまったく医療行為が行われないように思われているかもしれませんが、そうではありません。いわゆる延命治療が一般的に行われることはありませんが、痛みのコントロール( 疼痛緩和)や、吐き気・嘔吐、呼吸困難など諸症状の緩和を中心とした医療行為はむしろ積極的に行われます。とくに、わが国のホスピスは、欧米のホスピスと違って、がんに対する治療行為を全面的に放棄しないことがしばしばあります。

 また、ホスピスでは、痛みのコントロールなどで患者さんが食欲や元気をとりもどし、自分で歩けるようになるケースもまれではありません。ですから、寝たきりの患者さんばかりではなく、デイルームまできて食事をとるほど元気な人の姿もみられます。痛みのコントロールが効果をあげて、入院前に予想された余命をはるかにこえて生きられた患者さんの例も認められています。

 このように、余命が短いということはたしかに病状は悪くなっているのですが、寝たきりでなければ入院できない、ということはありません。むしろ、寝たきりになる以前にホスピスに入院し、充実した最期の時をもてることが望まれます。



【3】ホスピス(緩和ケア病棟)に入院した人は皆そこで死を迎えるのですか?死ぬまで退院できませんか?
 ホスピスは、たしかに、余命の短い患者さんが入院するところですが、決して全員がそこで死を迎えるわけではありません。死ぬまで退院できないというわけでもありません。

 実際、ホスピスでは、入院後、症状コントロールがなされて、自宅へ退院される患者さんもあります。その率は、ホスピスによって異なりますが、20% 程度のところが多いようです。なかには、30% をこえているところもあります。限られたベッド数を有効に利用するために、症状コントロールがうまくいった患者さんには退院してもらい、外来通院や訪問看護で在宅ケアに移る努力がなされます。

  死亡直前の短期入院患者が約50% 、いったん症状が緩和され、退院でき、症状コントロールの目的で短期入院される患者が約20% 、在宅不可能な長期入院患者が約30% 、と報告しているホスピスもあります。

 また、あるホスピスでは入院目的に、@遠からず死が予測される患者さんのターミナルケアのほかに、A痛みその他の症状のコントロールや、B家族が介護に疲れたときなど、家族の休息のために一時的に入院するレスパイトケアをあげています。そのホスピスでは、A、Bの場合は、その目的が達成されると一時退院し、外来通院することになります。最初から退院を前提とした一時的入院も一般的に認められています。



【4】ホスピス(緩和ケア病棟)はがんの代替治療をしてくれるところですか?
 ホスピスに対し、「抗がん剤や放射線治療は効かない。もしかしたら、いまの病院ではできないといわれている○○ワクチンや○○療法をホスピスでは行ってもらえるのでは? 」といった期待がかけられることがあります。

 こうしたがんの代替療法や民間療法を、受け入れているホスピスもあります。その点では、一般病棟より柔軟性があるといえるでしょう。しかし、これらの療法は、一般病棟で通常考えられているように、ホスピスでも基本的には医学的な証明に乏しいとみています。

 代替療法は、患者さんにとって精神的心理的効果が認められる場合もあるため、ホスピスでは患者さんと十分話しあい、納得のうえで行われることもたしかにあります。しかし、それは、患者さんからの要望に基づき、ケースバイケース、かつ例外的、追加的に行われると考えたほうがよいでしよう。

 なお、より詳しくは「【14】民間療法は受けられますか? 丸山ワクチンは投与してもらえますか? 漢方はどうですか? 」をご覧下さい。



【5】告知を受けていないと入院できませんか?
 ホスピス(緩和ケア病棟)の入院にあたっては、患者本人が病名告知を受けていることが原則です。しかし、告知を受けていないと絶対に入院できないかというと、必ずしもそうではありません。

 あるホスピスでは、患者本人および家族がホスピスの趣旨を理解して入院を希望していること、と入院基準を定めています。院内の別病棟からの転院については、受け持ち医と患者さんとの信頼関係を尊重して、告知の有無をあまりせんさくし ません。しかし、ほかの病院からの紹介患者や自宅からの患者さんについては、外来の段階で、医師が病名、病状の説明を行うか、あるいは、家族がその説明を行う努力が期待されます。外来で説明ができないまま入院ということになれば、医師が病状の説明をすることを了解してほしいといわれます。

 このように、ホスピスでは、病名告知は絶対に困るという人は引き受けてもらえない場合があります。

 厳しいところでは一カ所、患者本人が、@治療が難しいがんであることを知っていること、A治癒を目的とした積極的な治療をしない病棟(ホスピス)であることを知っていること、Bホスピスヘの入棟を望んでいること、以上の三つを入棟条件としています。一方、あるホスピスではゆるやかに、患者、家族、主治医、ホスピスチームの四者が合意すること、この点だけを入院の基準としています。入院の条件として病名が告知してあるかどうかはこのホスピスでは問われません。また、入院するにあたり病名は必ずしも知っている必要はない、本人の願い、気持ち、考えに則して対応する、となっているホスピスもあります。このように、告知の有無による入院受け入れはホスピスによって幅があります。

 なお、「【54】告知を受けていなくても入院できますか? 」もご覧下さい。



【6】主治医の紹介状は必要ですか?入院の可否はどのように決められるのですか?
 ホスピス(緩和ケア病棟)により表現は異なりますが、医師の紹介状はほとんどのホスピスで求められています。あるホスピスでは前述のとおり、入院の条件に関係者四者が入院に賛成することが必要で、その四者のなかに以前の主治医が入っています。

 別のホスピスの例では、現在治療を受けている主治医の同意と紹介が必要で、主治医の紹介状を送ってほしい、あるいは、外来で入院予約がなされた時点で前病院からの紹介状をお願いしている、などとなっています。

 しかし、やや柔軟に、原則として医師の紹介状が必要とか、主治医の紹介状はあれば最良だが紹介状がなくても入院できる、となっているホスピスもあります。

 【1】、【5】 にあるような条件を満たしたあと、主治医の書いた紹介状や病状経過の概要などをもとに、入院基準委員会や入院・退院検討委員会で協議して決定したり、あるいは院内の判定委員会に諮り、入院の可否が決定されます。この委員会( ホスピスによって名称は異なります) の開催は、緊急のケースを除き毎週一回など定例的に開くホスピスと、随時行っているホスピスがあります。



【7】入院したいときにはいつでも入れるのですか?いつも満床で待たなければならないのでは?
 入院するには、前述のとおり、一定の条件を満たすことが必要です。また、ホスピス(緩和ケア病棟)側が関係委員会などを開いて入院の可否を判断しますので、そこで入院を許可されることも必要です。

 もう一つの問題は、この質問のとおり空きベッドがあるかどうかです。わが国のホスピスは、1995年3 月現在、厚労省認可14施設と都道府県認可4 施設( 合計18施設、377 床) を含めても全国でまだ30数カ所ほどしかないことを考えますと、入院希望者の数が受け入れ可能ベッド数を上回るといえるでしょう。

 現実に、ホスピスのベッドの空き具合をみてみますと、常時満床状態のホスピスもあれば、いつでも入院可能なホスピスもあります。常時満床状態のホスピスではウェイティング( 入院申し込み済みで待機中の人) も多く、一カ月くらい待たされる場合もあり、その間に最悪の状態となれば入院しないままで終わることもありえます。また、ホスピス病棟に空きベッドがなければ、同じ院内の一般病棟に一時的に入院、病室の都合がつき次第ホスピス病棟に転棟してもらう、といった対応をしているところもいくつかみられます。また、常時満床状態のホスピスでも、時期によってはすぐに入れることもあります。



【8】入院するときは本人の意思によるのですか、それとも家族ですか?
 入院の動機には質問のように、@本人の意思・希望によるもの、A家族の勧め・希望によるもの、の二つがありますが、このほかに、B以前の医師の勧め・紹介によるもの、も付け加えることができます。

 どのホスピス(緩和ケア病棟)でも一番多いのは、A家族の勧め・希望によるもの、です。これについで通常、@本人の意思・希望によるもの、がありますが、Aと@との差はそれほど多くないところもあれば、A対@の比率が70〜60% 対30〜40% と大きく開いているところもあります。しかし、なかには、B以前の医師の勧め・紹介によるものが、A家族の勧め・希望によるものより、多いところもあります。

 あるホスピスでは、A家族の希望、@本人の希望、B以前の主治医の勧めの順で多く、年を経るにしたがって本人の希望による入院の増加傾向がみられます。このホスピスではこの傾向を、告知やホスピスが次第に世間的に認知されるようになってきている事実を反映したものとみています。



【9】入院中、元気になったらどうしますか?入院から在宅ケアに変えることはできますか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)では、痛みのコントロールなどにより症状が緩和されて、元気を回復することがあります。この場合、前述のとおり症状が緩和されて退院する人もあれば、退院はむりでも、ホスピスではなく一般病棟に移るというケースもあります。もともと、ホスピスのベッド数は限られています。また、緩和ケア病棟の認可を受けている場合は、入院の条件に余命が推定6力月以内と短いことという一項があり、回復の認められる患者さんに長くホスピスにいてもらうわけにはいかないのです。なお、退院または一般病陳へ移ったあと、病状が再び悪化したらホスピスヘ帰れるようになっていることは、いうまでもありません。

 また、あるホスピスの例では、入院患者の約25%が症状コントロールができて在宅ケアにきりかえられています。症状が改善されれば、外泊も退院も可能で、退院後ホスピス外来に通院したり、在宅電話サービスを利用して、気軽に相談ができるようになっているところもあります。



【10】在宅のみのケアも受けられますか?
 ホスピスケアにおける在宅ケアとは、在宅を望む患者さんが家族のケアや医療スタッフ訪問によるケアを受けることです。

 在宅ケアは、すべてのホスピス(緩和ケア病棟)が行っているわけではありませんが、システムができているところであれば、もちろん在宅のみのケアも可能です。

 また、実施しているところも、その対象は、ホスピスから症状が緩和して退院した人などに限定しているところが大半です。

 一方、ホスピスという施設をもたないで、在宅ホスピスケアや訪問看護を専門に行っているところがいくつかあります。ここは会員制になっており、かつ、距離的にそう遠くない一定の地域に住んでいる人でないとケアを受けられないという制約があります。一般的傾向として、可能であれば在宅で最期を迎えたい・看取りたい、という希望が強くなってきています。政府もこれを支援する意向と計画を示していますので、今後、在宅ケアヘの動きが盛んになるものと思われます。なお、アメリカのホスピスは在宅でのケアが中心となっています。



【11】外来のみのケアも受けられますか?

 一般的には可能です。外来のケアは、「ホスピス科外来」などの名称のもとに、ほとんどのホスピス(緩和ケア病棟)が行っています。週1回のところが多いのですが、週2回のところもあります。ホスピス担当医師などホスピスのスタッフが担当します。患者さんや家族とじっくり話しあえるよう、ホスピス外来は予約制としているところが多いようです。定期的な曜日や回数を定めず、申し込みに応じて適宜、ホスピス外来を行っているところもあります。

 毎週1回、外来診療を実施しているあるホスピスでは、受診者数は毎週約20名で、ここ数年間は毎年約900名にのぼっている、と報告しています。

 しかし、一部のホスピスではホスピス専門の外来を設けず、一般外来での診療に含んでいるところもあります。また、一般病院とは独立してホスピスだけを運営しているところでは、外来は一切行っていません。

 このホスピス外来を経てホスピスヘ入院するということがあります。その場合、病歴や経過がホスピス側に大変よくわかっていますから、入院経路としては理想の形といえるでしょう。このほか、外来でも十分症状コントロールが可能な人や入院を望まない患者、ホスピス退院患者などがホスピス外来に通院しています。




 治 療 

【12】治療のことはどんなことでも必ず知らせて選ばせてくれるのですか?
 一般病棟で治癒を目的に進められる医療では、目標達成の専門的手段を熟知している医師を信頼し、お任せするということが多いと思われます。また、それが必要なこともあるでしょう(無論、それも合意のうえで進められるべきですが)。これに対し、ホスピス(緩和ケア病棟)は、あくまで患者さんが主人公となって生きるところです。患者さんは、自分の身体の状態を正しく知り、自分の身体のうえに何がなされるかを知り、これからどうなってゆくかを知り、そのうえでどうありたいかを自分で選ぶことになるのです。このことも、告知を受けていてこそ可能になるのはいうまでもないことです。

 余命が短いことを知っているので、患者さんは、その時その時の自分のあり方を、他人( 医療者)に勝手に決められるのは困ると考えるはずです。ホスピスでは、患者さんの意思を無視して医療行為をすることはありません。必要な医療について、患者さんとその家族とよく話しあって、納得のうえで治療やケアが行われます。その内容・意義・効果などについて詳しい説明を受け、提示された選択肢のなかから最も納得のいく方法を選択する、インフォームド・コンセント( 説明に基づく合意) およびインフォームド・チョイス(説明に基づく合意と選択) は、ホスピスケアの基本の一つだといえます。



【13】治療はまったく受けられなくなるのですか?抗がん剤、点滴や輸血はしてもらえますか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)では延命治療は原則として行われません。しかし、患者さんの苦痛を緩和するための医療行為は積極的に行われます。その意味で、治療が受けられなくなるということはありません。場合によっては、症状コントロールのために抗がん剤が使われることもあります。ただし、その目的は、あくまでもがんの治癒ではありません。点滴(栄養よりもむしろとくに水分補給のための点滴) や輸血も、症状コントロールのうえで必要な場合には、適切に行われます。


 いわゆる“身体中管だらけ”といった状況がありますが、ホスピスでは、必要以上に治療のためのチューブ挿入が行われることはありません。しかし、患者さんの症状を緩和するために、ある種の挿管が必要な場合には行われます。

 実際に、いろいろなホスピスの考え方をみてみますと、いずれも、延命治療は原則として行わないとしていますが、たとえば次のように柔軟な対応がなされています。

・現実には病名を知らない患者や、延命を強く望む家族のために、点滴などの治療を行う場合はある。副作用の強い抗がん剤の投与はほとんど行われない。

・患者・家族の実態( 病名告知や要望など) 、医師との合意および病状次第で、希望によってはできるかぎりの延命治療も行う。

・がん病変自体に対する治療は行わないが、症状緩和に必要な措置は可能なかぎり行う。たとえば胃瘻(食道バイパス手術) や人工肛門の造設、神経ブロックなどは可能なかぎり行う。輸血は一定の状態(Hb8g/dl 以下)で貧血による症状があること、また、高カロリー輸液(IVH=中心静脈栄養)は、@一カ月以上の余命が見込まれ、Aある程度栄養状態の維持・改善が可能であり、B胸水、腹水などがないことを基準として行っている。

・延命治療は行われない。ただし、患者の苦痛を緩和するための処置の範囲で、主治医の判断のもとで、対症的に化学療法、放射線照射療法、あるいはIVH(中心静脈栄養) が行われることはある。

・患者の希望があれば高カロリー輸液も輪血も行うが、患者が嫌がるのであれば、経口摂取が少なくても末梢輸液( 点滴)もしない。

 実際に、化学療法や放射線療法などの治療はどの程度行われているのでしょうか。あるホスピスでのデータでは、化学療法は退院患者の10% 、放射線療法は17% に実施され、放射線療法(17%)22名のうちの16名は骨転移の痛みなどに対する姑息的な照射であり、がん自体に対する治療は必要最小限にとどめられた、と報告されています。



【14】民間療法は受けられますか?丸山ワクチンは投与してもらえますか?漢方はどうですか?

 民間療法や丸山ワクチン、漢方などは、ホスピス(緩和ケア病棟)により原則的に受け入れているところと、原則的に受け入れに否定的なところとがあります。数としては、原則的に受け入れるほうがやや多くなっています。


 原則的に容認の態度をとっているところでは、まず、本人、家族の望むものであれば、ほとんど受け入れています。例外としている部分については、医学常識をこえないかぎり、あるいは、医学的に害のないかぎりできるだけ受け入れるようにしている、とか、患者自身の負担にならず、患者や家族が自分たちで行えるものはやっていただいている、とか、患者に明らかに有害と思われるもの、ほかの患者の療養に障害となるようなものは現場での判断により許可しないこともある、などとなっています。これらをうまく整理した形で、患者さんや家族の希望がある場合には、@患者・家族の責任において行うこと、A病状に著しい弊害をもたらさないこと、Bほかの患者に迷惑をかけたり、薦めたりしないこと、C施設・構造物等に影響を与えないこと、の条件のもとに実施を容認することがある、と定めているホスピスもあります。

 いずれも表現が違っているだけで、基本的には同様に扱われていると考えてよいでしょう。それらは心理的効果を期待して許可されていると思われます。

 他方、原則的に否定的な態度のホスピスもあります。この場合、いずれも原則的には受け入れていないとしながらも、あるホスピスでは、患者および家族の要望があれば、必要に応じて相談にのる、という態度をとっています。また、患者側の希望があれば反対はしないで続行することがある、というところや、明らかにデメリットになるようなものでなかったら患者の希望があれば受け入れは可能、となっているホスピスもあります。



【15】リハビリもしてくれるのですか?

 末期がんの場合、麻痺とか筋力低下とか、関節の動きが悪くなるなどの症状に対して、理学的なリハビリテーションが有効なことがあります。しかし、それはあくまでも症状コントロールの一部であって、治療として積極的に行われることはありません。また、そうした症状が、がん以外の合併症が原因で起きることもあります。そのような場合にも、リハビリテーションが効果をあげることがあります。とくに、麻痺については、放置すると床ずれの誘因になりますし、マッサージなどが有効なことがあります。それぞれの症状に応じて対処されます。床上リハビリテーションとして、理学療法士に訪室してもらい、マッサージや理学療法が行われることもあります。

 実際に、あるホスピス(緩和ケア病棟)におけるリハビリの実績をみてみますと、1987年6月から93年12月までのあいだに、のべ400名近い患者さんに理学療法によるアプローチを実施しています。その内容は、疼痛や苦痛の緩和のためのリラックスできるポジションの設定や(これが中心となります)、浮腫(皮下組織に水分がたまることによるむくみ)の治療、電気刺激療法、軽いストレッチなどです。日常生活動作の改善として、座位、車椅子、歩行器・杖歩行、階段などの訓練を、筋力強化ではなく介助法などを中心にした指導が行われています。


ホスピスニュ−ス要覧−治療

ホスピスニュ−スの中から「治療」に関するものをまとめてあります。




 痛みのコントロ−ル 

【16】痛みは必ず取ってくれるのですか?どんな薬を使うのですか?痛みは入院後どれくらいで取れるのですか?

 ホスピスケアの役割のなかで、最も重要なことの一つは、痛みのコントロールです。痛みから解放されれば日常性を回復できます。安眠できるようになり、食欲が増進し、全身倦怠感も楽になります。そうなれば、残された時間をどう生きたいかを積極的に考えられるようにもなるでしよう。

 病状がある程度進行した場合、副作用の強い抗がん剤をやめ、苦痛の緩和に徹するほうが、結果的には延命効果があることも、経験上知られています。

 非常に進行したがん患者のうち約70% が訴えている主な症状は、痛みです。そのうち約30% は、治療を受けてもなお激しい痛みを訴えています。また、がんの痛みは80%が同時にニカ所以上に起こるため、全身投与の鎮痛薬が必要です。がん性の痛みを取るための鎮痛薬は、WHO(世界保健機関) 方式により三段階に分けられ、痛みの強さに応じて使用されます。第一段階の弱い薬は、アスピリンなどの非麻薬系の経口薬です。第二段階では、同じく非麻薬系の薬で、ブプレノルフィンなどが投与されます。第三段階では、麻薬のモルヒネが使用されます。実際の治療にあたっては、必ずしもこの順番ではなく、強い痛みを訴える患者さんには最初からモルヒネが使用されることもあります。

 ホスピス(緩和ケア病棟)入院時に強い痛みがある場合には、入院後ただちにまず鎮痛療法が開始され、通常、その日のうちに緩和に向かいます。しかし、モルヒネを使用する場合には、初回に多量を使えず、少量から始めて徐々にその量を増やすことになるため、ほかの鎮痛薬を併用しますが、痛みが消失するには、数日を要することがあります。

 なお、WHO 方式とは、終末期のがん患者から痛みを取る方法について、WHO が1982年に定めたものです。@痛みが出たそのときに治療するのではなく、痛みをまったく忘れさせるために、一日のなかで一定の時刻を決めて鎮痛薬を投与する、A薬の効き目の弱いものから強いものへ段階的に選ぶようにする、の二つの原則が示されています。



【17】モルヒネを使うということは、もうダメな時期にきているということですか?

 初期のがんでもかなりひどい痛みが起こり、そのためにがんが発見されることもあります。反対に、がんが相当に進展しても、痛みを感じないこともあります。がんの種類や、がんのできている場所や、がんの進展度などによって、痛みの起こり方はまちまちなのです。しかし、一般には、がんの病状が進展するにしたがって痛みも強くなるのが普通です。末期がんの場合、モルヒネを使わないと痛みが取れないような激痛が起こる場合が多くなります。

 しかし、実際は、とにかく痛みがそれだけ強ければ、早い時期にもモルヒネは使われますし、使われるべきなのです。もう手の施しようがなくなってから、ようやく鎮痛に注意が向けられる、というまちがった現状がこうした誤解を生んでいるようです。

 モルヒネの使用と病気の予後とは直接の因果関係はありません。質問のような心配は不要といえるでしょう。



【18】モルヒネを使うそうですが、大丈夫ですか? 副作用などは?

 モルヒネは、ケシの果殼から採るアヘンから抽出され麻薬中毒の元となることから、その使用は、とくにわが国の医療では、伝統的に差し控えられてきました。しかし、モルヒネは大変効果的な鎮痛剤で、がんの治療に使用しても中毒になるということはありません。

 事実、WHO方式によるがん性疼痛治療薬の柱はモルヒネです。わが国の厚労省も、がん患者の疼痛緩和のために、医療用モルヒネについては医療者が使用しやすいように努力しています。1990年には、使わなくなったモルヒネの廃棄を、それまでの許可制から届け出制にきりかえました。また、患者さんがモルヒネを持参して飲みながら外国旅行をすることも可能になりました。91年4月には、患者1人あたり1日60mgという使用制限も廃止されました。

 薬には主作用と副作用があります。主作用とは人間が薬に期待する作用であり、副作用とは人体に対して不利となる作用のことです。たとえば、モルヒネには腸の動きを鈍くする作用がありますから、便秘が起こります。それは、便秘を期待する場合(下痢を止めたいなど)には主作用となり、鎮痛作用のみを期待する場合には副作用となるわけです。

 モルヒネは非常に不思議な薬剤で、人体に対していろいろな影響を及ぼします。その作用のなかで鎮痛作用だけを利用したいのです。ですからこの場合、モルヒネが有している鎮痛作用以外の薬理作用はすべて副作用と呼ばれるのです。その点を理解しないと、モルヒネは副作用が強いから使いにくいとか、恐ろしいとかの評価がなされてしまいます。モルヒネの優れた鎮痛効果をあげるためには、その副作用対策を上手にする必要があります。

 また、このモルヒネにはほかの薬と異なる特徴があり、それを理解することが副作用対策には重要です。その1つは、薬に慣れてくるということです。たとえば、副作用についても、少量投与から段々に量を増やしていけば、その発現が比較的少なくてすむのです。薬に慣れて、副作用が出にくくなるのです。したがって、緊急の使用でないときには、少量から始めて少しずつ増量していき、痛みが取れるところまで増やすという方法が原則となります。急に多量を投与すればそれだけ副作用も強く出ます。

 もう1つの特徴は、モルヒネは少しずつ増量すれば、際限なく増やせるということです。ですから、痛みが取れるまで十分に多量のモルヒネを投与することができるようになるのです。この2つの特徴をよく理解しないと、副作用を恐れてモルヒネの使用を拒否するという事態が起こります。

 鎮痛を目的とした場合、モルヒネの主な副作用は、便秘、吐き気、眠気(幻覚)の3つです。

 便秘に対しては下剤の併用が必要です。下剤は種類によって、その作用のメカニズムが異なります。モルヒネを使用した場合に生ずる便秘にもいろいろの原因があります。原発(1番最初)のがんの種類やその病状も関係しています。食事摂取の状況も問題となります。全般的な判断のもとに、どんな種類の下剤をどのくらいの量使えばいいのかが決まります。したがって、下剤を上手に使えばモルヒネによる便秘の副作用は心配ありません。

 吐き気はモルヒネの主作用の1つでもあります。本来、モルヒネは毒を飲み込んだとき吐き気を催させる薬として使われていました。催吐剤と呼ばれています。しかし、前述のように、鎮痛療法にとっては吐き気は最も厄介な副作用ということになります。

 吐き気、嘔吐には個人差があり、出る人と出ない人とがあります。30%くらいの患者にみられる、というデータもあります。症状により4、5日から10日、あるいは2週間くらいでおさまることが多いのですが、はじめから吐き気を抑える制吐剤を併用すればたいてい解決します。

 眠気は30〜50%の患者さんにみられ、通常は3〜5日様子をみていると、一般に落ち着きますが、症状が強い場合には眠気止めの薬の併用により対処することができます。

 眠気と同時に夢心地という感じで、幻覚症状が出現することもあります。モルヒネの量が少量のときにはほとんど出ませんが、モルヒネを増量する段階で急に多量のモルヒネを使用しますと、幻覚が出現する場合があります。しかし,その頻度はあまり多くありません。なお、モルヒネによる耽溺とか中毒という精神的依存は、痛みをもっているがん患者にはほとんど起こらないといわれています。



【19】モルヒネはどういう使い方をするのですか?

 嘔吐のある患者さんなどを除くと、モルヒネは基本的には経口投与されます。経口薬としては、水薬と錠剤があります。また、そのほか、腸閉塞、衰弱、嘔吐などで経口投与が困難な場合、直腸に挿入する座薬を使用することができます。座薬が使えない場合には、注射を行います。

 注射には、痛み止め1回分の量を皮下注射する方法(急激な痛みや検査などに備えての急速な痛み止めに有効)、点滴の際モルヒネを加えて静脈内に注入して投与する方法(点滴を行っている場合には、使い易い方法)、持続皮下注入器で持続的に投与する方法(薬剤の内服が困難な場合や、頻繁に注射などの非経口投与が必要な場合に小型の携帯用ポンプを使用、患者の行動が制限されないなど多くのメリットがあり、ホスピス(緩和ケア病棟)では一般的に行われています)などがあります。なかでも、最近では血中濃度が一定に保たれるような持続皮下注療法が確立され、副作用が少なく、有効な鎮痛療法として広く利用されています。

 モルヒネ水薬の使用については、原則的には4時間毎に1日6回の投与が理想とされています。通常、起床時・就寝時・このほか4回の投与となります。しかし、回数が多いとなにかと煩わしいということがあって、6時間毎にして1日4回の使用が一般に行われるようになりました。その効果には差がないようです。

 現在、日本で使用されているモルヒネの錠剤は、MSコンチンと呼ばれています。この錠剤には特殊な工夫がされており、薬を飲むと腸のなかで薬が少しずつ溶けて、徐々に血液中に吸収されるようになっています。12時間毎に使用すればよいことになっていますので、1日に2回だけの服用ですみます。わが国では1錠中のモルヒネ量として、10mg、30mg、60mgの3種類があります。

 初回は通常、水薬として投与され、用量は少量、一般には1回5〜10r(1日15〜30mg)から開始されます。多くの場合、1回5〜10rで十分とされています。  

 前述のようにモルヒネは使用量についての上限がないのが特徴で、1日6000mgをこえて投与された例もあります。

 モルヒネの使用は疼痛評価にしたがって行われます。病状に対して適切なモルヒネの使用が行われるように、常時、疼痛評価がなされ、使用方法、使用量などの検討が行われています。あるホスピスでは、モルヒネ服用量を増量した場合、その効果の評価を24時間後に行っています。



【20】モルヒネはすべての痛みに効くのですか?もし効かなかったらどうするのですか?

 がん患者のうち30% には痛みが出現しません。痛みが出現する70% のがん患者については、一般に、がんそのものに由来する痛みは70% 、治療に関係する痛みが15% 、がん以外のいろいろな原因に由来する痛みが15% であるとされています。


 がんへの不安によって増強した疼痛に対しては、モルヒネだけでは痛みが取れないこともあります。モルヒネは90% の患者さんについて完全除痛できますが、残りの10% の患者さんについては軽減可能でも完全除痛はできない、というデータもあります。

 モルヒネは最も強力なオピオイド系鎮痛薬です。しかし、すべての痛みに効くとはいえない場合があります。それは痛みの種類によります。

 モルヒネ投与にあたっては、がんによる痛みの分析が必要です。概略、三種類に分類することができます。

@持続する痛み−これは内臓や軟部組織に由来する痛みで、モルヒネがよく効きます。

A一定しない痛み−これは骨への転移による痛み、神経系の痛み、胸膜の痛み、腸閉塞などに由来する痛みで、これに対してはモルヒネの効果はやや劣ります。たとえば、骨盤内腫瘍( 直腸がん、子宮がん) 、パンコースト型肺がん(Pancoast 症候群、特有な激痛が出現するので有名な肺がんの一種) などでは、神経にがん細胞が直接に浸潤して疼痛が起こり、また胸椎や腰椎への転移があると体動時に痛みますが、こうした症例では、モルヒネの効果が弱いことがあります。


B間欠的な痛み−これはがんに付随した別の原因による痛みで、モルヒネ以外の特定の治療による鎮痛が必要となります。



【21】痛み以外の不快な症状もすべてケアされるのですか?

 入院時に患者さんが何を辛いこととして訴えられるかというと、痛みが群を抜いて多いのですが、このほか、食欲不振、全身倦怠感、呼吸困難、不眠などがあります。


 ホスピスケアの重要な役割の一つは、このようなあらゆる症状を緩和することです。基礎疾患による症状が、どのようにして出現しているかを見極めたうえで、それぞれの症状に対して適切なケアが行われます。

 入院された方の大半は激しい痛みを抱えて来られるわけで、まずはその疼痛除去に全力が払われます。しかし、痛みが数日で取れると、患者さんはその「痛みがない」という快適さに満足されて、いろいろな日常生活への希望を出されるようになります。

 座って食事がしたい、座ってトイレがしたい、車椅子で散歩がしたい、等々。

 その際、そのことの妨げになる不快な症状があれば、できるだけそれを取り除くよう努力がなされます。親しい者との面談も望むでしょう。たとえば、口臭がきつくてお孫さんが寄りつかなかった患者さんを、ナースが頻繁に手当てすることで口臭がなくなり、お孫さんが喜んで訪ねて来られるようになった、という話もあります。

 日々、患者さんの身体がままならなくなることの切なさを少しでも減らそうと、ホスピス病棟のスタッフは細やかに心を遣っています。



痛みを癒す モルヒネを使いこなす 高宮有介(医師・昭和大学緩和ケアチームリーダー)著書「がんの痛みを癒す」小学館発行から、著者の許可を得て掲載しました。
ホスピスケア・資料2 症状コントロ−ルの実際が載っています。
ホスピスニュ−ス要覧−痛み
ホスピスニュ−スの中から「痛み」に関するものをまとめてあります。




【22】QOLとは何ですか?どう評価するのですか?

 クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life)の略で、一般に生活の質とか生命の質と訳されています。末期の方についてのみとか、ホスピスケアにおいてのみ問題になる概念ではなく、あらゆる人の人生のあらゆる段階を対象にするものですが、ここではとくにホスピス(緩和ケア病棟)における患者さんのQOLについて述べます。

 この点をとくに研究しているあるホスピスでは、QOLとは、「“よりよく生きる”ための条件がいかに整っているか〈人格としての患者の人生の可能性(選択の幅)がどれほど広がっているか〉」とし、QOLが高いとは、「その可能性がより広がっていることを意味する」としました。そしてその評価基準に以下のことをあげています。

 患者については、@患者の苦痛が和らぎましたか、A患者は身体の機能を保てましたか、B患者の社会生活を助けられましたか、@患者の入院中の人生は満足でしたか、D患者に孤独感を感じさせていませんか、E患者が良い看護を受けたと満足でしたか。

 家族については、@家族を健康に保てましたか、 A家族は看護に満足したでしょうか、B家族の悲しみを理解できましたか。

 そして、これらの5段階評価を行っています。こうした視点から、QOL質問表を作り、食欲、気分、睡眠、痛み、吐き気・嘔吐、その他具合の悪いところ、気持ち、テレビ・ラジオ、本などを楽しめるか、医師・ナースとの関係は満足か、日常生活はどうか、について2週間間隔で尋ね、その結果を活用するようにしています。

 このようにホスピスにおけるQOLは日常生活に直結したものですが、ほかにもQOL尊重のホスピスらしい1例に、もういよいよ末期の患者さんが退院を希望、家族も家で看取りたいと希望した場合に、退院が許可されたケースがあります。退院は命を縮める可能性があることもありますが、入院を続けていてもあと数日ほどの命と考えられることから、病院におけるよりもより貴重な時を過ごせる自宅への退院が許されたわけです。事実、このケースでは患者さんは数時間後に亡くなられましたが、自宅で最期を迎えることができ、家族の方にも大変感謝されたとのことです。



 在宅ケア 

【23】どのホスピス(緩和ケア病棟)でも在宅ケアをしてもらえるのですか?

 在宅ケアは、すべてのホスピスで行われているわけではありません。厚労省認可14施設のうち、在宅ケアを実施しているのは10施設で、このなかには在宅ケアを中心とするホスピスが一カ所だけあります。残りのうち、一施設は地域開業医や訪問看護ステーションなどに依頼したり、地元医師会と協力体制を作っています。ほかの三施設は未実施です。在宅ケアの対象は、ホスピスによって、市内のみ( この場合、病院から15-20 kmが訪問圏とされています) とか、ホスピスから車で30分圏内、約5 km以内の範囲などとされています。

 患者さんの人数は常時二、三名とか五、六名、九名などでそう多くはありません。また、その対象者は通常、ホスピスから症状が緩和して退院した患者さんや外来通院から在宅ケアにきりかえた患者さんで、最初から誰でも直接在宅ケアを受けられるというシステムにまでは至っていません。



【24】在宅ケアで医師の往診は受けられますか?ナースはどれくらい訪問してくれますか?
 
 医師の往診は、原則として行っているところとそうでないところとがあります。在宅ケアで原則的に医師が訪問している場合、その訪問回数は、隔週と決められていたり、病状によって臨機応変に変えたりと、ホスピス(緩和ケア病棟)によって異なります。

 原則的に医師が訪問しないホスピスでは、ほとんどのところで、通常、訪問はナースが担当しています。医師は、ふだんは訪問せず、急変時や臨終時には受け持ちナースからの連絡を受けて患家に急行、夜中でも必要に応じて往診するというホスピスもあります。

 ナースの訪問回数ですが、毎週1〜2 回平均のところがいくつかありますが、病状によっては連日、ときに午後再訪問することもあれば、5 日〜1 週間に一回の訪問ですむ人もいる、と報告しているホスピスもあります。


作成者注釈) 介護保険のサービスも受けられます。2006年4月から、「がん末期」と医師が診断した場合には、40歳以上65歳未満の人でも、ヘルパーの訪問による介護サービス、療養通所介護、訪問在宅入浴などの介護保険サービスが受けられます。


社団法人全国訪問看護事業協会
 訪問看護とは?
訪問看護について詳細に記載されています。
社団法人全国訪問看護事業協会
 訪問看護ステ−ション
全国の訪問看護ステ−ションを掲載しています。
医師会立訪問看護ステ−ション 全国の医師会立訪問看護ステ−ションを掲載しています(不明もあります)。




【25】在宅ケアでの痛みのコンロールやモルヒネの投与、点滴や輸血、ほかの処置はどうなりますか?

 痛みのコントロールが十分に行われるということが、在宅ケアを可能にする大切な条件の1つになります。それは、モルヒネの投与もできることを意味しています。

 前述のように、モルヒネの使用は、それぞれの患者さんの病状によって方法や使用量が異なります。経口剤や座薬の場合には、外来通院によって最大2週間分のモルヒネが処方されますので、在宅で痛みのコントロールができます。持続皮下注入の場合には、その注入量によっては頻繁に注射器交換が必要となります。ナースに注射器につめたモルヒネをもってきてもらって交換するか、外来にとりに行くかは、施設によって異なります。一般には、在宅ケアで、持続皮下注入器によるモルヒネ使用は困難な場合が多いでしょう。

 点滴や輸血に関しては、原則として、近くの開業医・家庭医などの往診を受けなければ実施はできません。どれだけ頻繁に来てくれるかが問題となります。

 あるホスピスの例を紹介します。ここでは通常、訪問はナースのみで、特別なとき以外は医師は訪問しません。したがって、在宅ケアで胸水穿刺(針を刺して胸水をとること)や腹水の穿刺が必要になった場合には、外来に通院してデイケア(日中のみのケア)とか、ショートステイ(短期間入院)などのケアで対処されています。



【26】在宅ケアでの最後の看取りはどうなりますか?自宅で最後を迎えるのはどれくらいの人(割合)ですか?

 自宅で死を迎えることができれば理想的でしょうが、その実現には多くの制約が存在します。

 患者さんが在宅ケアを希望し、これを受け入れる家族の体制が整っていること、苦痛のコントロールが自宅で可能で、激しい痛みや強い呼吸困難などは予想されない症状であること、病状が急変した場合などの、緊急時にいつでも専門家、特に医師の往診が可能であることなどの諸条件が満たされて初めて在宅死が可能となります。このうち最も重要な条件は、死亡時に往診してもらえる医師の確保です。

 死亡確認は、医師法で医師がしなければならないわけですが、実際には在宅で末期がんの患者さんをケアしていて、病状が悪化、患者さんが死亡した場合には、医師でなくても家族がその死亡確認することはきわめて容易なことです。在宅で患者さんの死を看取ることになるのは、患者さんの家族です。医師による死亡確認はその後になる場合が普通です。特に夜間、深夜などの時間帯では、場合によっては、翌日の適当な時間に医師の訪問を受けることになります。

 あるホスピス(緩和ケア病棟)では、原則として深夜の臨終時には往診せず、家族がその死を看取り、翌日、ホスピス側が死亡確認に訪問するようになっています。ここでは、家族に、臨終間近に起きてくる症状の変化については、十分前もって説明し、家族合意の下にこの様な対応をしています。家族の不安が強く在宅死が困難な場合は、入院となります。

 自宅で最期を迎える人の割合ですが、あるホスピスの例では、在宅ケアを受けた患者さんのうち約半数が在宅で死を迎えています。残りは在宅ケアから病状悪化に伴い入院、ホスピスで死を迎えています。別のホスピスでは、8年間の訪問看護約130名のうち、在宅で亡くなったのは16%、残りの84%はホスピスで最期を迎えたと報告しています。



【27】在宅ケアに移るのはどんな場合ですか?在宅ケア中、ホスピス(緩和ケア病棟)に一時的な入院はできますか?

 現在、以下のような場合、ホスピス入院から在宅ケアにきりかえています。

 1つは、病状が緩和し、諸条件が満たされて、自宅で生活が可能となった場合です。もう1つは、在宅死を望む場合です。後者では、近隣の開業医・家庭医の協力を仰ぐ必要がありますので、これらの医師の了解があり、死亡時の往診をしてもらえ、死亡確認とともに死亡診断書を書いてもらえるということが、最低条件として求められます。いずれの場合も、訪問看護をしてもらえることが大前提となります。訪問看護では患者さんの住居とホスピスとの距離が問題となります。遠距離では訪問が困難です。

 在宅ケア中のホスピスヘの一時的な入院ですが、これは可能です。患者さんの病状が在宅ケアでは対応しきれなくなった場合や、患者さんや家族の不安が強く、入院を希望する場合には、在宅から入院にプログラムが変更されます。そして、問題が解決され、在宅でのケアが可能になったときは、患者・家族の希望によって再び在宅ケアに戻ることかできます。



【28】在宅ケアを受けるためにはどんなことが条件になりますか?

 症状が軽いか、重いかで、取り組み方が違いますが、ここでは重い場合について述べます。

 症状が重い場合には、がんによる死亡を家庭で看取る(最期は看取りきれなくて入院というケースもありますが)ということになリますが、これには次のような条件が満たされることが必要と考えられています。

@医療・看護の体制が整っていること

 訪問看護の体制がきちんとできていることや、往診が可能な開業医・家庭医があることが条件となります。つまり、がん末期特有の症状に対応可能であること。とくに、痛みのコントロール、突発的な出血や呼吸困難、そのほかの急変を処置できる体制が整っていることが必要です。しかし、現状では麻薬免許を申請していない開業医に世話になる場合には、モルヒネの使用ができませんので、在宅ケアでの痛みのコントロールが不十分になることがあります。また、24時間いつでも医療関係者と連絡がつくようになっていることが必要です。自宅とホスピスとの距離が遠くないことも望ましい条件です。

A家族に支える力があること

 現在は核家族化が進んでおり、専業主婦も減少、なかでも老人2人の所帯では家庭での介護にさける家族の手が足りません。この介護力の問題が解決されていることが必要です。家族の意識(在宅介護の価値を認めていること)、家族との人間関係なども重要です。

B十分な居住空間があること

 1人の人が布団を敷きっ放しにしておいて、ずっとケアを受けられるような居住空間のある家庭でなければ、在宅ケアは困難でしょう。お風呂やトイレなどの改造、改装ができるような住宅構造であることも望まれます。

C経済的基盤、社会制度・支援サービスが整っていること

 介護者が勤めをもっている場合、自宅で介護に専念するために勤務を休めるか否か(勤務先に介護休暇制度があるかどうか)、あるいは勤めを辞めた場合、経済的に大丈夫かどうか、という問題があります。また、その人が生活をしている地域に自宅での介護を支える制度やサービスがどれほど充実しているかということも重要です。

 以上の条件は容易には満たされず、日本での在宅ケアはなかなか困難な状況といえます。



【29】在宅ケアのメリット、デメリットにはどんなものがありますか?
 
 在宅ケアのメリットには次のような点があげられます。

 痛みのコントロールに関しては、トータルペイン( 身体的痛みのみでなく、精神的痛みも含めた全体の痛み)の緩和は、家庭のほうが優れています。住み慣れた家で家族に囲まれた生活には、安定感があり、鎮痛剤に頼らなくてもすむことが少なくありません。身内だけでわがままがきき、医療スタッフなどの第三者に気を使わなくてすむことが、ひいては痛みを感じさせないことにつながることもあります。

 一方、在宅ケアには以下のようなデメリットがあります。

 在宅ケアを希望する場合に、最も問題となるのは、その時点での患者さんの病状の重症度です。症状が軽症で、本人の苦痛が少なく、日常生活を健康人とほとんど変わりなく送れるようなときには、自宅で過ごすのにあまり支障はないでしょう。

 症状が重い場合には、その症状緩和のための処置を家庭内でできるかどうかが問題となります。家族の介護の手が十分にあり、痒い所に手が届くようなケアができるのであれば、患者さんの苦痛は軽減されると思われますが、手に負えないような激しい症状が出現する場合には、それらに耐えられるような覚悟が必要となります。緊急事態にすぐには対応できませんから、症状の変化に対して、不安や恐怖が増えるのは止むを得ないことになります。そのあたりが、在宅ケアのデメリットになるでしょう。

 とくに、在宅で死を迎えるときには、家族に囲まれて最期の別れができますが、その際には、普通は主治医不在の場合が多いため、緊急事態への対処ができません。家族で死を看取る心構えが十分できていないと、あわてたり、場合によっては救急車を呼んでしまったりということもありえます。死を迎える準備が整えば、在宅死は理想的だといえるでしょう。もし、死亡確認をしてもらえる医師が不在の場合があるとすれば、在宅ケアのデメリットの一つとなるでしょう。



ご自宅で療養したいと希望しているがん患者さんとそのご家族の方々のために開設されたものです。
日本ホスピス・在宅ケア研究会 全国の在宅医が網羅されています。

基調講演 『うちで死にたい』 
講師 高宮有介 先生  昭和大学病院緩和ケアチームリーダー医師

ホスピスニュ−ス要覧−在宅ケア

ホスピスニュ−スの中から「在宅ケア」に関するものをまとめてあります。




 ホスピス(緩和ケア病棟)での生活 

【30】ホスピス(緩和ケア病棟)での1日や1週間のスケジュールはどうなっていますか?

 あるホスピスの例を紹介しましょう。

・起床時間 6時

・食事時問 朝食 7時30分 昼食 12時 夕食 18時

・検温時間 14時 および必要時随時

・消灯時間 21時

・入浴時間 9時〜18時

・入浴日 火・金曜の午前中を除く毎日、火・金曜の午前中は全介助の人の入浴時間。

・ティータイム 火・木・金曜の15時からデイルームで、参加できない人には病室までワゴンサービス、ただし、金曜日はチャペルタイムのあと15時30分ごろから開始。

・チャペルタイム 月・水・金曜の15時からチャペルでチャプレンによる礼拝、自由参加、室内からイヤホーンで聞くことも可能。

 1日のスケジュールはあくまで目安で、患者さんの要望に応じてかなり弾力的に対応しているホスピスもあります。たとえば、あるホスピスでは朝遅い人は12時、13時まで自由に寝ていてもよく、午前中の医師の回診などもよほどのことがないかぎりありません。ここではその人の生活に合わせています。夜も消灯時間は一応あっても、いつまでも起きていてもかまわないというわけです。



【31】ホスピス(緩和ケア病棟)での行事にはどんなものがありますか?行事には必ず参加しなければなりませんか?

 まず、行事への参加・不参加は興味や体調によってまったく自由です。実際、どの行事もすべての患者さんが参加されるわけではありません。

 ホスピスでは、患者さんの生活をなるべく家庭の生活に近く、変化や季節感に富んだものとするために、ほとんど毎月のように次のようなさまざまな行事が行われます。

 3月 ひな祭り  4月 お花見、イースター  5月 端午の節句、母の日  7月 七夕 8月 納涼祭り  9月 敬老会  10月 お月見 11月 文化祭 12月 クリスマス  などです。

 どのホスピスもこれらすべてを行っているわけではありませんが、これらのうちのいくつかの行事を盛んに行っています。1、2カ月に1度はなんらかの行事があるという感じです。車椅子、リフトバスなどを用いて遠足を行っているところもあります。

 これら年中行事のほかに、定期(月例または2カ月に1度、ところにより毎週1回など)または不定期に、音楽会(ミニ・コンサート)を開催しているホスピスも多くみられます。絵画の展示にも力が入れられています。誕生日には誕生会を行っているホスピスも多く、スタッフの人がカードと小さい花束をもって部屋を訪れ、ハッピーバースデーを歌い、記念撮影をしたりしています。誕生日のほか、結婚記念日に花束とカードをプレゼントしているところもあります。

 行事には患者さんを中心に、家族、医師、ナース、看護助手など皆が参加するようになっています。ベッドごと行事に参加される患者さんも多く、会場のデイルームは大変賑やかとなります。そして、これらの行事の企画、実施にあたって欠かせないのがボランティアの協力です。

 なお、いくつかのホスピスで、年に何回かの行事はともかく、これら月例行事、週間行事、毎日の行事などについて、すべてをこなすことに困難や反省が見出されるようになっているのも事実です。たとえば、重症の患者さんが多くては、毎日ティータイムを開いてもほとんど参加が見込まれません。ホスピス開設当初は定例を建前としながら、実際にはそういつも行事にかかわってはいられない、という現実も一部にはあるようです。



【32】1人きりで、あるいは家族水いらずで過ごすことができますか?

 あるホスピス(緩和ケア病棟)では、部屋のノブに「パンダマーク」が下げてあるときには、プライベートな時間としてスタッフの入室は禁止され、患者さんは1人きり、あるいは家族水いらずで過ごすことができるようになっています。同様に、ドアのノブに「只今、なかで休んでいます。しばらくの間、入室はご遠慮下さい」とか、「ふれあいタイム」の札をかけてあると、入室禁止の意味で、家族と大切な時間を過ごせる、などの例があります。

 一方、以上のような入室禁止を制度としては取り入れていないところもあります。つまり、ホスピスによっては、「パンダマーク」や「ふれあいタイム」など特別のマークや名前は設けず、その都度、家族水いらずの時間がもてるように対応しています。いずれもその意図するところや効果は同じです。



【33】マイペースで暮らせるのですか?お酒も煙草も自由ですか?
 
 一般病棟では、起床から消灯・就寝までに検査や治療などメニューがびっしりですし、面会時間なども治療を第一に考えられます。しかし、ホスピス(緩和ケア病棟)で第一に考えられるのは患者さんの生活です。もちろん家庭ではありませんから多少の規制はあります。何もかもしたいように、というわけではありませんが、その人の生活のぺ- スは最大限尊重されます。

 事実、前述のとおり、一般に、ホスピスでの一日のスケジュールはあくまでも目安で、起床や就寝の時間や食事の時間はその人に合わせて自由、となっています。つまり、一日の時間の使い方は、よほど特別の処置などがないかぎり、自分の自由にできるのです。行事への参加も自由ですし、面会時間に制限がないのも、本人や家族の生活のぺースに配慮したものといえるでしょう。

 患者さんとその家族がそれぞれのぺースで生活しておられるからでしょうか、ホスピスでは時間が実に静かにゆったりと過ぎていきます。

 次に、お酒は、多くのホスピスでいつでも飲めますし、晩酌も自由となっています。デイルームの一角にバーカウンターさえ設けているホスピスもありますし、お酒を自由に飲めるコーナーを準備中のホスピスもあります。

 煙草は、病室での喫煙は不許可としつつ、喫煙コーナーや喫煙室をほかに備えているホスピスが多いようです。これは、病室によっては酸素が配管されていて、爆発や火災の危険があるからです。ナースがそばにいれば室内での喫煙も可能としているところや、酸素が配管されていない部屋の場合は自室での喫煙も可能となっているホスピスもあります。まったく身動きのできない人がベッドごと喫煙コーナーに移動して喫煙する姿も、ホスピスでは時折みかけられます。

 しかし、なかには、ホスピスにおいても、病棟内での飲酒・喫煙は患者も面会者も常時一切禁じているところもあります。



【34】外出、外泊も自由にできますか?
 
 外出はもちろん自由ですが、ナースなどに一言声をかけることが必要です。患者さんが急にいなくなったりしてはナースが心配します。


 外泊の動機は大きく分けて二つあります。一つは、もう余命が短くなってきて、せめて少しでも元気なうちに家へ帰りたい場合です。もう一つは、在宅ケアにきりかえるにあたって試験的に家で過ごしてみるという場合です。どのホスピス(緩和ケア病棟)でも外泊は可能ですが、主治医の許可が必要です。希望者は二、三日前に申し出ることになっているホスピスもあります。二泊三日という基準を設けているところもあります。期間は四- 五日くらいまではなんとかなりますが、それ以上長期におよぶ場合は、緩和ケア病棟の規定により、一度退院となります。

 この場合、再入院の際に空きベッドがあるかどうかという問題があります。外泊・一時退院の条件として、@きちんとした症状コントロールをすること、A具合の悪いときにはいつでも受け入れる約束をすること、をあげているホスピスもあります。

 外泊先は、自宅が一番多いわけですが、ときには家族と温泉旅行にでかけたり、外国旅行をされた例もあります。



【35】お仕着せの寝まきを着るのですか?

 病床にあると、なにかと汚しやすく洗濯が頻繁に必要だったり、自分では着替えができなかったりします。そうしたことから一般病棟では、簡便なデザインのお仕着せの寝まきを着ていることがあります。しかし、皆がみな、同じさえない恰好でいるというのは気が滅入るものです。

 ホスピス(緩和ケア病棟)では、患者さんが自分で用意した寝まきを思い思いに着ています。日中は普通の衣服でもよく、さらに、食事やティータイムでデイルームに行けるときなどは着替える人もおられます。とにかく着ているもので気分は大きく変わりますし、どんなときでも自分らしくいようと、おしゃれな人はおしゃれにしています。とくに、ホスピスでは毎月のように行事がありますので、行事だけでなく、そのときドレスアップするのを楽しみにする患者さんもいます。

女性ならお化粧もするなど、身ぎれいにしていることは自尊心を保つ大切な鍵ですから、周囲が患者さんの理髪・美容をサポートしたりもしています。



【36】お風呂には入れますか?週に何回、どんなふうに入りますか?

 お風呂は、多くのホスピス(緩和ケア病棟)で、自分で入ることのできる人のための通常の浴槽と、介助が必要になった人のための特別浴槽が併設されています。通常の浴槽にも手すりなど転ばないための気配りがなされています。特別浴槽は、患者さんがベッドに横たわったままの姿勢で入ることができ、家族・ナース・看護助手・一部のホスピスではボランティアが適宜手伝います。

 入浴日・入浴時間は一応決まっているところとそうでないところがありますが、どこでも病状に応じてその日の入浴を判断します。基本的には入りたければ毎日でも入れます。自分で入れない人も、病状に応じて入浴・シャワー・清拭・洗髪等を行います。家族は、患者さんが利用しない夜の時間帯に入浴できるようになっているホスピスが多いようです。

 総じてホスピスでは、週何回と決めず、入浴頻度についてはきわめて弾力的な対応がなされているといってよいでしょう。



【37】かなり悪い状態でも、希望すればお風呂に入れてもらえますか?

 風邪をひいて2、3日お風呂に入れないだけでも、かなり不快なものです。ホスピス(緩和ケア病棟)で症状コントロールが十分になされ、細やかに洗髪・清拭などの身体のケアを受けても、長く病床にある不快感は拭いきれるものではないでしょう。お風呂に入ってさっぱりしたい、そうしたら気分も晴れる。日本人にとってお風呂に入るということは、特別な意味をもっているようです。その憧れを、ホスピスでは、かなり悪い状態にあるからこそ叶えさせてあげようと努力しています。そのために状態が急変するようなことも予想されますが、その点を予め確認したうえで、それでも、ということであれば手を尽くしてお風呂に入ってもらうこともあります。

 要は状況にもよりますが、ホスピスの基本的な考えは患者さんの希望は最大叶えるようにする、ということですから、ひょっとしたら数日の命かもしれないという状態でも、本人の強い希望があればなるべくそれに沿って入浴もできると考えてよいでしょう。



《ターミナルケア》    ホスピスの実際   伊能言天 医師




 食 事 

【38】病院食以外の食べ物や、家から運ぶものを食べてもいいですか?

 一般に病院食では、医療費の関係で厳しい制約があったりして、一定の限られたメニューしか給食されません。また、一般病棟の場合、病人食といって、食べるものには制限があり、勝手に補食をすることが医療上許されないことがあります。しかし、ホスピスケアでは、そのような食事の制限はまったくありません。患者本人の食べることへの希望を優先するのが基本的な考えです。

 食欲は、がん末期の病状になってもかなり残っていることが多いようです。実際には、ほとんど一口か二口しか食べられなくても、なるべく患者さんの好みの味に近づくように努力が払われています。しかし、末期がん患者の栄養管理には限界があります。食べられる食品なら何でもよいので、患者さんの好みにしたがって、病棟に持ち込んで補食してもらうのがベストでしょう。
 
 末期の患者さんは、残されたわずかの食欲で、自分の好みに合った食べ物をほんの少しでも口にしたいと思うものです。ですから家からの差し入れは大いに歓迎されるところです。



【39】食事は食べたくなるような工夫をしてくれますか?食事について栄養士さんと直接話しあえますか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)にいる患者さんにとって、食事は、栄養をとるというよりも食べることの楽しみを味わうために大切になります。そこで、食事の内容はもちろん、盛りつけの工夫、食器の選定に至るまで個人の嗜好にできるだけ添うよう工夫がなされています。

 あるホスピスでは、食欲をそそるために、材料をすっかりほぐして食べやすくし、これを再度原型に戻すという工夫をして、患者さんに大変喜ばれています。ここでは、終末期のがん患者にとって食事は“心の安らぎ”、“生きる意欲”につながるものであると考え、ホスピス開棟当時から患者さんの嗜好を重視し、食べたいときに食べたいものを、という努力目標をかかげて食事に力をいれてきています。具体的には、@毎日の食事メニューを配付し、栄養士が直接患者から話を聞くことにより、食事状態を把握する、A毎日午後ティータイムをもうけ、自家製のおやつを配る、Bひな祭り、クリスマスなど季節の行事に合わせた食事、誕生日の祝膳を用意し、家庭的な雰囲気をかもしだす、といった試みがなされています。

 緩和ケアチームの一員である栄養士により、患者さんの好みに合わせたメニュー、食欲のない患者さん用のシャーベットや飲み物のサービス、季節の行事の際に、家族とともに食べる行事食を作るなど、食のニーズを満たす工夫をしているホスピスもあります。なお、手づくりのシャーベットの提供は別のホスピスでも行っていて好評だということです。

 また、毎月一回、定められた曜日の夕食にホスピスお好みメニューとして、特別のメニューを提供しているホスピスもあります。1986年の開始以来、一度も欠かすことなく運営されています。

 当日は手作りのカードを添えてスタッフ( 栄養士・調理師) が患者さんの手元に直接配膳を行っています。栄養士が直接、患者さんから話を聞いて食事状態や希望を知ることは、なんらかの形でほとんどどのホスピスでも行っています。

 栄養士が直接、ベッドサイドに出向き患者さんの希望を聞くやり方が主ですが、三時のティータイムに調理士が交代で参加して、食事についての患者さんの希望を聞く機会を作っているホスピスもあります。食事は病状に合わせてナース、栄養士と相談のうえ決めているホスピスもあります。



【40】家族が料理を作る設備はありますか?患者と家族が一緒に食事をできますか?

 緩和ケア病棟の認可基準の一つに、「患者専用の台所が設けてあること」と定めてあります。したがって、ホスピス(緩和ケア病棟)には必ずファミリーキッチンがあり、そこで家族の方が料理を作ることができます。もちろん、元気であれば自分自身で料理を作ることも可能です。

 次に、患者さんと家族とが一緒に食事できる場所には、患者さんの病室のほか、デイルームがあります。そのほか、食堂が設けてあり、そこで患者さん、家族、スタッフが一緒に食事をとれるようになっているホスピスもあります。これは理想的なケースといえるでしょう。

 問題は、付添いの家族の食事の手配です。ホスピスでは必ずしも患者さんと家族が一緒に食事をとることを前提にしてはいませんので、すべてのホスピスで家族用の食事が患者さんと同様に提供できるわけではありません。この点は「【48】付添いの家族の食事はどうなりますか? 」をご覧下さい。



 建 物 

【41】建物は構造としてどういう特色がありますか?
 
 ホスピス(緩和ケア病棟)は、一般病院、専門病院のなかで一般病棟とは廊下続きの別棟となっている場合と、一般病棟の一フロア全部( まれに一部・一角) を使っている場合とがあります。後 者の場合は、通常、建物の最上階にありますが、四階建ての病棟の三階がホスピスになっているところもあります。このほか、一般病院には属さず、ホスピスのみの独立した施設も、日本では一カ所だけあります。
 
 ホスピスは、ホスピス専用にまったく新しい施設として新設するか、従来の施設の一部を大幅に改造して作られていますが、構造的にはなるべく家庭に近く、という配慮がなされています。緩和ケア病棟の認可の施設基準にも、@患者一人あたりの病室の広さが8 u以上、A当該病棟の患者一人あたりの広さが30u以上、B個室が50% 以上、C家族控え室を有すること、D家族用台所を設けてあること、E面談室を設けてあること、F談話室を設けてあること、などが定められています。



【42】病室の内装・備品・機能はどのようなものですか?

 天井・壁・寝具などは優しい色調のものが選ばれ、部屋に入ると安らぎが感じられるように配慮されています。二重カ−テンや羽毛の布団などが備えられているところもあります。いくつかのホスピス(緩和ケア病棟)ではボランティア手製の見事なベッドカバーもあります。

 備品を、あるホスピスの例でみてみましょう。

・特別個室 電動ベッド、床頭台、チェスト、冷蔵庫・電話・電動リクライニングチエア、テレビ、シャワー、トイレ(ウォッシュレット付き)

・一般個室 電動ベッド、床頭台、チェスト、冷蔵庫、電話、シャワー、トイレ

・2床室 電動ベッド、床頭台、ロッカー 

 このように、生活の場として必要なものが配備されるようになっています。そして電動式ベッドをはじめとして、身体の不自由さをカバーするさまざまな工夫がなされています。たとえば、トイレの手すり・シャワー室の腰掛け・室内スイッチ類のリモコンシステムなどです。これらはどのホスピスにもあるわけではありませんが、いろいろな点で細やかな配慮がなされています。



【43】患者の個室として和室もありますか?

 治療・看護を円滑に行うには、洋室ベッドのほうがよいとされ、この点、ホスピス(緩和ケア病棟)も例外ではありません。しかし、少数ながらいくつかのホスピスでは、和室の個室を備えていて好評です。個室7室のうち2部屋は和室とか、個室のうち1部屋が和室となっていてここはホスピスのなかで最も人気が高い、とのことです。ちなみに緩和ケア病棟の認可を受けていないホスピスで、個室ばかり18室のうち10室もの部屋が6畳ほどの和室になっているところもあります。畳、障子などは患者の心を落ち着かせてくれるからです。

 和室では、畳にじかに布団を敷く方法もありますが、衛生と管理の面から畳敷きの部屋にベッドを入れて使う場合もあります。

 以上は患者さんの個室の話で、家族室はほとんどが和室となっています。



【44】騒音に悩まされることはありませんか?逆に世間と隔離されていませんか?

 前述のとおり、ホスピス(緩和ケア病棟)は、独立した建物か、一般病棟の1フロアを通常、専有していますので、一般病棟のような騒がしさはありません。一般病棟では常時聞こえるドクターやナースの呼び出しコールの放送もホスピスでは聞こえません。また、病床にあると気になる足音・ワゴンの音なども、吸音のためにカーペットを敷くなどしてあり、心配はいりません。そのほか、たとえば庭の芝刈りは、電動式だと音がうるさいため、数千平方メートル規模の広い庭の芝生をボランティアが手動の鋏で時間をかけて刈る、などの気遣いをしているところもあります。

 ホスピスは通常、人里離れた場所にあるのではなく、一般病棟と廊下続きの別棟となっているか、一般病棟の一部にあります。なかには、意識的に一般道路に面して建設されたホスピスもあります。また、ホスピスにはボランティアが常時出入りしていて、病院のなかに普通の日常生活または日常的な感覚を運んできます。世間と隔離されるような感じはないといってよいでしょう。



【45】庭はありますか、どんなふうですか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)が独立した建物となっているところでは、庭があり、各病室から直接出られるようになっています。庭はどこも比較的広く、なかには3000u規模のところや、数億円を投じてできた10000u規模(この広い庭はホスピスのために作られていますが、一般病棟の患者さんも利用可能)のところもあります。芝生を植え、花を作り、樹木があって大きな慰めとなっています。池を造って鯉を放ったり、また野鳥を呼ぶような工夫をしているところもあります。

 独立型でなく一般病棟の通常、最上階がホスピスとなっている場合も、極力、屋上に庭を作り、緑を植えたり、錦鯉を飼ったり、花や熱帯植物の温室庭園としたりして、自然を感じられる憩いの場を設ける工夫がなされています。野外にしろ屋上にしろ、しゃれた椅子とテーブルを置いて、ゆっくりと外の空気を楽しめる工夫をしているところもあります。



【46】自分の居室以外(共有部分)はどんなふうですか?どのように使えますか?

 あるホスピス(緩和ケア病棟)の例を紹介しましよう。


・デイルーム 患者さんや家族たちが一緒に食事をしたり、団欒をしたりする交流の場で、談話室です。クリスマス会をはじめ多くの行事の会場ともなります。

・ファミリーキッチン デイルームの横にあり、ガス台、冷蔵庫などすべて揃っています。家族がそこで自由に料理ができます。

・家族室 四畳半〜八畳の和室です。布団、こたつなどがあり、家族が泊まったり、患者さんと家族が一晩を共に過ごしたりします。

・チャペル 朝夕などの礼拝や週何回かのチャペルタイムのほか、葬儀( お通夜・前夜祭、告別式)や身内の婚約式や結婚式などに使われます。

 なお、チャペルは、キリスト教の基盤をもつホスピスに設置されていますが、仏教の基盤をもつホスピスでは、仏堂があり、勤行や法話などのほか心の安らぎの場として活用されています。宗教的基盤をもたないホスピスでも、チャペル・仏堂に類似した部屋を設けているところがあります。

 患者さんや家族が利用できるところとしては、ほかに、団欒の場としてサンルーム、茶室としても利用できる和室などを備えたホスピスもあり、気分転換に役立っています。

 そのほかの設備としては、家族とスタッフが話しあう面談室、家族の宿泊室などがあげられます。このほか、一部のホスピスには食堂やカラオケもあるプレイルーム、音楽療法室などが備えられています。



 家 族 

【47】家族の付添いはどの程度までなされていますか?

 一般病院での基準看護の下では、付添いは認められていません。病気の治療が目的の場合、看護の専門性を重視した医療行政上の規則なのです。付添いが、治療の妨げにならないための規則でもあります。しかし、ホスピス(緩和ケア病棟)では病気の治療が主たる目的ではないので、この点、柔軟な対応が可能です。

 ホスピスは患者さんと家族とが一緒になって最期の時を有意義に過ごすところですから、家族の人が付添われたほうがホスピスケアが充実するといえるでしよう。

 実際に二、三のホスピスの例をみてみましょう。日中は家族の誰かがそばにいて、一人きりの人はほとんどいないというホスピスもあれば、家族が終日付添うケースが約60% と半数以上で、日帰りで付添うのが約30% 、残りは付添い不要者など、と報告しているホスピスもあります。

 家族が付添えない場合には、ナースが家族代行をしますので、家族も付添い人もなしに過ごしておられる患者さんも見受けられます。
 
 また、療養上必要な世話はナースがしますので職業付添いは認められません、というホスピスもあります。なお、このホスピスでも、家族の付添いについては病棟婦長にご相談下さいとなっていて、家族の付添いは相談のうえ認められることもあります。



【48】付添いの家族の食事はどうなりますか?

 付添いの家族の食事は、付添いが長期にわたる場合には、利用できる食堂の有無が問題となることもあります。ホスピス(緩和ケア病棟)によっては、一般病棟の食堂が常時( 朝、昼、夜の毎食) 利用できるところがあります。これはベッド数の多い比較的大きな病院にホスピスがある場合です。付添い家族の食事は要望に応じて、食券などにより、患者さん並みの食事・病院食( 各部屋へ配膳) を提供できるところもあります。食堂で患者、家族、スタッフが一緒に食事をできるようになっているホスピスもあります。


 一方、前述のようにホスピス側で患者さんの食事と同様に準備できればよいのですが、なかなかそこまでは手が回らず、家族はホスピスのファミリーキッチンで自分で料理を作るか、院内または近くの店からお弁当の類を買うか、店屋物をとることになっているホスピスもあります。



【49】家族の宿泊設備はどうなっていますか?

 家族室は緩和ケア病棟の認可基準で必要とされており、家族がそこで休んだり、泊まったりするのに使用されます。


 通常、この家族室は和室八畳程度のものが一室( まれに二室) で、そこで家族の宿泊ができます。宿泊の場合、寝具使用料( 一日500 円など)が必要なホスピス(緩和ケア病棟)もあります。四畳半の家族用の和室があるほか、宿泊希望の家族が多い場合には同じ広さの面談室に畳を敷き、家族室としても使うホスピスもあります。そこでは何人泊まっても一室一泊2000円です。家族宿泊用の洋風ベッドの個室を複数、あるいは複数の人が泊まれる洋風のベッドの部屋をもっているところもあります。その場合の費用は一室一泊3000円です。付添いの家族宿泊用和室が二室あり、その宿泊料は無料というホスピスもあります。

 しかし、家族が毎日付添う場合は、患者さんと同じ部屋で寝起きすることが多いようです。各室に簡易ベッドが備えつけられているところもあれば、個室に簡易ベッドを入れて家族がそばで生活できるところもあります。この場合、通常、付添いベッド代( 布団、毛布などの寝具使用代を含め一日500 円など) が必要です。ソファーベッドで寝泊まりするところもあります。また、患者さんは原則としてベッドですが、家族は窓際にビールびんなどを入れるプラスチックのケースを置き、その上に板を敷いて畳二枚を乗せ、靴を脱いでゆったりくつろげるホスピスもあります。



【50】面会時間の制限、面会人の年齢制限はありますか?

 どのホスピス(緩和ケア病棟)も家族についての制限は一切ありません。24時間いつでも面会可能ですし、面会者の年齢制限もありません。


 家族以外については、患者さんが面会を希望する人についてはとくに制限はしないとか、家族以外の人で特別の場合は申し出て下さい、となっているホスピスもあれば、家族も一般も面会時間自由、年齢制限もなし、となっているところもあります。

 しかし、一般の面会者については、原則として一般病棟の面会と同様、面会時間を13時または15時から19時まで、あるいは10時から20時まで、と制限しているホスピスもあります。



【51】ペットは飼えますか?家族が訪問時に連れてきてもよいでしょうか?

 患者さんの心を和らげてくれる存在として、ペットの果たす役割は大きいといえます。たとえば、あるホスピス(緩和ケア病棟)で肺がんの骨転移があった患者さんは、痛みがひどくかなりモルヒネを投与されましたが痛みは完全に取りきれませんでした。しかし、愛猫が来ているあいだは痛みから解放されたため、受け持ちのナースがこの猫を" モルヒネ猫”と名づけたという話があります。

 ホスピスによってはペットは部屋のなかで飼ってもかまわないところもあります。犬、猫などのうち、小型のペットを部屋で飼うのはかまわないが、大型のペットは昼間のみとなっているホスピスもあります。実際、ホスピスで犬や猫の姿をみかけますと、心がとても安らぎます。あるホスピスでは六匹の犬と暮らしていた患者さんもあります。室内で鳥は飼える、犬は飼えないなど一応の基準があるものの、これも決まったものではなく、状況次第で対応しているホスピスもあります。

 ペットの飼育は不可、となっているホスピスもいくつかあります。この場合でも、ホスピスによってペットの面会は可、とか、犬、猫を連れてくるのは可、となっています。面会時に連れてくるのは大小を問わず可、ただし、大部屋では遠慮してもらい、庭などで会ってもらう、というホスピスもあります。ペットは洗ってから連れてきて下さい、と案内しているホスピスもあります。

 一方、ほかの患者さんとの関連もあり、ペットは飼うことも連れてくることもすべて断っているホスピスもあります。



【52】患者を抱える家族の悩みにはどんなものがありますか?入院、在宅を問わず、家族の健康にも注意し、援助してもらえるのですか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)に入院している患者さんを抱える家族の悩みには、@延命を望む気持ちと早く楽にしてあげたいという気持ちの葛藤、A看病疲れ、B病名告知、C予期悲嘆(これから来る患者との別れを思って悲しむこと) 、D患者の死が受け入れられない、E患者をとりまく家庭内の人間関係の諸事情、F葬儀に関する諸問題、G患者の身辺整理、H経済的問題、I患者の死がもたらす家族間の人間関係の変化、などたくさんのことがあります。

 介護にあたる家族の大部分がこうしたさまざまな悩みを抱えながら、肩凝り・睡眠障害・体重減少・便秘・全身倦怠感・頭痛・めまい・腹痛といった慢性化した症状に悩まされています。これらが心労に端を発していること、介護のストレスに誘因があることを考えれば、すっかり治すことは難しいでしょう。

 しかし、家族の方が、こういった症状に押し潰されないために、在宅であれば患者さんの一時入院を勧めたり、入院中であれば気分転換や休養をアドバイスするといった形で援助がなされます。介護にあたる家族が心身ともに健やかでいるということが、患者さんにとって大きな支えになることはいうまでもありません。


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【53】入院(在宅ケア)中、家族の精神的ケアはどの程度してもらえるのですか?

 家族のケアはホスピスケアの役割の一つです。ケースによっては、患者さんよりも家族のケアのほうが主になる場合もあるほどです。ホスピス(緩和ケア病棟)でのケアの質の向上を図る目的で、四つの研究グループを発足させ、そのグループの一つに「家族ケア」があるホスピスもあります。

 家族のケアでは、病室や廊下での立ち話ではなく、家族を別の部屋へ呼んで、特別に時間をとって対応するような配慮もなされます。

 ホスピスにおける家族ケアの目的として、あるホスピスでは、家族が十分に悲しみを表現できることと、患者さんの死を受容できることをあげています。さらに、その後一人の家族構成員を欠いた家族として、またもとのように正常な機能をもって生活を営めるということも大切、とされています。

 ナースのなかで係を決め、毎週二度も合同の「家族会」を開いているところもあります。入院している患者さんたちの家族が集まれる日を決め、家族の悩みや希望を話しあうことを目的として行っています。参加者はホスピス長をはじめ主治医、ナース、ソーシャルワーカー、そして入院患者の家族です。多忙な仕事の時間を調整しながらの週二回の集まりはなかなか大変ですが、患者さんの今後はどうなのか、家族は何を期待し希望しているのかなどについて話しあうことは大事で、そうすることにより、少しでも納得のできる医療をしてもらいたいとの家族の願いに近づくこともできます。また、ほかの家族のことも聞けて元気が出てがんばれるという声もあります。葬儀の話も出て、事前に患者さんや家族の要望も聞くことができ、意思疎通のあと、表情を明るくして、病室に戻られる家族の方もおられるようです。


ホスピスニュ−ス要覧−家族 ホスピスニュ−スの中から「家族」に関するものをまとめてあります。




 病名告知 

【54】告知を受けていなくても入院できますか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)入院については、患者さんが自分の病名( がん) を知っている、またはその病気の経過が悪い( 予後が悪い= 近く死を迎える) ことを知っていることが要求されています。しかし、それは必須の条件にはなっていません。したがって、告知を受けていないと入院できないということは一般にはありませんが、厚労省の認可14施設のなかで一カ所だけ、告知を受けていないと入院できないところがあります。

 告知の問題はまず、ホスピスヘの入院経路が関係します。現在の日本では、どこの医療機関にも受診したことがまったくなく、初診でホスピス外来に来院する末期がんの患者さんはほとんどありません。つまり、すでにどこかの医療機関で末期がんの診断がつけられていて、ホスピスヘの入院を希望されてくる患者さんが大多数なのです。その場合、患者本人ががんの告知を受けてホスピスに入院したいと希望して、入院が決められるのが原則になっています。一般には告知を受けてから入院してもらうのが普通です。しかし、日本の現状では、告知を受けていなくてもどうしても入院が必要な場合があり、入院後に告知が行われることもあります。高齢で告知が問題とならない人など、一部には死亡まで告知されずに経過することもあります。



【55】入院すると必ず告知を受けるのですか?告知を絶対にしてほしくないと家族が考えていると入院は難しいですか?

 不治の病を抱える患者さんとその家族が、そう長くは生きられないという運命をそれとして受け止めている場合に、残りの日々を悔いなく過ごすためのお手伝いをする。これがホスピスケアの大きな目的の一つです。それには告知が前提になります。つまり、入院前にすでに告知を受けていてこそ、真のホスピスケアが受けられるのです。

 しかし、前述のように日本の現状では、告知はされていないがホスピスケアを受けたいというケースがあります。その場合には入院後、なにかの契機によって、患者本人に真実の病名または不治である病状がわかっても仕方がないという了解のもとで、入院が決定されます。ホスピス(緩和ケア病棟)入院に際しては、入院審査委員会が開かれ、そこで個々の事情が勘案されることになります。

 医師が告知を積極的にするかどうかは一概にいえませんが、患者本人が知りたくないと意思表示をしている場合や、家族が反対している場合にはあえて告知はされません。しかし、入院後、患者本人にがんであることが絶対に知れては困るという場合には、入院は困難です。病棟スタッフがどんなに配慮をしたとしても、ホスピス病棟のなかではがんであることを知っている患者さんが圧倒的に多いわけですから、患者同志の話しあいからでも、がんであることの情報は入ることになるでしょう。



【56】ホスピス(緩和ケア病棟)では皆、自分の病名、病状を知っているのですか?

 ホスピス入院の対象者は、原則的には進行末期がんで、余命が推定六力月以内で病名告知を受けている患者、とされています。しかし、前述のように日本の現状では、ホスピスに入院中のすべての患者さんが告知を受けているとは限りません。そうなると次に、入院後に告知がなされるか否かが、問われるでしょう。

 あるホスピスでは、「入院にあたっての基本条件は、患者からの質問に対して偽りの答えはしない。したがって、入院後に患者から尋ねられれば、病名や病状について正直に説明していく。患者から質問がなければ、こちらから積極的に病名や病状を伝えることはしない」という姿勢をとっています。その結果としてこのホスピスでは、入院中に病名や病状をはっきりと認識した患者は、90% に達しています。

 また、別のホスピスでは、入院した患者さんの約30% が入院前に自分の病気について知っていて、残り70% の患者さんへの入院後の告知は20% 弱となっています。入院後告知された患者さんは平均年齢50代の人が中心です。最期まで告知なしの患者さんもありますが、このうち半数以上が平均年齢83歳のかなりの高齢者の場合です。残りの人は、精神障害があったり、意識障害があったりして、告知の是非は問題とならなかったと報告されています。

 告知の有無をホスピス入院の条件とはしていないあるホスピスの場合、入院後の告知は患者さんの意思を最優先としています。また、告知にあたっては原則として家族およびチーム内の合意を得ておくこととなっています。

 全体的にみて病名・病状の告知なし、あるいは非認識の率は四人に一人くらいとなっているところが比較的多いようです。逆に認識しているのは四人に三人くらいといえます。

 しかし、病状の認識を入院の条件としているいくつかのホスピスでは、認識率が90% をこえる高率となっています。また、入院後はできるだけ病名の告知などを行うようにしているホスピスでは、その認識率は入院中に5〜25% 上昇します。

 厚労省が1993年5 月に発表した患者家族の調査結果では、わが国のがんによる死者のうち、病名の告知を受けていたのは18% 、「察していたと思う」が43% 、「最後まで知らなかったと思う」が25% 、となっています。前述ホスピスでの認識率の数値は一般に比べて高いといえるでしょう。



【57】患者がホスピス(緩和ケア病棟)のことを知っていて、そこに移るのを躊躇しているときはどうすればよいですか?

 患者さんが、ホスピスに入院することをなぜ躊躇しているかが問題でしょう。その理由が明らかになればそれなりに対応できます。おそらく最も多い理由は、ホスピスヘ入院すれば、すぐに死んでしまうのではないかという恐怖のためではないかと思われます。


 この点について、あるホスピスではリーフレットにこう説明しています。

「患者さんのホスピスに対する誤解を解く努力をします。ホスピスに移っても治療は続けられること、退院する人もあることなどを伝え、痛みやほかの症状のコントロールをする専門的なスタッフがいることを強調します。」
 
 いずれにしてもホスピス相談窓口に相談されるとよいでしょう。ホスピス相談窓口については「【72】入院のための相談はどこにすればよいのですか? 入院に限らず、とりあえずいろいろ相談してもいいですか? 」をご覧下さい。



【58】自分ががんだと知らずに亡くなっていくことも、その人のQOLにとって大切だということもあるのではないですか?

  「知らぬが仏」といわれるように、自分が近く死ぬ運命にあることを認識しないで、生きる希望を失わずに、終末を迎えたほうが楽だという意見もたしかにあります。そういう考え方にも一理はあるでしょう。死ぬかもしれないという不安や恐怖に脅えながら生きることは酷なことだと思われています。長く生きたいという人間本来の欲望に照らせば、当然の考え方といえます。

 しかし、人生一回きり、この世でやりたいこと、やり残したこと、整理したいこと、自分の意思で処理したいことなど、意識の明瞭なときにできるだけのことをしたいと思うならば、自分のこれからの運命を、まだ身体が動かせるあいだに知っておかなければならないということになります。うすうす気づいて不安に思いながら、しかし、真実を知ることがなかったために、いろいろやり残したまま死んでしまったら、さぞかし悔いが残ることでしよう。

 がんという病名や予後を知らなければ、死の不安や恐怖にさいなまれることがなく、心配ごとがないので幸せだという考えもありますが、現実に死が訪れるという事実を見つめたときに、自分の運命を知らないことが、本当に幸せなのかという疑問を否定できません。

 死を迎える本人にとってどちらが幸せなのかは、当然本人が決めるべきですから、告知を受けないほうが本人のQOL (クオリティ・オブ・ライフ生活の質)にとって大切だというのであれば、あえて告知を受ける必要はないでしょう。しかし、その場合、前述のように、ホスピスケアの提供を受けるときにいろいろな制約が加わることは止むを得ないこととなります。

 ここで改めてQOL とは何かを考えてみたいと思います。それは生の一回性を自覚することで、そのとき目が見るもの、耳が聞くもの、肌が感じるものをなつかしみ、いとおしむようになること、そうした気持ちがその人の人生の時間を輝きのあるものにするということではないでしょうか。

 無論、私たちはいつも自覚的な死を迎えるわけではありません。事故で突然亡くなるかもしれないのです。そのほうが本人はある意味では楽かもしれません。しかし日々をかみしめながら「いつ死んでも後悔しない」という心境で生きてきた人でないかぎり、悔いはつきまとうと思われます。
 幸か不幸か、がんは発見がよほど遅くないかぎり、ゆるやかな経過を辿ります。そのとき、その人に残された時間は短くとも、自分の心のもちようで、深い信仰生活にも似た輝きに満ちた日々を人生の最後に送ることができる、そのチャンスが告知によって与えられもするでしょう。



【59】告知しなくてもホスピスケアはできるのではないですか?

 ホスピスケアは前述のように、告知を受けた患者さんに対して提供されるものです。告知なしでのホスピスケアもまったく不可能というわけではありませんが、告知がされていないと本質的に優れたホスピスケアを提供できないと考えられます。

 もし本人が病名・病状を知らないとしたら、どんなことになるでしょう。まず、治療についてインフォームド・コンセントが成立しません。残された時間の少ないことを知らなければ身辺整理もままならないでしょう。家族と別れを惜しむ作業もきちんとはできないかもしれません。残された時間の少ないことを率直に認めあわないとすれば、本人も家族も医療者も、気持ちをごまかしながら結局、支えあいきれないで辛い思いをすることになるという例が多々あります。

 ホスピス病棟に入院した時点では、患者さんは病名も予後も知らないが、入院後は病名や病状、予後などに気づかれてもよいという場合でないと、ホスピスヘの入院は控えたほうが賢明であるということになります。




【60】海外では告知はどのようになされていますか?

 アメリカでは、1961年にはがんは原則として告知しないのが90%、するのが10%くらいでした。それが77年には逆転して、98%が告知するという状況になっています。

 その背景には、がんの治癒率が向上して、がんの告知すなわち余命が短いことの告知ではなくなったことのほか、患者が知る権利を主張しはじめ、それが一般社会の慣習となり、告知をしておかないと医療者側が訴訟を起こされたとき不利になる、という米国らしい事情もあります。病院によってはここの患者はすべて病名ががんであることを知っている、という掲示があるところさえあります。

 しかし、一方では告げすぎが問題にもなっています。告知のショックから立ち直れない人もいるわけで、そのケアが大変となり、ハワイのあるホスピスではこの点で頭を痛めています。

 イギリスでは、がんであるということを積極的に告げないまでも、患者さんの質問には正直に答えるという態度が多いようだと報告されています。


ホスピスニュ−ス要覧−病名告知

ホスピスニュ−スの中から「病名告知」に関するものをまとめてあります。




 宗 教 

【61】ホスピス(緩和ケア病棟)には必ず宗教的基盤があるのですか?それはキリスト教だけですか?

 宗教的基盤は、すべてのホスピスがもっているのではありません。国公立病院のホスピスのみならず、私立のホスピスでも宗教的基盤のないところがいくつかあります。また、宗教的基盤はキリスト教のみとは限りません。仏教の基盤をもったホスピスもあります。

 厚労省認可緩和ケア病棟14施設では、キリスト教の基盤をもつところが7施設、仏教の基盤をもつところが1施設、宗教的基盤のないところが 6施設となっています。このように宗教的基盤をもつホスピスがほぼ半数を占めていることは、ホスピス運動における宗教の役割の大きさを改めて認識させるもの、といってよいでしょう。

 しかし、傾向としては、国公立病院および私立でも宗教的基盤のないホスピスが増えてきています。今後ホスピスの普及に伴って一層その傾向が強まってゆくものと予想されます。



【62】入院後、宗教を強要されたりしませんか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)では朝や夕方に礼拝、勤行があったり、賛美歌・メッセージ・法話・講話をイヤホーンで聞けるようになっていて、その都度、案内の院内放送がなされたりします。また、希望に応じて宗教者がベッドサイドを訪問したり、伝道者主催のお茶会を催したり、テレビで礼拝の様子を放送したりしています。宗教的基盤をもたないホスピスの例でも、月に2〜3回、僧侶と牧師による法話を放送で流しているところがあります。

 このように宗教的基盤をもったホスピスに限らず、ホスピスでは前述のような活動を通して、終末期にある方の内面の要求に応えるようにしています。この結果、入院中に洗礼を受ける人や、仏教への関心を深める人も皆無ではありません。

 しかし、宗教を強要されるようなことはありません。患者さんが希望しない段階ではいかなる伝道も一切禁止しているホスピスもあります。



【63】キリスト教の基盤のあるホスピス(緩和ケア病棟)でお坊さんの話を聞くことができますか?

 前述のとおり、ホスピスでは宗教は自由です。ですから、キリスト教の基盤のあるホスピスでお坊さんの話を聞くことも自由です。しかし、その手配は一般的には患者側で行うことが必要です。

 患者さんの希望があればいかなる宗教ともコンタクトができ、仏教の援助を求める患者さんにはホスピスに協力してくれている僧侶を紹介する、などの配慮をしているホスピスもあります。また、宗教とは関係なく、誰か話相手がほしいときには、ナースやホスピスの宗教関係者が宗教から離れ、普通の会話につきあってくれます。ホスピスによっては、ボランティアも対応してくれて、世間話にはじまり、患者さんが望めば人生の話に耳を傾けてくれたりもします。



【64】宗教をもっている場合、その儀式(お祈りなど)は自由にできますか?いわゆる新興宗教を信仰していてもかまいませんか?

 ホスピス(緩和ケア病棟)では、患者さんのもっている宗教は理解し尊重するように努めています。

 死を目前に控えた患者さんはなんらかの宗教的援助を必要とすることが少なくない、という認識があります。ですから、どんな宗教であってもその患者さんが必要としていれば、信仰の自由は保障されます。そして、その信仰に伴うお祈りその他の儀式は、ほかの患者さんに迷惑をかけないかぎり自由です。その宗教関係者もまた、その宗教をほかの患者さんに布教したり、強要したりしないかぎり、求めに応じて訪室するのは通常、許可されます。

 この関連でよく話題となるのは、袈裟をきたお坊さんの病室への訪問です。病院ではキリスト教の神父、牧師の人の病室訪問は問題とならず、僧侶姿の人の訪問は縁起が悪いと忌避されるのが一般です。しかし、お坊さんの話を聞きたい人もあるはずで、この点についての反省もなされています。



 心のケア 

【65】患者の逝去の際、スタッフはどこまでつきあってくれますか?

 一般病棟では、患者さんの死後、あわただしく病室を引き払い、霊安室に遺体を安置し、闘病中に関わりの深かった主治医から別れの挨拶を受ける機会も少なく、そのまま病院の裏口からひっそりと自宅なりに帰っていくことが多いようです。


 しかし、ホスピス(緩和ケア病棟)では、施設内のチャペルなどでお通夜もしくは前夜祭や告別式を行うことができます。この際、医師、ナース、ボランティアも可能なかぎり参列します。そして、要望に応じて弔辞を捧げることもあります。ボランティアもその患者さんに関わりの深かった場合、その人たちで自発的に互いに連絡を取りあって参加するようにしています。また、ホスピスで葬儀がなされるか否かにかかわらず、枢がホスピスを離れるとき(それは一般病棟のように裏門からでなく表門からの場合もありますが)には、医師、ナース、ボランティアなどがお見送りをします。

 病室での「お別れ会」を行っているところもあります。患者さんの逝去時に病室内で遺族の了解のもとに行われます。死を看取った家族と当日出勤しているスタッフとで献花し、主治医および当日のナース・リーダーが「お別れの言葉」を述べ、全員が黙祷をするというものです。

 この「お別れ会」や「お別れ式」はいくつかのホスピスが行っています。チャペルなどの設備がないホスピスで、一般病棟の霊安室で医師、ナースが別れを告げているところもあります。霊安室が「和(やすらぎ)の間」とよばれる茶室風で落ち着いた雰囲気のところとなっているホスピスもあります。



【66】死別後、遺族のケアはどの程度してもらえるのですか?

 前述のように、死亡時、病室で「お別れ会」を行っているホスピス(緩和ケア病棟)があるほか、告別式に弔電を打ったり、スタッフが参列したりします。必要に応じて受け持ちのナースが葬儀に参加するホスピスもあります。遺族の希望に応じて、葬儀(お通夜・前夜祭、告別式)や記念会がホスピスで行われることもあります。なお、キリスト教の基盤をもつホスピスでは、お別れ会や葬儀は通常、キリスト教式で執り行われることになりますので、すでにキリスト教徒であった人およびホスピスで洗礼を受けた人のみが対象となります。


 葬儀のあとでは、手紙、電話などでその後の状況を尋ねたり、忌日に訪問したりしています。患者さんの死後約一カ月で受け持ちのナースまたは婦長が遺族に電話をし、必要に応じて訪問することもあります。受け持ちのナースが励ましの手紙を患者さんの死後一カ月、三カ月、六カ月、十二カ月後に出すこともあれば、死後三カ月の時点で遺族の方に挨拶の手紙を送るホスピスもあります。遺族に毎年クリスマスカードを送っているホスピスもあります。

 ほとんどのホスピスが年一回、過去一年間に亡くなった患者さんの遺族全員に招待状を出し、合同慰霊祭を行っています。当日は引き続いてホスピス・スタッフと遺族との交流会・茶話会も開かれます。なお、合同慰霊祭の名称は、ホスピスによって家族会であったり、遺族会であったり、追悼記念会であったり、召天者合同記念会であったりします。茶話会では昼食を共にしているところもあります。案内の対象はホスピスの遺族ですが、いくつかのホスピスでは一般病棟の物故者の遺族へも対象を広げています。そういう場合、たくさんの遺族が参加することになります。当日、遺族が持参される遺影を飾れるようになっているところもあります。

 合同慰霊祭への遺族の参加率ですが、年一度のぺースですでに十回開催しているホスピスの場合、三〜四割となっています。

 ある病院では、半世紀をこえる病院の歴史のなかで、ホスピスが設立されてからはじめて合同慰霊祭を行うようになったといいます。一般にはしばしば「家族の最期を過ごした病院は前を通るのさえ辛い」といわれることを考えますと、遺族が病院に集う合同慰霊祭は、ホスピスがもたらした新たな文化といえるでしょう。なお、茶話会などの実費は病院側が好意で負担することもあります。

 一方、ホスピスによっては遺族へのケアは現在とくには行っておらず、今後の課題としているところもあります。ただし、ここでも一般病棟との合同の記念祭を年一回実施しています。

 遺族のホスピス訪問ですが、たいていは思い立ってなんの前触れもなく訪問されるため、受け持ちのナースが不在のときもあります。そこで遺族カードを作っておいて、遺族のプロフィールや遺族と病院とのあいだの交流を記録し、常時どのスタッフでも対応できる体制をとっているホスピスもあります。

 病院の近くに納骨堂を完成させ、身寄りのない人、身寄りはあっても希望する人に大変喜ばれているホスピスもあります。「思い出を語りあう会」という名の遺族会を行っているところもあれば、遺族会を年に三回も開いているところもあります。遺族会の結成・開催を計画中のホスピスもあります。

 このような長期にわたる遺族へのケアは、従来の病院では行いえなかったもので、ホスピスならではの活動として注目されます。
 
 とはいえ、むしろそっとしておいてほしいという遺族もあります。よい思い出を共有できる家族や友人のある人の場合、また、逆に故人との関わりをもちたくない人の場合、です。生前からどちらのニ-ズがあるかを把握し、それにそって対応することも大切とされています。



【67】ホスピス(緩和ケア病棟)での患者、家族の満足度はどうですか?

 あるホスピスでの遺族に対するアンケート調査結果では、次のようになっています。


・患者がホスピスケアを受けたことは、遺族にとって非常に良かったと思ったもの74% 、良かった23% 、どちらともいえない3%、と大変満足度の高いものとなっています。

・痛みのコントロールについては、非常に良かったと思う28% 、良かったと思う57% 、どちらともいえない12% 、悪かったと思う3%で、85% が満足感を示しました。

・ナースのケアおよび対応については95% 、看護助手のそれについては97% が良かったと回答しています。

 このように全体として家族の満足度は大変高いものとなっています。患者さん自身も同様の傾向とみてよいのではないでしょうか。



【68】「死ぬのが怖い」といってもいいのでしょうか?自分の感情を爆発させられる場所はありますか?

  死ぬのが怖いとは誰もが思うことです。死ぬことは誰の人生にとっても最初で最後の経験なのですから怖くないほうが不思議です。

 ホスピス(緩和ケア病棟)では「死の受容」ができなければいけないように考えられているかもしれません。ホスピスの患者さんは皆、死を受け入れる境地に達しているように考えられているかもしれません。たしかにそういう方もおられますが、必ずしも入院当初からそうした気持ちになられているわけではありませんし、最期まで死を恐れる人も、生きる本能をもった人間である以上、例外的ではありません。

 それまでいた病院では、死はタブーと考えられ、話題にすることができなかったかもしれません。しかし、ホスピスでは、「死ぬのが怖い」と率直にいえる環境のなかで、その不安を受け止めて共感してくれる周囲のサポートのもとに、徐々に死を受容する気持ちになっていける可能性があるといえるでしょう。

 次に、自分の感情を爆発させる場所ですが、日本は文化、風土の背景によるのでしょうか、そのような場所を備えたホスピスはほとんどありません。チャペルやこれに相当する部屋で祈ったり、泣いたりは可能ですが、大声で叫んだり泣いたりできるよう、防音設備が整っているわけではありません。しかし、あるホスピスではカラオケ室にもなり、ピアノもあるプレイルームがあって、そこは防音室になっているため、患者さんや家族の嘆きの部屋にもなりうるようになっています。


《死を恐れる必要はありません》
 生命に終わりはないのです ただ形を変えるだけなのです
ホスピス医によるニール・ドナルド・ウォルシュ氏の著書「神との対話」の概要書




【69】家族が患者と別れる日を思って、悲しんだり泣いたりしてもいいのですか?

 一般病棟ではしばしば死を前提としないために、家族が患者さんの前ではいうにおよばず、医療者の前でも平静を装っていなければならないような雰囲気があります。また、ホスピス(緩和ケア病棟)はホスピスで、患者さんをはじめ多くの人たちがその死を受容していて、常と変わらず明るい態度でいるものだというふうに考えておられる向きもあるかもしれません。

 これから訪れる別れを思って悲しみ泣くという作業が十分にできている場合、実際の別れのあと残されたものの立ち直りは比較的早いといわれます。このことは突然死のあとの遺族のショックの深刻さなどを考えれば頷けるところでしょう。

 ホスピスケアの働きの大きなものに、患者さんと家族の別れを悔いのないものにし、患者さんの死後、遺族が悲しみを上手にのりこえていく手助けをするということがあります。そのことを可能にするためにも、患者さんの生前に十分、別れを思って悲しみ泣いておくという作業は必要で、とても大切なことだといわれています。

 人間には悲しい気分のときもあれば明るい気分のときもあります。患者さんとの別れを思って泣くときもあれば、ともかく今一緒にいることを喜んで笑いあうこともある。そういった自然な姿がホスピスでの風景です。



【70】家族や親しい者が患者に「さよなら」をいえるようにしてもらえますか?

 この世を旅立つにあたって、愛する人たちと別れの挨拶を交わす。それが人間の最期にもっとも望ましい姿だと思われます。そのために医師は、「いま、こういう状態で、これからこうなっていくことが予想されます」といった病状の説明を、患者さんおよび家族に対して行います。それに応じて最期の場面の準備を整えていくわけです。

 しかし、予想に反して病状が急変した場合には、家族が駆けつけるまでのあいだ、蘇生術を施したりすることもあります。そのことも事前の意思確認のうえでなされることです。そして、最期の場面では、できるだけ自然な姿の患者さんを中心に、家族そして医療者も共に闘ってきた仲間としてお別れをいうことになるでしょう。

 こうして、ご家族の方が「死に目」に会えるように努力はしていても、しばしば、ほんのふとしたすきに、誰も居合わせないときをねらったように、患者さんが息を引きとられてしまうことがあります。そうした場合、残された者には悔いが残りますが、それも死にゆく本人の意思であり、思いやりであるという考え方もあります。

 また、真実を共有していれば、別れの時が遠くないことはお互い知っているわけですから、「さよなら」は告げられなくても、「ありがとう」や「あなたに会えてよかった」という言葉はギリギリにならなくてもいえるのです。



【71】ホスピス(緩和ケア病棟)のチャペルで患者の家族の結婚式をあげさせてもらえるそうですが、本当ですか?

  いくつかのホスピスで実例があります。患者さんの生存中に、是非とも家族の結婚式を見届けたいなどの希望があった場合、ホスピスはそのような希望を尊重して可能なかぎりその実現に協力します。たとえば、余命の短い患者さんが、正式な結婚式の前に家族の花嫁、花婿姿をみられるように、ホスピスの施設内で身内だけの式をあげるというやり方です。

 あるホスピスの例では、患者さんが迫りくる死期を前に、自分の娘の婚約式を病院でと願い出、本人は車イスで出席、涙の婚約式が挙行されました。また、患者さんの息子の依頼で礼拝堂で結婚式が執り行われ、患者である母親は和服姿で参加した例もあります。いずれも式後およそ3週間で患者さんは死亡されています。

 入院患者さんの子弟のほか、関わりのある人の結婚式や婚約式を礼拝堂で行って、あとあとまで大変喜ばれ、遺族から毎年年賀状が送られてくる、というホスピスもあります。

 患者さんご自身の結婚式があげられた例もあります。入籍はしたものの種々の事情で結婚式はのびのびになっていたケースです。新郎はべッドのなかに盛装して横たわり、新婦はウェディングドレスに身をつつみ、というスタイルで、新郎の余命はあとわずかという状態だけに、参加者の涙を誘いました。


ホスピスニュ−ス要覧−心のケア

ホスピスニュ−スの中から「心のケア」に関するものをまとめてあります。
多くの人のがん体験談を動画や音声で紹介しています。




 入院手続き 

【72】入院のための相談はどこにすればよいのですか?入院に限らず、とりあえずいろいろ相談してもいいですか?

 入院、とりあえずの相談いずれも、電話か手紙、あるいは訪問してホスピス(緩和ケア病棟)相談窓口で相談する方法があります。このホスピス相談窓口には、一般病棟も含めてすべて医療相談室で対応しているところと、病院の保健サービス室やホスピス病棟で直接受けているところなどがあります。

 入院については、あるホスピスの例では、「同じ病院に入院中や通院中の場合は担当医師、看護婦に問い合わせて下さい。ほかの病院で受診中の人は現在の担当医師からの紹介状を持参のうえホスピス外来を訪問して下さい。あるいは電話での相談も受けています」と案内しています。「病状的に来院できないということであれば、こちらから訪問させていただいても結構です」と案内しているホスピスもあります。

 なお、相談の実態ですが、あるホスピスの場合、月に40件ほどの相談が入りますが、入院につながるのはそのうちの20〜30%です。ホスピス の施設がどんなものか知ってもらうようにしていますが、まだまだ一般に知られていないというのが実感だそうです。ここでの相談は約60% が家族から、約30% が医療機関から 、約10% が本人からで、問い合わせの多い内容は、@痛みの緩和ができるかどうか、A限りある状況のなかで本人に苦痛を与えないか、B告知について、C費用について( 健康保険の適用) など、となっています。

 とりあえずの相談については、ホスピスによっては、「がんの電話110 番」という直通電話を設置し、医師、ナース、コーディネーターが患者や家族の方のがんに関わるさまざまな相談を受けつけているところもあります。また、「緩和ケア相談」として電話相談を受けているところもあります。ここでは電話で予約しての相談面接も受けています。
 
 「ホスピス110 番」と名づけて、がん末期の患者さんへの末期医療、ホスピス全般に関して電話による相談を受けているところもあります。相談は予約制で前もって電話で相談の日時を打ち合わせ、その日時に電話で相談を受けるものです。相談は無料でホスピス担当医師団が受け、相談時間は原則として20分以内となっています。



【73】治療中の病院から転院できないとき、どうすればよいのですか?

 原則としては、病院を選ぶのも入院を決めるのも患者本人の要望によるものです。主治医に対して退院や転院の要望を出せば、法定伝染病でないかぎり、主治医はそれを許可せざるを得ません。したがって、まず、主治医に転院の要望を話すことです。


 主治医が転院を許可しないことがあるとすれば、理由として、病状が悪すぎて、転院搬送中に死亡する可能性が高いことがあげられます。その場合、たとえ途中で死亡することがあっても仕方がないことを覚悟のうえで転院したいという要望を出したりします。

 入院中は医師の責任において、患者の生命の安全を守る義務があります。患者の要請であっても、生命の危機が明瞭な行為を許可することは、その義務違反になる恐れがあります。したがって、医師の裁量権( 主治医の義務) によって、転院の許可が得られない場合もあるわけです。

 とはいっても、今日的なインフォームド・コンセントの考えからは、本人の転院したいという要望、選択(患者の権利) があれば、たとえ搬送中に死亡するようなことになっても、転院を許可せざるを得ないともいえます。

 ほかの理由で転院の許可が得られない場合は、なぜ転院が必要かという点について、主治医と十分に話しあう必要があります。主治医との信頼関係が良好であれば、転院の理由を率直に話すことによって、許可を得ることができるのではないでしようか。

 なお、最終的には、主治医の許可が出なくても、退院は可能です。



【74】どのような経路で入院する人が多いですか?

 入院経路は大きく分けて、@一般病棟・院内他科からの転棟、A他院からの転院、B外来受診・自宅から直接、の3つがあります。それぞれの率はホスピス(緩和ケア病棟)によってまちまちです。

 たとえば、B外来受診・自宅から直接、という人が50数%を占めるところがいくつかある一方、B外来からは15%ほどで、@一般病棟からが60%をこえるところもあります。@が80%をこえているホスピスもあります。A他院からの転院も20%から30%台のところが多いように見受けられますが、50%近くのところもあれば、10%以下のところもあります。

 また、院内他科からの転棟は主として入棟待機者(ホスピスに入院希望がありながら、満床のためとりあえず一般病棟に入院して待機していた人)であるホスピスもあります。

 あるホスピスでは、当初は他院からの紹介患者が多かったのですが、年を経るにつれて院内他科からの患者さん、さらに自宅から直接入院する患者さんが増加しています。ホスピスの存在がマスコミ・口コミで知られるようになれば、ホスピス外来を経てとか、自宅から直接といったケースが多くなるようです。



【75】入院申し込みに際し、提示しなければならない情報はどのようなものですか?

 あるホスピス(緩和ケア病棟)の例をみてみましょう。ここでは入院申し込みに際し、ホスピス質問紙を全部で3枚提出するようになっています。@患者本人(本人による記入が無理な場合は、家族が患者の意思を確認しながら記入)、A家族、B現在受診している医療機関の担当医師、の3者それぞれによる記入です。

@本人は最初の欄に、氏名、性別、年齢、生年月日、住所、電話番号、職業、結婚(既婚、未婚)、宗教を書き、次の欄に信頼できる最も身近な人の氏名、患者との関係、住所、電話番号、職業を書くようになっています。以下に、次のような点についての質問があります。質問の1部は改め記載してある回答の中からの選択解答式、たとえば、最初の質問「現在最も苦痛なこと」ですと、痛み、息苦しい、咳、不安が強い、眠れない等々多数の項目のうち、該当するものすべてに印をつけるようになっています。

・現在最も苦痛なこと ・病気(病名、病状)について誰からどのように聞いているか ・自分自身は病気についてどのように思っているか ・ホスピス入院について説明を受けたか ・ホスピスを希望する理由 ・病気のことで心配なこと、聞きたいことはないか ・病状についてだれに話せばよいか ・入院によりどんな困ることがあるか ・病状が落ちついたら自宅での療養を希望するか ・ホスピス見学を希望するか

A家族ですが、以下の点についての質問があります。

・患者が入院中であれば医療機関名、電話番号、住所、主治医、自宅であれば通院中の医療機関名、現在の病気でこれまでにかかっていた医療機関名など ・ホスピスを希望する理由 ・病気について患者本人は医師からどのように説明されているか ・病名について家族は医師からどのように説明されているか ・家族はどのような治療や看護を希望するか ・家族の構成 ・自宅での介護(介護可能な人の人数、間柄、現在受けている訪問看護、ホームヘルパーなどのサービス内容) ・ホスピス見学希望の有無

B医師に対する質問は以下のとおりです。

・患者はこの依頼を知らされているか ・ホスピスを紹介する理由 ・患者の病識と予後(患者および家族にそれぞれどのように説明し、どう理解されているか) ・処方内容(可能であれば最近の検査データとレントゲン写真の貸し出しを希望)

 別のホスピスの例では、主治医による「患者紹介書」での記載事項として、病歴および経過、治療内容の大要、現在の主要症状、予後の見込み、病名・予後の説明など、また本人または家族による「入院相談表」への記載事項として日常生活動作の状況(食事、排泄状況、お風呂などが1人でできるか、ほか)などが求められています。



【76】入院手続きに必要なものは何ですか?また入院時、持参するものは何ですか?

 入院手続きに必要なものは、あるホスピス(緩和ケア病棟)の例では、身元確実な人を1人決め、「入院申し込み書、身元引受書」を書くこと、また入院窓口で必要なものは、保険証(生活保護で入院する人は医療券など)、診察券、患者本人の住民票(本籍地の記載されているもの)、入院予約票、印鑑、となっています。

 次に入院時、持参するものを、あるホスピスの1例でみてみましょう。ここではホスピス「入院のしおり」を準備しており、その最初に“入院生活の必需品“として以下のように案内しています。

@洗面・入浴用具  歯ブラシ、歯磨き、洗面器、コップ、ヒゲ剃り(電気カミソリ)、石鹸、シャンプー、タオル、バスタオル 

A日用品  湯呑(吸呑)、箸、スプーン、ストロー、ティッシュペーパー、ブラシ(櫛)、スリッパ、おしぼり(ウェットティッシュ)

B衣類  下着類、寝まき、靴下、冬季はカーディガン、ガウン、肩掛けなど 

 イ.汚れのため、衣類の交換が多くなり、不足する場合がありますので、多めにご用意ください。

 ロ.衣類の着脱がご不自由な方は、前開きの衣類をご用意下さい。

 ハ.持ち物にはすべて、お名前をご記入下さい。

C個人的に必要なもの  ストーマー(人工肛門)用品、衛生材料は看護婦にご相談下さい。

 別のあるホスピスの例では、「洗面用具、箸、スプーン、湯呑み、寝衣、下着、スリッパ、吸い飲み(必要時)−これらのものは、売店でもお求めになれます」、「使用可能な電気製品は、ラジオ、ラジカセ、髭剃り、ドライヤーです。ポットなどの電熱器はご遠慮下さい。それ以外のものについては病棟婦長にご相談下さい」、「テレビはプリペイドカードで見られるものが準備してありますので、持ち込みはご遠慮下さい」、「多額のお金や貴金属は持参しないで下さい」などと案内しています。



 費 用 

【77】ホスピス(緩和ケア病棟)の入院には各種健康保険がきくのですか?一般病棟と比べて、費用の負担はどうなっていますか?

 ホスピスでは、一般病棟に入院するのとまったく同じで、社会保険、国民健康保険など各種健康保険が適用されます。その給付割合も一般入院の場合と同じです。したがって、制度上ホスピスは、一般病棟に比べて高くも安くもなく同じといえます。

 つまり、ホスピスだから特別に費用がかかるということはありません。

 通常、一般病棟では実際に行われた検査、注射、投薬などの医療行為に応じてそれぞれ保険の点数が定められていて、その合計の費用に対して保険が適用され、費用の一部を患者側が負担します。

 これに対し、緩和ケア病棟の認可を受けている場合、一日の医療費が一律いくらと定められています。その額は1995年3 月現在で31100 円(2012年現在37800円)です。定額制ですが、この額はもともと一般病棟で実際にかかる額をべースに定められたものです。

 患者側の自己負担額はその保険の種類により、医療費総額の一割負担( 社会保険本人) 、二割負担( 同家族など、なお社会保険家族の二割負担は入院の場合で、外来の場合は三割負担) 、三割負担( 国民健康保険など) となっています。

 しかし、高額医療費助成制度のもと、月額が高額になった場合、一力月につき通常63000 円(2012年現在80100円)までを負担すればよく、加えて、社会保険では附加給付が受けられます。( 詳細は【80】一日あるいは一カ月の出費はいくらくらいになりますか? 」をご覧下さい。)

 さらに、入院時の食事について、94年10月から一日につき1900円のうち600 円を負担することになりました。これは保険の種類にかかわらず定額で、かつ高額医療費助成の対象となりません。このことは、ホスピスだけでなくどの病院でも同じです。また、この額は所得により一日450 円、300 円、200 円に減額されることがあるほか、逆に、患者側の希望により特別メニューを追加した場合は別途その費用の支払いが必要です。また、96年10月からは一日800 円に値上げされます。
 
 なお、ホスピスは個室の利用度が高く、個室料金の支払いが必要な場合が多いのですが、一般病棟にも個室料の適用がありますから、この点でもホスピスと一般病棟の制度上の費用負担は同じです。また、個室料はどこでも高額医療費助成の対象にはなりません。



【78】差額ベッド代(個室料金)は一日につきどれくらいですか?
 差額ベッド代は一律ではなく、その額はホスピス(緩和ケア病棟)によって異なります。いわゆる個室料で、一日につき2000円、4000円からほぼ1000円きざみで8000円まで、また10000 円、12000円、15000 円、16000 円などいろいろです。特別室は15000 円、25000 円、27000 円、30000円などとなっています。このように金額がまちまちなのは、地域による差、そのホスピスの成り立ち、運営の方針や仕方による違いなどによるものと考えられます。

 緩和ケア病棟の認可を受けている場合、差額ベッド代を徴収できる部屋は、当該病床数の50% 以下という規定がありますので、二人部屋や三人部屋、四人部屋が差額ベッド代なしとしても、残りのすべての個室に差額ベッド代がかかるわけではありません。

 たとえば、北側の部屋は差額ベッド代なしで運営しているホスピスもあります。また、部屋は同じ広さでも、そこに備える器具備品を違えることによって、差額ベッド代の必要な部屋とそうでない部屋とに分けているところもあります。ホスピスの個室はすべて差額ベッド代が必要だと思いがちですが、必ずしもそうではないのです。

 差額ベッド代をまったくとらないホスピスも一カ所あります。ここではその分の費用は病院がそのほかで行っている事業全体の経営のなかでまかなっています。なお「【81】費用が負担しきれなければ入院できませんか? 」のとおり、家庭の経済的事情を勘案し、相談に応じて差額ベッド代減免の措置をしてくれるホスピスもあります。



【79】入院費用のほかに雑費はかかりますか?
 
 多くのホスピス(緩和ケア病棟)が、「室料を除く保険外費用はなく、電話代、新聞代など実費のみです」と紹介しています。

 雑費を比較的詳細に表示しているところもあります。あるホスピスでは室料差額のほか、ファミリーキッチン使用料が一日100 円、家族用寝具使用料が一日500 円、電気器具使用料が一点につき一日20円、このほか使用に応じ、一日あたり、エアーマット使用料500 円、ウオーターマット使用料600 円、おむつカバー洗濯料一枚 300 円、おむつ代一組230 円( 六組1300円) 、コインランドリー一回100 円(30 分) 、私物洗濯代( 付添いのない場合、業者委託で毎週一回引取りで翌週できあがり) 一カ月5200円、 となっています。こうした雑費は、一般病棟でも使用に応じて等しくかかるものであることはいうまでもありません。



【80】1日あるいは1カ月の出費はいくらくらいになりますか?
 
 一日の出費としては、各種保険の自己負担分、つまり医療費および食費の一部負担金と雑費および前述の差額ベッド代( 個室料金) があります。医療費の一部負担額は1995年3月現在、一日あたり、以下のとおりです。(2012年現在は下表を参照してください。)

老人( 全国で適用、70歳以上) 、福祉( 東京都で65歳以上の人に適用、所得制限あり) どちらかの医療証をもっている人700 円

・社会保険本人3130円( 一割)

・社会保険家族6250円( 二割)

・国民健康保険9380円( 三割)

・退職者医療受給者本人6250円(二割)

・同家族9380円(三割)

 なお、このうち30円や50円の端数は、地域による加算部分を含む金額で、都心部などの病院ではもっと高いところがあります。

 この医療費の一部負担金に、通常、一日600 円( 前述のとおり、所得によりこれより低額の場合もあり、逆に希望による特別メニューの場合は追加支払いが必要です) の食事費用の一部負担が加わります。前述のとおり保険の種類にかかわらず定額です。

 医療費の一部負担金は、高額となれば、高額医療費助成対象となり、月63000 円をこえる部分は還付されます。また、入院三カ月をこえると37500 円をこえる部分が還付されます。つまり月間の医療費自己負担額は月最高63000 円となります。ただし、還付は三カ月〜半年後くらいとなりますので、そのあいだ手持ちの現金で対応する必要があります。

 社会保険についてのみは、前述の一カ月63000 円をこえる部分に対する法的給付のほかに通常、附加給付があります。健康保険組合事業運営基準に基づき、各健康保険組合の規約によって、自己負担額は最小で3000円まで抑えることが認められています。つまり、自分で払うのは月3000円だけというケースも出てくるのです。

 実際、大手( 企業) の健康保険組合では附加給付により、自己負担額はまれに3000円、通常、5000円とか6000円、8000円、10000 円などとなっています。附加給付は通常、本人、家族とも同様の金額で認められ、一律63000 円をこえる医療費について法定給付として還付を受けたあと、63000 円についてさらに最大60000 円まで附加給付として一力月後などに還付されている場合があります。

 実際に患者さんの一カ月の自己負担額を試算してみましよう。サラリーマン( 社会保険本人) で個室に入り家族が付添った場合、合計393000円となります。この内訳は以下のとおりです。

・医療費の自己負担 10000 円( 高額医療費助成のもとでの医療費の一部負担、一カ月63000 円のうち附加給付により自己負担額が10000 円の場合)

・食事代の一部負担 18000 円(600円×30日)

・雑費 65000 円

  ・ウオーターマット使用料 15000 円(500円×30日、ホスピス(緩和ケア病棟)によっては無料)


  ・おむつ代 39000 円(1300 円×30日、一日六組使用の場合)

   ・コインランドリー使用料 3000円(100円×30日)


  ・ファミリーキッチン使用料 3000円(100円×30日、ホスピスによっては無料)

  ・家族用寝具代 15000 円(500円×30日)

・小計 93000 円( このうち比較的多くが雑費)

・個室料金 300000 円(10000円×30日)

・合計 393000円
 
 なお、この試算では家族の食事代、電話代、新聞・テレビ代金などは別になっています。


ホームページ作成者注釈 2013年5月改訂


 
【77】〜【81】の中の金額は1995年現在のものです。

 2016年現在では、緩和ケア病棟一日入院費は、

   1. 30日以内     49260円
   2. 31〜60日     44000円
   3. 61日以上     33000円

で、患者負担は、下表のようになっています。
(* 2012年現在の一カ月の自己負担額試算を下に記しました。)

                        * 2012年4月1日現在も同じです。



高額療養費の月別自己負担限度額(平成24年9月30日現在)

  外来・入院区分 所得による区分
上位所得者* 一般 低所得者*
70歳未満の方 外来+入院(個人ごと) 150,000円強 80,000円強 35,400円
70〜74歳の方 外来(個人ごと) 44,000円 24,600円 8,000円 15,000円
外来+入院(世帯ごと) 80,000円 62,100円 24,600円
注)上位所得者とは概ね年収600万円以上の方をいいます。また、0〜74歳の低所得の区分は低所得者TとUの2つに区分されます。Uについては、年金年80万円以下等の方を含みます。
なお、70歳以上で、所得が「一般」区分の方の自己負担限度額について、平成20年4月から1年間は、外来+入院は44,400円、外来は12,000円に据え置かれています。

がん治療費.com 参照)



必要な医療費(保険点数)が詳細に掲載されています。
緩和医療に要する治療費の概算について紹介しています。



* 2012年現在の一カ月の自己負担額試算

 2012年現在の一カ月の自己負担額を試算してみます(これは目安です。詳細は当該医療機関に直接お問い合せ下さい)。

・医療費の自己負担 80100 円(一般、3割負担で、自己負担限度額*  80100円の場合)

・食事代の一部負担 23400 円(1食260円×90回)

・雑費 65000 円

  ・ウオーターマット使用料 15000 円(500円×30日、ホスピス(緩和ケア病棟)によっては無料)

  ・おむつ代 39000 円(1300 円×30日、一日六組使用の場合)

  ・コインランドリー使用料 3000円(100円×30日)

  ・ファミリーキッチン使用料 3000円(100円×30日、ホスピスによっては無料)

  ・家族用寝具代 15000 円(500円×30日)

・大部屋の場合 計 168500 円(雑費は医療機関によって異なります)

・個室の場合 個室料金 300000 円(1日10000円の個室×30日) を加えて

         計 468500 円(個室料は医療機関によって異なります)


(*高額療養費とは、病院などの窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる目的で支給される制度。1ヶ月間(同月内)に同一の医療機関でかかった費用を世帯単位で合算し、自己負担限度額を超えた分について支給される。

 原則としては、保険者に対し高額療養費支給申請書を提出することで自己負担限度額を超えた分について後に支給されるが、保険者によっては支給申請書を提出しなくても自動的に支給される制度を採っていることがあるため保険者に確認が必要である−Wikipedia参照)




【81】費用が負担しきれなければ入院できませんか?
 
 ここで費用が負担しきれない場合とは、主として個室料金が問題となっている場合が多いと考えられます。


 これに対しては、個室料金の支払いが困難な場合にはソーシャルワーカーが相談にのり、一定の基準によって減免措置のとれるホスピス(緩和ケア病棟)があります。この場合、たとえば個室料金が10000 円のところを、3000円なり5000円なり7000円なり全額なりが免除になることがあります。

 しかし、この個室料金減免措置の対象となる個室はあくまで医療上、治療に必要であるとの判断が必要、となっています。他人と同室がイヤだからという理由での個室希望には減免措置は講じられないということです。なお、このホスピスでは減免分は病院が負担をしています。

 同様の措置ができるようになっているホスピスはほかにもあります。これらのホスピスでは、「医療費など経済上のことで心配のある人は、係( 医事課、相談室・ソーシャルワーカーなど) に気軽にご相談ください」と案内してい ます。

 費用が負担しきれない人は差額ベッド代の必要な個室は遠慮してもらい、減免措置は原則としてしない、としているホスピスもあります。ここでは例外的な減免措置は生活保護を受けている人に限定しているようです。




 ホスピス(緩和ケア病棟)とは 

【82】ターミナルケア、ホスピスケア、緩和ケアの違いは何ですか?

 これらはいずれも終末期医療のあり方を言い表す言葉です。ほぼ同じ目的と内容を意味していますが、言葉のもつ歴史と使われ方に微妙な違いがあります。

「夕ーミナルケア」は、1950年代〜60年代の欧米の文献に登場しました。終末期医療を総称する一般的な言葉として使われています。この時期の代表的人物は有名な『死ぬ瞬間』を著したキューブラー・ロスです。死が間近な人に対する看護、終末期のケア一般のことを意味します。

  「ホスピスケア」は、主としてイギリスで70年代に使われはじめ、英語圏の文献では「ターミナルケア」に徐々にとってかわるようになっています。そして、むしろ終末期医療一般を指すものというより、イギリスの聖クリストファー・ホスピスに始まり、世界的に普及しつつある終末期医療への新しい取り組みを象徴する言葉として使われるようになっています。その中心的人物は聖クリストファー・ホスピスの創設者のシシリー・ソーンダースです。死を見つめつつ死にゆく人に対して積極的に手を差しのべ、肉体的、精神的苦しみを取り除くケアをいいます。

  「緩和ケア」(パリアティブケア)は、70年代後半からイギリスで使われはじめ、80年代にカナダを中心に使用され、アメリカ、オーストラリアなどに伝わりました。ホスピスケアとほぼ同義語として使われていますが、ホスピスケアの考えを核として考え方を広げたもので、がんのみならずエイズなどほかの不治の病気に対しても適用されています。

 今日、一般に緩和ケア病棟(パリアティブケアユニット、PCU)という呼称は一般病院、専門病院でホスピスケアを行う専門病棟を意味しています。なお、日本での「緩和ケア病棟」という呼称は、国立がんセンター東病院の前身である国立療養所松戸病院で導入されたものです。

  いずれもケアの内容に、本質的な差異はありません。



【83】厚労省認可緩和ケア病棟とは何ですか?

 1987年7月から89年5月まで、厚労省は、末期医療についての今後のあるべき姿とその実現のための方策について、関係専門家による「末期医療に関するケアの在り方の検討会」(委員長森岡恭彦東京大学名誉教授、委員に柏木哲夫淀川キリスト教病院名誉ホスピス長、武田文和埼玉県立がんセンター総長など)を設置しました。


 そして、同検討会の報告書をもとに、89年5月1日の診療報酬改訂で、末期がん患者に対し緩和ケアを提供する病棟に係わる入院料(緩和ケア病棟入院料)が新設されました。なお、この検討会と並行して別途「がん末期医療に関するケアのマニュアル」が作成されました。

 同入院料は、末期がん患者に対する入院、処置、薬剤等の費用すべてを包括した点数として、当時、患者一人・一日あたり定額2500点(25000円)と設定したものです。なお、この金額は、その後92年4月に30000円、94年4月に33000円に改訂、さらに、94年10月からは基準給食費用1900円が別扱いとなり、31100円となりました。

  適切な末期医療の提供を確保する観点から、この点数を算定するためには病棟に関して厚生大臣の認可を要することとしていましたが、規制緩和の流れのなかで、94年10月から都道府県知事への届け出認可制に改められました(この場合、公式には認可でなく受理といいます)。なお施設基準については変更ありません。

  承認の基準は以下のとおりです。

〈対象疾患〉末期の悪性腫瘍患者(余命推定約六力月以内のがん患者の意味です)、または後天性免疫不全症候群(エイズのこと)に罹患している患者(エイズは94年4月から加えられました。エイズホスピスが認められるようになったわけです。)

〈ケア内容〉「がん末期医療に関するケアのマニュアル」(厚労省・日本医師会編)に準拠すること

〈施設基準〉

@当該病院の医師の員数が、医療法の基準を満たしていること

A当該病院が基準看護(または新看護*作成者注釈)の承認を受けていること

B当該病棟に(以下、同)、専任医師が常勤していること

C看護婦が患者1.5人に一人以上勤務していること

D患者一人あたりの病室の広さが8u以上あること

E患者一人あたりの病棟の広さが30u以上あること

F個室がおおむね50%以上あること

G患者家族の控え室(宿泊室)を有すること

H患者専用の台所を設けてあること

I面談室を設けてあること

J談話室を設けてあること

K病院全体が「特定医療費に係わる療養の基準」を満たし、当該病棟においては差額ベッドが50%以下であること

L入退棟を検討する判定委員会が設置されていること


ホームページ作成者注釈 : 2012年現在では、少し違いがあります。

緩和ケア病棟
入院料1日当たり 30日以内 4791  (47910
治療による加算 な し
看護基準 7:1(看護を行う看護師の数が、常時患者7人に1人以上)



緩和ケア病棟入院料の施設基準が掲載されています。




【84】厚労省および都道府県認可緩和ケア病棟はどの病院にありますか?
 
 厚労省認可緩和ケア病棟は、1995年3月現在(2010年11月1日現在)、14(205)の病院にあり、ベッド数で合計299(4099)床、全国に散在しています。

 


現在の全国緩和ケア施設一覧が掲載されています。
現在の全国緩和ケア施設一覧が掲載されています。




【85】ホスピス(緩和ケア病棟)の施設の形態にはどんなものがありますか?その例もあげて下さい。


 施設としてのホスピスには次の五つの形態があります。緩和ケア病棟の認可を受けている18施設を含め全国で30余りあるホスピスのうちの代表的な例は以下のとおりです。


@院内独立型 一般病院の同一の敷地内に存在しながら、一般病棟とは独立したホスピスとしての建物をもつものをいいます。例としては聖隷三方原病院ホスピス、救世軍清瀬病院ホスピス、国立がんセンター東病院緩和ケア病棟、桜町病院聖ヨハネホスピス、国立療養所西群馬病院緩和ケア病棟があります。

A院内病棟型 一般病院の一部の病棟(最上階が多い)をホスピスに利用するものです。例としては淀川キリスト教病院ホスピス、東札幌病院緩和ケア病棟、福岡亀山栄光病院ホスピス、坪井病院ホスピス、上尾甦生病院緩和ケア病棟、長岡西病院ビハーラ病棟、富山県立中央病院緩和ケア病棟、神戸アドベンチスト病院ホスピス、横浜甦生病院ホスピス、藤田保健衛生大学七栗サナトリウムなどがあります。

B院内分散型 独立した建物や病棟をもたず、病院内でチームがホスピスケアを行うものをいいます。八日市場市民総合病院、昭和大学病院、喜多病院などが該当します。

C在宅ケア型 入院施設をもたず(あっても短期入院のみ)在宅ケアを主としたホスピスケアを行うものです。ホスピスケア研究会などが該当します。

D院外独立型 一般病院とは無関係に空間的にも独立して存在するものです。イギリスにはこの型が多いのですが、日本では唯一、ピースハウス病院が該当します。



【86】日本のがんの現状(死亡者数、罹患率)はどうなっていますか?

 日本でがんが脳卒中を追い越して、死因の第一位になったのは1981年です。その後もがんによる死亡者は増え続け、今日では、日本全国のがん死亡者数は年間約23万人以上で、全体の死亡者80数万人のうち四人に一人はがんで亡くなっていることになります。なかでも働き盛りの55歳から59歳までの男性では、亡くなった人の五人に二人ががんで倒れています。


  日本人のがんの特徴は、胃がんが多いことで、たとえば塩分の取りすぎが原因といわれてきました。最近では塩分を控えるようになったことや、診断法や治療法の進歩で胃がんによる死亡は減少し、これに対して肺がんによる死亡者が急増、93年に年間死亡率として男性では胃がんを抜きました。男性では肺がんの要因の七割は喫煙とされていますが、肺がん検診の効果は胃がんほどではなく、検診でみつかったときにはすでに転移している場合が多く、治癒を困難にしていると思われます。

 がんの専門病院では、平均50-60%ぐらいのがんを治せるようになっています。しかし、一方で、治療成績の良くない肺、肝臓、胆のう・胆管、膵臓などのがん、いわゆる「難治がん」の占める割合が1985年の27%から2015年には41%に増えると見込まれています。


人口動態統計 日本の人口に関する統計が載っています。
厚生統計要覧 日本人の疾病に関する統計が載っています。
このページは、各種医学雑誌などから収集した「がんに関する最近情報」を要約したものです。




【87】世界のホスピスの歴史はどのようなものですか?

 前述のように、ホスピスの原型というべきものは古代からありました。そして、中世の初期にはヨーロッパ中の主な都市、町や峠、河の渡し場などたくさんの場所にホスピスがあって、多くの病める者・老いた者・貧しい者を迎え入れました。


 キリスト教精神がこれを可能にしていたのですが、宗教改革後、多くの修道院が閉鎖されますと、ホスピスの活動も衰退の時期を迎えました。さらに、産業革命によって弱い者は不用な者となり、医学の発達は「病人よりも病気をみる」傾向を生みだしました。

 しかし、この時代にも中世からの伝統を守る人はいて、17世紀初頭、フランス人司祭ヴィンセンシオ・ア・パウロは看護修道院を建てました。その修道会員の献身的な働きによって、ホスピスはふたたびフランス中に広まり、そこで実践された思想は、現代ホスピス運動の原点となりました。

 フランスのホスピスに触発されて、ドイツでは18世紀にカイザースヴェルトが誕生しました。看護のための女性の集団をもつ、史上初のプロテスタントの病院で、19世紀にかけてヨーロッパ各地にこうした運動が次々に育っていきました。

 このカイザースヴェルトに学んだイギリス人エリザベス・フライやフローレンス・ナイチンゲールといった人々が、看護をその原点に戻すことに貢献してきました。

  19世紀中ごろ、アイルランドのダブリンにメアリー・エイケンヘッドによってアングロ・サクソン圏で最も古いホスピスが建てられ、現在まで続いています。1906年にロンドンで作られた聖ジョセフ・ホスピスはこれに直接つながるものです。また、19世紀末にはニューヨークにもセント・ローズ・ホームやカルヴァリー病院が建てられました。

 現代ホスピスの歴史は、シシリー・ソーンダースが1967年に創設したロンドンの聖クリストファー・ホスピスに始まります。



講演『今、世界のホスピスでは・・・』  講師 アルフォンス・デーケン  上智大学教授




【88】外国のホスピスと比べた、日本のホスピスの特色は何ですか?

 イギリスやオーストラリアでは、治療主体の施設である病院と、介護主体の施設であるホスピス、そして家庭の役割が比較的明瞭で、相互の関係は均等に保たれていますが、アメリカでは、ホスピスの大半は在宅ケアのための組織で、家庭とホスピスは役割としても介護の場所としても重なっていて、区別は難しい状態であるといわれています。

 これに対し、カナダと並んで日本では、ホスピスは病院の一機能という見方が強く、病院内の施設として捉えられています。とくに、日本の場合、在宅ケアのシステムが遅れており、病院とホスピス、そして家庭との連携がいまだに乏しいのが現状です。

 このシステムの違いは、各国の医療制度、医療保険制度などの社会経済的要因によって規定されるもので、どのモデルが優れているかは簡単に比較できるものではないと思われます。

 日本のホスピスが欧米のホスピスと違う点としては、患者さんに自分の病名や病状、ホスピスとは何かについて必ずしも十分な認識がないこと、また、前述のとおり、いわゆる延命治療が一般的に行われることはないにしても、しばしば、がんに対する治療行為を全面的に放棄しないこと、などがあげられます。明確な死生観や信仰心に乏しいこと、ボランティア活動の未発達、経済的支援体制の弱さなども指摘されています。



【89】ホスピス(緩和ケア病棟)はどれくらいの広さがあるのですか?

 病室の広さについて、一般病棟の一部の階をホスピスにあてている場合、一般病棟であれば約60床の空間に約20床しかおかない、つまり、ホスピスの広さは一般病棟の約3倍となっている例があります。これにより、緩和ケア病棟の認可基準である患者1人あたりの病棟面積、30uをかなり上回る広さになっています。

 ホスピス病棟全体の広さについては、ベッド数によりますが、従来700〜900uが多かったように思われます。ところが、1993年秋と94年春に完成した首都圈とその近郊にある2つのホスピスの場合、1つは3100u、もう1つは 1500uと大変広く大きなサイズとなっています。家族の宿泊室や研修室、研修宿泊施設、ホールなどを設けて、1部2階建になっているからですが、これに伴い1床あたりの病陳の広さは、厚労省基準を大幅に上回る75uや140uにもなっています。

 このようにホスピスの広さには幅があります。少なくとも院内病棟型と院外独立型の2種類のホスピスのあいだでは規模としての違いがあるといえるでしょう。しかし、施設の大小はそこで提供されるケアとは直接の関係はありません。

 また、ホスピスといえばすぐに真新しく豪華な施設を想像する向きもあるかもしれませんが、従来の建物の一角(または別棟)を改造してホスピスを設置しているところもあります。厚労省認可緩和ケア病棟14施設のうち半分近い6施設がこの改造ホスピスです。なかには、建築後10数年たった病棟の1部を改造したホスピスもあります。これらは今後、ホスピスが全国に沢山できることが望まれるなかで、一般の病院でもホスピスを併設することが可能であることを示唆するものといえるでしよう。



【90】ホスピス(緩和ケア病棟)の病床数(個室、相部屋)はどれくらいですか?

 ホスピスのベッドの総数は、8床や13床のところから30床までいろいろですが、20床前後のところが約半数を占めています。大半が個室で、個室ばかりのホスピスも1カ所あります。相部屋は2人または4人部屋で、通常、これが2室あります。2人部屋と4人部屋の両方あるところもいくつかあります。3人部屋が2室あるホスピスもあります。3人部屋、4人部屋そして5人部屋を各1室ずつ有しているホスピスもあります。

 多くのホスピスが特別室をもっていますが、大半は1室です。和風の病床としては畳個室や畳部屋、特別室に和室がついているところもありますが、家族室は別として、和室の病室をもっているホスピスはそう多くはありません。



【91】スタッフの数、構成はどうなっていますか?

 どのホスピス(緩和ケア病棟)にも専任の医師が1名います。専任の医師が2名以上配属されているホスピスもあります。このほかに兼任の医師か通常、1名おかれています。必要に応じ他科の医師が随時応援、あるいは個々の患者さんの診察には併設一般病棟の担当の主治医があたるところもあり、兼任の医師の数は10名前後にのぼるホスピスもいくつかあります。精神科医を兼任や非常勤やパートでおいているところもあります。

 ナースはベッド数に応じて必要な人数が変わります。緩和ケア病棟の認可基準では、患者1.5人に対してナース1人以上、つまり患者3人にナース2人以上の勤務となっていますが、実情はベッド数20床のところでナースは17名など、多くのホスピスで基準を上回る数のナースが勤務しています。

 ソーシャルワーカーは一般病棟兼任で1名から数名というところと、専任1名というところがあります。

 栄養士、薬剤師が通常、各1名、これは一般病棟と兼務のところが多いとみてよいでしょう。このほか、理学療法士、作業療法士、心理士などは、一般病棟と兼務でおいているホスピスがいくつかあります。看護助手は通常1〜3名おかれています。

 ホスピスならではのスタッフとして、宗教関係者(病院つき牧師であるチャプレン、ビハーラ僧、神父、シスターなど)も1名から数名、専任または一般病棟兼務で勤務している場合があります。また導入を計画中のところを除いて、例外なく通常数十名のボランティアが加わっています。

 このようにホスピスでは、患者さんの数の割にスタッフの人数と種類が多いことが特色となっています。



【92】どれくらいの患者さんをお見送りしているのですか?

 年間入院患者数は当然のことながらベッドの数によって異なります。300名近いホスピス(緩和ケア病棟)も1カ所ありますが、そのほかでは200名前後のところや100名前後のところがともに複数あるほか、約40名〜80名のところもいくつかあります。

 死亡退院率はいくつかのホスピスで、約80%と報告されています。残りの約20%は主として症状緩和による退院、転陳です。また、お見送りする患者さんの数は、これもべッドの数によりますが、月平均18名、または1.7日に1名という報告もあります。満床で20名余りの患者さんのうち、ほぼ5日に3名が亡くなられることになります。最近の傾向では、重症の方が入院されることが多く、ホスピスの平均在院日数が短くなってきています。



【93】在院日数はどれくらいですか?

 平均在院日数は、約30日前後のところがホスピス(緩和ケア病棟)全体の半数くらいを占めています。ほかでは 50日前後から約3カ月と報告しているところもあります。在院の最短は1日24時間に満たないほんの数時間、最長は1年数カ月という人もなかにはおられますが、認可制度のもとでは、入院にあたって余命が推定6カ月以内という条件があるため、そう長くはありません。

 いくつかのホスピスで、統計上、前述のように平均在院日数が短くなってきています。たとえば、あるホスピスでは1984年に約52日間であったのが、91年には約30日間になったと報告しています。ここではその理由として、@ホスピスケアが軌道にのり、訪問看護システムが充実してきたので、症状のコントロールがうまくいけば退院し、ぎりぎりまで自宅で過ごすことができるようになった、A長期にわたる入院が必要な場合は、一時的に他院へ転院してもらい、本来のホスピスケアが必要になった時点でもう一度ホスピスに入院してもらうという工夫をしている、以上の2点をあげています。



【94】「死への準備教育」とはどういうものですか?どうしたら受けられますか?

 「死への準備教育」とは、死を身近な問題として考え、生と死の意義を探究して、必ず訪れる自分自身と愛する者の死を迎える心構えをあらかじめ習得すること、と定義されています。

 死は誰にでもいつと限らず訪れるものです。また、その愛する家族・友人の死に直面することも避けられないことです。人間は予測される大きな出来事に対しては準備を整えてから臨もうとします。とすれば人生最初にして最後の未知の出来事である「死」に対してこそ、それについて、学び準備をすべきでしょう。実際、なんらかの形で学び心構えのあった人は、身近な人の死に際しても、自分自身の死に際しても、その受容は早いようです。

 「死への準備教育」という言葉は、1959年に来日、以来、日本を拠点に活躍中のアルフォンス・デ−ケン上智大学教授がわが国に紹介、導入した考え方からきていますが、根本的な概念は人間の歴史とともに、もちろんわが国にもあったと言えます。ですから、そのための特別な講座がある、といったものではなく、生と死を扱った書物・映画・講演・話しあい・人生そのもの等々、何からでもその学びはできるのです。大切なのは「死」に対し心を開くという態度だといっていいでしょう。

 しかし、わが国では人々の死に場所が家庭から病院に移り、死が身近なものでなくなってきていることも事実です。1947年には日本人の91%が家庭で死を迎えていましたが、90年には75%が病院で死を迎えています。

 欧米では学校の通常のカリキュラムのなかに死について学ぶことが取り入れられています。わが国でも小、中、高、大学、医学生や看護学生、社会人などあらゆるレベル、範囲で死への準備教育が導入されることが強く望まれます。


講演死者から見た生者  養老孟司 解剖学者・東京大学医学部名誉教授
講演自分の死をどう物語るか  柳田邦男 ノンフィクション作家
ホスピスニュ−ス要覧−ホスピス
ホスピスニュ−スの中から「ホスピス」に関するものをまとめてあります。
日本を生き抜くためのサイト。私たちの生きにくさ、 生きづらさを助ける・考える多くの情報を提供しています。




 ホスピスボランティア 

【95】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアはどういう人たちですか?

 ホスピスのボランティアは家庭の主婦が中心で、学生もかなりいます。しかし、ボランティア活動が少しずつ普及してきたのに伴って、OLや男性の会社員、また定年退職者などもみかけられるようになりました。元医師や元ナースもあれば、常時かなりの数のお坊さんが交替でボランティアとして患者さんの宗教的ニーズに応えている、というユニークなホスピスもあります。

 年齢的には40代、50代が中心のホスピスや、平均年令約50歳の例が多く、この年代が多いようです。性別では女性が圧倒的に多いといえます。

 地域の人たちが人数の大半を占めるとみてよいでしょう。しかし、ホスピスの数がまだ少ない現在、地域の人に限らず、片道2時間前後かけて通うなど、かなり遠方からの参加もまれではありません。毎週、泊まりがけでホスピスでボランティアをしている人もあります。

 ホスピスがはじめてのボランティアの場所、という人が少なくありません。また、ホスピスを開設してはじめて病院としてボランティアを導入した、というところも多いようです。

 これらのことはホスピスの新設や存在が、病院や地域に新たなボランティアを生み出していることを示しています。ホスピスだからこそボランティアに行くという人がいるのです。ホスピスのボランティアから一般病棟のボランティアに活動の幅が広がることや、その逆もあります。ホスピスはボランティアの誕生に貢献しているといってよいでしょう。



【96】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアはどんな活動をしているのですか?

 ホスピスのボランティアの奉仕の内容には次のようなものがあり、なかなかバラエティに富んでいるといえます。ただし、どのホスピスでも以下のすべてが行われているのではなく、受付、事務室雑用やギフトショップ、運転ボランティアなどは一部のホスピスでしか行われていません。

・花瓶の水替え ・お茶出し ・配膳、下膳 ・食事介助 ・散歩の付添い ・買い物の手伝い ・入浴の世話 ・清拭、整髪、爪きり ・病床の整理 ・シーツ交換の手伝い ・ティータイムの準備 ・いろいろな行事の企画、準備、手伝い(ひなまつり、七タ、お月見、クリスマスなどの行事の際の会場作り、ポスターやプログラム作り、飲み物、料理の準備、演奏や合唱、参加者の接待、参加できない患者さんへの飲み物、料理、歌のサービスなど)  ・カード作り(患者さんのお誕生日カード、ご遺族への手紙など)  ・園芸や庭の手入れ(草取り、芝刈り、落ち葉ひろいなど) ・排泄時の拭き取り布作り ・ガーゼたたみ、おむつたたみ ・ホスピス見学者の案内や接待 ・キッチンや家族室の整理 ・図書整理 ・共用部分や空室の掃除 ・受付 ・事務室雑用 ・ギフトショップ ・運転ボランティア ・ベッドカバーなどの手作り品提供 ・患者の話相手など 

 実際の活動にあたっては、活動内容によりグループ分けをしているホスピスもあります。たとえば、あるホスピスでは切手グループ、手芸グループ、おやつグループ、園芸グループ、ライブラリーグループ、コーラスグループなどのグループがあります。また、グループ別に毎月1回2時間などの頻度でミーティングを開き、体験交流・情報交換、問題解決の具体的な処理方法並びに新しい知識の勉強およびボランティア間のコミュニケーションを図っているところもあります。



【97】ボランティアの人数はどれくらいですか?どのような頻度で奉仕しているのですか?

 ボランティアの登録人数例は、あるホスピス(緩和ケア病棟)では70人、別のホスピスでは80人です。ほかの例では病院全体で90人ほど、うちホスピスが約 30人というところもあれば、病院全体で160 人、うちホスピスは14人というところもあります。途中で都合が悪くなって来られなくなる人があるため、毎年新年度などにボランティア登録の更新を行っているところが多いようです。

 奉仕頻度ですが、一般に病院ボランティアの場合、週3、4時間以上、月3回以上の奉仕が可能な人、などと比較的厳しい条件がつけられています。ホスピスでも毎週4時間以上、隔週の人は各回8時間以上可能な人で、かつ、1年以上続けられる人に限る、と決めているところがあります。

 しかし、一般にはこの点、それほど厳しくなく、たとえば週2時間以上、年間70時間以上の奉仕であればよいというところもあります。ここでは 1回の奉仕時間は2〜6時間くらいのあいだで、本人の無理のない範囲で行われています。

 また、1回何時間、1カ月何時間といった時間の基準を設けず、月1回しか参加できない人でも受け入れているホスピスもあります。ホスピスボランティアと一般病陳のボランティアとをはっきり区別していないところもあります。

 実際の活動統計ですが、あるホスピスの場合、1年間延べ人数 1075人、月平均 90人、毎月平均実働奉仕時間 375時間、1人1日平均奉仕時間 4時間と報告しています。



【98】ホスピスボランティアは必ずベッドサイドへ行けるのですか?

 ホスピスボランティアというとすぐに、ベッドサイドで患者さんの悩みを聞いている姿を想像しがちですが、実際にはホスピス(緩和ケア病棟)によって、ボランティアと患者さんとの直接の接触を、とくには禁じていないところがある一方、原則として許可していないところもあります。

 なお、後者の場合も各部屋の花瓶の水替えなどで患者さんの部屋に入り、患者さんから声をかけられたりする機会はあるといえます。

 また、ベッドサイドヘ行けるボランティアは、一定の研修期間を経て、かつ本人の適性をみたうえで、というふうにボランティアの選抜をしているところもあります。

 あるホスピスでは、ベッドサイドヘ行けるボランティアの条件として、メンバーと事務局が次についてほぼ認めた人に限る、としています。 @人の話をよく聴けること、Aチームとしての働きができること、Bおしゃべりでないこと(守秘義務)、です。



【99】ホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアになるのに資格、試験などはありますか?カウンセリングの勉強をしておかなければいけませんか?

 一般的資格、試験はありません。しかし、通常、ホスピスでは面接を行ってから受け入れています。その場合、過去1年間以内に身内や親友を失った、いわゆる喪失体験をした人は遠慮してもらうことになっています。米国でもそうしていますが、これは自らの喪失体験からの完全な立ち直りのほうが先決だと考えられているからです。喪失の寂しさを忘れようと、がむしゃらにボランティアなどにうちこむと、かえって悲嘆が長引くという報告は少なくありません。

 さらに、一定期間の打合せや研修を経てはじめてボランティアとして採用するところもあります。たとえば、月1回の説明会にまず出席し、その後、月3回あるミーティングに参加し、毎回出席できない場合も、合計6回参加したあとに活動に入れるという具合です。

 別のホスピスでは、1単位2時間のクラスを3単位、これらがコースとなっていて、全部で3つのコースを終えた人しか採用しない、となっています。当初受講した50数名のうち規定の3コースを修了できたのはわずか10数名でした。なお、このホスピスでは、庭の草取りも専門的講習を受けた人でないと不可、と採用に厳しい条件を付しています。

 日本ではボランティアは誰でもやれる、という気軽さもありますが、ボランティアにも専門的知識や技術が必要です。その点、米国などではボランティアに対する教育、訓練を相当高いレベルまで行っています。わが国も次第にそうなっていくことが望まれます。

 しかし、ボランティアは最低限の教育をしたうえで入ってもらうのが良いという意見もあったものの、やりたいという気持ちを生かしていこう、それぞれの持ち味を発揮してもらおう、ということで今日に至っているホスピスもあります。

 つぎに、カウンセリングの勉強をしておかなければだめ、ということは一切ありません。心理学やカウンセリングを勉強しましたから是非ベッドサイドで奉仕したい、と申し出るボランティアは断っているホスピスもあるほどです。

 これにはいろいろな理由があります。ホスピスの患者さんは家族の付添いが多く、医療・看護の専門家以外の第三者による援助のニーズが比較的少ないこと、在院期間が平均1〜2カ月くらいと短く、たとえば週に1回ボランティアに行っても、互いに親しい人間関係を築くには時間的に無理である、などです。しかも末期の患者さんは刻一刻感情や考えが変わるといわれます。

 カウンセリングということよりも、むしろただ、そばにいてあげること、「その人のいまに寄り添う」ことこそが求められているといえるようです。



【100】実際にホスピス(緩和ケア病棟)のボランティアをしたい。どうすればいいですか?

 まず、ホスピスでは患者さんは末期の方ばかりのため、いろいろな意味での気配りが必要となります。このため、そこで奉仕するボランティアを広く一般に公募するということは行っていないようです。

 いわば口コミベースなのですが、基本的にボランティア希望者は受け入れる姿勢をとっているホスピスが多いといえます。どのホスピスでもボランティア担当者(コーディネーター)をおいていますので、その人へ電話、手紙などでボランティア希望の旨を伝えて、先方の面接などに応じることから始まります。

 面接の結果、通常その場で登録が許可されますと、ホスピス指定の履歴書の類の提出を求められます。ボランティア申し込み書の項目例は、申し込み年月日、住所、氏名、生年月日、年齢、既婚か独身か、職業、連絡先、特技または職業経験、ボランティア経験の有無・内容、宗教、ボランティア志望の動機、奉仕可能時間(何曜日の午前、午後)、とくに希望する奉仕、活動開始予定日、となっています。

 面接のほか、エゴグラム(性格判断テストの1 種)、誓約書へのサインをソーシャルワーカーが担当し、これをクリアしたうえで採用しているホスピスもあります。

 ホスピスのボランティアはナース同様、大変人気の高いものとなっています。ボランティアを希望しても当面充足しているため、すぐには受け入れてもらえないという事態も、すでにあるホスピスで起きています。


緩和ケア病棟がある病院一覧 ホスピスボランティアを募集している病院が掲載されています。(2002年1月1日現在)





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