第1話:女神が現れた夜 |
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登場人物
堂 : 堂山 淳
レ : レティ
「ジュンや、部屋はよ片付けや。」
祖母の声で目がさめた。どうやらうとうとしていたらしい。 部屋を見渡すとまだ未開封のダンボール箱がいくつか残っている。 窓から外を見ると日が傾き始めていた。多分30分ぐらい眠っていたんだろう。 そう、引越しである。 親父が仕事の関係で海外へ行くことになり、僕は今日から祖父母の家に預けられることになった。 急な事で準備が大変だったけど、学校が近くなったのはよかったと思う。
堂:「わかってるよ。」
そういって残りのダンボールを片付け始める。
とはいえ荷物の片付けは昼間のうちにほとんど終わっている。
残っているのは後3箱だけだった。
僕は近くにあったダンボールを引き寄せて片付けを再開した。
さて最後の1つを・・・あれ、こんなダンボールあったか? 明らかに引越屋のものとは違う、大根の銘柄の書かれている箱があった。 他のダンボールは引越し業者の物だから明らかに違う。 ダンボール箱の上には黒のマジックで
マサル兄貴から
と、汚い字で書いてあった。
マサル兄貴には引越しの手伝いに来てもらった。 多分そのときにいっしょに積み込んだのだろう。 箱を開けてみると、予想通り本が何冊も入っていた。 今までも何度か読み終わった本をもらっている。 趣味が似てるので貰うのは嬉しいけど・・・
堂:「なにも引越しの日に持ってこなくてもなぁ。」
壁に向かい誰に言う訳でもなくつぶやく。
普段ならすぐにでも読み始める所だけれども、今日は引越しの疲れで読む気がわかない。 題名も確認せずにダンボールの中の物を片っ端から本棚へ並べていった。 そのときその中にまじっていた本でないものに気が付かなかった・・・。
その日、引越の疲れのせいか僕はいつもより早くベットに入った。 眠る前に見た空には満月の月があたりを明るく照らしていた。
その夜、僕は寝苦しくなって目がさめた。
眩しい・・・。明かりは寝る前に消したはずなのに・・・。 仕方なくベットから手を延ばして眼鏡をかけた。
ベットから出ると、光はますます強くなっていた。 眩し過ぎて見えないけど、あそこには本棚を置いたはず。 僕は本棚に明かりの様な物は置いた覚えはないし、こんな強い光は普通じゃない。
堂:「なんなんだ?」
ちょうどその言葉を口にしたとき・・・
ドスン!!バサバサバサ・・・
堂:「は?」
なにが起きたのかさっぱりわからない。しかし光が弱まってきた。 目に入って来たものは光を放つ箱と本棚から落ちた本、そして・・・
女の子?
本棚の前には変わった恰好をした女の子が倒れていた。 着てる服装は物語に出てくるようなものだし、髪の毛の色は水色。 そして額にはあざのようなものがある。 まだ目を覚まさないのは気絶してるからだろう。 可愛そうなので体の上に積み重なった本をどかしてあげ、体を揺する。
堂:「大丈夫?」
レ:「うーん・・・」
堂:「ねぇ、大丈夫かい?」
そうするとその女の子が目をさました。
レ:「うーん、おはようございます・・・。」
女の子は寝ぼけたような顔をして答えてくれた。
堂:「君は誰?どこから来たの?」
レ:「えーと、はじめまして。私はレティーシナ・フィニル・サリュートと申します。」
堂:「レティーシナ・・・ごめん、もう一度いってくれないかなぁ。」
レ:「レティーシナ・フィニル・サリュートです。レティと呼んでください。」
堂:「で、レティさんはいったいどこから来たの?」
レ:「レテイでいいですよ。シェローティアのレイアルという町です。」
堂:「うーん。そんな国あったかなぁ。」
僕は崩れている本の中から社会科で使ってる本を取り出し、 その中から世界地図の載っているページを開いて見せた。
堂:「えーと、シェローティアってどの辺?」
レ:「変わった形の地図ですね。ラル・フェイアではないようですね。」
堂:「ラル・フェイア?地球じゃないのか?」
レ:「違うみたいですね。どうやら異世界に来てしまったみたいです。」
堂:「はぁ?」
レ:「向こうの世界で空間の歪みについて調査していたんですが、その歪みに落ちたみたいです。」
堂:「で、こっちの世界にやって来てしまったということかい?」
レ:「そうだと思います。」
堂:「うーん。夢のような話だよな。」
レ:「そういえばまだお名前まだ聞いていませんでしたよね?」
堂:「ああ、ごめん。僕は堂山。堂山淳だよ。」
レ:「すいませんが堂山さん?」
堂:「なに」
レ:「元の世界に戻る方法が見つかるまでここにいさせてもらえませんか?」
堂:「えぇ!」
違う世界からやって来たというならこの世界の事も良くわからないだろう。 そんな女の子をこのまま追い出すのはかわいそうだ。 とはいえ、おじいじゃんとおばあちゃんにはどうやって説明すればいいんだろう。
レ:「ご迷惑でしょうか?」
堂:「うーん、大丈夫だと思うよ、多分・・・。」
レ:「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします。」
こうして異世界の女の子との生活が始まった。