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活動記録-付録3 第22回「鬼、再び来訪し、人、その力を欲するのこと」追記
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GMから頂いたシナリオ資料などを掲載しています。
文章は編集していませんが、レイアウトの関係で改行を付けたり句読点つけたりはしています。

これを読めばどんなに問題が多いシナリオだったかよくわかる。
ちょっとブルーな気分にさせてくれる外伝小説つき。

PC紹介

PC1 轟鬼来人(とどろき らいと) 雷 赤・赤
白兵に特化した練気筒使い。特技は優柔不断。
ダイス目とふんぎりの悪さが災いして今ひとつ目立たなかった。
ラスボス戦にも遅刻したし。魅姫を取り戻すのに失敗し、優姫に中途半端な好意を掛けつつ、旅立ってしまった二股男。
一番の悪人はこいつかもしれない。
・ハンドアウト:
魅姫が行方不明になって三年が過ぎようとしていた。
昨今起きている美女連続失踪未遂事件がいやにでもそのことを思い出させる。
あんな思いをするのはもうごめんだ。
魅姫の妹である珠姫だけは必ず守らなければ・・・・。
その男は抜き身の刀を構えて目の前に立っていた。
使い込まれたその刃はあなたと、あなたの背後にいる姉妹に向けられている。
「邪魔だ・・・」男はそう冷たく言い放った。
こと、悪いことに関する限りあなたの勘は良く当たる。

PC2 黒崎影二(くろさき えいじ) 影 赤・黒
基本に忠実な大砲使い。特技はバイクの丸呑み。
誘拐事件の調査・解決と八頭の探索が仕事だったのだが両方とも失敗。
最後優姫に粉掛けていたのはOK。
・ハンドアウト:
今度の依頼は厄介であった。
伝説の魔人・八頭。
その逆鱗に触れれば山一つ吹き飛ばすであろうといわれる怪物だ。
そいつがこの街に来ているそいつを探し出さねばならない。
それともう一つ、ここ二月ほどで連続して起こっている誘拐未遂事件。
その資料を読むだけであなたの脳は限界に達していた。
美人の写真付きなのが救いのような気がしないでもないがここまで数が多いと美の基準さえあやふやになる。
やはりデスクワークは似合わない。
あなたは気分転換も兼ね、街に出ることにした。

PC3 凪沢御風(なぎさわ みかぜ)風 赤・紫
本編ギャグ担当の貧乏探偵。
あだ名は「ムコ殿」。
婚約者ネタなのに一番愛から遠かった気がするのは気のせいであろうか。
人の言うことを利かない上に押しが強いという素敵なお父様がいる。
暫定的に面食いな婚約者と女子高生のような義父と一持間で街を破壊できる酔っ払いの義祖父もいる。
・ハンドアウト:
オレに許婚がいるだと?
しかもその女を探すのが依頼だア?
身内から依頼される探偵行ほど情けないことはないなどと思ったのもつかの間、さらにとんでもないことを親父が言い出した。
彼女の名前は飛鳥嵐。じいさんの代にきめられた許婚だそうだ。
その写真を見て、俺は依頼を受けることを決めた。

PC4 高野零(こうの れい) 光 黒・銀
 悲劇兼悪役担当。美女連続誘拐未遂事件真犯人。
とっても暗いバックボーンと他のPCと相成れぬ目的、笑顔のシーンが作れない不幸な人。
仲間に「天上の美」使われるし・・・。
本当はNPCの役目だったのだが増えすぎちゃったのでPCにコンバートというとても難しい役どころ。
ほんと、最後まで報われないし・・・。
ちなみに彼女の名前は霧島雫。
ハンドアウト:
あなたが彼女を失ってから1年が過ぎ去ろうとしていた。
だがあなたの心にはぽっかりと虚ろな穴があいたままだ。
そんな折りあなたは一つの噂を聞いた。
生き人形。
生前の姿そっくりで、魂があるがごとき動く人型。
実際死んだはずの人間と歩いている知人を見たという都市伝説。
死者を蘇らせるネクロマンサー。
そんな人形師がこの街にいるという。
人形でも再会できるなら。
あなたは一縷の望みをかけてその男を捜すことにした。

PC5 源優姫(みなもと ゆき) 氷 赤・金
源魅姫の妹である夜族の少女。鬼の血を引く。
最初は一般人で狙われ&攫われ担当。
後半姉妹愛&略奪愛と見せ場は多かったはず。
PC1を3回ほど斬ったし。
本当はこれもNPCのはずだったんですがGMが姉妹のやりとりを一人芝居するのも興ざめだったのでPCに格上げ。
ちなみに剣道部所属。
結局恋愛バトルは姉のほうに軍配が上がってしまった。
こんなハンドアウト作る人がいたらぜひお逢いしたい。
・ハンドアウト:
君には好きな人がいた。
片思いで、打ち明けたこともないがこの想いは本物だった。
日に日にその想いは小さな胸を締めつける。
だがその人の好きな人がいた。
源魅姫。君の姉。
中睦まじく逢瀬を重ねる2人の隣室で君は眠れぬ夜をすごす。
そして夏祭りの日。
途中具合の悪くなった姉を置き去りにしあの人を強引に引き回した。
ちょっとした復讐。
だがそれは最悪の結果をもたらした。
君が悪いのにあの人は一言も攻めはしなかった。
以前と同じく大切な人の妹として接してきてきてくれる。
姉と同じ年になってもあの人はその姿勢をくずそうとしなかった。

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ついで怪しいNPC紹介(抜粋)。ネタバレ付。

飛鳥嵐(あすか らん)
元ネタは正義の盾のあの人。性格は朱色の乗り手だけど。
本名:悪朱乱姫。
死天の娘であり魔人クラスの力を持つ。属性は風。赤みがかった黒髪のおかっぱ。朱色の装いを好む。16歳ぐらいの外見年齢(「女性に年を聞くものではない」)。
古めかしい言葉づかいでさらりとおそろしいことをくちにする。
大昔、死天と御風の先祖の約定により婚約するはめになった。が、ちゃらんぽらんな御風より、死んだ恋人を思い続ける零に共感しその仕事を手伝っていた。

百池吉弥(ももち よしや)
桃太郎の末であり、死天王の一人・桃馬天として封ぜられていた。水属性。
鬼・魔性は倒さねば成らないと思っているため優姫を執拗に付けねらう。駆けるもの、羽ばたくもの、人あらざるものという三匹の妖魔を率いPC達と戦かった。
・・・途中で改心して仲間になるはずだったのだが。最後倒された後桃の花びらになって風に散っていくというとても風流な死に様を見せた。
鬼退治シナリオで髪形、三匹、ピンク色の肌、桃の匂いとまで出してもだれも気づいてくれなかった。
なんだかんだいっても鬼しか斬ってないので悪役ではない気がする・・・。

碓氷馳雄(うすい はせお)
長谷雄の末であり朱雀門の鬼。氷属性。
美女のエキスを集めホムンクルスを作成できる。
大色市の南門に住み、ゲームで勝負をし負けたら相手に奉仕しなければならないという属性を持つ。
プチ神隠しはあまりよい行いではないかもしれないが邪気はなかったはす。中盤百池に斬られリタイヤ。
零のためのホムンクルスは9部がたできていたが優姫の暴走により焼失。傷が癒え次第、零、嵐の三人でお仕事再開予定。
初期の題名「鬼が来たりて賽を振る」からわかるとおり最初はこいつが敵の予定でした。

凪沢の親父(なぎさわ の おやじ)
豪放磊落を地でいくおじさん。こういうNPCは扱い易くてよい。

八頭(やがしら)
八俣の大蛇の末。とっても強力な魔人なのだが、この話ではただのよっぱらい。

浦部楓(うらべ かえで)
御風の探偵社の受付兼お茶くみ。この話では活躍の場なし。

死天(してん)
千年ほど前に暴れ回った鬼の頭領。八頭の子供で嵐の親。
某鬼退治の集団に倒され五体を引き裂かれる。後にこの神社に封ぜられ、その強大な妖気により雑多な妖魔を追い払う役目を担っていた。
「この娘はずっとお前のことを思っていたぞ・・・。お前に会いたい・・・。お前のやや子が欲しいとな」
現在魅姫の体に寄生中。本当は
「この体は返そう。で、かわりにだれがワシの体になるのかね?」
とか言って戦闘になるはずだったんですが・・・。

源魅姫(みなもと みき)
源優姫の姉であり轟鬼の恋人。病弱だが強い霊力を持っていた。
3年前、死ぬ間際に死天と盟約を結びのその寄り代となる。中盤神社にて復活。外見は優姫とよく似ているのでプレイヤーがあっさりだまされてくれた。オープニングで失踪のシーンまでやったのにすっかり忘れさられていたらしい。
魂が半分死天なので神社から離れられない。

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酒呑童子抜粋
10世紀の末、京の都に妖が跳梁跋扈し、姫君が略奪失踪するという事件があった。
陰陽師の占いの結果、大江山の鬼の仕業とわかった。
源頼光、藤原保昌、渡辺綱、坂田金時、卜部季武、碓氷貞光、が神便鬼毒酒を飲ませ退治する。
酒呑童子の正体はいくつモノ説があり、その中にはヤマタノオロチの子供というのもある。

参考文献
「異界の日本史 鬼・天狗・妖怪の謎」「酒呑童子異聞」「長谷雄草子」その他色々

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真オープニング
三年前、優姫は調子の優れない魅姫を無理に引きつれ三人で祭りに出かけた。
途中魅姫を境内において祭り見物をし戻るとそこに魅姫の姿はない。
警察まで動因し大騒ぎとなったが結局発見されず行方不明扱いとなる。
PC1、5はそのことをとても悔いている。
その時、両親から魅姫の寿命はもって半年だということをこのとき聞かされる。
来年は来れない、そのことを知っていたので魅姫はついて来たのだ。
魅姫は祠にお参りし器となることを条件に目前に迫る死から逃れた(おまけ参照)。

OP1/イベント1 PC1 PC5
百池との邂逅。夕方。最近誘拐事件を心配したPC1はPC5の隣を歩いていた。
夕闇の中その男が現れた。後頭部で縛った髪。そして手には一振りの剣。
「お前には用はない。邪魔をするなら斬る」
PC1に一般人の前で派手な異能力の使用禁止を告げること。
他のPCの協力があって百池を追い払うもPC1スッ転んでいいとこなし。

OP2/PC2
「以上が天老院から入手した資料です。事件に詳しいものが後日参りますのでそれまでに目を通しておいて下さい。では」
鴉退場。
「あの娘、嘘ついているね。きっと美人だとみんなに思われたかったんだよ」

資料他によってわかること。
失踪するのは10代から20代の女性。
半日ほどいなくなりいつのまにか戻ってきている。その間の記憶はなく、完全に意識のない状態であったらしい。
後遺症はゼロ。逆ににきびが消えた、体重が減ったなどの報告もある。
その事件の異様さから魔性の仕業だと天老院が判断。
件数は200を越えるが半分以上勘違いか嘘。美人はプチ神隠しに遭うという噂が立ち、隠れて遊びに行ったりしたときの言い訳にしていたらしい。
結果同じ時間帯に重なる人はない。

御影小夜登場。
「この男を捜して居場所を報告して下さい」
60歳ぐらいであろうか。白髪交じりの頑丈なそうな男の写真。
「居場所を知らせてくれるだけいいのです。不用意な接触は禁止します」
「コイツの名は八頭。古より生きている魔人の一人。下手に騒がれるとこの町が消滅します」
詳しく調べると街の南側に被害が多いことがわかる。

OP3/PC3
「で、この娘を探して欲しいと」
写真には目の前の少年と赤みがかった髪の少女が移っている。
少年が細い分多少たくましく見え、男に見えないこともない。スポーツが得意そうな健康そうな少女だ。
「ああ、名前は飛鳥嵐。3日前ここに来た時にはぐれてしまった。自宅の方にも連絡は行ってないし。それと、あと・・・。お前の許婚だ」
「ひいひいじいさんからの約束だそうだ。しかしなぜおれのときじゃなったのかな。まあ、この子にお父様と呼ばれるのも悪くないか」
「あせって手出して嫌われるんじゃないぞ」

OP4/PC4
君は彷徨っていた。
「いいぞ。ただしオレと勝負してもらおう。お前が勝ったら作ってやろう。俺の手で神さえも騙す最高の人形を! 負けた場合はワカッテイルネ。代償は等価値でないとな」
そして君は勝った。
「なかなかやるじゃないか。良かろう。だが一つ問題があってな」
「今材料がない。手伝ってくれ」

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ミドル
ミドル1/PC4 嵐との邂逅。
「じゃああの女にしよう。始めてみる顔だしな」
次のターゲットは嵐。PC4が結界を張り馳雄が操り朱雀門に連れて行く。門についたとたん嵐の瞳に光が戻る。
「なんとも狭いところじゃのう」
「うぬらの力でこのワシどうにかできると思うたか」
「ふん、人間のクセに人間を襲うか。面白い」
「まあ人間にしては骨が有るか。ワシは人を探しておる。この街をあないせい」

ミドル
百地 「今度こそ逃がさん。出でよ! 駆けるもの! 羽ばたくもの! 人あらざるもの!」
駆 牙 命6 回5 HP23 2D6+6 覚醒3 IN9 防+4
羽 嘴 命5 回7 HP20 2D6+3 覚醒3     防+1
人 爪 命6 回6 HP22 2D6+5 覚醒3     防+2

と、ここまでしか確定しておりませんでした。 みんなやじうまでどんどんシーンに登場してくれたんで楽でした、おかげでPC5のガードが固くなってしまってので学校で攫かわし(犯人はPC4達)を演出。PC3が嵐に袖にされたり、うまく仲間の振りをしていたPC4にPC2が「天上の美(1シナリオ1回真実を聞き出す)」を使用したりとイベント盛り沢山。PC1がそれを聴き一人で行ってしまったため暴走中のPC5と邂逅、言いくるめに失敗し、斬られたりする。もっとモエモエのセリフでないとマスターは認めません。おかげでPC4用のホムンクルス焼失(後PC2の諫言により桃池のせいにされる)。不幸に拍車がかかる。
一方神社に残った三人の前に魅姫=死天が登場。病に臥していた魅姫の写真(PC1に一通り探して欲しいと頼まれていた)と一致しなかった為、PC5であると誤認。混乱が上昇。また一方百池が三匹を連れ登場。碓氷が斬られるがPC3の登場により事なきを得る。ようやっとPC及びNPCがほぼ総登場。神社で語りが入る。皆さん死天に同情モードに入ってしまったので、駆けるものに臭いを追わせた桃池が三度目の登場。ラスボスの昇格。パラメーターなかったので死天のデータをいじった。おかげでそれっぽい特殊能力ももたせられなかったのがちょっと残念。PC達の血脈が攻撃に偏っていたので一人ぐらい死んじゃうんじゃないかとちょっとあせった。オープンダイス万歳。みなダイス目が低くて三匹がなかなか倒れなかったし。

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エンディグ
「別にこの体かえしてやってもいいんだがかわりに誰が私の体になってくれるのかね?」
PC1、5が身代わりを申し立ててくれたのはほぼ予想道理だが、他のPCまで交代で体使わせてもいいと言い出す。みんな人良すぎ。
まあ、正解は朱雀門の鬼にホムンクルスを作らせる、だったのですが碓氷、斬られちゃうし、予備のプラーナは全部どっかいっちゃたりととにかく時間がかかる。
PC4に優先順位が高いことを主張させ、結局何も変わらないまま死天は眠りについた。

ついで個別エンディング。すばらしいことにグッドエンディングが一つもないぞ。

PC1/轟鬼来人
妹に粉を掛けつつどこかに封印されているはずの死天のもとの体を捜しに旅立っていった。

PC2/黒崎影二
「つまり失敗したのですか?」
八頭も見つけてないし、PC4らを逃がしてしまったため事件も未解決。役立たずの烙印を押される。

PC3/凪沢御風
結局婚約は解消されず。人型殲滅兵器八頭が住み着くことに。
ことあるごとに「ムコ殿」「孫は3人は欲しい」などと言われ続ける、平穏とは無縁の生活を送る。

PC4/高野零風
「次の獲物はあの女じゃ」
蘭がなぜ自分のことを助けてくれるかわからない。だが命令される方がなにも考えずに済むし、犯罪に手を染める心苦しさも半減される。
そうした日々をすごしながら最近、雫のことを思い出す時間が少し減ってきたような気がした。

PC5/源優姫
「行ってきます」
あの人はまだ帰ってこない。毎朝毎夕見上げる彼の部屋のカーテンは閉まったままだ。
近頃は毎日のように神社にお参りに行っている。姉はあれきり会えないままだがその存在をこの場所には確かに感じ取れる。
もうすぐ、もうすぐ、姉は戻ってくる。
こと、良い事にに関する限りあなたの勘は良く当たる・・・。

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おまけ外伝「恋願祀唄」
まどろみから覚醒へ。目を開け指先まで感覚が戻るのを待つ。
大丈夫。まだ私の体だ。
上体を起こしゆっくり深く呼吸する。
痛みは・・・、ない。
そのままベッドを抜け出す。
大丈夫。私の足はちゃんとその役割を果たしている。
このところ無理に食事をとっていたのと寝る前に飲んだ薬が利いたのだろう。
いつまで続くかわからないが私はきちんと立つことが出来る。
今日一日、あと6時間ほど持てばいい。
祭囃子が聞こえる・・・。

階下に降りると妹とあの人が待っていた。
妹は浴衣だった。緑の葉を散らした色使いが長身に良く似合う。きっと私が着たら死装束にしか見えないだろう。
あの人は相変わらずのラフな格好。いつもどおりのブルゾン姿だ。自分の部屋以外で合うのはひさしぶりだった。
談笑していた二人の目が私に向けられる。
顔色をうかがわれるのは慣れている。私は無理に、そしてその無理がわからないよう、そっと微笑んだ。
まるで普通の人間が笑いかけるかのように。

祭に行こうと言いだしたのは妹だった。残暑の名残で気候も穏やかですごし易い日々が続いていた。私は病院に担ぎ込まれることなく本と家族とあの人とだけと顔をあわせる平穏な日々を起こっていた。それを見かねたわけではないだろうが妹が私を誘うのは本当に久しぶりだ。壊れかけの車に乗ってドライブしたがる道理はない。
一瞬、知ってしまったのかと思ったが、妹の顔に翳りはない。できれば寸前まで教えたくはない。苦しむのは私と両親だけで十分だ。
あの人も一緒にと言われたのは当然のことだろう。両親も反対はしない。あの人もきっと来てくれるだろう。三人で出かけなければ意味はないのだ。

これだけの人間を見たのはひさしぶりだ。親子連れ、カップル、クラスメート。さまざまな人間が集まって楽しげに過ごしている。これだけの人数が幸せになれる空間というものがとても貴重なものに思えた。
大丈夫か?と問う2人に、大丈夫と答える。
そう、人いきれに酔っただけだから二人で楽しんで来て。
大丈夫。ここで待っているから。
迎えが来るまでまだ時間がある。
私はここで一人でいたいの。
私に根負けして2人は人ごみの中に消えていった。
あの人のかけてくれたブルゾンで体を包んだまま両手をさすり合わせる。
寒い。厚着をしてきたのがアダとなった。冷えた汗が徐々に体温を奪っていく。
ここは風通しが良すぎる。
移動しようと周りを見回した矢先、小さな祠が目に入った。
少し暗いが木々に囲まれている分だけ暖かそうだ。
私は慎重に歩を進めていく。
なにか願い事をしよう。
私の周りの人々が、両親が、妹が、あの人が幸せになれるような願い事を。
私のことで悲しまないよう、早く私のことを忘れてくれるよう。
医者は長くて一年だといった。それがもう半年過ぎている。
近頃調子がいいのは死期が近づいている証拠だろうか。
ろうそくの最後が明るいように。
神様が苦しまないよう最後の慈悲を与えるかののように。

後数歩と言うところで足がもつれた。天地がはげしく入れ替わる。
掃き残された枯葉が顔に降りかかる。
動けない。
手も、足も、声さえ出せない。
こんなところで・・・。
こんなところで死んだら二人は私のことを忘れられなくなる。
それだけはダメ。二人には私の分まで幸せになる資格があるのだから。
口元の枯葉が動きを止めた。
体の外が冷えていく。あの人のブルゾンが傍らに落ちている。
体の内がぬるくなっていく。外気が咽まで降りていかない。
目の前が暗くなっていく。祠だけが視界を占める。

死にたくない・・・。

もう一度あの人に会いたい・・・。

死にた・・・。・・・。

「鬼、再び来訪し、人、その力を欲するのこと」に続く
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おわりに
長文お付き合いありがとうございました。質問、感想などお待ちしております。

村越

※編集注
ここに感想送り先のメールアドレスがあったのですが、一応伏せておく事にします。
感想などは掲示板、もしくは本人へ直接伝えてあげてください。

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