WEST SIDE STORY(大劇場)


実は私、この舞台を観るまで、WSSの物語については全く知識が無かったのだ。
当然トニーやマリアがどんな役かという事も知らなかった。
なんつー無教養!
ただ、今も多くの人に愛される名作であるという事と、名曲の数々は知っていたから、
やたら期待だけは大きかったんだけどね。
で、どうせ知らないのだから、真っ白なままで観たいと思ったので余分な知識は一切入れずに観る事にした。

*

めちゃ期待してウキウキしながら大劇場へ向かった私だったのだが・・・
観終わったら、がぁぁぁっくり来た。
何だよ・・・WSSって・・・面白くないじゃんか!
例えどんなに名作と謳われていようが、私はあの話、嫌いだ。

あのぎゅう詰めな内容が、たった2日間の出来事ってしかし・・無理ないか?
トニーとマリアってお互い一目惚れじゃない。それであそこまで盛り上がるか?
更に、事故的とはいえ、人を殺めた奴(トニー)がよ、何で、
何処か田舎へ行って、マリアと子供を作るなんて浮かれてんの?(いくら子供ったってさぁ)
残された人間の悲しみを考えたら責任を取るのは当然のことで、それを逃げて自分だけ幸せになろうってのかー!!
それを考えたら、むかついて止まらなくなって、2幕の「Somewhere」の幻想シーンなんて、
不快で不快で、トニーとマリアを張ったおしたくなるくらいなんだけどさ。
だからある意味ラストでトニーが死ぬのも当然という気もするんだけどね。
(それは言い過ぎやん!)

だが、 WSSのメインはあくまであの歌・ダンスにある。
トニーとマリアは科白で愛を語るのではなく、歌で愛を語るのである。
そして少年達は思春期の焦燥感・憤りを科白ではなくダンスで表現する。
だからストーリーはそれに付随するものなのだ。
ストーリーあっての歌・ダンスではなく、歌・ダンスあってのストーリー。

宝塚版WSSは、殆どオリジナルをコピーした舞台になってたけど、
正塚晴彦が演出助手を担当したからか、生徒の歌・ダンスが弱いからか、
割にドラマに重点が置かれていたと思う。
しかも出演者の殆どが設定年齢より上に見えるんだよね!
その辺から、ストーリーに対する不満が募ったのかも知れないな。

不満な点はまだまだあるのよ〜〜。
先述したように、オリジナルのコピー舞台を宝塚でやって何の意味があるんだ!
タカラヅカナイズドしてなんぼでしょうが。
まして、歌やダンスの技術点は、どうしたって宝塚の方が劣ってしまうんだから。

大体、わざわざ外国から、宝塚が宝塚であることを否定するような演出家を(アラン・ジョンソン氏ね。)
呼び寄せる必要性があったのか?
(上演条件も厳しかったのかも知れないが・・・。)

配役についても、トップコンビは歌が得意でない上に、2人とも柄でもないトニーとマリア役だし。
あーー、もう不満書いてたら切り無いや(笑)。
期待が大きかっただけに、落胆も大きかったんですよ。
分かって下さい(涙)

あ〜、そうそう、フィナーレも最悪
WSSって観おわった後、かなりブルー入るじゃない。
だからこそ、ストーリーとは関係無いところで出演者の笑顔が見たいのにーー!
あんなハイライトシーン集めたようなの、面白くもなんともないわい!NONONO!
(ああ、言ってやるさ!)

*

でも、最後のカーテンコールは感激した。(笑)
一人一人の個性が出てて微笑ましくって、いつもより舞台と客席が近いような気がした。

それから・・、体育館でのマンボ対決シーンは凄い迫力があって、血湧き肉踊った。
もー、刻むぜ〜〜〜!俺のビート〜〜!って感じ。 (なんでやねん)
あれは絶対生で見なきゃ損だよ!!
見れて良かった。毎回楽しみだったもん。何度見ても感激した。ずっと見ていたいぐらいだった。
それと下級生まで科白も個性もある役が回って、生き生きやってるのが微笑ましかった。
そして組の集結力も如実に感じたな。



まみのトニー。
・・・柄じゃないよなぁ(笑)
本人もいたる所で「私は色の濃いベルナルド系ですから」って言ってたけどさ。
まみ自身は、ベルナルドが演りたかったのかなと思ったりしたが、
ファンとしても、まみのベルナルドを見てみたかったなー。(ま、ダンスは置いといて・・笑)

で、トニーのお話。
まず、歌が散々だったでしょ。
「Something Coming」も「Maria」も最後の高音は聞いててこっちがハラハラするし、
特に初日開けて間も無い頃に観たときは、終始音程が不安定で聞き苦しかった。
更に余り歌が得意でないまみと風花のデュエットの「Tonight」となると、
初めて聞いた時は雑音にしか聞こえなかった。(ごめん。本音です。)
観る度に、段々良くなってはいたが、絶対にウットリは出来ないデュエットだった。

でもね、「Tonight」って凄く音域広いでしょ。
それを女2人でユニゾンでデュエットしたら、無理が出てくるのは当然だよ。
風花も相当の高音を要求されるが、まみだってかなりな低音を要求されるのよ。
「♪トゥナイト、トゥナイト、今夜からは〜」
の部分 なんて、もう地の底からのような低音だったもん。

技術的なことは抜きにして、歌の表現としては、良かったとは思うけどね。
特に「Maria」は「マリアが好きだぁぁぁ〜〜、メロメロだぁぁ〜〜」ってのがよーく伝わって来た。(笑)

演技面では、マリアとのラブシーンは少年らしさがすご〜く良く出てるのに、
それ以外の場面ではオッサンくさい時があるというのが気になった。
あと、感心するほど色気が無い。(笑)
更に主役としての存在感に乏しい。線が細過ぎる。(体型ではなく)
あの影の薄さは深刻だと思った。
(地方のチェーザレもそうだったから・・)

でも何と言っても不満だったのは、「マリアは死んだ」と聞かされて、
「チノーー!!俺も殺せ!!」と喚きながら走るとこ。
ありゃ、仕所の無いトニーの唯一の見せ場でしょ。
もっともっと狂乱していいと思う。息を呑むほどに。
観ながらいつももどかしかった。

それと細かいこと言うようだが、フェンスの越え方。
まみはやたらフォームに重点を置いた越え方で、こなれた感じがしなかったのが残念。
(一応、元不良少年でしょ。大体さ、全般元・不良少年らしさが希薄だよ!)
しかも、シャークスとジェッツの決闘を止めに入る時も、やたらフォーム重視。
慌ててる奴がそんな飛び越え方するかぁー!と心の中で突っ込んでいた私だった。

あと1幕のラスト、トニー・まみが「マリィア〜〜〜〜〜!!」って絶叫するとこ、
初日開けて間も無い頃観た時は、あまりに甲高い情けない声に、思わずぶっ飛びそうになったっす・・。
が、後日観た時は、大分変わっていて、恐怖と混乱の絶叫になっていた。
ホッとした。

まみのトニーで良かったのは、「マリアが好きだーーー!!」ってのが、
ド直角ストレートの豪速球で感じられるところ。(笑)
トニーがマリアをどれだけ好きなのかが伝わって来なければ、
最後の「俺も殺せー!」に繋がっていかないからね。

とにかく・・出来はどうあれ凄く頑張ってるのは分かったので、
これから良くなって行くのを見守りたい・・って思った。(出たよ、身内的ファン根性。)
実際観る度に良くなっていったし、まみが公演中にこんなに変化するのなんて初めてだったから、
やっぱ試行錯誤して、苦労してるんだなーと思ったら泣けて来たよ・・涙出てないけど・・。

*

ファンモードとしては・・凄い悲しかったさ。
何でこんな、柄でもない上にへぼへぼな役演らされなあかんねん、と思ったら・・。
トニーってほんとカッコ悪いんだもん。
宝塚の主役にあるまじきカッコ悪さ。 しくしく・・・。愚痴も言いたくなるっちゅーねん。

もうさ、科白も、
「僕達はもう誰も届かないところにいるんだ!!」
「月世界へ旅行してた!月にいたのは兎じゃない!女の子さ!レディだよ!」
「いい人だ・・(マリアのパパのこと。面識無し。)きっと僕を気に入るよ。
「彼女(アニタ僕達のこと好きなんだ。
とか、頭に花が咲いてるかのようなアホで能天気なのばっかだしさ。
「トニー、『脳内革命』を読んでいるのではっ!」ってぐらい。

あと、ヴィジュアル面でもオーマイガッて感じだったし。
可愛いは可愛いけどさ、美しくないんだもん。
これは男役全員に言えることだが、 衣装はGンズに汚いシャツ、トレーナー、スタジャンだし。
スニーカーだから、背が低く、足が短く見えるし。

更にまみのお化粧がまた、いつもと全然違ったから。
(特に眉毛〜。いや、役作りの一環だというのは分かってるけど。)

正直、半年間まみのトニーしか見れないなんて地獄じゃ!と思った。
辛かったんです。分かって下さい。(涙)
随分色々書いてしまった・・。次行こう。



風花のマリア。
まみ同様歌がボロボロ。
「Tonight」なんて顔は引きつり、棒立ち状態。とにかく必死。
「A Boy Like That〜I Have a Love」も「♪彼と2人ー生きてーいーくー」っていうとこが辛そうで・・。
役者の余裕の無い舞台は、見ててしんどい。
でも「I Feel Pretty」なんかはキーも合っていて、風花もリラックスした感じで可愛かったんだけどね。
(恋に浮かれる姿が嫌味なく可愛いのには感心。)

もうひとつ、見た目が可愛くなかったのは何故?
やたら吊り上った眉毛が恐かったし、やたら顔が四角く見えたし・・。
レーニャはあんなに可愛かったのにー。

だがしかし・・風花のラストの芝居は独断場
「触らないで!!」
「あなたを!あなたを!あなたたち全員を!!」
「今なら出来るわ。憎む事を覚えたから!」

マリアの悲痛な叫びが心を打つ。
何てマリアが可哀想なんだぁぁぁ!!しらけた私も思わずウルウル・・。

そして、
「テアドール・・アントン・・」
の囁きと口付け(「キス」ではない)・・嗚呼、何てグッとくるんだぁぁぁ〜〜!!
あのラストシーンを見せられたら、歌が下手でどーの、なんてどーでもいい気さえして来る。
毎回分かってるのにウルウルしてしまったよ。
風花、上手すぎる・・!

それにしても、風花ならアニタが見たかったよな・・。

*

ベルナルドの紫吹は・・一言で言って、ハマり役
もう気障のカタマリって感じだったが、色気もあり、
(まあ色気があり過ぎてあんまり少年ぽくなかったというのが難点だったかもしれんが。)
ダンスはピカイチ

マンボ対決での樹里とのダンスが素晴らし過ぎ。
自分がプエルトリコであることに対する誇りとプライド、差別されることに対する屈折なども十分表現されていた。
出番的には少ないが存在感があった。
(歌が全く無しってのはしかし・・)

但し、オープニングのあとるんぱのシュランク警部に怒られてる時とか、ダンパの時とか、決闘の時とか、
妙にヘラヘラ、クニャクニャ、フニャフニャと落ち付き無く動いてたのはどうかと思うけど。
軽く見える。
ベルナルドは軽くはないでしょ。

*

リフの初風。
あんなに歌えるなんて知らなかった・・・。
初めて「Cool」を聞いた時は感嘆した
上手すぎ〜〜〜!!
「♪うぃ〜〜、くぅ〜〜る」 ってのが凄い好きだった(笑)

紫吹と並ぶと地味な点は拭えないけど、結構ギラギラした存在感があったし、凄く眼が利いてな、と・・。
動作はキビキビしてて気持ち良かったし。
まみのトニーとの関係は対等に見えたけどね。(まみのトニーが影薄いせいもある。)

*

樹里のアニタは満場一致のベストアクトでしょう。
素晴らしいの一言に尽きる。
ビバ〜〜〜樹里アニタ〜〜と叫びたいぐらい。
それにしても、ほんとに器用だな、樹里は。
「America」の歌とダンスは圧巻だし、色気もあるし、スタイル良くって脚線美がたまりましぇ〜〜ん!!(オヤジ)
風花との「A Boy Like That〜I Have a Love」 の情感も素晴らしく、泣けるっ!!

でも、ドックのお店での、「マリアは死んだって!!」の科白が・・。
初めて見た時聞き取れなくて「??」ってなったんす。
後日、妹を連れて観に行ったら、妹もそこの樹里の科白が聞き取れなくって「??」となったそうだ。
樹里は怒鳴ると声が上滑りして聞き取りにくくなるんだよねー。その点だけは残念。

*

千紘のグラジェラは、いかにもアメリカン的なムードが良かった。
いかにも気が強そうで、キツそうでさ。
ダンスは色んな意味でパワフル。(ちょっと、バタバタ、ドスドス。笑)
初風と並ぶと巨大過ぎるけどね・・。
(初風、華奢過ぎるし・・。)



立ともみのドックはやたらキツいばっかで、
少年達(特にトニー)に対する思いやりが全然感じられなくって、私はひたすら不満だった。
トニー殴るとこでも、その裏にあるはずの愛が感じられない。
「映画見たことあんの!?」と言いたくなったぞ。

*

下級生で眼に付いたのは霧矢のベイビージョン。
可笑しくって、かわいい。
完全に大和を食ってたね。
しかもダンスも、うんまいぃぃ!
組替えできたばっかの時から好感を持っていたが、WSSでそれが決定的になった。(笑)
素直で、嫌味が無くて、明るくて、いいよね。見てると幸せなのよ〜
今の月組の下級生の中じゃ一番好きだな。
新公のベルナルド、見たかったなー・・ちっ(後悔)。



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