半神(NODA MAP)


NODA MAPですよ〜〜。初めての。
いやー・・・はっはっは、この感想は非常ーに書きにくいなぁ。
ま、とにかく面白かったは面白かった。

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実は、私は萩尾望都さんの大ファンで、このお芝居の原作となった「半神」も、もんのすごく好きだ。
萩尾さんの漫画の中でよく読み返す作品No1だったりする。

「ポーの一族」も「トーマの心臓」もすげーいい話だけど、「半神」の奥深さにはかなわない。
たった16ページの短い漫画なのにその内容の濃さといったら、あんたっ!!
初めて読んだときはもう嵐のように感動してしまった。
あまりの感動に涙も出ねーよ!
そして何度読み返してもまた感動してしまうのさ。

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というわけで、この素晴らしい萩尾さんの「半神」がどう舞台化されたのか、また、役者はどう演じたのか、
非常に興味があったので、 観劇するに至ったわけなんだが・・。

で、舞台の話。

取り敢えず、漫画とは全くの別物ですね。
漫画の持つ淡々とした叙情性などは舞台には殆ど皆無。
野田さんは「半神」は原作を壊したくなかった」って言ってるけど、私には全く違う世界だったよ。




舞台の一番の特徴は、何もかもが具体的じゃないってことね。
科白もそうだし、話の筋もそうだし、衣装、セットも勿論。
全てが抽象的で示唆的で、それ故「は!?」と思うこと多々あり!!
かなり難解。
一回観たぐらいじゃ理解出来ないでしょ、これは。

にも関わらず、観てて全然飽きさせないのはすごい。
訳がわかんないのに、グイグイ引っ張られるんだよね〜。

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そして役者はまー、とにかく、よく動く!(野田さんと勝村さんが双璧。)
「おまいらドリフかーー」ってくらいよく動いていた。
(いや、むしろドリフも真っ青なぐらい動いていた)
でも、これがまた面白いんだよな。
野田さんと勝村さんが2人で半ばヤケみたく足上げて暴れてたのがすごい印象的で、(笑)
暴れながら時々素になって「フフッ」とか笑ってたのが受けた。(笑)

勝村さんはこの「一瞬素に戻る」っていうタイミングがなかなかに絶妙で、
お尻をひんむかれたあととか、「風呂太郎・・考えれば考えるほど面白い名前だ・・」っていう科白とか、
あと「青春」の説明をしていて「ドギドギーーー!!」っていうところとか、かなり笑った。

というか・・・正直に言おう。
私は全般勝村さんのおかしさにやられてしまって(笑)
勝村さんの先生が見れただけでも7500円の価値はあったかなーと思っているのさ。

こないだ「POPCORN」でも勝村さんを見て、
そのときも圧倒されて、「す、すごーー」とか思ってたんだが、 今回で更に感心。
存在感のあるのと、科白がよく言えるっていうのはこないだも思ったことだったが、
今回は陽性のおかしさに、
「あら!?明るいんじゃん!本当は!」と意外に思いつつもそれにはまってしまった感じ。

そういえば、勝村さんといえば、こないだCXでやってたお昼のドラマ「いのちの器」に出てたのをチラッと見たけど、
その時は妙に普通のにいさんでびっくらした(笑)

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野田さんはどんな人なのか気になってたけど、あんな小柄な、
モンキー(猿ではなくモンキー)な人とは、びっくり。



声はすんごい高いし、 よく跳ねるし、よく動くし、(身軽だよなーー)よく喋るし。
あと、年寄りの芝居がうまい(笑)
そして、何か哀しいおかしさのある人。

冒頭のお稽古場や、途中でも何度か演出家としての野田さんが芝居を中断するけど、
それは全然違和感無く・・。
面白かったけどね、何だか自分の世界に篭っている、という印象を受けた。

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あとは、山下裕子さんが、今回はまってて怪演連発

このあいだ「春のめざめ」で見た時は(「POPCORN」も出てたけど役軽過ぎたんでよく覚えてない)、
「何か落ち着きのない人ーー。見てて疲れる」と思ったんだが、今回は良かった。

肉食系の派手な造りの顔も、その落ち着きの無いところも、すべてプラスに働いた感じ。
とくにおばさん役(右子)のわざとらしさ&スカートの裾を持って目を見開き、
顔を左右に振る仕草の面白さは忘れられない。(笑)

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はまってたといえば、スフィンクスの佐々木蔵之介さんもはまってた。
化け物たちのボスという役ゆえ、柄の大きさで得をしていたけど、存在感あって良かった。

前「ロマンチック・コメディー」で見た時のぎこちない二枚目とは大違い!!(笑)
あれは役が合ってなかったのね〜。

とにかく生き生きと演ってたのが印象に残っている。

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マーメイド/左子の明星真由美さんも笑った。
「あ〜〜、好きにして〜〜」ってのと、左子のカメラの前を通り過ぎる動きがツボにきたぜ・・。

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そして最後に!忘れてはならぬ主役の深津絵里さんと加藤貴子さん。
実はあんまり印象に残らなかったのよ。

深津シュラは、あ〜頑張ってるなーとは思った。
しかしね、やっぱり、勝村さんの横だと霞んだ。
やっぱ舞台役者としてのキャリアが違うぜ!!と思った。
押し出しがイマイチなんだよね〜。

加藤さんは初めのころの赤ん坊みたいなマリアの芝居がわざとらしくなくていい。
まともに喋り出したときは、声がアニメ声で(本人も言ってるけど)ギョッとしたけど、すぐ慣れた。
別に悪くは無いと思うけど・・。

この双子、主役なのにあんまり主役っぽくなかったような気がするなぁ。



そして、私が主役の印象があんまり良くなかったのは
脚本・演出上のシュラの造形に疑問があるからってのが結構大きいのだよ。

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このお芝居のシュラってあんまりかわいそうじゃないんだよな!!
何だか逞しくてさ、屈折感に乏しく、
周りから愛されなくとも開き直って生きていけそうな気がするのだ。

周囲のシュラの扱いとそれに対するシュラの反応っていうのがまた、
お笑い番組できれいどころのタレントと、そうだな、山田花子あたりが共演して、
山田花子が邪険に扱われて反発してる、みたいなニュアンスに近いのよ!!


NO NO NO!!!
シュラの悲しさ、切実な愛されたいという思いってそんなものじゃあないぜ!!
あれじゃあ、シュラの真剣な哀しさ伝わって来ないじゃんかよ!!
ピンライト浴びたシュラのモノローグも何度かあり、それはそれなりにしんみりしたけど、
総合的には、情感不足って感じ。

だから、ラストシーンもそんなに感動せずに終わってしまった。
勿論、感動しなかった訳ではないのよ。
それなりに感動したよ。
でもね、バタバタ笑かすのもいいけどさ、締めるとこ締めなきゃあ、感動も薄れるってもんよ
っていう不満も大いにあったの!(笑)

*

しかしさ、この芝居観て、野田秀樹氏の世界は抽象画と同じだなと思った。
感性の押し付けっていうか、(笑)
分かる人には分かるかも知れないけど、分からない人には分からないって感じ。
初めから分かって貰おうなんて思ってないな!?って感じ!
観客がどう思おうが、自分のやりたいことをやってやるぞ!!って感じ!!

これがゲージツといふものなのだろうか!?

でもさ、これだけ分かり辛くても、面白いんだもんなー。
やっぱり野田秀樹氏は天才なのかもしれん・・。



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