銀河旋律/広くてすてきな宇宙じゃないか(演劇集団キャラメルボックス)


<観劇日記の前に>

私にとって、キャラメルボックスは問答無用に面白い。

演技的な精細さはお世辞にも高いとは言えないし 、それゆえ脚本に頼っているところが多分にあって、
脚本が良くないとそれを補う力が役者に無いため総崩れ状態になってしまうところもあるけれども・・。

でも、それでいいのだ。
細かい心理描写を重ねるような分析的なお芝居はキャラメルボックスには似合わない。
(と、言いつつ観る度についこの点で突っ込んでしまうのよねー。)

*

キャラメルボックスを知った切っ掛けは、猛烈なキャラメルフリークの友人Mである。
今までビデオで見たキャラメル作品は、
「レインディアエクスプレス」「グッドナイト将軍」「スケッチブックボイジャー」そして「ヒトミ」。
初めて生で観たのが「あなたが地球にいた頃」。
ちなみに今回の「銀河旋律」「広くてすてきな宇宙じゃないか」で2回目の観劇。

これしきのキャラメル歴でキャラメルに関してあーだこーだ言う資格は無いかもしれんけど、
私はキャラメルボックスの存在意義って、
とにかく元気で明るくて楽しくて観終わった後「スカーッ」と幸せになれる、これだと思っている。

しかも客に対してすーーごい優しい。サービスいい。(涙)
(いつも客に冷たいヅカばかり観てるのでそれを目の当たりにする度にカルチャーショックの私であった。)



そして成井豊氏の脚本が毎回面白い事にはほんと、舌をまく。
しかも面白いだけではない。
成井豊氏の脚本っていっつも根底に「優しさ」があるのだ。
だから観終ったあと幸せになれる。
(ヅカにもバウ辺りで一本書いてくれないかなぁ、マジでさ−。)

*

結局ね、私はキャラメルボックスが好きなのだ。
捻くれてるからストレートにその感情は出ないけれども、
そう、根底には「キャラメルが好きだ」という気持ちが流れているのさ!


*注意*
観劇日記中は敬称略です。御了承下さい。



<銀河旋律>

初めのニュースの場面ではいきなり捲し立てられてセリフが頭に入って来辛かったけど、
(それは私がバカだからか?)
終わってみたら単純なタイムトラベルもの。

設定的には近未来で、お金さえあれば誰でもタイムトラベルが出来る。
それゆえ過去を変えることも簡単。
もし自分の過去を他人に改変された場合は激しい目眩に襲われ、
それから1時間ぐらいで以前の記憶は完全に消え去り、 変えられた新しい記憶に支配される。
と、いうのをベースに一組のカップルとそれに横恋慕する男との物語。

少々(いや、かなりかも)クサイところや荒唐無稽なところもあったけど、
でもサスペンス的なハラハラ感でグイグイ引っ張られたし、
とにかく必死でかつアツイ主人公柿本にかなり感情移入してしまったんで、 楽しかった。
ラストも気持ちの良いハッピーエンドだったしね。
柿本の真剣な思いが届いたのね〜なんて思ってました。(笑)
逆に柿本に感情移入出来なかった人は面白くなかったかもしれんが・・。
(柿本も視点を変えて見れば結構勝手だもんね。)

荒唐無稽というのはね、具体的に言えば、最後のところで、はるかが生徒に
「本当に結婚しちゃっていいの?先生柿本光介みたのがタイプだって言ってたじゃない!」
とか真剣に問いかけられたりしてるとこ。
ちょっとそれは・・(笑)
結婚するっていうのと好みのニュースキャスターがいるっていうのは、
全然次元の違う話じゃろーー!!
(そこへタイムトラベルして来た柿本劇的に登場〜♪と盛り上がるところなんだけどね。)



でもタイムトラベルして来た柿本がはるかの前に現れて(サルマルと結婚する直前!)、
「初めまして、ハルノはるかさんですね。」
って言った後すぐに、
「好きでした、ずっと前から。」
って告白するところはすっっっげーー感動してしまった。
なんつー名科白!!何て柿本の必死さが伝わって来るんだろうか!!
もうわけわからん感動に襲われたっすね。

しかし、つくづくアツイ主人公だね、柿本は。
何もかも投げうつ事になったとしてもなお、もはるかを諦めきれないってかー。
ふー、アツイアツイ!!
あつくるしいよ!!(笑)

やっぱり成井豊氏の脚本は面白いなぁ。
というのを再認識。

あとさ、「きっかり、45分! っていう科白が、
まさしくお芝居始まってきっかり45分後にあるのは、イキな演出じゃあないかい、ねえ、やじさん。
(やじきた学園道中記・・知ってる?)

*

次に役者に関して。

まず、主役、柿本の西川浩幸。
・・・もう、何演っても変わらないねー、この人は!!ほんと!!
何を演っても西川は西川でしかない!!
切っても切っても西川!!

(金太郎飴状態。)

でも、みんなそれが好きなんでしょう。(笑)
私もそうなんだよねー、はっは。
何を演っても変わらないけど、何を演っても地の人柄の良さと生真面目さが滲み出ていて、
見ていて楽しいっつーか、ホッコリするっつーか。

今回の柿本で言えば、地の真面目さが生きていたでしょ。
必死さは充分伝わって来たよ。
「そんなのどうだっていいじゃないかー!」
なんてかなり勝手な科白も許せてしまうのは、西川のお人柄のおかげだわさ。

あの独特のボケも相変わらず冴えていた。
ベストは、サルマルが短歌を呟いて去った後に、それを真似して、
「意味がわからないー」と言ったところ。
何か言い回しがらしくて、受けてしまったよ。

*

はるかの大森美紀子。
まあ、いいんじゃないか?
大森美紀子は愛嬌と温かさがあるのが強みだと私は思っている。
情感には欠くが。
っていうか、キャラメルの女優は、全体的にバサバサしていて、
 優しさとか潤いに欠くのが、私は観ていて不満なんだけどね。)

「もう・・(電話)掛けて来ないで」
とかいう科白もキツくならず、よろしい。

*

サルマル・岡田達也を見ていて如実に感じたのは、
キャラメルの役者って・・ほんと心理の裏側の表現が出来ないんだねーってこと。



サルマルは、はるかに片思いしてて、タイムトラベル管理局員なのをいいことに、
時間を遡り何度となく細工をしては柿本とはるかの中を引き裂こうとする。
柿本は、はるかと自分の記憶が失われていくことに気付いて
サルマルのところへ直接話をしに行くんだけど、サルマルはここでとぼけるのね。

だがしかし!
岡田達也のサルマルは、ここで、
全く柿本に対する押さえた悪意とか、図星さされた動揺とかが感じられなかった!!

だから私は初め「サルマルじゃないんじゃないの?細工したの」なんて思っていたが、
やっぱりサルマルの仕業だったって分かった時には、
「な〜んだ、ただの演技力不足かい」と脱力してしまったよ。

サルマル役は出番少ないけどさ、演りようによってはかなりの存在感が出せると思うんだけどね。
岡田達也のサルマルは、ただのせこい奴でした。
(悪役向きな個性だと思うけどな、岡田達也は・・。)

*


ヨシノの津田匠子さんは、良かった。

というか、実は私はキャラメル女優陣の中で一番好きなのは津田サンなのー!
彼女って唯一情感の出せる人だと思う、バサバサ揃いのキャラメル女優陣の中で。
役作り、心理描写とかの点でも一番奥行きを感じるしね。

ヨシノは、結構ボケまくっていたけど、(笑)
割に長い柿本と2人のシーンや、最後の方の柿本がタイムトラベル出る前のシーンとか、
もう締めるところは締めてるぜ!って感じよ。
ヨシノの切なさはよーーく伝わって来たよ!!
そして、 自分は柿本が好きなのにそれでも柿本の力になってあげる大人の女の魅力!!

いいね〜。
やっぱ好きだわ、津田サン!!

*

坂口理恵のお天気お姉さんは役が軽くてびっくり。

何をかくそう、私キャラメル女優陣の中で一番苦手なのが、この人なのだ・・。
ファンの人、すまん。でも言わせてくれ。

坂口はとにかく、キツくってバサバサしてて、全く優しさがない。
全然魅力を感じないのだ、彼女の舞台には。
これで主役張られるのは、ほんと、辛いんです。

「ヒトミ」 なんかも、やたらめったらキツイばかりで、
その裏で微妙に揺れる女心とか、不安感
本当は信じたいのに信じられなくて、突っぱねてしまうことに対する罪悪感など、
も〜う、一切皆無!
「この女は本当に小沢を嫌っている!!」
としか思えないキツい演技で、
見ててゲンナリしてしまった・・。



でね、これほど苦手な坂口、久し振りに見るし、
少しは優しい芝居になったかな?と楽しみにしてたんだけど、
この役の軽さじゃ、全然分かんねーー!!
残念だったわ。

でも、お天気お姉さんは面白くて良かったよ。
脇の、しかもこういうアクセント系の方が生きると思うんだけどねー、この人って・・。

何でヒロインが(しかもより情感を必要とするアコースティックで・・。)多いんだろう?
こんなにヒロイン多くなきゃ、私もここまで坂口に拒絶反応(まではいかないか・・笑。)
示すようにはならなかったと思うんだけど・・。

*

女子高性3人組はすっごいテンション!テンション!で息もピッタリ、ドタバタと笑かしてくれました。
あれは演ってて、すっっごい楽しいか、すっっごい疲れるかのどっちかなんでは、と思った。
いや、両方かな?(笑)



<広くてすてきな宇宙じゃないか>

こっちはイマイチだった。
「銀河・・」が面白かったから、気分的には乗っていたのにも関わらず、
何か自分の中では盛り上がりもせずに終わってしまった。

*

なんでやろ?と色々考えてみたところ、
私ね、もう初めのところの「おばあちゃんをうちに呼ぶ」っていうところから既に、
「は!?なんで!?」って思っちゃったのよね。

だって、何で死んだ母親の穴をアンドロイドで埋める必要があるの?
確かに親父はニュースキャスターで忙しくって殆ど家にいないし、
クリコはまだ小学生だから、常に側にいて、叱ってくれて、誉めてくれて、話をきてくれるような人が必要っていう考えも、
まあ、理解は出来るよ。
でもさ、母親は死んでしまったけど、
孤児になった訳でもあるまいし、他の家族はピンピンしてるじゃん!!
そこは家族で協力し合って乗り越えていくものなんじゃ?

大体この発想って、(死んだ母親の穴をアンドロイドで埋める)
世の中の父子家庭及び母子家庭が、欠陥家庭だとでも言いたいのかしら?って思っちゃう。
片親がいなくったって、立派に子供は育つわ!

この根本的な発想が理解不能だったため、最後までお話にのめり込めなかったのよね。
「なんか違う!!」っていうのが常について回ってしまった。

しかも登場人物の誰にも感情移入出来なかったから、
ラストの方では、
「生きている人間の心は、生きている人間にしか埋められないんです!」
「おばあちゃんは怒る。おばあちゃんは笑う。おばあちゃんはお前のことを心配する。
  おばあちゃんはアンドロイドじゃない!」
とか激しく言い合って、それぞれの考えが交差するのは、
「は!?だからなに!?結局どうだと言いたいの!?」
と、混乱するばかり。(笑)

まあ、結局、「人間一人では生きていけない」ってことなんだよな!!
そりゃそうだ!でもな、
「だから、家族がいるんでしょ!!どうしてアンドロイドが出てくるんだ!」
と突っ込みたくなってしまう私だったのよ。



そしてこのお芝居、荒唐無稽なことには「銀河・・」を遥かに凌ぐが、
(東京中を停電させるとか、星の光でまだ動けるとか・・これイタイよー!・・
クリコがおばあちゃんに心を開いていく過程はもう少しじっくり見せて欲しかったなーと思うの。

最後おばあちゃんが、
「また私を好きになったら私を失うのが怖いから・・だから自分の手で私を壊そうとしたのね!!」
なんて叫んでるのも「急な展開の言い訳かぁ?」なんて思ってしまった。

まあでも、このお芝居はファンタジィですからねーー!!
こんな分析的に云々しても仕方ないのかも知れないけど。
(それを言ったら本末転倒・・。)

*

役者、行きましょか。

大森美紀子のおばあちゃんは、合ってる。
さっきも言ったけど、彼女の持ち味の愛嬌&優しさが生きていた。
情感が出ればもっといいんだけどねー・・。

*

クリコの石川寛美はね、本当に小学生に見えるのがスゴイけど、それだけ。

声がキンキンし過ぎてて、出番が多いだけに後半はゲッソリしちゃったよ。
何でずっと怒鳴ってるの??
何事も強弱が必要!!


それと、心理描写は甘い。
おばあちゃんを表面的には拒絶しながら、本当はおばあちゃんが好き、甘えたい、
なのに素直になれず、辛く当たってしまう・・そこから来る罪悪感・・
っていう気持ちの裏・表ね

表の感情しか見えてこないよ。
だからとにかく意固地な女の子にしか映らん!!
そしてね、何と言っても全然可愛くない。(これが最大の難点。)

*

岡田さつきは、中学生に見えない。(笑)
もちょっと工夫出来たでしょう。

カシオ・南塚は狂言廻しも兼ねる。サワヤカ中学生。(笑)
良かったよ、ウン。

坂口のニュースキャスターは、面白かったけど、元々滑舌のいい人ではないから、
ニュースを読み上げるところは、独特の引っ掛かる調子が気になった。

中村恵子の先生は出番少なかったけど、凄い面白くてマル。

あ〜、忘れてた、西川の柿本は、このお話では、完全に脇。
ボケまくってたね〜。
酔っ払って現れる場面が、全然酔っ払って見えなかったのがだったぐらいで、
あとは面白かった。

ヒジカタの大内。
すんごい生真面目&シリアスで良かった。

カツラの浅岡陽子は、ボケまくってたけど、
ちゃんと小学生に見えて、しかも可愛かった。(そう、クリコには可愛さが無さ過ぎるんだよ!)

というところでしょうかね。
バーッと書いてしまった。

*

カーテンコールの役者さんの満足そうな笑顔は、何よりだね。
そして、キャラメルの役者さんはずーーーと頭を下げててくれるのよねー!
何か感激・・。(笑)

まあ、約2年振り(!)に観たキャラメル、文句も一杯書いちゃったけど、凄く楽しめました!
又行きます。



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