橋からの眺め


半年振りのベニサンーーーー!!
私はあの小屋が本当に好きだ!
(ベニサンの客ってやたら集中度高くないか?)
もうワクワクでベニサンに向かったっすよー。

早めに着いて、中に入ってぼーっとお花を眺めていたら矢張りまみからの胡蝶蘭が来ていて、
「おお!相変わらずマメ!!」と、嬉しくてニヤけてしまった。(笑)

*

今回のお芝居はですね、凄くマトモと言ったら語弊があるけど、
ごく普通に起承転結のある、ちょっと映画的なお芝居でした。
前半は少し運びが重くてタルかったけど、後半は迫力に圧されてグイグイいった。

とにかくアクションシーンが秀逸!!
物凄い鬼気迫る迫力だったわさ。
アクションシーンであんな息を呑んだのは「署名人」以来かしらん。
怖かったもん、まじで・・。



久世さんはビアトリスという堤真一演ずるエディの奥さん役。
中年ね。(笑)
もう前回とは180度違う役柄ですワ。
(こないだは綺麗どころだったもんねー。)

しっかし今回改めて実感したのは、
全然浮いてないよー久世さん!すっかり溶け込んでいる!
ってこと。
凄く自然にビアトリスが息づいていた〜〜〜!!
もうすっかり女優さんですねぇ。
芝居ももはや、大袈裟な大劇場芝居は微塵も感じられず・・。
相変わらずの細かいお芝居とその的確さにも驚き&感嘆。
ああいうのをお芝居って言うのだ!!
(最近キャラメルボックスのビデオばっかり見てたから尚更感激〜。)

衣装もこないだとは正反対でめっちゃ地味だった。(笑)
いかにも「疲れた中年」風。
後半のハイソックスなんて、掃除のおばさんみたいで、ちょっと笑ってしまった。(笑)
前半のエプロンはまあいいけども。
最後に来てたスーツは「おお♪」と思ったけど、すぐババコート着ちゃう。(笑)
ちえっ。

久世さんのビアトリスは、夫の気持ち(キャサリンに対する恋愛感情。)に勘付いて、
その苦悩を持ちつつも一番冷静に状況を見ている人で(家の住人の中でね。)、
尚且つ夫の愛が自分に向けられていないとしても、夫を一番愛している。
キャサリンがエディに悪態つくところでも、彼を庇い、
彼が行くなと言えばキャサリンの結婚式に行くのも止める。
しかも、それは単に彼女がエディに対して従順なのではなく、
彼を愛しているからだっていうのが、ちゃあんと分かるのよ!

キャサリンに対する嫉妬から、
彼女に対して決して辛辣になったりしてはならないという自制心、葛藤もしっかりあった。

科白廻しはすーごく静かで、苦悩する中年女房らしさも充分。
「フー」と疲れてテーブル拭く所とか、(普通に拭くんじゃないのよね。あの溜息、表情、拭き方!)
そこはかとなく中年っぽさが漂う。(笑)

最後、キャサリンがエディに「ドブネズミ!!」と悪態ついてエディが逆上するのを止めに入る時の芝居も、
眼の使い方といい動きといい上手過ぎる。
ああいうのが本当に久世さんらしいというか、「WANTED」のニコルを思い出したりしたよ。(笑)
なんつー心理描写の細かさでしょう。
人の話を聞きながらの反応なんかもいちいち感心してしまった。



エディの堤さんは、上手かったっっ。
ヴィジュアル的にもいけてました。

初めの頃は、自分の本心を隠して、(というか自分でも認めたくない。)
何とか冷静に振舞おうとするけど、やっぱり抑えが効かずにポロッ、ポロッと本音が露呈してしまう。
キャサリンとルドルフォが次第に親密な仲になっていくのを目の当たりにして、
どんどんイラついていき、自分自身も追い詰められて行く。
そしてキャサリンとルドルフォが寝たことに勘付いてそれが爆発する。

このお芝居は基本的に登場人物達の微妙な心の動きで成り立っているお芝居ですから、
心理描写が的確で、且つしっかりこっちに伝わって来ないと、なんや訳分からん芝居になると思うのだが、
堤さんの心理描写の細かさには舌を巻いたっすよ。
もう気持ちの流れが手に取るように分かったもん。

だから最後に、あれだけ「絶対やるな」と言ってた密入国者の密告を、
自らやってしまうまでに追い詰められていた心理というのも凄く理解出来た。

ルドルフォに殴りかかるところや、マルコとの最後の殺し合いのアクションシーンの迫力も素晴らしかったですよ!
いやはや・・参りましたよダンナ〜!

死に際の「ビー・・俺の・・ビー・・」と言ってビアトリス・久世さんの頬に手をやるのは、
何があろうと彼を愛していたビアトリスうを前にして、自分の愚かさに気付いたのかな・・と、
尽くして来たビアトリスの思いが報われた気がして、思わず感動で涙が・・。
(思い込み過ぎ??)
久世さん泣いていたし。

*

そして、マルコの山本亨さん、上手過ぎるわぁ〜。

素朴で、頭は余り良くなさそうだが、家族思いで実直そう・・
密入国者のリアリティー十二分ですよ。
(それどころか彼の人生が見えてくるようだった・・。)
それだけに、最後のエディの裏切り行為に対する激怒も納得。
アクションシーンも、動き、気持ちの昂ぶり方が素晴らしーーー!



馬渕のキャサリンは、見てくれが役柄とフィットしてて、なるほど・・。
演技的な深みは無いけど、(「どうして」の科白廻しがいっつも同じだよなー、どうでもいいけど・・。)
熱演で、まあまあです。
まあ役柄からして、見てくれに説得力があるのが一番かと・・。

*

ルドルフォの高橋和也。
(元「男闘呼組」の人だったのね〜。後からプログラムで知った・・。)
下手だな〜と思いながら見てました・・。(笑)
歌は上手だったけど。

大体役柄とルックスがフィットしてない。
ハンサムじゃないじゃん。爽やかでもない。
演技的にも表面的だし、いい人の役なのに、そう見えなかったよ。
それに、凄く陽気な男の設定なんだから、
もっとパァァァーーーっとした陽性の明るさがなきゃあ駄目。
何だか彼のルドルフォは湿っぽい男だったもん、全然陽気さが無かった。

まあキャサリンが惹かれるような魅力に乏しい、というのが一番の難点かな。

堤さんはかっこいいし、私ならエディがいいよ。(笑)
何となく「風と共に去りぬ」におけるレスリー・ハワードのアシュレに通じるものを感じたさ、
彼のルドルフォは・・。
(この場合クラーク・ゲーブルのレット・バトラーは堤さんのエディに当たる。)
何であんなのに惹かれるの??理解出来ない。っていうのがね、一緒じゃん。

*

あとこのお芝居のタイトル「橋からの眺め」って、つまり、
狂言廻しの弁護士の視点のことなんだろうね。
(科白でもチラッとそのようなことを言っていたし。)
まるっきり第三者から見たらエディが自滅へと向かっていることも、
そ の行き着く果ての不幸も容易に想像出来た・・ってことでしょ。

しかし、毎回のことだが、ベニサンは衣装・小道具・セット・音響・照明、凝ってるのよーー!
もう、感動的なくらい。
今回は「汚れ」に関する拘りが感じられた。(笑)
小道具、セットは勿論、何と言っても衣装がね、労働者のリアリティーが一層増してたよ。

最後のカーテンコールは、久世さんと堤さんが、ニターと笑いあっていた。(笑)
皆満足そうな笑顔だったが、(勿論久世さんも♪)堤さんはちと仏頂面だった。
まだエディが入っていたのかな・・?

やあ、でも久々に演技密度の濃いお芝居を観て、大変満足いたしました。
面白かった。

にしても久世さんは女優としての足場を着々と固めているようで嬉しい限り。
ファンにとって久世さんの退団後のキャリアは誇りなのだ。



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