リチャード3世


リチャード3世」!シェイクスピアだよ!蜷川幸雄ですよー!!
久世さんが大ファンという蜷川さんの舞台、私はこれが初めてだったんで、まー、ドキドキだった。

彩の国埼玉芸術劇場は与野本町から歩いて7分、大して迷わずさっさと着いたけど、
何てヘンなとこに建てたんだろう・・・。
まあいいけどさ・・。
しかし劇場のムードが何やらやたら立派でロイヤルで、
汚いカッコの私は「場違いなんじゃ・・」っておどおどしちゃったよ。(笑)

チケットは観劇の前日に劇場に電話して予約したんだけど、何とそれが1列目、どセンター!!!
何で前日にそんな席が余っていたのか!?
謎だ!!
・・・しかし、何や分からんがラッキー!!(笑)

*

ではお芝居の内容の方にいってみよう!

まあとにかく、オープニングでまづ!びっくりというか、もーう掴みはOK!!って感じだったね。
打ち込み系の音楽がかっこ良くって「お!」と思っていたら、(音楽は全般カッコイイ。)
白馬が一頭現れて、それがしなってバッタリ倒れる。
(中には人間が入ってるんだけど、それが馬の動きがめっちゃ上手くて本物の馬に見えるのよーーー!!
 馬足のプロかーー!?)
途端に、上からドッサドッサと、野菜やら、動物の死骸やら、(これがなかなか良く出来てて不気味なの)
白・赤薔薇(ばら戦争にひっかけてるのよね。)やら、鍋やら、降って来る降って来る、舞台を埋め尽くす程。
一列目で、目の前にガンガン落ちて来たから尚更仰天したわさ。
呆気に取られているうちに、リチャード3世市村正親登場〜〜となった。

まさに衝撃的なオープニングでした。
あれで興味をそそられない人なんかおらんでしょう。



でね、お話は・・やっぱり分かり辛かったね〜!!
思ってたよりもずっと登場人物多くて、名前と顔が一致せずに、参った。
科白もなかなか頭に入って来なくて、ストーリーは大体の流れしか把握してなかったって感じだ・・。(汗)
途中で少しダレたりしたが、(いや、自分がね。笑。)でも、面白かったよ、うん。

とにかく、音楽、セット、照明。衣装、ぜ〜んぶ・・COOOOOOL!!OOHHH!!
かっこいいんですよ。

音楽はさっきも書いたけど、全篇打ち込み系でビートが効いててグー。
セットはごくシンプル、全面鏡張りで展開する。
場面転換の度、音楽流れて開いたり閉じたりするんだけど、
その間に照明に照らされたシルエットの役者が、後方から歩いてくるのがすご〜く幻想的で綺麗なんすよー。
(舞台は、幅の割にやたら奥行きがあった・・。)
衣装もごくごくシンプルで軽そうなやつばっか。
舞台転換はすーーごくスピーディー&スムーズ!!

まあとにかく今までに見たこと無い世界だったんで、新鮮でしたわ。
なんつーか、洗練された、とか、計算され尽くした、とかいう言葉がピッタリな感じ。
スマートというか、正統的というか・・アートですな!センスの良いゲージツ性を感じましたね。
「おおっっ、これが蜷川幸雄の世界なのかぁぁぁーーっっ」ってな感じで妙に感心。

*

まずリチャード3世の市村さんは、そうね、最後の死様が凄い迫力で、もう怖かったね。
なかなかしつこくて、刺されても刺されても死なないんだけどね。(お約束!!笑)
最後にトドメさされた時の恐ろしい形相は忘れられんーー。
目の前に顔突き出されて「ヒィィーーーー!!!」って感じでしたワ。硬直。
夢に見そう・・と思った。
しかし、演出的にも、演技的にも、悪党の最期らしく圧巻。
「El DORADO」の谷演出におけるワルパのみっともなく安っぽい死様とは雲泥万里やな〜〜などと思いましたよ。
ま、それは置いといて・・。

何か意外だったのは、チラシとか雑誌では、とにかく「悪党」「残忍」とか書かれてたけど、
実際見てみたら、あんまりそういう印象は無かったのですよ。
私としては、本当に冷淡で徹底した悪党、「銀の狼」のジャン・ルイみたいのを想像してしてたんだけど・・。

市村さんのリチャード3世は、運命的アイロニーを感じたよ。
自分は姿も醜く、おまけに足も不自由で不恰好、誰にも愛されない・・
ならば徹底して狡賢く生きてやろうってとこから始まってるんだよね。
その気持ちは分かるじゃない。
コンプレックスから来る屈折。

だから、次々と人を殺して、猿芝居でのし上がってゆく市村リチャードを見ていても、
「悪党」「残忍」とかは思えなかった。
屈折漢が強がっているというか・・何処か哀れを催すのよね。
なので最後死ぬ時も自業自得のその運命が、なんか可哀相でした。
コンプレックスをプラスに跳ね飛ばせてたら、こんなことにはならなかっただろうなと・・。
市村さんのリチャードは人一倍繊細なんじゃないか、っていう気がするのよ。

ニ幕で誰も信じられなくなって、疑心暗鬼になっていくところとか、
今まで殺して来た人間達の亡霊が出て来る夢にうなされてハッと目が覚め、
自問自答を繰り返しながら、「誰も俺を愛してはいない!」「誰も俺が死んだって悲しまない!」と、
自分のアイデンティティーを失いかけるところとか、
孤独感と、リチャードの心に深く根差している悲しみが浮き彫りにされて、本当に哀れだった。
そして、彼はそういう風にしか生きれなかったんだろうなと思うと、ああ、可哀相・・。

でも一幕のラスト、王位を手に入れての「カァァーーーー!」なんてのは悪党らしさもあったなぁ。

それから主役の割に(?)狂言廻し的な部分も多分に兼ねていて、何気に、笑いも結構担当してたのよね。
かなりボケてた。(笑)
堅苦しい芝居の息抜きになりました。
(隣に座っていた市村さんのファンらしきおばさんは、かなりガハガハ笑っていた。)



それにしても、存在感と科白の伝達能力は素晴らしかった。
市村さんの科白は何故かスラスラ頭に入って来た。

最期のカーテンコールまでびっこ引いて、完璧リチャード3世に成り切ってたね。(笑)
ニカッと笑った笑顔はお茶目!で好印象を受けました。
50歳かぁぁぁ・・元気だねぇぇぇ。(笑)

*

久世さんのアン王妃は、出番がめちゃめちゃ少なくてびっくりした。
(っていうかこの舞台は市村さんの一人舞台。)
リチャードに夫と義父を殺されたにも関わらず、甘い言葉で誘惑されてなびいてしまう役なんだが・・。
結構軽い役だったのねー。

今回少し不満だったのは、あんまり綺麗じゃなかったこと。
リチャードに「その美しさに魅せられて・・」だのなんだの再三言われて口説かれるんで、
まず!美しくあることが大前提やと思うんすけど、イマイチだったのよね。
相変わらず細くってスラッとしてて、セクシーな喪服(?)も、白いドレスも似合っていたけど、顔がーー。
お化粧ヘンだったよ。
白く塗り過ぎてて、老けて見えたわさ。
しかも、怒ったり悲しんだりするシーンばっかなので、(ほんと、普通なのは、2幕の冒頭ちょっとだけ。)
顔しかめ過ぎてて「ウ、ウム・・。」って感じだったのよねー。
例え怒ったり悲しんだりするんでも、もうちっと美しくやって欲しかったの・・。

何だか演技に偏り過ぎてて大美人てこと忘れてへん??
一応、コスチュームものなんだし、見せ方やムードも大事だよ!
などと思った私だった。
品はあったけどさ・・。
(ドレスの着こなしや品はヅカ出身の強味が出たって感じかしら。)

というわけで・・演技的には相変わらずの久世さんならではの細かい心理描写に感心。
リチャードの強烈な求愛に対してひたすら頑ななあの場面は、
市村さん共々凄いテンションで、濃ゆくって大芝居で密度高くって(どないやねん!)
凄いグイグイ引っ張られた。
まあ、実際一幕の白眉は、絶対あの場面だね!!(断言)
リチャードのガンガンの求愛に対して心が次第に揺れて行く過程とその葛藤は、
ほ〜〜〜んと久世さんらしい細かい芝居で、感嘆!
でも声が太くてあんまり悲劇の王妃様には見えんかったが・・。(笑)

しかし、この後はニ幕冒頭でちょっと出て来るのと、亡霊だけっ!
久世ファンとしての満足度は低いですワ。
亡霊は鬼気迫っていてなかなか良かったが・・。あの迫力・・。

それにしても生唾には仰天!!!
目の前でやられたから尚更ショックが!!
「ヒエーーーー!!」って感じだったよ。
その後ずっと、市村さんの顔でキラリン!と光る久世さんの唾が気になってしまった私だった・・。



宝塚OGの有馬さんは・・うーーーん・・。
なんだか科白に感情こもってなくてさぁ・・。
特に2幕でリチャードに上手く言い包められるところ、ずーーっと同じ調子で科白捲し立ててる感じで、
そのせいか、わたしゃ全然科白が頭に入って来なかったよ・・。
威厳と品はあったが、(でもちょっと威嚇的過ぎって気もした。)
演技は表面的で形だけって感じ、内面から涌き出てくるものが何も無いって気がした。

あーー!そうそう、王子エドワード役の中学生くらいの細目・吊り目な男の子!!
白馬に乗って現れた時、金髪ロンゲのヅラが恐ろしいほど不似合いで、私は吹き出しそうになった。
あんなモロ東洋人顔の子はもっと化粧でカヴァーせなあかんでしょう!!
なにやってるんだよメイクさんはぁぁーー!

そして石橋祐さんが出てたのはびっくりした。
休憩時間にプログラムで見付けて「なに〜〜」とか思ってたら、
2幕でティリルという暗殺者のチョイ役。
しかし相変わらずいい声&ナイスミドルって感じだ〜〜。(隠れファン!?)

あと印象に残ったのが、リチャードの兄クラレンスの暗殺者を演ってた金髪の方の二反田という人。
目付きといい、常に動いていてじっとしない動きといい、
めっちゃめちゃやばくて、いっちゃてて怖かった。
刺し殺す時の狂気に満ちた顔のおっそろしかったことったら・・。
「ヒィ〜〜ッヒッヒ!!ヒャァァーーー!!」とか訳の分からぬ奇声を発してるし、
私は呆気に取られて、「ああいうのを気違いというのかしら・・」などと思って見ていたよ。
狂気役者かーー!?

他はおっさん(すんません。)が一杯出てたけど、殆ど見分け付かず。(汗)
衣装も似たようなの着てるし・・。

*

ラストはまたものがドッサドッサ降って来て、2度目だというのにまたびっくりした私であった・・。

カーテンコールでは、市村さんの満足そうな満面の笑みが印象的だった。
久世さん、有馬さんの手をはっしと取って口付けしてたのが受けた。

久世さんは女役のお辞儀(まみがスカーレットでやってたようなやつ!)やってて、
サマになってなかなか優雅だったので「おおーーーー!マスターー!!」って思っちゃった。(笑)
市村さんに手に口付けされてお辞儀してるのも、これまたサマになっていた!
あー、びっくり!

*

面白かったけど、1回観れば充分だったかなー。
チケットも高いしよーー。
しかし一列目で観れて幸せでございました・・。ムフー!



|| top | theata | kangeki all | kangeki mami | kangeki kuze ||