ゼロの焦点/松本清張 (新潮文庫)


まずね、相変わらず松本清張作品は、推理がこじつけっぽい。

でもこの話はラストで板根禎子の推論を肯定するように、真犯人が自殺するんで、
まあ読後感は割にすっきりめだけどさ、でも事件の核心に迫って行く過程では、
「ああン??」と思うことも多々あった。

そして更に、この小説はな、暗いぞ!
北国の重苦しくって陰惨なムードと、内向的でアンニュイな感じの主人公、
このダブルパンチで、暗い上に運びも重く感じた。
そのせいかスリルがあんまり無かった。

まあ良く言えば、叙情的、情感に溢れて、映画的な美しさがある・・と言えるが、
でもこんな湿っぽいのは嫌いじゃ!!
いかにも日本くさい。

主役の女も好きじゃないし。(笑)
タイトルは気障でカッコイイんだけどねー。


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点と線/松本清張 (新潮文庫)


今まで読んだ松本清張作品の中じゃ、ダントツ好きだね。
とにかく、テンポが良く、展開がスピーディーで飽きさせないのがいい。

初めっから犯人は分かっているんで、ジャンル的には「アリバイ破り」
少々特殊なんだけどけどね。
でも、三原警部補&鳥飼刑事は、凡人ゆえに感情移入がしやすく、
この2人が、何度も壁に突き当たって四苦八苦しながら、
真相を解明して行く姿はつい共感して応援せずにはいられない。
一緒に一喜一憂してしまうのよね。

あとね、わずか4分という極限された時間に、
どうやって顔見知りの男女を一緒に歩かせることが出来たのかという点について解明されていないのは、
まあ確かにキズだがね、別に私は気にならんよ。
そんなの、いつもの松本作品の「こじつけ推理」に比べたら可愛いもんだって!!(笑)
それにそれを差し引いても、この小説はお釣りがくるほど楽しい!


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砂の器/松本清張 (新潮文庫)


この話はね、私文句が山ほどありますよ。

まず、刑事・今西栄太郎の推理が、妙にこじつけっぽくて且つ確実な裏付けが無く、
どうも推論の域を出ない。
証拠の挙がって行く過程も、余りにも偶然性が強過ぎて、
物語全体のリアリティーを大きく減じている。
それらのことに、主役に感情移入するのを邪魔されるため、
核心に迫って行くドキドキ&ハラハラが余り無かったのよ。

そしてなー、この話、私はかなり後半まで、真犯人は関川重雄だと思っていた。
実際、物語中にもそう思わせるような伏線がたっくさん張ってあるのよ。

関川とその愛人恵美子との
「この間のあれは、僕の言うとおりにしただろうな?」
「大丈夫よ」
などという意味ありげな会話!!

関川に、わずかに秋田系東北訛りがあるのをタクシーの運転手が指摘する場面、
更に郷里は秋田県かと訊かれた関川が、
「秋田県か、まあそういうことになっている」
と答える場面など、犯人は関川なのヨ!!と言わんばかり!!

*

結局、真犯人は加賀英良なんだけど、
関川に関する思わせ振りな伏線については、一切解明されない!!
おいおいちょっと待てよーーーーー!!
って感じである。
関川に関しては、謎だらけのまんまで、読者に対して不親切なこと限り無しだ!!
推理小説としてもかなりな片手落ちだぞー!!



もうひとつ。
重箱の隅をつつくようだがね・・
第一の被害者三木謙一と一緒にいたという加害者に、わずかだが東北訛りがあった、という点。
これはおかしい。
犯人の加賀英良は、出身が石川県で、その後は殆ど大阪で暮していた筈である。
ということは東北方面にはまるで縁が無いし、
そして東北地方と似た訛り言葉を使う島根県の亀嵩にも、1年もいなかったのだ。
それで東北訛りがあったていうのは・・・?
もしかしたら、加賀が被害者と同郷に見せようとしてわざと東北訛りで喋ったのかもしれんが、
それもおかしな話だしさぁ。
そしてこのことも結局物語中では解明されず・・・。

関川と加賀の陰湿な関係ってのも、
どうも描写が表面的でねぇ。具体的じゃないのよ。
もっと突っ込んで欲しかったよ、わたしゃ。

ただ、殺人方法の意外性には度肝を抜かれた。
超音波とはね!!

そして、犯罪者なりの魅力、共感し得る部分はしっかり描かれているし、
(まあこれは推理小説の必須要素だが。)
その上で、結局は破滅するという自業自得性&悲劇性もバッチリ。

はー、しかしやっぱ推理小説として抜けてる部分が多過ぎだよ!


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共犯者/松本清張 (新潮文庫)


この本はね、案外思ってたよりもずっと楽しかった。
全体に、推理短編に有り勝ちな荒唐無稽さが無く、
割と日常的なテーマを扱いながら、そこに実際有り得そうな怖さを出して
最後に背筋がゾゾッとするような余韻を残す・・
ってな作品が多かったように思う。

特に印象に残ったのが「潜在光景」。
この短編集の中で最も秀逸なドラマ性を持った作品だったと思う。
子供の殺意というんでちっとエラリー・クイーンの「Yの悲劇」を思い出したりしたが・・
(まあ少し違うけど・・。)
子供は無邪気なだけに、コワイですわ。
最後の警官の執拗な尋問に主人公がカッとなって全てを暴露してしまうのも、酷く衝撃的。


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火車/宮部みゆき (新潮文庫)


面白いと評判なので、読んでみた。
それなりに面白かったけど、ちょっと肩透かし食らった感もあり。

決して傑出した能力を持たない平凡な刑事・本間俊介が、とにかく根性で捜査して行き、
徐々に核心に迫って行く過程はドキドキするし、本間が平凡な人間だけに、感情移入もし易い。
が、如何せん運びが重すぎて、読んでてダレた

私は推理小説には、文学的な味付けは求めないタイプなので、(笑)
ああいう風に延々としつこく描写が繰り返されて、(だからあんなに本が分厚くなるんじゃあ)
肝心の本筋(犯人の核心に迫る)が遅々として進展しないと、イライラしてくるのよ。
その点がかなりのマイナスだったのです、私的にはね。


しかも、ラストは・・なんなんでしょうか、あれは・・。
あれがゲージツといふものなんでしょうか。
私には理解しがたかったです。
「え!?こんなに引っ張って、これで終り!?ウソやん!!」
って思いましたよ・・。

といって、あれがきっちり解決しちゃっても、なんか安っぽいかも知れないなぁ。
今冷静に考えると、あれで良かったのかも・・(笑)


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ステップファザーステップ/宮部みゆき (講談社文庫)


双子の子供と、泥棒を生業とする男の心の交流(笑)を描いた、
なんというか、漫画っぽい、割かしベタな設定のお話。
一話完結の短編シリーズもの。

そんなに本格的な推理小説ではなく、ちょっとした謎解き要素の加わったコメディー小説だわな。
読み易く、単純で面白いよ。
まさに、娯楽性・エンターテイメント性を追及した内容って感じですな。
作者の、とにかく読者に楽しんで貰おうという気持ちが如実に感じられます。
何も考えないで楽しみたい人にはオススメ。


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壁/安部工房 (新潮文庫)


はちゃめちゃこちょめちゃ〜って感じですね、この本。
なんか、シュールっていうか、ナンセンスっていうか・・。
安部工房氏の頭の中ってどうなってるんでしょう。
(紙一重って感じ・・。)
物凄く感性の世界っていう感じがするが、割に楽しかったです。
ここまでめちゃくちゃだともう怒る気もしない。(笑)

特に第一部「S・カルマ氏の犯罪」の不条理さは凄い。
名前なくして云々してたのに、最後は壁になっちゃってるし。
そして、本物のY子は一体・・。

でも、この本の中の主人公は、かなり切迫されてるのに、哀愁はあるけど、暗くはないんだよね。
だから、全体に作風も決して暗くはならない。
うーん、不思議。



にしても、あの数々の奇想天外で荒唐無稽な展開は、子供の頃に読んだ児童向けの本を思い出した。
(寺村輝夫の王様シリーズとか・・通じるものがある。)
目からカルマ氏の体内に吸い込まれて鼻水と一緒に出て来たりとか(笑)
カルマ氏が泣いたら体内で溺れかかったりとかさ。
意味もなく小さくなったりとか。

安部工房氏って思考が柔軟なのかもしれないな・・。


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砂の女/安部工房 (新潮文庫)


これは面白かったですね。
このお話は、もう冒頭の
「『罰』がなければ逃げるたのしみもない」
に全てが集約されていたように思う。
何処か芥川龍之介にも通じるような、人間の真理を捉えた内容だった。
主人公の男が最後、
思いがけず容易に逃げ出せる状況になったのに結局逃げ出さなかったというのが、まさに・・
である。

そしてこのお話で一番ハッとしたのが主人公の男の「いつもの日常」に対する固執
そう、「壁」でも矢張り主人公達が(S・カルマ氏やアンテンくんね)、「いつもの日常」を失っちゃう訳よね。
でも彼らはそれを取り戻そうという執念が全く無いんである。
失ってしまった事実を悲しむことはあっても、何処か飄々としていて、
それを取り戻す為の死に物狂いの努力をしないのよ。
そのことに対して彼らは妙に淡白なの。
それがあのお話の不条理さの一番の要因だったんだ!と、
「日常」を取り戻す為に死に物狂いな「砂の女」の主人公を見て、気付いたのだ。

ま、日常に対する執着はどんな人間でも当然あるものだから、
その点ではこの主人公、とても感情移入し易かった。
「壁」では主人公の心理はどうにも理解し難かったから、私は傍観者だった。
どっちがいいとか言うのではなく、読み手としての私の位置付けね。



でも、私男の気持ちも良く分かったけど、
同時に女に対してもひどく同情的な気分で読んでいたのよね。
それは何故なのか、自分でもよく分からない。
ひょっとすると、自分が女だからなのかも知れないけど・・。

砂の穴の生活に順応している女。それを少しも「苦」とは思っていない。
「外」に出てもすることはないと言って内職して、お金を貯めてラジオを買うことに喜びを感じている。
現状を受け入れて、淡々と生きてるって感じなんだよね。
そして、なーんか憐れなんだよな・・。

でもさ、何となく、人間みんなそういうところがあるよね。
働きたくなくても、働かなきゃ食べていけないから働く、とかさ。
で、それは受け入れなければ、仕方ないことでしょ。
女の生き方はその極端な例って感じ。
それとか、いずれ近いうち、関東には大震災がまたやって来るのに、
みんなそれが分かっていながら、やっぱり土地を離れない・・そういうのに近いかなと、思ったりした。

しっかし、砂が体に貼り付いたり、口の中に入って来たりっていう描写がとっても微細かつリアルで、
こっちの口の中まで砂っぽくなるような気がしたよ・・。


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ケインとアベル/ジェフリー・アーチャー (新潮文庫)


私は基本的に翻訳ものは好きではない。
いかにも訳文って感じで読んでて辟易しちゃうのだ。
翻訳した本は、すでに原作とは異なるひとつの独立した作品である
というのが私の持論である。
訳し方によって印象がまるで違うもんね。

と、前置きはこの辺までにして、「ケインとアベル」について。
何か映画化した小説らしいね。しかし映画の方は全く知らんが。
翻訳もののくせに(笑)、面白かったですわ。
ストーリーがいいんだな。
文章のつまらなさを補ってグイグイ引っ張る。

馬鹿売れしてるシドニィ・シェルダンより面白いんじゃ??
シドニィ・シェルダンの作品ってなんか無機質な気がして・・。
「ケインとアベル」には骨太な人間ドラマがあるですよ、ミステリーであると同時にね。
しかもケインとアベルの主役2人がとても魅力的。
(シドニィ・シェルダンはどうもミステリーに偏り過ぎていて、
 人間ドラマという点ではいつも不満を抱く・・登場人物もさして魅力的とは思えないしな。)

ま、後半は結構、全てが予測通りでつまらん・・という部分もあったけどね。
フロレンティナとリチャードが駆け落ちすることとか、
アベルの後継者がウィリアムであるということとか・・。
この辺はかなりベタな展開だもんんな。(笑)



でもアベルとウィリアムの最終対決は面白かった。
結局敗れるのはウィリアムの方だが、(ちなみに私はアベルを応援していた。判官びいきってやつ?笑)
しかし、ウィリアムのなんと潔いことかっ!
アベルに何をされても「俺がお前の後継者だ」とは言わなかったでしょ。
勿論プライドもあったとは思うけど、それにしてもなんて気高い・・。(笑)
でも、アベルは戦場でウィリアムを助けたし、
(2人とも死ぬまで気付かんが。いや、ウィリアムは気付くか。)
それでフィフティーフィフティーかな。

2人はお互いが最大の敵でありながら、それ以上に不思議な運命の糸で結ばれていたのね・・。

*

と言いつつ、私このお話で一番印象的だったのは、ウィリアムとマシューの友情なの。
マシューが死ぬまでの、この2人の関係は「親友」というものについてひっじょーに考えさせられた。
そして、こんな唯一無二の2人の関係は物凄く羨ましかった
私も死ぬまでにはこんな親友が欲しいと思ったよ、真剣に。


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ファザーファッカー/内田春菊 (文春文庫)


なんだかこれは、ほぼノンフィクション、内田春菊の自伝的小説だそうで・・。
まあ、なんて極めて異常な家庭に生まれてしまったんでしょ、
という同情はするけど、 それ以上の気持ちは何もないな。(笑)
読み終わっても、別に何の感慨も無く・・。
これがベストセラーねー。
売れたのは、単に衝撃的だったからだけじゃん。
あ、でも、不条理な魅力はあるかもしれない。
正論が正論として通らない、価値観が覆されるような。

しかしさ、義理のオヤジは、言うまでもなく、最低最悪な奴だが、
(っていうか犯罪だろっつーの。人道に外れてるぞ、大幅に。)
この主人公静子もなんだかなー?
何で平気で中学校の同級生とセックスすんの?
(しかも妊娠するまで・・。)
セックスすれば妊娠するっていう知識はあったでしょ。
また、そうなったらどんなに大変な事になるかってことも分かってたと思うが?
不可解じゃ。
読みながら「こいつバカじゃないのか」としらけてしまったわ。

ただ、最後に静子が家を出れば全てから逃れられる、と言う事に気付いてそれを決行するところは、
ふむふむ、って感じだったが。
確かに、意外なところに盲点が隠れてるものよね、人生。
目からウロコってやつ?


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ガリヴァー旅行記/スウィフト(新潮文庫)


メルヒェンな童話として有名なこのお話、
実は物凄く分厚く、しかもかなり露骨・辛辣な風刺小説だったと知ったのは短大の時だった。
それを知ってかなり仰天して、私はこの小説を読んだのだけど・・
まあ翻訳もの特有の文章のつまらなさ、退屈さはあるけど、それなりに面白かったよ。

ガリヴァーは逞しくて(精神的にね)すっげー適応力旺盛な男で、
色んな国へ漂流しては行き着くんだけども、何処でも元気元気!!

大きく分けて全部で4回漂流してるが、まあ一番印象的なのは、最後のフウイヌムの国だろうね。

ここでは人間の姿形をしたヤフーは
理性の無い、全く教育の見込みの無いケダモノで、
馬の姿をしたフウイヌムは、
どうして悪が存在するか理解し得ないという理性的生物なのね。
ガリヴァーは自分の世界の事を一生懸命説明するけど、
フウイヌムにヤフーと人間とは本質的に同じ!と指摘される。
そんでガリヴァーは初め、そのあべこべさを受け入れられないけど、
次第に染まって行って、なるべくフウイヌムに近付こうと頑張る!!

でも結局人間の姿形をしていると言う事でその国をおん出されるの。
自国に戻ってからのガリヴァーは人間に対する嫌悪感から誰とも接しなくなり、
2頭の馬を飼って彼らと話しながら日々を過ごしたのだー!



珍しく粗筋など書いてしまったが・・。
最後のこの話は明らかな人間への風刺だよねー。
確かに人間は間違ったこと沢山するし、学習能力無いかもしんないけど、
でもそればっかじゃないじゃん!!

性悪説唱える人ってさ、なんなわけ??と私は言いたい。
昔から不満だったのよ、性悪説を唱える輩がぁ!!
自らを嫌悪する事が改善に繋がるか??
答えは否だね。

この作者、スウィフトの晩年もね、この最後のガリヴァーの姿そのものだったそうよ。
(人間を嫌悪する余り、人間不信に陥って。)

もっと自分に誇りを持てよ!!
情けないぜ!!


ていうか、繊細過ぎるよね。
もっと図太く生きようぜ〜〜!!
そんなに悲観的になることないじゃん!

人間だって理性はあるよ!でも同時に感情もあるんだもん!!
常にそれを抑制出来るとは限らないよ!
だから間違いもするけど・・少しずつ学習して行くじゃん!!

自分自身を否定してしまったら、何も生まれて来ないと思うよ。
(珍しく熱く語る!!)


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アクロイド殺し/アガサ・クリスティー (ハヤカワ文庫)


この話は、アガサ・クリスティーの作品の中で2番目に読んだやつかな??
(1番初めは言わずと知れた「そして誰もいなくなった」よ!)

このお話、実は語り手が犯人というトリックがあるのだが・・
私は案外早い段階でそのことに気付いた。

具体的に言うと、物語半ば、ポアロに脅された(笑)容疑者達が
どんどん泥を吐いて行く辺りでジェイムズを疑い始め、
原稿を読んだ後のポアロの
「あなたは自分というものを、背後に隠しておいでになる」
というセリフで自信を持ち、
そしてラルフ・ペイントが現れた時の
「私にとって、それは極めて不愉快な瞬間だった。」
のジェイムズの記述で確信したという具合。

自分が目星を付けた人物が犯人だったことにちょっと満足したが、少しガッカリもした。

逆にさ、自分が思いもしなかった人物が犯人だと、
驚いて、悔しい反面その意外性に快感を覚えるんだよねー。
読者は作者と知恵比べすると同時に、
エンディングの鮮やかな大どんでん返し!「裏切られる快感」!を求めてしまうのさ!
まあ、そのアンビバレンツこそが推理小説の醍醐味だからね。



このお話の良さは、ジェイムズの犯人としての自業自得性に尽きると思うよ。
最後で姉・キャロラインの為に自殺するでしょう。その潔さ。
ラスト近くのジェイムズの記述は淡々としてて自嘲的。
自殺にヴェロナールを選ぶのもなんて因果応報でいいんだろう。

・・ジェイムズの最大の敗因はポアロをみくびっていたことだったね。


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限りなく透明に近いブルー/村上龍 (講談社文庫)


大嫌いなタイプの小説。
抽象画とおんなじで、自分の感性の押し付けって感じ。
分かる人には分かるけど、分からない人には全く分からないという・・。

この感性の世界にはまる人もいるのだろうが、私には生憎、相容れなかったようだ。
(あ、タイトルは綺麗だと思うけど・・映像的で。)

終始、ぜーんぜん面白くなかったよ。(笑)
起承転結はあるような、無いような、ダラダラした展開。
薄い本じゃなかったら、最後まで読む気しなかったかもしれないな。

あー、「コインロッカー・ベイビー」も買ったけど、読む気しなくなって来た。
(で、未だに読んでない。笑。読まなきゃあ!)


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ドリアン・グレイの肖像/ ワイルド (新潮文庫)


耽美&怪奇な小説ですよこれは。
かなり変わってるかもね。

分厚いし、文字小さいし、回りくどいし、翻訳ものの退屈さもあるけど、読後感は衝撃的!
ラストがね、とにかく、コワイっすよ、戦慄を覚えますよ。
あと、温室の窓にぴったり張り付いたジェイムズの顔とか・・コワ〜〜〜!!
なんかね、やたら映像的なのよ、この小説、全般に。
だからついリアルな想像をしてびびってしまう・・。

それにしても、それほどまでに若さと美に執着したドリアン。
結局、絵の方がどんどん醜悪になっていって、彼の方は全く年を取らず綺麗なまま・・
ドリアンは欲していたものを手に入れたんだから、幸せだったのか??
否!!
その代わりに失ったものの何と大きいことよ!

どんどん醜悪になっていく自画像に、常に強迫観念に駆られ、
そのために人を殺め、ヤク漬けになり・・。
悪魔に魂を売ったも同然。
ドリアンは自滅の道をひた走っただけだ。

最後、改心しようと決意した夜に
彼の見た、ナイフを突き立てた自画像は彼自身だったのだろーか??


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人間失格/太宰治 (新潮文庫)


太宰の自伝的小説さ!

この本を初めて読んだのは中3の時だった。

めちゃめちゃ落ち込むから読まない方がいいと言われていたけど、読んだ。(笑)
で、読んでみて、確かに暗いし、主人公はどんどん自滅への道をひた走って行くが、
でも私は落ち込むどころか、とても共感してしまって、非常に面白かったですよ!
その後も何度か読み返したけど、やっぱりその度共感するね。

人間の偽善的な部分に対する不信感って凄く分かるよ。
本心なんて誰にも分からないもんね。
表面上は幾らでも取り繕える。

そして、友達の前で道化てしまうというのも良く分かる。
私もたまにはしゃいでいる時
「あら?私って周りの描く411像を演じてるんじゃ・・」って思う時がある。
そう思うと、後からどっと疲れたりする。
(まあ周りの人間が怖くて道化てた主人公とはちょっと質が異なるかもしれんが・・。)



でも私は太宰ほど繊細じゃあないから、
たまにそういうことを考えても、忘れてまたガハハと生きてるんだけどね。(笑)
ずっとその考えに捕われて、自滅の道を走るほど細い神経しておらんのです。

本当に太宰の作品って繊細で退廃的、壊れそうってイメージ。
(本人そのまま!)


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