ウイニングポスト5


ポスト「ダビスタ」の旗手の志低き最新作

やっと「ダビスタ」と張り合える水準に達した前作を受けて、
マイナーチェンジ程度の改変で済ませたシリーズ最新作だが、
バランス面に大きな問題が秘められていた。


1.概要

 光栄の競馬SLG「ウイニングポスト」シリーズの第5弾。これまで同シリーズは、1・2→3、3→4と大きな変更が行われてきましたが、本作においては1→2の場合同様に前作のシステムを引き継いでのバージョンアップという形になっています。

 かのダビスタシリーズが、「ダービースタリオンU」(あるいはPC98版?)以降はほとんどシステムをいじらずに、ほとんどデータ(および配合理論)の追加・修正のみですませているように、この「ウイニングポスト」シリーズも前作「ウイニングポスト4」により遂にシステム周りが完成されたと言う事なのでしょうか。

 もっとも、「信長の野望」シリーズの様に、2作毎にシステムを大きく変更するのかもしれませんが。

 今回のレビューでは、「ウイニングポスト4」を知っている事を前提に、4から本作への変更部分を中心に紹介していきます。なお、「ウイニングポスト」シリーズの詳しい紹介については、次回以降の「競馬GAME大全」に載せる予定です。


2.GAME内容

 上でも触れたように、基本的には本作は「ウイニングポスト4」のシステムをほぼそのまま引き継いだバージョンです。ようするに、ダビスタシリーズの続編と同じパターンです。

 「HorseBreaker」のレビューにおいて、事実上の「ウイニングポスト4.5」だと記載しましたが、本作も事実上の「ウイニングポスト4.7」程度でしょうね。

 一応本作の最大の目玉は、パッケージを見ていただければ分かりますが「馬主データ」と「血統」の充実と言う事になっているようです。

 「血統」面については、新しく「能力因子」と呼ばれる要素が加わりました。これは、詳細は光栄が発行している(3冊もの)攻略本を見てもはっきりとは分からないのですが、各血統のインブリード効果を表しているような感じです。とりあえず、その種牡馬の距離適性とかが分かりやすいのは確かです。

 「馬主データ」の充実とは、CPU馬主がそれぞれ独自のアルゴリズムで、セリが好きとか、庭先取引好きとか、外国産馬好きとか、長距離戦好きとか、個性的な動きをする事らしいです。むしろ、今まではどうやっていたのか疑問を感じなくも無いですが…

 もう一点、プレイヤー自身の馬主データが、それまでのプレイに合わせて記録されるという事もあります。更に、馬主データをプレイヤー間で交換したり、馬主データに記録されたアルゴリズムに従ってのオートプレイも可能になっています。

 ここまでで、冷静に考えていただければ分かるでしょうが、ほとんど意味ないです。ダビスタシリーズ程の信用は無いので、単にデータ・配合理論の変更版というだけではアピール弱いって事で、むりやり新しい要素と言い張っているのでしょう。

 まあ、「実況パワフルプロ野球」があれ程完成度の高いシステムを誇りながら、慣れてくればほとんど無意味な「実況」を売りにしている様なものでしょう。

 なお、馬主データはGAME中では下の画面の様に表示されます。

馬主データの例


 まあ、これを見れば分かるように、プレイヤー馬主の顔グラフィックには自前で用意した画像が使用出来ます。雑誌の紹介などでは、自分の顔をデジカメで取り込んで等と書かれていますが、やはりこの手のパターンが多いでしょうね…

 わざわざこんな事やってプレイしている筆者ですが、所詮は「あれば利用してもいい」程度の機能で、こんなもんを目玉と言い張るあたりがかなり苦しいですね。

 この他に、「牧場拡張」というものが追加されました。これは、プレイヤーが任意に金を払って牧場の設備を拡張・追加するコマンドです。種牡馬・繁殖牝馬の持てる数のUPの他に、牧草交換(幼駒の素質底上げ)や、坂路等の各種トレーニング設備、さらに獣医・温泉といったものもあります。

 これらの拡張により、種牡馬・繁殖牝馬の上限UPや、誕生する幼駒の素質UP、デビューする競争馬の経験値や休養後の調子、更にデビュー後の体質上の問題(喉鳴り等)の発生率DOWN等様々な効果が得られます。

 これにより、人間関係のイベントと共に「牧場経営SLG」として少しでも盛り上げようとしている事が分かります。もっとも、ダビスタシリーズでの同様の要素でも分かるように、2度目以降のプレイでは面倒なだけですが。

 少なくとも、これらの要素単独で面白いわけではなく、あくまでもメイン部(競争馬作成・出走)の補完でしかなく、しかもそちらへの集中を妨げている面もあります。


 実際のプレイで重要な変更点は、ダビスタ同様にデータとGAMEバランスという事になります。

 まずはデータですが、レース番組は当然2000年対応になっています。残念ながら2001年対応ではないので、馬齢表記や新潟の左回り化&直線対応はされていません。欧州のレースではマイルの直線レースなんてのも再現しているだけに、当然次回(本作のパワーアップキットが2001年9月発売予定)では導入されるでしょう。

 JRAのレースを52週×2日×12レース×2(3)場の全て、地方交流重賞全て(多分)、米国・欧州の重賞多数、という無駄なまでに豊富な番組数は4同様です。更に、3歳重賞が加わったのは「HorseBreaker」以来で、本作では更にエミレーツワールドシリーズも追加されました。これにともない、カナディアン国際・コックスプレート・香港国際カップ(だっけ?)も追加されています。

 ちなみに、今回はBCとジャパンC(JCダート含む)の間隔は中二週になっています。これで、4よりもBC→JCのローテーションがやり易いと見せかけて、実は海外遠征後は検疫期間のため3週間出走不可のです。そのため、中二週のこのローテーションは不可能です。

 確かに、実際にもこの様な措置は取られており、規則通りに行くと日本馬のBC→JCは不可能なのですが、タイキブリザードの時は特例で認められたのですから、なんとかして欲しかったです。(タイキブリザードは結局回避、2001年秋にはホットシークレットがメルボルンC→JCのため交渉中)

 もっとも、光栄のチェックが甘かったらしく、帰国後に出走登録すればBC→JC可能と言う話もあります。筆者のところでは、どうしてもうまくいかないのですが…

 いずれにしても、外国馬は平気で出走しているので、納得出来ないのは確かです。そもそも、日本の法律自体に問題があるのですが、そんなところをリアルに再現する光栄にも理解が苦しみます。

 当然、種牡馬・繁殖牝馬も2000年の競馬分が反映されており、繁殖牝馬ではチアズグレイス・シルクプリマドンナ・ティコティコタック・サイコーキララ等が、種牡馬ではテイエムオペラオー・アグネスフライト・エアシャカール・キングヘイロー・ドバイミレニアム・モンジュー等がいます。キングヘイローがテイエムオペラオーと同い年になっているのはどうかと思いますが。

 なお、2000年活躍馬でも、メイショウドトウ・ダイタクリーヴァ・シンダー・ジャイアンツコーズウェイ・ファンタスティックライト等は存在しないです。

 配合については、筆者には今ひとつ分かっていないのですが、「零細」と「トリプル相性」が協力だった4とは大きく異なるようです。4のパワーアップキットやPS版4から導入された「血脈活性化」(ダビスタの「面白配合」みたいなもの)がかなり重要らしいです。

 配合時の牧場長コメントが、本作ではかなり詳しくなっています。「これ以上にない」とか「最高の配合」とか「とてつもない爆発力」とか、かなり詳細なコメントを言ってくれるので、一見これに従えば最強馬作成もかなり楽に思えます。

 もっとも、攻略本によれば牧場長コメントでは「血脈活性化」等を考慮しないので、実際の誕生する幼駒とは大きく喰い違う事も少なくない様ですが。

 実際、筆者のプレイした感じでも、インブリードを強く効かせた場合(多くは同系配合)によいコメントが出やすい傾向にあるので、インブリード効果を重視する一方で「同系配合」や「流行血統」等のマイナス要素を無視しているようです。

 今までの延べ50年程のプレイでは、ほとんど牧場長のコメント信じて、必死にコメント見まくって配合してたのに、何だったのでしょうか…

 ともかく、4もそうでしたが配合理論は慣れない内はかなり難解です。マイナス要素に気をつけながら、牧場長コメントを信じるのが無難でしょうね。配合に凝ったプレイを意識している人以外は。

 後は、ライバル馬のバランスですが、相変わらずかなり悪いです。本作では条件戦も以外に手強くて、妙に高い除外率も含めて、素質馬でも下手をすればなかなかオープンに上がれないなんて場合もあります。

 また、前作では早熟・芝向きの外国産馬を連れて来れば勝ちまくりだった3歳戦も、今回では妙に早熟な数頭が重賞出まくっているので、特に函館・小倉・新潟あたりの3歳Sでは、なかなかプレイヤーの馬は勝ち負けにならないです。函館3歳S→ダリア賞→新潟3歳S→札幌3歳Sなんて無茶なローテーション組んで、3歳時6勝位する馬が毎年の様に出ますし。だいたい、暮れの3歳GTでは燃え尽きてますけど…

 このあたりは、調教タイムが頼りにならなくなった事による、マル外セリ市の難解化も影響しているかもしれませんが。ちなみに、マル外購入時は素質がかなり高い馬はチェックされてセリに出ないようになったそうです。

 バランスとしては、特に海外戦が妙に弱い事が気になります。この傾向は4でも「HorseBreaker」でも同様だったのですが、今回は特に米国ダート路線の妙な弱さが気になります。ある程度強いダート向き・早熟の中距離馬で、海外適性(精神力?)があれば簡単に米国3冠路線の中心になれます。

 例えば、早熟・ダート馬が出やすいトップクラスの繁殖牝馬「ルビーヴェイル」の参駒達は、毎年の様に米国3冠で勝ちまくる事が出来ます。だいたいが「競争寿命」低いので、4歳暮れのBCクラシックの頃は燃え尽きますけど…

 本作では、競争馬の能力として以下のパラメータが追加されており、各馬の個性が更にはっきりと現れます。だいたいが弱点ですが…

スピード:今回は、4における「素質」の事
スタミナ:今回は、距離適性を現す
柔軟性:高いと、距離適性以上の長距離で我慢が効く
コース適性:右回り・左回り・小回りが苦手な場合がある
喉鳴り・腰が甘い:共にレースで不利、休養により治る場合あり
パワー:高いと坂に強い
競争寿命:詳細は後述する

 これらのパラメータにより、坂と小回りが苦手なので京都・新潟を中心にとか、左利きのダート馬なので米国のレース中心にしようとか、馬の個性に合わせたローテーションが従来以上に重要になってきます。

 もっとも、これらの弱点が妙に多く出るので、ベストの条件がほとんど存在しない馬いたりして、ストレス溜まるだけの様な気もします。左利き・芝馬・坂苦手・小回り苦手なんて言われたら、どこ出せばいいのでしょうか?

 また、海外戦になると右回りかどうかとか、小回りかどうか、坂があるかなんて事はほとんど分からないので、無駄に難易度上げてます。

 そもそも、レース使う前に、入厩後の調教師コメントでこんな個性が全部分かる時点で不自然ですが…

 今回追加されたパラメータの内で特に重要なのが「競争寿命」です。基本的にGAME内の競走馬は、成長度に従った成長曲線で、年齢と共に能力が上がって(一定の時期を越えると下がって)いきます。この点は、ダビスタシリーズも他の競馬SLGでもほぼ同様と思われます。

 しかし、本作ではこの「競争寿命」という概念が導入されました。これにより、競走馬は一定のレース数を消化すると、能力の上昇(成長)をストップさせて、以後は能力は下がる一方となります。要するに、使い過ぎる事により、その馬本来の素質を開花させる前に燃え尽きさせてしまう場合もあるという事です。

 そして、成長をストップさせるレース数というのが、「競争寿命」のパラメータにより定められます。すなわち、「競争寿命」の高い馬=使い減りしない馬という事です。

 もっとも、レース数を慎重にしぼって使う馬というのは、あくまでも脚元不安等で使い込むと馬に異常が発生しやすい馬の場合だと思うのですが。しかし、本作では「健康度」と「競争能力」の能力がそれぞれ独立しているので、「脚元は丈夫で使い込んでも平気だけど、その結果馬の成長は妨げられる」なんて困った競争馬が続出します。

 更に問題なのが、「成長度」とも独立している点です。早熟で「競争寿命」が高いなんて場合は、「無駄じゃないか」と苦笑していればいいですし、せいぜい3歳〜4歳前半で使いまくってやればいいです。(脚元弱いと無理だけど)

 しかし、晩成で「競争寿命」が低いなんていう場合は頭を抱えてしまいます。本作では、「競争寿命」がD(最低ランク)の競争馬はレースによる消耗が相当激しいらしく、例えば3歳暮れデビュー・4歳終了時で通算6戦(ついでに素質かなり高い)の馬が、4歳暮れに調教師に「ピークは過ぎた」なんて言われてしまいます。(5歳で現役続行させたら、GV2着が最高だった…)

 この様に、早熟以外の馬で「競争寿命」最低なんて場合は、まず確実に能力がピークに達する前に下がり始めてしまいます。あるいは、ピークまではレースをほとんど使わない事で対処出来るかもしれないですが、それは競馬SLGとして面白くないです。(レースを使う事による経験値の要素もあるし…)

 このように、「健康度」とそれに対応する体調不良・故障・調子下降の発生率・バランスで解決すべき問題を、わざわざ新規のパラメータに依存してしまった事による悪影響はかなり大きいです。

 しかも、この「競争寿命」は発生条件がよく分からないです。「健康度」同様に過度のインブリードの弊害なのかもしれないですが、前述したように健康で「競争寿命」低い競争馬も少なくないですし。まあ、同じ繁殖牝馬(ルビーヴェイルとか)で、特に同じ配合だと「競争寿命」最低が連続する場合が多いので、配合なんでしょうかね?

 更に、「競争寿命」最低の発生率は異様に高いです。筆者の3度目のプレイ(「さゆりん牧場」は2度目)などは、毎年デビュー6頭中4〜5頭が「競争寿命」最低なんて年が連続してました。多分、配合・種牡馬か繁殖牝馬のパラメータ・牧場の設備のどれかが原因なのでしょうが、プレイヤーのやる気を大幅に損ねる程のバランスは酷すぎます。

 毎年3・4歳馬しかいない(「競争寿命」の都合で常に4歳暮れで「ピーク過ぎてる」)とか、早熟馬以外は育ちきる前に引退するので大きいところを狙えないとか、おかげで毎年素質馬揃えているのにGTがほとんど勝てないなんていうのは納得出来ないです。

 しかも、牧場長コメントに従った配合の結果がこれですから。「健康度」と同様にインブリードの弊害だとすれば、前述した牧場長のコメントの特徴から、この様な結果は充分あり得るのですが、「脚元不安」に比べても発生率高いので腹立ちます。

 「脚元不安」のリスクの低さ(シリーズ通じて故障発生率低いし)を含めて、バランス調整根本的に間違っていると言わざるを得ません。そもそも、「脚元不安」のリスクの低さへの対処としてこの「競争寿命」を導入した様な気もしますし…

 だいたい、「健康度」の問題ならば調教やローテーションで工夫してなんとかしようという気になりますが、「競争寿命」の都合で無条件にレース数制限ではバカバカしいだけです。


3.評価

 上で「競争寿命」についての問題をかなり書きましたが、それ以外でも問題点は少なくないです。

 「HorseBreaker」のレビューでも書いた「無駄に手数を要求する」点は、本作でも健在です。(そもそも、4でもあった)

 具体的には、調教師や牧場長のコメントを見る回数が多過ぎる点ですが、今回は特に厳しいです。4では、2・3歳共に2ヶ月に1回のチェックで済んだのですが、今回は毎週チェックが必要になります。

 3歳の入厩前後で、それぞれ2ヶ月間毎週のチェックが各馬に必要ですし、2歳時のチェックはスピード(=素質、デビューさせる馬選択に最重要)コメントがいつ出るか分からないので、最高20頭分を(スピードコメントが出るまで)毎週必要になります。

 このコメントが、牧場長・調教師の能力により種類・正確さが変わったり、2歳時のスピード(素質)コメントが分かり難くなった(上の3段階のどれなのか分からない)点等は、GAMEとして(4と比べて)正しい改善だとは思うのですが、手間が余計増えてしまっては逆効果です。

 そもそも、パラメータの種類が増えた時点でこうなる事は明らかなので、製作側が何らかの手を打つべきだったのは明らかです。当然、光栄側もその事に自覚はあるようで、「メモ機能」が更にパワーアップして「精神力」、「瞬発力」、「柔軟性」等の各値がクリック一つで記録出来るようになっています。(「成長限界」や「コース適性」等は手入力しかないあたりがツメ甘いけど…)

 これはこれで便利なのですが、1世代6頭分を毎週チェック・書き込みを繰り返すのは苦痛な事に変わりないです。「ステイブルスター」みたいに、この手のコメントはまとめて報告されるとか、せめてコメントを見たらその内容を自動的にメモに記録してくれる位は欲しいです。

 確かに、ダビスタシリーズでもその様な機能は無いですが、こちらはシステム的に一度に十数頭管理するのが当たり前なのですから、少しは配慮が欲しかったと思います。


 また、2の項目でも触れた様に、相変わらずゲームバランスが悪いです。特に、再三言っている「競争寿命」の問題は、致命傷に近いほど影響力大きいです。

 また、海外競馬が妙にレベル低い事が多いのは、JRA勢のレベルUPを睨んである程度意図的に作っているのでしょうが、ヒヤシンスSでハナ差辛勝後に米国3冠を全て快勝で達成するのは、以下に競争馬の適性があろうとやり過ぎです。

 ついでに、GAME開始直後に貰える3・4歳馬が、明らかにヘボ血統馬なのに(一部の馬は)GT5個以上勝てるというのは、配合理論とか無視して露骨にパラメータいじっているのが見えて、逆に嫌な感じです。

 ついでに、最初の海外セリの中に、米国3冠・BCクラシック・ドバイワールドC全部勝てるほどの馬が潜んでるし(ドバイミレニアム産駒)。これなんて、海外セリで落とせる馬の能力に上限設けられた筈なので、明らかに海外ダート路線のバランス調整間違ってる気がします。


 「ウイニングポスト」シリーズでは、ダビスタシリーズとの差別化として「牧場経営」や「人間関係」といった要素を導入しています。しかし、これらの点は5作目となった本作においても、未だにGAMEとして面白いところに到達していないです。

 「牧場経営」は、確かに「牧場拡張」の追加により色々と悩ませてくれますが、2度目以降のプレイでは邪魔になってきます。所詮は、ある程度やり込めば金なんて幾らでも余りますし。どうせ全員フル装備になってしまう上に、「信長の野望」等と違ってその状態から先が本当の楽しみというのがこのジャンルの(ダビスタ以来の)伝統なのだから、所詮蛇足なんですよね。

 「人間関係」に到っては、各キャラの個性弱いんで無駄です。いちいち話し掛けてきても、会話内容はパターン化しているから、慣れて来ると邪魔なだけですし。年末に調教師チェックして訪問するのも、面倒なだけですし。

 結局、このGAMEのメインは馬の生産・購入とレース出走であり、(プレイヤーの何割かは)配合に凝って最強馬生産を目指す事です。要するに、本作は完全にダビスタの延長上にあるわけです。

 そこで、ダビスタと同じ路線で更に上を目指すのか、ダビスタと別の道を目指すのか、考え方は二つある訳ですが、このシリーズはその両方を目指してしまった訳です。このあたりが、何でも放り込んで全体のボリュームを無駄に膨らませて、その結果バランスを崩壊させるという、光栄の悪癖な訳です。

 本作では(と言うより「ウイニングポスト」シリーズでは)、「牧場経営」や「人間関係」以外にも、騎手・調教師・馬主・牧場・競争馬・繁殖牝馬・種牡馬が全て、プレイヤーとその管理馬と同じ時系列の中で生きている世界の再現という、シミュレーションとして(競馬の箱庭世界の構築として)ダビスタシリーズよりも高みを目指したという、大きな存在意義があります。

 ダビスタシリーズは、初代で基本部分の大半が完成され、U(スーパーファミコン版)で現在のシステムがほぼ完成されました。しかし、「ウイニングポスト」シリーズは試行錯誤を続けて、4でやっとまともな完成度に達しました。

 莫大な数の地方・海外重賞の導入や、血統の支配率を配合理論に取り入れたことによる数十年単位での血統の興隆と衰退、10年先を睨んだ海外セリによる(繁殖用としての)異系の血の導入、等の各要素は現存する他の競馬SLGの追随を許すものではありません。(一人の天才が創ったダビスタに対する、光栄の組織力が造ったウイニングポストですな)

 しかし、まだGAMEとしては「名作」と呼べる段階は遠いと言わざるを得ません。開発期間不足が明白なバランス調整の甘さや、「牧場経営」や「人間関係」等の要素を消化し切れていない点など、今後への課題は多いです。

 ただ、今後最大の問題となるのは、この作品自体のボリュームが大き過ぎる事でしょう。多くの要素を詰め込みすぎた結果が、開発側・プレイヤー両方の負担を大きくしてしまう訳です。その結果が、開発側にとっては先程も上げたバランス調整の困難さを、プレイヤーにとってはプレイ時間の膨大さとして跳ね返るわけです。

 本作(および4)では、最強馬作りのための何世代にも渡る配合を始めとして、血統の流行の推移(4では、序盤にサンデーサイレンス系が大流行して、その後一気に衰えて絶滅するのがパターンらしいです)など十数年以上の時間の流れが求められる点が少なくありません。少なくとも、そこまで体験しないと本作を味わい尽くしたとは言えないでしょう。

 しかし、生産・購入・ローテーション管理・コメントチェック・人間関係等をこなして1年分プレイするのには、数時間は掛かります。この点が、1頭の馬を育てるのに集中出来るダビスタシリーズとは根本的に異なります。(スーパーファミコン以降のダビスタは、ある意味「最強馬作成ツール」です)

 これでは、目の前の事象を楽しいでいく環境GAME的な「受身のプレイ」で楽しむ事は出来ても、最強馬生産の様な「積極的プレイ」は普通は出来ません。少なくとも、筆者には3世代配合で結果が出るのは数十時間後、なんて馬作りには耐えられません。

 結局、1頭ずつの細かいチェックから、10年先・20年先を見据えた牧場の戦略方針決定まで、全てプレイヤーが背負ってしまうために起こる矛盾な訳です。五丈原での諸葛亮みたいなものですね。

 このあたりは、先程も触れた様に光栄が根本的に抱える体質的な問題なので、本シリーズの中だけで改善を期待するのは難しいでしょうね。せめて、開発期間を延ばしてバランス取り・完成度UPには心掛けて欲しいのですが、株式会社の宿命には勝てませんかね。

 このあたりは、「ウイニングポスト」シリーズが示した様々な道の中から、新たなる後継者を作り出す者が登場する事に期待したいです。個々のレースを見ないで、数十年単位の血統の流れに絞った競馬SLGとかどんなものでしょうか。配合等は凝らないで、血統の導入に的を絞った社台ファーム的なんて無理がありますかね?

 「三国志」から15年の時を得て、「三国鼎立2」という名作が生まれた様な事が、このジャンルでも起きる事を期待したいです。もっとも、「三国鼎立2」自体がシェアウェアなので、世間では知名度はゼロに等しいのですが…

 もっとも、全国統一の様な最終目的を目指して進む(ある意味RPG的な)「信長の野望」や「三国志」等と異なり、明らかに「環境系SLG」に属する本シリーズでは、気楽にGAME内の日常を楽しむ「受身のプレイ」で充分に楽しめるので、「名作」ならずとも「良作」と言える段階には達した訳です。

 なお、本シリーズの外伝的作品である「HorseBreaker」は、配合=最強馬生産を柱としたダビスタシリーズと異なる道を目指した一つの試みと言えるかもしれません。先のレビューで触れた様に、バランス調整に失敗しているし、結局「ウイニングポスト」シリーズとの差別化に成功していないですが。

 さて、4の時点でこの段階まで達した本シリーズですが、最新作たる本作(5)ではどうだったのでしょうか?

 ここで光栄は、大きな変化を望まずに4の路線継承をした訳ですが、それにしても4の弱点(バランス・操作性・人間関係の甘さ等)を多少なりと克服してくれれば、最強馬生産はともかくとしていわゆる「ほのぼのプレイ」する分には充分楽しめるだろうと期待しておりました。

 しかしその実態は、これまで触れたようにバランスの悪化・操作の面倒さの増大など、ある意味退化している部分もあります。それに、筆者は2000年末にPCを1GHzのマシンに買い換えたので大きな問題にはなっていないですが、明らかに処理が重くなっています。画面切り替えが多数行われるGAMEなので(特にコメントチェック)、切り替え時の一瞬の間は結構苦痛になってきます。このあたりも、MSの如く「インテルの回し者」って事はないのですから、少しは配慮して欲しいと思います。

 ともかく、シリーズ第5弾としての(「ウイニングポスト4」の続編としての)本作は、3→4で行った様な大きなシステムの進歩も、思い切ったシステムのリニューアルも行わず、かといって4の問題点を解消して完成度を高めた訳でもなく、小さな改良を幾つか加えただけのものでしか無かった訳です。

 初期の時点で高い完成度を誇っていた「ダービースタリオン」は、「繁殖入り」の導入以外は大きな変革無しで行く事を許されていた訳です。

 しかし本シリーズにおいては、目指すべき到達点はまだはるか彼方である上に、現時点での完成度も決して高くは無いわけです。それなのに、先に進む事も足場を固める(完成度を高める)事も怠り、しかもバランスを一層悪化させてしまった本作は、むしろ失敗作といってもいいでしょう。


 さて、本シリーズのもう一つの大きな特徴として、「偶然性の少なさ」があります。これは、(主にダビスタシリーズに比較して)ランダムな要素が少ないと言う事です。

 具体的には、競争馬の故障発生率・調子の変動と、同じ配合条件で誕生した幼駒の能力の幅です。

 ダビスタシリーズにおいては、調子の変動の不安定さとかなり高めな故障発生率のおかげで、同じ馬を育てても同じローテーションはまず組めません。さらに、ライバル馬のメンツがランダムな点を含めて、(余程強い馬ならばともかく)全く同じ能力の馬でも全く異なる成績を残す事は珍しくないです。

 一方で本シリーズでは、調子の変動は単純な動きであり、少なくとも休養後3・4戦というローテーションで行く限りは(つまり国内GT路線ならば)、まず確実に予定通りのローテーションを組めます。更に、故障発生なんて滅多に見られないので、(能力さえ高ければ)ライバル馬を含めてテイエムオペラオーの様な馬が簡単に誕生します。

 また、ダビスタシリーズでは同じ配合をしても、条件級のクズからGT10勝位する名馬まで様々な能力の馬が誕生する可能性があります。更に、売られている繁殖牝馬自体がランダムなので、同じGAME展開になる事はほとんどあり得ません。

 一方で本シリーズの場合は、同じ配合の場合は(流行血統や新系統成立等の外的条件はあるが)基本的に同じ様な能力の馬が生まれやすいです。本作になって、コース適性等様々な個性が加わって、その点では色々と変化はありますが、同条件の配合では素質・距離適性に大きな変化は無いです。

 また、システム上GAME開始時の状況(主に種牡馬・繁殖牝馬)は毎回同じなので、少なくとも序盤は同じ様な馬が活躍しやすくなります。まあ、これが数十年後にどう変わっていくかも楽しみなのですが。

 という事は、プレイヤーにとっては確実に使える配合パターン・必勝パターンが存在してしまう訳です。4ではセイウンスカイ×キルトフェニックスとか、本作ではルビーヴェイル(繁殖牝馬)の購入とか、毎回同じ事が出来てしまう訳です。

 このあたりは、ランダム性を増すとか、光栄得意の複数シナリオとかやって欲しかったです。もっとも、最強馬生産を考えると、初期条件は等しくするべきでしょうが。とはいえ、「シナリオ1:三冠馬シンザン」とか「シナリオ2:TTGの時代」とかシナリオ4「サンデーサイレンス旋風」とかも見たかったですね。それって「サラブレッドブリーダー3」ですか?

 上のシナリオ制は冗談としても、「環境系SLG」としては開始時のパターンが一つと言うのは痛いです。もっとも、一回のプレイが重いので何十回もやり直せない光栄パターンなので、大きな問題でもないですが。

 ともかく、このあたりは問題点と言うよりは個性と言うべき点でしょうね。毎回ルビーヴェイル購入は、GAMEとしては何とかすべき点ですが…


4.まとめ

 相変わらずボロクソに言っていますが、筆者はこのシリーズは高く評価していますし、本作も3プレイで述べ50年位はやっています。しかも、7月に入ってから3回目のプレイを開始してしまい、原稿を危うくしてしまってます…

 本作も4から進歩している点は多少はありますし(主にデータが新しくなっただけだけど)、少なくともこれから4に戻る気は無いです。ただ、上で触れた様に完成度UPもせずに、更なる高みを目指す事もしなかった点で、シリーズ物として高い点は付けられません。システムのシェイプアップは、光栄なので期待していませんが。

 ただ、「競争寿命」の問題と、コメントチェックの手間の大きさは我慢がなりません。このあたりは、むしろ愛情の深さゆえの憎悪と思って下さい。

 少なくとも「競争寿命」のバランスについては、パワーアップキットに期待したいのですが、どうなる事でしょうか。ここに書くよりも、光栄にメールでも送るべきだったのでしょうか。少なくとも、筆者には非常に珍しく正規ユーザーなのですから。(でも登録してないや…)

 さて、一応レビューらしくお勧め度を書いておきます。「ウイニングポスト」シリーズのファンなら多分体験済みでしょう。4持っていて資金乏しい場合は、あえて買う必然は薄いとだけ言っておきます。まあ、ダビスタのバージョンアップに満足しているならば、買ってもいいでしょう。

 競馬にも競馬SLGにも興味ない人は多分読んでいないでしょう。かつてダビスタにハマッた競馬ファンの意見など参考にしないで下さい。それでも興味あるなら、手持ちの機種のダビスタから始めて下さい。

 競馬SLG未経験の競馬ファンの方は、サークルの配置場所からして一番読む可能性低いですが、ダビスタから競馬に入った筆者とは全く立場が違います。まあ、後楽園で稼いだ日には、帰りに秋葉に寄って買ってみるのもいいでしょう。4が安ければ、そちらで充分です。

 競馬SLGはやってるけど本シリーズ未体験(または1・2まで)の場合は、おそらくダビスタ中心でしょうが、こちらの世界もやってみる価値はあります。とりあえず、4で挑戦が無難です。PS版の出来は知りませんが。ギャロップレーサーとかダービーオーナークラブのファンの方は、フォロー出来ません。


 最後に一点だけ、攻略本をメーカー自体から3冊も出すと言うのはどういう事なのでしょうか。難解な配合理論も、説明書には意味の載っていないパラメータの数々の、全ては攻略本を売るためなのかと考えると凄く虚しい気分になります。

 しかも、この原稿のために秋葉原で攻略本3冊をあらためて読んで来ましたが、解決出来ない謎が幾つも残ってしまいました。(特に、「競争寿命」最低を免れる)

 これで、パワーアップキットでやっと完成形等と言われたら、あまりにも酷い商売ですね。かつて、「信長の野望」等の新作を、CD付き(+2800円)だけ1週間早く発売していた事を思い出します。定価販売が強制だったPSで定価9800円とか、嫌なメーカーにゅ。



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