絆という名のペンダント


幾つかの斬新な試みは評価が出来るが、今一歩が足りないゲーム。
 メガネっ娘は、やはり時代の本流にはなれないようです。


 このゲーム、ギャルゲーにしては、珍しくヒロイン2名体制です。

 通常、この手のゲームでは、ヒロインは1人か、さもなくば複数人なので、意外に思われるかもしれませんが、ヒロイン2名体制になったには、シナリオ上の理由があります。

 ユーザの分身となるべき、主人公には、二人の幼なじみ『成瀬真奈美』と『氷川菜織』が居ました。

 幼い頃、成瀬真奈美はミャンマーへ引っ越していきますが、高校2年の春、突然、帰国した事から、ドラマが始ります。

 そうです、このゲームは、選んだ選択肢によって、どちらかの好意が高くなっていき、最終的に、どちらかと結ばれるというお話なのです。

 で、ここまで聞くと「最後の最後まで、どちらと結ばれるのか分からない、ハラハラ・ドキドキなプレイが出来るのか〜」とか「うわ〜、ドロドロの三角関係が見れるのか〜」などと楽しみが膨らむと思うのですが、そこはそれ、開発したのは、カクテルソフトですから、そんな期待を持ってはいけません。

 まず、『絆パラメーター』という物の存在があります。

 これは、色を見ると、どちらの娘が、自分に好意を持っているかがバッチリ分かります。

 もちろん、消す事も出来ますが、こんな便利な物を、わざわざ消してプレイする人も居ないでしょう。

 また、例え、硬派なゲーマーさんが、メーターを消してプレイしたとしても、シナリオの内容で、どっちのルートに進んでいるかが、丸分かりです。

 このゲーム、ほとんど最初の段階で、真奈美ルートと菜織ルートのどちかに分岐します。

 分岐した後に、もう一方のルートに行く事は、ありません(多分)。

 真奈美ルートに乗ってしまえば、後は、真奈美EDを確実に迎える未来が待っています。

 まぁ、女の子の間を行ったり来たりする節操の無い野郎が主人公というのを避けたかったのかもしれませんけどね。

 そういうのは、世間一般的には『鬼畜』とか言われますし。

 そんなわけで、両方の女の子を手中に収めるという鬼畜プレイは当然出来ませんので、期待していた皆さん、残念でした。

 どの道、PS版には、Hシーンは欠片も無いので、どうでも良い事かもしれませんが。

 ここまで聞いて、なんで、絆パラメーターがあるのと思われるかもしれませんが、それは、出現するイベントに関わってきます。

 例えば、真奈美ルートを選んでいた場合でも、真奈美ちゃんの好感度が高くないと、イベントが起きないで、素通りします。

 『おまけ』で見れるCG一覧に空きが出来て、凄い寂しい気分になります。

 
 さて、二人のシナリオを見比べてみると、かなり差異がある事に気が付きます。

 真奈美ルートの場合、三角関係というのは、ほとんどクローズアップされません。

 真奈美ちゃんがネパールより持ちかえったペンダントにまつわる騒動が中心となります。

 菜織ルートの場合は、脇役達の活躍と三角関係が中心となります。

 菜織ルートはともかく、真奈美ルートの場合、本当にヒロインを2名用意する必要があったのかと疑問が浮かびます。

 まぁ、どの道、どちらのルートの場合でも、8〜10時間掛かるシナリオの大半は、無意味な会話・イベントで費やされるんですけどね。

 『乃絵美』『冴子』『美亜子』『みちる』『みよか』といった女性脇役陣達が、これでもかと自己主張をして、ベラベラと喋ってくれるので、10時間ものシナリオというと、本当なら、かなりの充実感を感じるはずなんですが、非常に淡白な印象を受ける事となります。
 
 更に、このゲーム、移植したプログラマがタコだったのか、描画の読み込みが異常に遅いです。

 ゲーム全編に渡って、脇役陣が出張るシナリオですので、各キャラが喋る度に、そのキャラを読み込みに行くので、ストレスは溜まる一方です。

 キャラの立ちポーズが変化する度に、殺意を憶えたのは、このゲームが始めてです。

 先に、1回のプレイが10時間と書きましたが、その1/4は、読み込み時間じゃないかと思うくらい遅いです。

 女性陣が沢山出ると述べましたが、その娘達を攻略する事は一切出来ません。

 この辺の無駄遣いっぷりが、ある意味、漢(おとこ)といえなくもありません。

 が、乃絵美ちゃんだけは、攻略可能にして欲しかったと思うのは、私だけでしょうか?

 この乃絵美ちゃん、主人公の妹で、当然、血も繋がっています(笑)。

 しかし、その可愛さや可憐さから、ヒロイン2名を差し置いて、人気トップの座を奪ってしまいました。

 スタッフ大誤算です(笑)。

 PS版には、PC版では別売だった『TOYBOXストーリーズ』という各脇役が大活躍するアドベンチャーゲーム4作が入ってますので、そちらの乃絵美ちゃんシナリオで、皆さんの怒りをお静め下さい。

 といっても、本編同様、乃絵美ちゃんは、『柴崎』とかいう嫌な奴に、ご執心なので、怒りのボルテージは上がりっぱなしになると思いますが。
 
 TOYBOXの中では、『ロマンスは月影の溜息』というシナリオがお奨めです。

 21世紀にもなってセーラームーンのパロディを見られるなんて、幸せだと思いませんか?

 ・・・筆者だけですね。

 一番このゲームをプレイして欲しいのは、メガネっ娘フェチの方々です(ただ、そんな人は、このゲームの事をとっくに知っている気もするが)。

 ヒロインの一人、真奈美ちゃんがメガネっ娘という事実は、ギャルゲー界に衝撃を与えました。
ある意味、歴史に残る快挙と言えなくもないです。

 PCからSS、PSへと移植されたのは、それ故と言っても過言ではないでしょう(嘘)。
 
 後に続くギャルゲーが無い事から、意外に不評だったのかもしれませんけど(メガネっ娘オンリーのエロゲー除く)。



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