ハートフルメモリーズ


「まじかるアンティーク」+「マリーのアトリエ」+α=?

「恋愛(萌え)」+「経営SLG」により展開される、もう一つの「まじかるアンティーク」。
しかし、そのクライマックスの展開は全てのバランスを崩壊させてしまった。


 工画堂スタジオが誇る(?)一般向け萌えキャラSLG「リトルウィットパルフェ」シリーズ第四弾。4作目にして、初代主人公パルフェを再び中心に持って来て、更に恋愛要素を盛り込んだ作品です。なによりもキャラデザを一新し、萌え度大幅UPです。(初代の2年後なのにキャラが幼くなったとか、18禁コーナーに配置されやすくなったとか言われてます…)

 GAMEシステムは、魔法アイテムショップ経営SLGで、具体的には材料集め・アイテム調合・作成したアイテムの販売を行います。更に、魔法アイテム売りで金を貯めながら、実際にはヒロインとの友好度を高めて結ばれるのが目的です。

 要するに、「マリーのアトリエ」+「まじかるアンティーク」だと思っておけば間違えないです。材料集めは「マリーのアトリエ」そのものだし(戦闘は無し)、経営SLGにそこそこ凝りながらENDING条件にはほとんど関係無いという全体構成は「まじかるアンティーク」そっくりです。(そもそも、こっちのシリーズの方が「まじかるアンティーク」より古いけど)

 SLGとしては、正直言ってあまり出来は良くないです。結局のところ、一部の高いアイテム売りまくれば、目標額(年の終わりまでに50万)は達成出来るし、そもそもENDING5個の内4個までは条件に経営部絡まないし…

 更に、GAMEのテンポが致命的なまでに悪いです。毎日の時間を潰すのが次第に苦痛になってきます。このあたりは、「まじかるアンティーク」に遠く及ばないです。

 まあ、このGAMEの魅力はあくまでもパルフェ・ルティル・フローレ・ココット・ライナといったヒロイン達の魅力を楽しむ点にあるのですが。少なくとも、SLG部が足を引っ張っていない「まじかるアンティーク」程度の出来は欲しかったです。
 ギャルゲーとしては、各ヒロインの魅力・ほのぼのとした世界観・そこそこ笑えるギャグ等なかなか良質といっていいです。ただ、ENDINGがパルフェ・ルティルにしか用意されていないのが納得出来ない点ですが。

 ともかく、SLG部の比重を落としてテンポを(「まじかるアンティーク」並みに)上げて、ヒロイン達との会話・イベントの量を全体的に増やしてくれれば結構いいGAMEになれたと思います。無理に恋愛要素を強調して、「まじかるアンティーク」の終盤の様な展開になっても困るのですが…

 さて、ここまで紹介した限りではキャラの魅力だけの駄作SLGなのですが、わざわざここで紹介するには理由があります。

 このGAMEは、雑誌等の紹介で見ても、上で紹介したようなほのぼの路線のファンタジー(キャラ萌え)SLGなのですが、やった人にしか分からない終盤の展開が話のバランスを破壊しています。

 本作の中で、黒騎士という世界観から大きく外れたまともな悪役キャラがいます。(他に、猫耳娘ライナが前半で主人公の命狙うってのもあるけど)

 こいつが登場した場面だけ、ほのぼのとした雰囲気が崩れて緊迫しますけど、それ以外は特に大きな動きもなくGAMEは進んでいます。

 しかし、終盤になると展開が一変します。まずは、病弱少女フローレが病死します。ここで病に倒れた際に、「水の精霊石」を見つければ助かる、と言われるのですが、普通にプレイしていると全く手がかり無いまま死にます。

 ちなみに、「水の精霊石」なんざ無視して毎日お見舞いしていれば、死ぬ直前に「水の精霊石」が出現して助かります。ふざけるな…

 更に、主人公に襲い掛かる黒騎士によって、メインヒロインのパルフェが殺されます。全く想像もしていなかった展開に、初めて見ると呆然とする事間違え無しです。一応、条件満たしているとフローレが蘇生させてくれますが。

 ちなみに、ルティルENDINGのルートでは、パルフェは殺されたままです…

 最後に、GAMEの最終日に黒騎士が事を起こして、世界が滅びて終わりです。どれかのENDINGルートに乗っていると、黒騎士やラスボスとのバトルに入りますが。

 ともかく、強引なてこ入れが裏目に出た様な辛い展開です。しかも、パルフェ(主人公の店のオーナーです)死後も、変わらず店経営SLGは続いていたり、イベントとシステムがまるで連動していないし。





 なお、ストーリーとしては「記憶喪失の主人公」というのが大きなポイントになっています。実は、主人公は現実世界から飛ばされてきており、ラストバトル後に現実世界に帰って、パルフェやルティルの生まれ変わりと再開するというオチだったりします。(GAME世界に戻って、そのまま結ばれるENDINGもある)

 でも、黒騎士やラスボスと何の関係も無いけどね。ついでに、主人公がライナに狙われる理由(昔、主人公に村滅ぼされたらしい)も、主人公の借金の理由(借金返済がSLG部の目的)も謎のままだし。

 全4つのENDINGを見て、パルフェ・ルティルの2股かけ続けると見られる真ENDINGでは、借金の謎は解かれます。結局、主人公が過去に飛ばされて、借金してお店作って(これがGAMEの舞台の店になる)、その後パルフェに父親になるって事です。

 ちなみに、パルフェENDINGの一つでは、主人公パルフェに子まで産ませているのですがいいのでしょうか。

 まあ、十六歳(パルフェ)妊娠させたり、十四歳(ルティル)と結婚したり、舞台がファンタジーなら何でもありみたいですが…

 と言うより、結局黒騎士の秘密は謎のままだし(パルフェの母の兄らしいとか、過去に飛ばされた主人公の知り合いだったらしいとか話はあるけど)、ライナの逆恨み(?)は真相不明だし。


 ともかく、シナリオに凝ろうとした結果が完全に裏目に出ています。現実世界との転生話と、過去へ飛ばされる事による無限ループと、ENDINGにより二つのネタを使い分けて、しかも途中の伏線は両方併用している事により、話が完全に破綻しています。

 しかも、どちらのオチでも肝心の黒騎士関係の謎がほとんど解けていないし…

 何よりも、このGAMEを購入した人間の期待を大きく外しています。ENDINGの一つとか、おまけストーリーにそれを入れるのならばともかく、必ずこのパターンってのは辛いです。つーかパルフェ殺すな、ココットちゃんENDも作れ。





 「KANON」の成功により、前半のほのぼのとしたノリから後半の急展開で死を絡ませた感動を、ってのがギャルゲーのパターンとして定着した結果が、本作にも反映されたのでしょうが、それにしてもあゆあゆや狐の消滅等とは次元があまりにも違います。

 しかも、「KANON」みたいに大量の文章使って丁寧に描いてくれないし。(「AIR」まで行くとやり過ぎですが…)

 いずれにしても、筆者は本作のキャラと雰囲気は結構好きです。筆者が全部(ほとんど)のキャラのENDING見たギャルゲーなんて、本作以外では「KANON」、「AIR」、「まじかるアンティーク」だけですし。

 それだけに、真ENDINGのふざけたオチと、ほとんど解かれぬまま謎には呆れて物も言えないです。

 続編は、SLGとかシリアスな展開とか捨てて、お気楽キャラ萌えデジコミ系にして下さい。今となっては、真田アサミ(猫耳娘)や堀江由衣(ヒロインその2)の起用は難しいかもしれませんが…

 最後に、メインテーマ(堀江由衣の歌)をOP・ED・ED(エピローグ後)と3回に渡って流すのはやりすぎだと思いますが。特に、ENDING時に2回流れるのは…

 スタッフ「ほっちゃん(だっけ?)」ファンですか?

 同チームの次回作(「エンジェリックコンサート」)では、主人公(しかも、本作同様歌姫)に起用しているし。




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