HorseBreaker


結局のところは「ウイニングポスト外伝」

「馬主」SLGの「ウイニングポスト」に対して、
「調教師」SLGとしての差別化は成功したのか



1.基本構成

 光栄の競馬SLGといえば、既に(2001年夏現在で)5作目まで登場している「ウイニングポスト」シリーズが御馴染みです。その、「ウイニングポイスト」の4と5の間に登場したの外伝的存在がこの「HorseBreaker」となります。

 「ウイニングポスト」シリーズにおいては、プレイヤーは馬主兼生産者として(CPUの操る)調教師に持ち馬を預ける立場にありました。しかし、本作においてはプレイヤーの立場は調教師の方になります。

 すなわち、プレイヤーが馬を生産したり購入したりして自由に持ち馬を選択出来るのに対して、本作においては馬主から預けられた馬を育てていく事になります。ちなみに、同タイプの競馬SLGとしては、KONAMIがスーパーファミコンで発売した「厩舎物語ステイブルスター」があります。(こちらの詳細は、次号あたりの「競馬GAME大全」紹介予定)

 当然、「ウイニングポスト」シリーズでは生産・配合が重要な要素だったのに対して、本作においては調教が重要な要素になります。

 「ウイニングポスト」シリーズでは、調教については基本的に調教師任せで問題なく、指示も大まかなものでしかありませんでした。しかし、本作においては毎週の調教の強さ・調教コースから引き運動の時間に到るまで、細かい調教メニューが用意されています。

 また、プレイヤーの厩舎にはさまざまな個性を持った厩務員がいて、彼等をどの馬の担当にするのかも大きなポイントになります。中には、牝馬に強い・脚元不安に強い等の他に晴れ男(担当馬の出走レースの天候に影響)とかオシャレ(馬具でリボンを付けるとプラス効果)といったものもあります。

 更に、有力馬を担当させないでいると、厩務員の不満が高まって厩舎を辞めていったりもします。

 とはいっても、一番重要なのは馬主との関係にある事は、現実の競馬と同様です。本作では、「ウイニングポスト」シリーズ同様に実在の有名馬主を元にした馬主達が存在しており、当然プレイヤーは彼等の持ち馬を預かります。

 基本的に、プレイヤー側が知り合いの馬主の持ち馬から入厩させる馬を選択するのですが、馬主との友好度不足のうちは、なかなか有力馬は預けてくれずに安い馬でしかOKしてくれません。 この友好度は、預かった馬の活躍次第で上がっていきます。

 また、親しい馬主と一緒にセリ(年に国内・海外の計2回)に行ったり、牧場に馬の購入に行く事も出来ます。ここで購入させた馬は当然プレイヤーの厩舎に入る事になります。しかし、プレイヤーの実績不足のうちは、牧場側もなかなか高い馬は購入させてくれないですし、馬主も高い金は出してくれません。

 なお、レース体系は「ウイニングポスト4」に準じていますが、JCダートが追加されるなど2000年のJRA番組にだいたい対応しています。また、「ウイニングポスト4」には無かった海外3歳重賞も追加されています。

 この他に重要な点として、プレイヤー(調教師)のパラメータが挙げられます。このパラメータとは、プレイヤーの調教能力ではなく「馬を見る目」です。

 すなわち、能力値ごとに幼駒の素質・スピード・スタミナといった能力や、管理馬の体調・適正体重・成長型等を見る事が出来る訳です。

 具体的には、前者は幼駒を選ぶときに、後者は管理馬の体調管理や入厩・引退時期の見定めに役立ちます。

 なお、このパラメータはGAME開始当初の教育期間に決められ、毎年終わりに成績優秀だと上がります。

 この他に、ライバル調教師や厩務員からいきなり3択クイズを出される事があります。問題は、管理馬の血統や厩務員の名前だったりしますが、クイズそのものの意味は謎です。

 ついでに、GAMEを進めれば配合も可能になりますが、筆者はやった事ないです。やっても、大して強い馬出来ないらしいですし。


2.GAME内の世界

 「ウイニングポスト」シリーズでは、GAME中の全ての馬(幼駒・競争馬・繁殖牝馬・種牡馬)と騎手には年齢が設定されており、年数を重ねるごとに年を取り世代交代を進めていました。

 本作においては、一応「ウイニングポスト」シリーズ同様に全競争馬が(プレイヤー管理馬と同じ立場で)存在はしています。しかし、生産界(種牡馬・繁殖牝馬)においては世代交代は存在せずに、最初に用意された種牡馬・繁殖牝馬のまま続いていきます。

 このあたりの世界観は、「ウイニングポスト」シリーズよりもやや「ダービースタリオン」シリーズに近くなったといえます。


3.プレイしてみると

 プレイ開始当初は、手元にいる管理馬は条件級でも苦戦を重ねる様な馬ばかりで、おかげでなかなか優秀な馬を預けてもらえないで、最初の数年は年間数勝が限度という事も少なくないです。(ちなみに、筆者などは最初の1年は1勝でした…)

 ここで、今までの「ウイニングポスト」シリーズとは訳が違う、かなり手応えがある、と当然思うわけですが、案外錯覚だったりします。

 ここで本作のGAMEシステムからして、当然プレイヤーは「調教方法の工夫・改善」というものを考える訳ですが、大きな間違えです。

 競馬の世界には「馬7人3」という言葉があります。これは、主にレースにおける騎手の力量と馬の能力の関係を指しますが(ゆえに「馬7騎手3」とも言う)、管理馬と調教師の関係を指した言葉としても正しい事が分かります。少なくとも、本作においては。

 ようするに、クズ馬はいくら頑張っても所詮クズって事です。ちなみに本作においては、ご丁寧にも3歳になった時点で各馬の能力クラスを500万とかOPとか重賞とかGTとか表示してくれます。

 一応、各馬の個性にあった厩務員の配置とか調教コースの設定は行いますが、後は体重を見ながら負担の掛かり過ぎないように調教の強さを設定してやるだけで充分です。これだけで、だいたい1シーズン5戦位は使えます。「ウイニングポスト」シリーズよりも多く使い込めるので、ついトライアルを1戦余分に使ってしまったり、夏休み前にもう1戦追加したり出来るほどです。

 ようするに、本作の調教で求められるのは、5の力の馬を6・7にする事ではなく、10の力の馬を確実に8以上発揮させ続ける事でしかないのです。これで、GTクラスの馬にGTいくつも勝たせられたので、問題ない筈です。

 でも、強い馬を預けられるには弱い馬で実績をあげるしかないと思われるでしょうが、そういう訳でもないのです。本作では、序盤にGAME内の最強馬主吉野兄弟を紹介してもらえます。(モデルは社台の吉田兄弟)

 当然、最初は彼等も安い持ち馬しか預けてくれないです。また、本作はダビスタや「ウイニングポスト」シリーズよりも素直なバランスなので、安馬の中に強い馬は滅多にいません。

 しかし、セリに連れて行って強い馬を買わせてしまえば問題ないです。友好度が低い内は1頭しか買ってくれないですが、奴等金持ちなので予算は充分です。

 そして、プレイヤーが素質(総合能力)を見抜くパラメータを持っていれば(教育段階で間違えなければ最初から持っている)、セリに出ている幼駒の中から重賞級を選び出すのは容易な事です。

 こうしてセリ(主に海外)で得た馬でGT稼いで友好度を上げてしまえば、後は吉野ファーム(社台)の有力馬を預かり放題です。現実の森や伊藤雄厩舎もやらない程の、SS産駒の良血馬集めまくりで、毎年GT勝ちまくりで獲得賞金TOP独走は実に容易です。勝率なんて、毎年5割を楽に越えますし…

 しかも、本作では2歳までに入厩を約束した馬の中から、年の終わりに実際に入厩させる馬を選択するシステムになってますが、ここで10数頭押さえておいてからとくに優秀そうな6頭だけ選ぶというスタイルでなんの問題もありません。

 何よりも、幼駒の時点で素質重賞級以上というのはほぼ見抜けるので、一度軌道に乗せてしまえば楽勝です。もう森崎(初期から仲のいい貧乏馬主)なんていらないです。

 ついでに、一回獲得賞金や勝率TOP取ると、他の牧場の有力馬も簡単に買わせる事が出来るので、いよいよ楽勝です。

 毎年優秀な馬が集まり過ぎるので、馬房の制限に引っ掛かって3歳終了時で引退させる場合がある位です。

 もっとも、年間最多勝だけはかなり厳しいです。なにしろ、萩澤調教師(モデルはもちろん藤澤)がかなり強く、年間70数勝しないと勝てない年も少なくありません。

 なにしろ馬房数20で、その内3歳馬が6頭なので、1頭につき年間4〜5勝ずつ計算しないと勝てなくなります。そのため、全馬GT路線に乗せていてはとても勝てません。ここで、ローテーションを使い分けて年間最多勝取るのが、このGAMEの一番面白い部分かもしれないです。


4.簡単攻略法

 ここでは、3で触れたGAMEバランスを元に、簡単な本作の攻略法を載せます。

 GAME開始したら、最初の管理馬は全て引退させます。どうせ、オープンにも上がれない馬達は不要です。ついでに、ライバル調教師との争いも無視します。どうせ、賞品の馬も大した事ないです。

 ちなみに、教育段階では相馬眼優先だけ考えておきます。

 そして、吉野兄弟(どっち選んでも可)と知り合ったら、セリには必ず吉野を連れて行きます。そして、素質重賞級以上と判断された馬を買わせます。セリは任せてもらえませんが、金持ちなのでまず成功しますし、自分でセリ落とした場合でも預けてもらえるので問題ないです。ついでに、海外セリのタイム上位馬ならばなお有力です。

 吉野の友好度は「GT勝ち」が条件なので、地方・海外をフルに使ってGT勝ちをなるべく増やします。重賞級以上・中距離・成長型早熟以外・ダート馬を使って、地方交流戦(ジャパンダートダービー・ダービーグランプリ・帝王賞・東京大章典・川崎記念)を勝ちまくるのが一番楽です。

 こうして友好度を8以上に上げてしまえば、後は幼駒誕生直後に吉野の高い馬をチェックして、素質重賞級の馬を全て押さえて下さい。おそらく、ほとんどがSS産駒でしょうが。

 後は、こいつらをフルに使えば獲得賞金・勝率TOPは確実です。一回タイトルを取ったら、よその牧場の幼駒もチェックして、重賞級がいれば吉野に買わせます。そのうち、相馬眼がAに上がるので、後はGT級と判断した馬だけ預かります。

 なお調教は、3でも触れたように厩務員・調教コースだけ気をつけて、後は馬体増にだけ気をつけて軽めにやれば充分です。

 ついでに、イベント等で吉野以外の馬を預かるように申し込まれますが、とりあえずキープしておいて、素質チェックで駄目なら全て捨てればOKです。


5.評価

 とにかく、3・4の項目で書き続けたようにバランスが甘すぎます。吉野(社台)のSS産駒一人勝ち、調教師の最大の仕事は優秀な(高い良血馬)集める事、といったあたりは、かなり嫌なリアリティを感じますが、調教師SLGとしてはかなりGAME性に疑問感じます。

 この吉野兄弟の凶悪な強さは、本作の広告に載っていた「日本の2大ブリーダー推薦」とやらの影響でしょうか?

 そもそも、「2大」と言いながら(社台の吉田)兄弟ってのも、サギみたいな話ですが。

 更に、「相馬眼」等のパラメータで素質の高い馬が簡単に見抜ける上に、友好度と実績が上がれば事実上入厩馬選び放題というのも困ったものです。しかも、3歳になれば各馬のクラスまでが表示されるのは、あまりにも分かり安過ぎます。

 実際には、走らせて見るまで分からないというのが、競馬にはかなりあると思うのですが。

 これで、優秀な馬をほぼ確実に集められる上に、「ウイニングポスト5」の様な色々な弱点が各馬にある訳でもないので、本当に簡単に勝ちまくります。

 まあ、預かる約束だけしまくって、実際に預かるのはその一部というプレイヤーの身勝手さは、現実のJRAの調教師の立場の有利さへの皮肉の様な気もしますが…


 また、GAME中では管理馬の調教や厩務員・馬主との人間関係に力が入っている分(この点も空回りしてるけど…)、ライバル馬の影はかなり薄いです。

 一応、「ウイニングポスト」シリーズ同様にライバル馬もプレイヤー管理馬同様にローテーション組んで走っているのですが、新聞も「ウイニングポスト」シリーズより地味だし、繁殖入りもしないし、なんか印象に残らないです。なによりも、強くないので…

 一応、調教師同士のリーディング争い(主に対萩澤)や、しつこく絡んでくるライバル調教師なんてのもいますが、基本的にはダビスタに近い世界だと思います。「ウイニングポスト」シリーズ程には、GAME世界はしっかりと構築されてはいないです。

 それでいて、実在のライバル馬と戦うダビスタと違って、レースで対戦するライバル馬は個性弱いのは困ったものですが。
 また、これは「ウイニングポスト」シリーズと同様の点ですが、プレイヤーに無駄に多くの手数を要求する点が気になります。

 特に本作においては、入厩した馬の調教コースを決める際の手順が気になります。各馬に向いた調教コースは、知り合いの調教師(萩澤とか)が教えてくれるのですが、ここで一度訪問するとランダムで1頭分だけ情報(3歳なら調教コース、4歳以降なら厩務員との相性)を教えてくれます。

 すなわち、全3歳馬の調教コース情報を得るために、数十回同じ調教師への訪問を繰り返す必要があるかもしれないのです。これは、はっきり言って非常に苦痛です。

 「ウイニングポスト」シリーズの場合には、種付け時の牧場コメントチェックとか、2歳・3歳時の各馬コメントチェックというのがありますし、光栄側は意識してこのような動作をユーザーに強いている様なのですが、何故この様な部分に無駄な手間を掛けさせるのか不明です。

 ここまでボロクソに評価してきましたが、実際にはそこそこ遊べる出来ではあります。難しい配合理論などは一切無しで簡単にTOPクラスの馬を手にする事が出来るので、気軽に遊べる「ウイニングポスト4.5」だと思えば悪くはないです。

 少なくとも、「ウイニングポスト」シリーズに対して、緻密な配合理論による最強馬作りなんてのは求めずに、気楽に馬を育てて遊ぶ人には向いています。

 もっとも、「ウイニングポスト5」が出た以上は、JCダートを含んだ最新番組って優位は失われましたが…

 後は、もう少し無駄を削って処理を軽くしてくれればいいと思うのですが、光栄にそれを望んではいけないのでしょうか…




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