タルコフスキー


タルコフスキーは、映画監督というジャンル内で語られるべき人物ではなく、

最高の芸術家として、バッハやダヴィンチなどと比較されるべき人です。

はじめて観た作品は、ロードショーでやっていた「ノスタルジア」。

TVの紹介で見て、あまりの映像の美しさに映画館へと足を運びました。

それまでもソ連映画はミハルコフ作品などを好んで観ていましたが、

さらに深い哲学とストイックさ、圧倒的な映像美に、一度で虜になりました。

その後はタルコフスキー映画の上映があるたびに小さな映画館へと行き、

何度も何度も観ることになったのです。

一番好きな作品は「鏡」ですけれど、「アンドレイ・ルブリョフ」も

「ストーカー」もモノクロの映像が印象に深く染み付いています。

カラーの「惑星ソラリス」「ノスタルジア」「サクリファイス」とは

同じ映画とは言えない、まったく別の表現に思えるのです。

もちろんカラー作品も崇高で大好きですが。

そこにはカラーとモノクロでの表現を考え抜いた監督の意図もあります。

1986年12月28日、タルコフスキー死去のニュースはあまりにもショックでした。

すでに最も尊敬する人物となっていた彼に対する追悼の意は、

わずか1月ほど後にSPANKさんと共に発行した本で表わしました。

遺作となった「サクリファイス」は、人類が未来に向かうための指標です。

タルコフスキー日記の上巻だけ読んでいますが、彼の創作にかける想いと、

祖国を離れなければならなかった身の上での葛藤、望郷の念が

ストレートに伝わってくる著作です。

それよりも、映画から芸術一般にまでを論じている「映像のポエジア」という

素晴しい書物があるのですが、これは私が途中でつまづいてしまって

完読できていません。いつかは読み通したいと思っています。