ライヴ記--1994--

★プリキの自発団公演「安吾とタンゴ」(94.1.  相鉄本多劇場)

 ます劇場に着いて知ったことですが、「歌のお年玉」として、芝居の前に銀粉蝶のミニコンサートがあって、大喜ぴしました。彼女の歌はやはり最高。私の好きなポーカリストを挙げろと言われれぱ、谷山浩子、れいち、そして銀粉蝶たな。「最後のアングラ女優」という看板もぴったりで…芝居には出ませんてしたが、嬉しいお年玉でした。 そして芝居は、作家・坂口安吾を主人公にしたストーリ一で、いつものSFファンタジックなプリキの世界とは異質な作品てしたけれど、一人の人間の愛と苦悩と混沌を見詰めて描いた作品として、とても力強い出来でした。そして、予算30万で作ったこいう、虚飾が一切ないところが、照明や昔響などのスタツフもなしで、役者と座長自らが効果の全てを動かしていく舞台に、演劇の原点的魅力が浮き出たようで好感が持てました。なにより、語り・進行もやっていた座長の生田萬が、とても楽しそうに舞台の端で生き生きとしていた姿は、微笑ましくて良かったです。激しいパフォーマンスも見せてくれて、今後のプリキにまた一味違った期待を抱かせてくれました。


★AREPOSライヴ (94.2.4 マンダラ2)

 ほとんど毎回聴きに行っているAREPOSですが、今回はレコーダーを持っていって、録音してきました。これでいつでも好きな歌が聴けるようになりましたが、それでもやっぱりライヴには足を運んでしまうでしょう。AREPOSのライヴ空間は、かなり特殊な心地好さなんです。


★パパ・タラフマラ「Bush of Ghosts」 (94.2.9 スペースゼロ)

 前に一度観て、好きな劇団(ダンスカンパニー)だと思いながら、その後行く機会がなく、2年ぶり位になってしまいました。しかし1時間半ほどの演目のうち、4O分も遅刻してしまったのでした。そのせいもあって集中できず、散漫な印象しか持てなくて残念でした。動きとか、テーマとかは大好きなんですけど。でもやっぱり、前に観た「パレード」に比べると、「意味」が重すぎて、肉体の持つエネルギーが弱く感じられた気はしました。


★少年王者舘「ノン・シルヴァ」 (94.2.20 スズナリ)

 いつものようにノスタルジックな王者舘の世界。十分面白いのだけれど、演目は違っても印象が似ているので、話をよく覚えていなかったりもします。そして残念だったのが、私の好きな女優の智恵子さんが出演していなかったこと。今は他の劇団などにも参加しているということで、探さなくては…。


★板橋文夫ライヴ (94.2.26 エアジン)

 今回のメンバーは、片山広明(ts)、板谷博(tb)、小山彰太(ds)、立花泰彦(b)でした。エアジンでのライヴは2ステージの構成なのですが、この日の1ステージめは客の入りが悪く、得したような、いまいちノリが悪いような。ミュージシャンは熱い人ばかりでしたが。演奏が、板橋の曲が少なくて、ちょっと残念でしたけれど、彼の代表曲「暗恋桃花源」は演ったから、いいか。この曲、主題のメロディーの美しさが格別なんですが、同時にそこまでの構成はとてもフリーで、メンバーによって、または同じメンバーでも時によってまったく違う展開になるので、魅力的な曲です。それこそジャズの面白さ、ライヴの楽しみですけど。


★プロ・シューティング(94.3.18 後楽園ホール)

 この日は当初、国江くんの出演するライヴに行く予定でしたが、最近シューティングが、格闘技界おいてにわかにイニシアチブを取り始めた状況にあり、ファンとしては是非、現場に立ち会わなければ…という気持ちで当日になって予定を変更したのでした。

 主宰者の佐山聡(元タイガーマスク)が、プロレスのリングで猪木と戦うとかいう話も楽しみですが、それよりこの日の試合、誠心会館・格闘プロレス連合の選手達とシューター達の他流試合への興味。しかし、シューティングルールということもあり、技術の差は歴然。20キロ近い体重差のあるハンディー戦も含め、すべて1ラウンド、それも30秒程度で決まってしまうなど、シューティング勢の圧勝でした。今後も他の格闘技との交流戦を続けていくということで、楽しみなシューティングです。


★梅津数時・ベツニナニモクレズマー・ライヴ(94.4.2 アケタの店)

 毎年この時期、「梅津数時の大仕事」と銘打って一月近く、毎日違う人と演奏するイベントライヴのうちの一日。まず、このアケタノ店というライヴハウス、山下洋輔も著書の中で狭く汚いと形容していましたが、コンクリート打ちの床に丸いパイブ椅子、ドリンクもプラスチックの使い捨てコップ。そこにぎゅうぎゅう寿司詰めの観客。そしてこの日は、出演者が総勢15人ほど! 客とボーカルが顔を突き合わせ、トロンボーンのスライドパイプを客が避けながら聴くという、熱気ムンムンのライヴでした。

 状況説明だけで長くなりましたが、クレズマーとは、ユダヤ人音楽のことです。「ドナドナ」なんかは日本でも知られていますが、どこかちょっと物悲しげで耳に懐かしい、そんな音楽。それを当代実力者が多数集まったベツナンの演奏で、技巧と迫力とアンサンブルと即興とで、実に楽しく軽快に演奏するのでした。非常に満足感の高いスーパーライヴでした。梅津数時の格好良さもだけど、ボーカルの東京ナミイのスーパーボイスと、巻上公一の渋さが印象に残ります。


★上海太郎舞踏公司「マックスウェルの悪魔」(94.4. 近鉄アート館)

 全国的に有名な劇団なので、一度見たいと思っていましたが、地元の大阪でその機会があったのは幸運と言えましょうか。近鉄アート館は、客席が鍵型で3方向から見れる、きれいな劇場でした。 さて、上舞は舞踏と銘打っていますが、暗黒舞踏とは別の、マイム的な劇をやっていました。セリフはないけれど、とてもわかりやすい芝居でした。しかしちょっと単純にわかりすぎて、物足りなさがありました。動きとか、演出とかは十分に楽しめたのですが。


★AREPOSライヴ(94.4.29、6.9 南青山マンダラ)

 新しくオープンしたマンダラは、吉祥寺のマンダラ2とは違う、ファッショナブルなライヴハウス。ここでのAREPOSは、エコーがよくかかりすぎていてイメージが違いましたが、曲によってはすごく広がりが出ていました。完全にレギュラーメンバーと化した渡辺等も含め、安定した演奏、リラックスした歌を聴かせてくれます。特に6月のライヴでは、ドラムを持ち込んだれいちさんは、ビートルズのストロベリーヒルズ…を叩き歌って、印象的でした。彼女の声はボーイソプラノなのですけれど、どんな歌でも自分流にアレンジして歌うのが、天才的なひとです。


★プロ・シューティング(94.5.6 後楽園ホール)

 この日の注目は、数日前に新日本プロレスの福岡ドーム大会で獣神サンダーライガー選手とエキシビション試合をしたばかりの佐山聡の発言でしたが、それはまあいいいとして。試合は、他流対決中心のカード編成でしたが、やはりシューターの強さが目立ってしまいます。その中で、セミファイナルに登場した彗舟会の橋口選手の敢闘ぶりは素晴らしく、初めてシューティングと噛み合った試合となり、感動的でした。真剣勝負の面白さが、さらに増して来た気がします。


★劇団☆新感線「スサノオ−武流転生−」(94.5.20 青山円形劇場)

 ヘビメタ歌舞伎と言われて若者中心に多大な人気を誇る新感線、これまではその人気ゆえに、なにかこわくて行けないでいたってこともありますが、誘われて行ってみると、想像以上のパワーとエンタテイメント溢れる舞台演出。ストーリーとかは特に傑出していると思わないけれど、美男美女の役者陣が暴れ回る芝居には、すっかり引き込まれてしまいました。衣装や照明、スモークなど制作費を考えれば、いくら人気があっても儲けは出ないだろうなぁ。

 さて、この劇団には大学の先輩が役者として出ていまして、終了後に、誘ってくれたやはり先輩たちと一緒に、飲みに行ったのでした。そんなことも含めて、とても印象に残る夜となりました。


★板橋文夫ソロライヴ(94.6.25 エアジン)

 これまで、いろんなミュージシャンとのセッションを聴きに行っていましたが、ソロは初めて。ジャズのセッションにおけるピアノは、あくまでもリズムセクションですので、目立つとは言ってもどこか抑えているところがあると思います。それがソロということで、どこまで開放的な音を聴かせてくれるか……聴かせてもらいました。 誰にはばかることもなく、思う存分ピアノを叩く彼の姿は、パワフルで繊細で幸福そうに見えました。そう、一番前、手元も表情も丸見えの、真横2メートルほどの席で聴けたのですから、私も幸福でしたよ。


★ASIAN FANTASY '94 (94.7.3 シアターコクーン)

 今、まさに終わったばかりの帰りの電車の中で書いていますが…異様に盛り上がったコンサートでした。このコンサートは4年目なのですが、今年は5日間やって、今日が最終日。多分、ミュージシャン達の気持ちも、ラストスパートだったに違いありません。

 プログラムは3部構成。1部はこのコンサートのために編成された、日本とインドのミュージシャン達のユニットによる演奏。仙波清彦、梅津数時、金子飛鳥、渡辺香津美らの職人的演奏と、インドの民族楽器、EPO&民謡の木津姉妹のボーカルで、迫力・そして気持ちの良い音楽。 続いての第2部では山下洋輔が登場。インドの音楽家たちとセッション。これが素晴らしかった。セッションにおいては場数を踏んでいる山下が仕掛け、引き、相手をのせるべく駆け引きの妙を見せれば、タブラやシタールがぴったりと付いてくる…安定したテクニックと、危ういアンサンブルの作り出す、心地好い緊張感。ここで会場全体が飲まれてしまったのかもしれない。 休憩時間をはさんでの第3部は、山下のクルディッシュリズムを引き継いだミュージシャン達が、客席側より登場。興奮に包まれたホールで、このセットでは小川美潮、サンディー、インドネシアのヘティ・クース・エンダン、3人の女性ボーカル中心に歌謡ショウを展開。それぞれ客席に乱入するなど、エンタテイナー振りを発揮し、しっかり楽しませてくれてエンディング。

 アンコール曲は一番盛り上がったところで、最後に山下が登場!総勢20人の音楽家たちの圧倒的な音の世界に、ついに客席も総立ちになったのでした。アンコールも含めて全てのプログラム終了後も止まないスタンディングオベーションに、ついに打ち合わせ無しの1曲が追加され、怒濤のごときコンサートはやっと終わったのでした。

 ロックなどでは総立ちが当たり前だけれど、この手の音楽、それも落ち着いたホールでの演奏では珍しいことだと思います。それがあまり意図的でなく自然な感じで盛り上がったところに、素晴らしい感動がありました。


★天野天涯監督映画「トワイライツ」(94.8 シネマアルゴ新宿にて)

 大好きな劇団・少年王者舘の制作による映画。最近、王者舘の芝居は少しマンネリ気味に思っていたのですが、この映画はただものではありませんでした。王者舘といえば、独特のセリフまわしが魅力の一つなんですけど、この映画は声による台詞なし。映像と音楽のテンポによって、ぐいぐいと引き込んでいく力のある作品です。死のイメージが、美しく哀しく描かれていましたが、そこには現実世界の重力だとか、時間だとか、情動だとかから解き放たれた、無為な浮揚感が漂っていて、まさに異世界なのです。自然と涙が出ました。 主役の石丸だいこは、5年前に初めて名古屋の劇場で見た時に受けた、少年そのものの存在という衝撃から、少年性+大人の女性の色気まで感じさせる、実体の無い存在感を際立たせていて、素晴らしかったのでした。


★板橋文夫・紅蓮会ライヴ(94.9.10 ル・クラシック)

 「紅蓮会」というのは、板橋が音楽を担当した台湾映画の題名です。この日のライヴでも、第2部でこの映画音楽をメドレー的に演奏しました。メンバーは、井野信義(B)、片山広明(SAX)、初山博(VIB)、金原千恵子(VL)に、竹澤悦子(箏) という構成でした。1部の2曲目から、箏やバイオリンが加わった即興性の音楽は、音色的にも技巧的にも多彩で、とてもスリリングなライヴでした。 会場はライヴハウスではなく、藤沢の閑静な住宅街にあるカフェレストラン。月に一度くらい演奏会を開いているということです。天井がない屋根までの高さの空間と柔らかいライティング、細い窓から見える外の緑…1ドリンクに簡単なオードブルもサービスで、とっても雰囲気の良いサロンコンサートでした。


★谷山浩子・101人コンサートスペシャル(94.9.21 青山円形劇場)

 今年もこの連続コンサート、2日行くことになっていますが、通信発行の関係で、30日の分については次号になります。実は私、谷山さんのサポーターズクラブ「猫森団」というのに参加しまして、会員証兼のテレカをもらいました。ファンクラブではなく、周りの人に浩子さんを知らしめて応援しようという企画なので、私は今後もつばめ通信で取り上げていきます。 さて、コンサート。ゲストは毎度お馴染みの渡辺等と、最近すっかり有名な小林靖宏。弦(G,B,マンドリン) とアコーディオンをフューチャーしてアレンジされた曲は、どれも新鮮でちょっと格調高いイメージでした。浩子さんは相変わらず、若くてかわいくて、素直にひねくれていて魅力的ですが、ただ、このプログラムの初日ということもあってか、笑顔がよそゆきな感じでなんか…堅い印象もありました。


★山下和仁ギターリサイタル(94.9.26、東京文化会館小ホール)

かつての天才少年も、すっかり貫禄のある体型になっていて…そんなイメージギャップが面白かったけれど、やはり技量は大したものです。日本の現代曲でしたが、ギターという楽器の持つ表現力の高さを堪能しました。


★谷山浩子101人コンサート・スペシャル(94.9.30、青山円形劇場)

この日のゲストプレーヤーは、ロック系のひとたちということで…なかなかにノリの良い演奏を聴かせてくれました。それにしても、11月のカトマンズ・カカニの丘でのコンサートに行けなかったのは一生の心残りになってしまいました。ヒマラヤの麓での浩子さんの歌…。


◎横浜JAZZ PROMNADE 94 

昨年から始まった横浜の街を挙げてのジャズイベント、私も今年は2日間、昼から夜までジャズ漬けになってきました。本当に楽しいイベントなので、来年は皆さんも是非行ってみて下さい。外国からのメジャーな演奏家などはあまり来ませんが、はっきり言って日本のジャズメンは世界でもトップレベルの技術と、さらに際立ったオリジナリティーを持っているので、他のジャズ祭よりもよほど面白いということは、自信を持って付け加えておきます。


94.10.9

★松井一郎&LaNoche(ドックヤードガーデン)

★のなか悟空と人間国宝(ドックヤードガーデン)

ランドマークタワーの地階外にあるオープンスペース。今にも雨が降りそうな空の下、オープニングのNOCHEはラテンジャズで明るく軽快な演奏。次ののなか悟空は、一転してグチョグチョのフリースタイルジャズ。このイベントののっけから、両極端なものを聴いたところで、途中で抜け出し次の会場にダッシュ。


★赤松敏弘&道下和彦デュオ(はまぎんホール)

昨年も聴いたこの二人の演奏…赤松のギターと道下のヴィブラフォンの奏でる、静かで美しい不思議で魅力的な音の世界は、十分に酔わせてくれました。

夕刻、暗くなり始めた頃に、港の見える丘公園近くのゲーテ座に移動。


★横浜祝祭弦楽団(山手ゲーテ座)

この日のために、ベーシストの立花泰が集めた弦楽奏者は15人。美しく華やいだアンサンブルのハーモニーで魅了してくれるのかと思うと、実はボーカルが歌うのはなんともおかしな歌詞の歌でした。コミックソングとクラシック、絢爛貧乏な不思議楽団でした。


★坂田明ユニット(山手ゲーテ座)

テレビ等でおなじみの坂田のサックスは好きで、生で聴いたことも何度かあったわりには、彼のユニットを聴くのは始めてでした。魂は熱いのだけれど、最近はちょっと抑え気味の演奏のような気もします。しかし無骨でありながら優しさとおおらかさの滲み出る彼の音には、心を解放される思いです。


94.10.10

この日は一日中ここだけと決めて、午前中から関内ホールで開場待ち。でも、演奏の替わる休憩時間には、ホール外でのアマチュアジャズメン達の街頭ライヴも聴いたりして、お祭りムードを存分に楽しみました。


★梅津数時/ロックドラマー大集合(関内大ホール)

ドクトル梅津の部屋と銘打ってのライヴ、最初は人気ロックバンドのドラマーを何人か集めてのドラムセッションでした。ブルーハーツ、ジュンスカ、元ユニコーンとか…若い子を集めるための企画ではありましょうが、遊び心が楽しいライヴでした。


★梅津数時/ベツニ・ナニモ・クレズマー(関内大ホール)

クレズマーは既にフルライヴで聴いていただけに、1時間では物足りない感じもしたし、大きなホールなのでスピーカーの音響も大きすぎて魅力が削がれた気もしますが、しかし15人のメンバー達のノリの良さは気持ち良いものでした。本当は街頭でやるのが一番ぴったりのバンドです。


★梅津数時/シャクシャイン(関内大ホール)

そして、シャクシャイン。日本で最もカッコイイバンドではないかと思います。圧倒的な迫力とスピード感は、もちろんメンバー全員が一流の実力を持っているからですが、それを一つにまとめあげる梅津のサックスの力は、本当に凄いものです。

爽快な気分になったところで、しかし予定時間をオーバーしていたため、終わるとすぐに階段を駆け降り、地下の小ホールへ。


★斎藤徹・風ユニット(関内小ホール)

今回のフェスティバルの中で、一番良かったと思うのが、このライヴでした。板橋文夫ともよく一緒にやっている斎藤ですが、このユニットはベース3台と琴が5台という編成で、研ぎ澄まされた緊張感のある静かにして激しい演奏を聴かせてくれました。特に、前年観に行った太虚の芝居「白髭のリア」の音楽は、芝居のシーンも思い出して震えが来てしまいました。


★金井英人ユニット(関内小ホール)

このライヴも良かった。仙人のような風貌のベーシスト金井と、世界中から集めて来たようなパーカッション。そしてゲストが琵琶奏者で、平家物語の一節をセッションしたりと、非常に味わい深い異世界を思わせる音楽空間を創出してくれました。まだまだ凄い人がいるもんだなぁ。


★ミシャ・メンデルベルグ(関内小ホール)

そしてトリは、オランダのピアニストメンデルベルグとパーカッションの豊住芳三郎のフリーセッションでしたが、これがどうにも二人の息が合わなくて、退屈になってしまいました。ミシャが完全に自分だけの世界に入ってしまっていた感じなのでした。

最後はちょっとでしたが、2日間ジャズ漬けになった後の心地良さは、最高なんです!


★パンクラス(94.10.15、両国国技館)

パンクラスは、船木誠勝らが中心となって作ったプロレス団体ですが、これまでのプロレスの概念をまったく覆すような新しい闘いを目指しています。そして、旗揚げ一年目にしてその目指す方向が遂に具現化されたこの日の試合…船木と鈴木みのるとの頂上対決。その辺りの理想とか二人の関係とか、語れば長いドラマがあるのですが、ここでは試合についてだけ。

さて、その試合について言うと、とにかく感動の嵐でありました。今までいろんなものを見てきたけれど、これだけ衝撃的に深い感動を味わったことは無かったといえるくらいです。なにが感動させるのか、どこが凄いのか…。それは、船木自身が「芸術のような闘いをやりたい」と言うことにも表われているのですが、即ち芸術とは何か…自身の持つ、鍛練された技術と精神を目一杯にぶつけ、自己の全存在を表現し、昇華させること…と言えましょう。

実際、試合は1分50秒という短時間の勝負でしたが、その中で二人が持てる力をフルに発揮し、まったく止まることなく動き回ったのですから、人間がスパートして動ける限界の闘いであったことは間違いありません。そう、そんな極限の姿にこそ、胸を焦がすものがあるわけです。歴史的な一戦を目撃できた喜びと共に、勝って涙した船木の姿は一生忘れないでありましょう。


★シューティング(94.11.7、後楽園ホール)

そんなわけで、パンクラスを見た後のシューティングの試合は、ちょっと退屈に感じてしまいました。真剣勝負の緊迫感と、試合自体の生み出す緊迫感…そんな違いがあるのでしょう。


★パンクラス キング オブ パンクラス トーナメント(94.12.17、両国国技館)

と、いうわけでパンクラスの魅力に取り憑かれた私は、初代チャンピオンを決定するトーナメント、2日間連続のうちの凖〜決勝の日に行きました。結果、船木を準決勝で破ったWシャムロックが優勝したのですが、その彼と決勝戦で時間切れ判定まで持ち込んだのが、シューティングから転向して半年余りの山田学。パンクラスに入ってからの成長度も大きいとはいえ、シューティングの実力も示してみせてくれて、ずっとシューティングを応援してきた私は嬉しかったのです。