ライヴ記--1992--

●惑星ピスタチオ公演「港のウインダム」(92.2.22 オレンジルーム)

 SF仕立てのストーリーはまずまず、役者は余所でも活躍している人達もいて、動きのパワフルさと芸達者ぶりは見事。ただテーマの明解さが逆に安っぽさを感じさせましたが、まずは平均点以上でしょう。しかしなんといっても、特有のしつこいギャグとテンポがいかにも大阪で、嬉しくなってしまいました。関東人の私にはなかなか溶け込みにくいということはありますが、客席のムードも含めて、そこにカルチャーの違いによる面白さを感じるわけです。ちなみにパンフレットが贅沢でした。


●浪花グランドロマン公演「水像都市」(92.2.22 扇町ミュージアムスクエア)

 舞台前と花道に水路が設けられていて、脇にはビニールシートが……。予想通り、派手に落ちる役者、激しく飛び散る水しぶき! はじめから劇場全体が異様な緊張感に包まれた中での芝居でした。 朝鮮人と天皇制をテーマにした作品でしたが、必要以上の暗さはなく、むしろ心地好さを感じる程度の風刺でした。全体にラジカルさは十分行き渡っていたけれど、それ以上にノスタルジックなムードが濃くて、それをラストシーンで全面に出されてしまったのが残念でしたが、しかし役者の一生懸命さも伝わり、拾い物と思える面白さでした。 でも、座布団も無しの桟敷席につめこまれたのは辛かった……。


●銀粉蝶コンサート(92.2.16 下北沢ザ・スズナリ)

 昨年に続いて行われた「ブリキの自発団」女優、銀粉蝶さんのコンサート。今回は前日までのブリキ公演で使っていた舞台セットをそのままに、より劇的な空間の中で歌ったことで、彼女の魅力がいっそう引き立った気がしました。 とにかくその情感たっぷりの歌に関しては、当代髄一と言っても決して過言ではないと思います。それが小さな劇場で、ギターとキーボードだけのバックで静かに聴けるのですから、至上の幸せである、と申せましょう。 存在感の大きな人を間近にすると、それだけで「気」が伝わってきて、自分の中に流れ込んできます。しばらくは元気の素になるのです。


●山海塾「そっと触れられた表面−おもて」(92.3.4 銀座セゾン劇場)         「金柑少年」(92.3.26 銀座セゾン劇場)

 同劇場による3作品連続公演のうち、観たことのなかった新作と初期の作品の2本に行きました。 山海塾に関してはこれで5作観たことになり、次第に芸術性が洗練されて美しく、精神的にも昇華されてきた流れがわかります。ただその分、舞踏の持つ肉体のきわもの的な魅力が薄れてきているのも確かです。そんな意味で新作の「おもて」は、観ていて若干の退屈さがありました。 しかし旧作「金柑少年」の方は、肉体のエロス、展開の奔放さ、音楽ともマッチした激しさがあり、久々に舞踏の醍醐味を味わわせてくれる作品で、感動と興奮に包まれることが出来ました。 勿論、私のような一人の観客がそう感じても、当の彼等にとっては一作ずつ確実に前へ進んでいるわけですから、批判をするわけにはいきません。結局ファンとしてはこれからも観続けて、どこまで行くのかを期待と不安を持ちつつ、この目で確かめたいと思うだけですけどね。

 「金柑少年」の日には、ちょっと慌てることがありました。会社も終業時になり、帰り支度をするかと思ってチケットの確認をした時。「あれ、2枚ある……!?」そう、誰かを誘おうと思って買っておいたのを、すっかり忘れていたのでした。結局、会社のデザイナーの一人が行ってくれたので無駄にはなりませんでしたが、まったくドジなやつだと我ながら呆れてしまう出来事でした。


★キャラメルボックス公演・ハーフタイムシアター「銀河旋律」(92.4.11 シアター・アプル)

 なんといっても、絶対に面白いと保証書を付けてもいい、キャラメルの芝居。しかしこのハーフタイムシアターという企画には、少しばかりの不安を持っていました。従来の、一本1時間半〜2時間という芝居の半分の時間で、誰でも気楽に楽しめる舞台を、という趣旨を持つ作品で、果たしてどれだけ魅力を損なうことなく表現できるものか…。しかしそんな不安はまったく無用でした。45分の予定の芝居は、興が乗った結果1時間になってしまってましたが、まあ半分の時間をかえって物凄くスリルある舞台に仕上げていたのです。最後までどうなるかわからない、手に汗握る展開の中で、十二分に笑わせてくれ、泣かせてくれ、感動を与えてくれました。 この劇団最大の魅力は、主催・脚本家から主役・端役までの役者陣、周りのスタッフに至るまで、全員が観客を楽しませようと努力している、その姿勢です。その大前提の上で、自らの表現を磨き、作り上げられた舞台。素直な気持ちになって見れば見るほど、心地好く爽やかな感動を得ることができるのでした。


★プロフェッショナル・レスリング藤原組「獅子王伝説」(92.4.19 東京体育館)

 久し振りのプロレス観戦は、分裂UWF3派のうちの一つ、藤原組の試合。僕は藤原と言うレスラーはあまり好きではないのですが、なんと言ってもここのエースの船木誠勝がカッコイイ! 若くて顔も良くて、体付きも理想的にシェイプされていて、運動神経が良くて格闘センスが抜群で探求心が旺盛で、明るいスタームードを持っている、最高のレスラーです。僕が誉める男なんて滅多にいないのですから、どれほどの格好良さかわかるかと思います。 その船木が、プロボクシング史上に輝く4階級制覇の元チャンピオン、ロベルト・デュランと異種格闘技戦を行うのですから、まさにドリームマッチです。しかし試合は期待外れ…ぼてぼて腹で登場のデュランには、かつての名ボクサーとしての姿のカケラもなかった…それは、格闘家としてのプライドをも忘れた姿でありました。2人がリングに上がった瞬間、期待を怒りへと変えた観客に残されたのは、船木がいかに完璧に倒してくれるかという期待だけ。そして彼はデュランのパンチを全てかわし、不利なルールにもかかわらず関節技で仕留めたのでした。 とまあ、真剣勝負になればなるほど、期待も大きく失望することも多いのですが、そこにはやはり戦いのロマンがあるわけです。


★KILLING TIME・ライヴ(92.4.27 クラブ・クアトロ)

 キリングタイムというのは、普段はスタジオなどで活躍している実力派のミュージシャン達が集まったバンドです。メンバーには板倉文、斎藤ネコ、清水一登、青山純などがいます。知らない人は誰も知らないかもしれないけれど、それぞれに個性的な人達です。そんな彼等が、既成の音楽スタイルに囚われず、思いっきり好き勝手に作った音楽。生で見ながら聴いていて、本当に「自由」に伸び伸びと開放的に演奏しているなぁと、こちらまでウキウキ楽しくなってくる素敵な音楽。こんな人達がもっともっと世界に出て行って、日本の音楽のレベルの高さを示して欲しいと思うのは、ちょっとした愛国心だったりするのかな。いや、彼等には国境なんて関係ないほどの自由さがあるからです。 しかし会場のクアトロというライヴハウスは、聞いてはいましたがドーンと邪魔な太い柱があって、遅れて行くと、その陰からステージの1/3ほども隠れてしまう場所で見ることになってしまうのでした。


★少女童話 写真展「目には星、背中に薔薇」&ビデオ上映会(92.5.4 ギャラリー神宮苑)

 僕が旗揚げ公演から見てきて、期待を持って注目している劇団少女童話の、今回は写真とビデオでの企画。写真に関しては、毎年送られて来る年賀状でそのちょっと病的ロマンチックな魅力を知っていたので楽しみに行きましたが、実際大きな印画紙に焼き付けられた、様々な異空間的なロケ地で過多なほどの演出、衣装でなりきっている役者の姿は、ちょっと異様な魅力を見せます。連作写真が多く、さすがに劇団という感じの写真は、とても面白いものでした。 ビデオの方は、舞台で生で見るよりも生々しい感じがしました。舞台は初めから異空間、ビデオの中のロケーションは現実世界なのだから、そんな奇妙なことになるのかもしれません。でも撮影するってことは、その空間を自らの内部に取り入れ、異化することなのかも。まあそれは置いといて、映像の美しさもまずまず、ちょっと倒錯的な面白さでした。 余談ですが、写真展の会場では劇団一かわいい女優さんが紅茶を出してくれたり、ちょっと言葉を交わせたりで、ファンとしては嬉しかったな。まあその時は僕一人しか客がいなかったし…。ビデオの会場には一番きれいな女優さんがいて、結局こっちでも客は僕だけ。ちょっと落ち着かなかったけれど得した気分でもありました。


★板橋文夫・梅津和時・井野信義・小山彰太ライヴ(92.5.4 エアジン)

 少女童話の会場から横浜・関内にあるモダンジャズのライヴハウスに直行。3番目に並んでいたため、バーカウンターでグラスにズブロッカをロックでもらうと、狭いライヴハウスの真ん中最前列の席に。どれほど前かと言うと、手を伸ばせばサックスに、脚を伸ばせばドラムスに触れる距離なのです。いや、ド迫力! しかしそのど迫力は距離だけではなく、演奏そのものにあったのでした。4人ともに世界を舞台に活躍しているバリバリのトップミュージシャン。その彼等が息のあったところで目茶苦茶思いっきり演奏するのですから、まさに凄まじく圧倒的な、ハード・ヘビー・ジャズでした。 板橋はメロウにハードにピアノを叩きまくり、ウッドベースの井野は淡々とした表情で熱くコードを進行させ、小山はソロパートで延々とドラムにのめり込み、梅津のサックスは火を吹くように激しい……40代の、決して若くはない彼等ですが、そのパワーは聴衆を完全に飲み込み、さらに意欲的に楽しげに曲は続きます。19:45に始まったライヴは、途中45分の休憩をはさみ、終わったのがなんと23:30を過ぎてからでした。やっぱりジャズは素晴らしい! 特にこの日のライヴ体験は、僕の心にハードに焼き付くものでありました。 その素晴らしい演奏に胸はいっぱいになってライヴハウスを出た時、外には冷たい風が。休日の深夜は駅にも人が少なく、電車はまだ動いていてもその先のバスはとっくにありません。そして一番辛いのは、昼前に軽めの食事を取って以来、何も食べていなかったことでした。空腹のまま駅から家まで、車は通るけれど人通りのない、一山越える暗い道を35分、歩いて帰りました。 心身共に強行的だった連休の1日は、深く胸の内に刻印されました。


★AREPOSライヴ(92.6.9 マンダラ2)

 久し振りに大好きなれいちさんのボーカルを聴いて、清水一登のピアノもやっぱり素敵で、アルコール度50のウオッカ、ウォルフ・シュミット片手に、このうえなく甘美な酔い心地でありました。このライヴハウスは遠いけど、落ち着いていて良いです。


★ユニバーサル・プロレス(92.6.13 後楽園ホール)

 メキシコプロレスはやっぱり面白いのですが、でも次第にパフォーマンスが過剰になってきて、その分、技の流れなどが途切れてしまって、物足りなさが残る試合でした。


★谷山浩子コンサート(92.6.20 オーチャードホール)

 クラシック・コンサートに使われる大ホールでのコンサートは、とても落ち着いた雰囲気でした。そんな中、立派なステージにも負けない、浩子さんのスターとしての魅力が十分に発揮されていたと言えましょう。どんな場面、どんな方法でも自分を表現できるのが彼女の魅力ですね。


★夏の夜の夢(92.6.24 シアターコクーン)

 遠藤啄郎版のシェークスピア劇ですが、話をバリ島に設定した作品。ジャングルをイメージした深い緑の舞台美術と、ガムランの生演奏がとても印象的な、幻想的な芝居に仕上がっていました。いろんな劇団から集まった役者がそれぞれに自己主張して、かなりどぎつい感じにはなっていましたが、それなりに魅力も出ていて、期待以上の夜でした。


★舞踏アトリエ公演「踵の釘」(92.7.5 アスベスト館)

 会場のアスベスト館は、故土方巽の住居兼アトリエだった、舞踏の聖地とも言えるようなところで、一度行ってみたいと思っていたのですが、この公演はそこでのワークショップ参加者を中心にした発表会的な公演でした。知り合いが通っていて、今回は音響係をしていたのです。初心者による舞踏は、初々しさがあって爽やかでした。その中で、土方夫人・元藤曄子の踊りがユーモラスにして迫力の見物でした。


★斎藤ネコ・カルテッド、ライヴ(92.7.7 マンダラ2)

 谷山浩子のサポートやキリングタイムなどで活躍のネコさんの弦楽四重奏団です。ポップス、ジャズからクラシック、圧巻の超早弾きモーツァルトなど、弦楽噐の魅力たっぷりの第一部。凄い人気で狭いライヴハウスは満員で立ちっぱなしはきつかったのですが、さて第二部のゲスト山下洋輔が登場すると、そなのはぶっ飛んでしまいました。さすがにジャズ界の第一人者…ネコカルと共演のラプソディー・イン・ブルーでピアノを弾きまくる山下は、火の玉のような熱い表現体と化していたのです。


★プロ野球・日本ハムVS西武(92.7.8 東京ドーム)

 実はドームで野球を見るのはこれが初めてで…やっぱり、あの屋根は邪魔で閉鎖的な感じがします……。ビールが高いのが不満でしたが、球場でのビールは欠かせません。


★少年王者舘「香る港」(92.7.18 ザ・スズナリ)

 大好きな王者舘ですが、やはりここ数作のできには不満が残ります。あのラジカルさ、あの気持ちの良い下品さ、あの分裂気質の世界が足りないなぁと、思いながら見ていたのですが、決してつまらないわけではなく、役者陣の魅力と引き込まれる台詞回しで楽しませてはもらえます。またまた、次の作品に期待を大きくするのでした。 そしてその次作は、11月末の名古屋・白川公園における大野外劇! これはもう、見に行くしかないと思っています。


★シューティング(92.7.23 後楽園ホール)

 試合自体は、次第に技も決まりにくくなり、決して楽しめるものではないと思うのですが、やはり真剣勝負の緊張感と、その中で決まる一瞬を待ってリングに集中出来るのは、得難い時間です。勿論、KOや関節技の決まった瞬間のスッキリ感は格別です。


★ジョージ大塚スーパーバンド(92.8.22 エアジン)

 ベテランドラマーの大塚が若手を率いての割りとオーソドックスなジャズライヴ。まったく知らないミュージシャンでしたが、そこそこ楽しませてくれました。


★スーパー・エキセントリック・シアター「左脳民主主義・殺々人々事件」(92.9.3 サンシャイン劇場)

 三宅裕司率いる大人気劇団の公演を初めて見に行くということで、ものすごく期待していったのですが……確かに笑えるし、大掛かりな舞台装置など楽しめ、考えるところもあるけれど、物足りないのでした。役者達の上手さがかえって台本の厚みの無さを浮き立たせてしまったような気がします。もっと面白い芝居はいくらでもあるよなぁ…と。この日は台詞のトチリが多く、それが一番笑いを取っていたというのも不思議なものです。


★山下洋輔ニュートリオ・ライヴ(92.9.4 マンダラ2)

 ネコカルとの共演ですっかりその魅力に取り憑かれ、再び遥か吉祥寺に。仕事が長引き遅れたので、これはもう一杯で立ち見か、入れないのでは…なんて心配していくと、空席も多い、落ち着いた雰囲気。ジャズはまあ、こんなものなのですね。若手のドラマー、ベーシストとのトリオはリラックスした感じで、良質の音を聴かせてくれました。やはり世界の山下です。録音盤とは全く違います。


★ブッチ・モリス来日記念ライヴ(92.9.18 エアジン)

 梅津和時と板橋文夫が出るということで、題目のモリスのことは何も知らずに聴きに行ったライヴでしたが、アメリカ人のトランペッターでした。これにベースの吉本元治を加えた4人による演奏は、完全にフリージャズ。個性の強いミュージシャン達が、持てる技と感性をぶつけ合って造り上げるその音空間は、その瞬間にしか存在しない至福の時です。終わってしまえばただ溜め息を漏らすだけ……。


★プロ野球・巨人VSヤクルト(92.9.19 東京ドーム)

 ヤクルトの公式戦は4年ぶりに観戦しました。ちょうど連敗を止めた試合で、この日からVロードに向けて再発進したのでした。いやあ、盛り上がっていました。今年のヤクルトの優勝は、私が応援に言ったからです…なんて言うのがファンってものです。


★谷山浩子コンサート(92.9.25、26 青山円形劇場)

 今年は円形劇場でのコンサート、2日しか行けませんでした。しかも連日になってしまったのは、チケットが希望通りに手に入らなかったからです。ファンに浸透した企画になって、人気が高いわけです。で、2日間同じプログラムを聴いてみて(リクエストコーナーは替わりますが)、結構日によって違うものだと分かりました。前の日の方が、ゲストの渡辺等とサポートの斎藤ネコのテンションが高かったのですが、ちょっとハード過ぎたとの反省のせいか、後日にはおとなしくなってしまいました。浩子さんの魅力とかは言い過ぎてたので、もう呆れられてるかな…。


★小林嵯峨・舞踏「犬の静謐」(92.10.14 die pratze)

 アスベスト館のワークショップで修行していた知り合いが出演するということで、台風模様の夜に観に行きました。彼は驚くほどに舞踏家の貌をしていて、内面を具現化する肉体を手に入れていました。それはかなりショックなことでもありました。

 小林嵯峨は、冷たく清く、美しい舞踏の世界を作ります。そして言い様のない孤独感を持った人でした。ひしひしと冷気が迫ってくるような、感動が在りました。


★HUMOR CONCERT(92.10.23 サントリー小ホール)

 会社のお得意先が主催するコンサートですので、担当者の義務として聴きに行きました(役得)。今年はキエフ5重奏団が出演し、日本人音楽家との交流を含めた演奏を聴かせてくれました。フランクの曲など、室内楽の魅力を再発見させてくれる素晴らしい演奏でした。


★AREPOSライヴ(92.11.2 マンダラ2)

 やっぱりアレポス、サイコーです! 心洗われるれいちさんの歌声、心ときめく清水一登のピアノ(と、バスクラ)。それに今回はゲストで渡辺等が出演し、弦楽器とのアンサンブルまで聴かせてもらいました。音楽って自由で美しいものだなぁ、なんて改めて感動させてくれるのがアレポスのライヴです。


★板橋文夫スーパーライヴ(92.11.7 エアジン)

 やっぱり板橋、サイコーです!! 彼の全身をぶつけて弾くピアノには、理屈なんて必要無い、ただそこで見て、聴いて、感じさせてもらえば良い…単純明快、圧倒的。一度ナマで見てしまったら、病み付きになるんですよね…。さて今回のメンバーは、ベース立花泰彦とドラムスとチェロ立花まゆみ。チェロのメロディーラインがピアノを引き立てて、美味しい音楽になってました。そして特筆すべきはdsの鈴木タケオ…サラサラ長髪、細腰で凄い美青年なのでした。


★少年王者舘「高岡親王航海記」(92.11.21 名古屋白川公園野外劇場)

 公演の賛助金1万円を払って優待チケットを手に入れ、行って参りました、新幹線乗って。それほどまでにしても見たい芝居だったわけですが、わざわざ行った甲斐は十分にありました。

 今回の公演は澁澤龍彦の遺作を元にした作品だったのですが、その幻想的にして存在感のある世界を見事に王者舘流に造り上げ、見せてくれました。野外劇に慣れている劇団維新派などの出演協力もあり、演出・美術などそのスケールの大きさは期待以上。総勢50人による王者舘ダンスとか、大根割りとか、各役者の魅力とか、大掛かりなセットとか、奥行き、高さ…実に久し振りに凄い芝居を見たという感動に包まれました。 但し、とても風が強くて寒い日でした…スシ詰めの客席とはいえ、夜の野外劇場では体の芯から冷えきってしまいます。でもそれも、芝居を印象深いものにする要因となるのですけれど。もう一度見れないのがとても残念に思えるほど、いろんなシーンが瞼に焼き付いています。多分、一生の思い出になるほどのものでしょう。

 ☆名古屋では初めから一泊の予定でしたが、着いてからホテルが取れず、急遽図々しくも知り合いの家に泊めていただくことになりました。その節は本当にありがとうございました、山本さん。芝居で冷えきった体に、お酒がとても美味しかったです。そして翌日は金城埠頭での即売会に付いて行って覗いてきました。夏にどこにも行かなかったので、久し振りの旅気分でもありました。その後で、せっかくだからともう一本芝居を見て帰ろうとする貪欲さ…。


★バッカスの水族館「スイギン」(92.11.22 七つ寺共同スタジオ) 

 …と、見たは良いのですが、前夜の印象が強すぎたということもあり、あまり覚えていないのですねぇ。笑いと言うことで言えば少し私の感覚とはずれていたし、役者の個性や演出もうまく発揮され切っていなかったような感じ、ただ、満員の客席も含めての熱気は小劇場ならではでありました。


★山下洋輔ニューヨーク・トリオ・コンサート(92.11.26 東京パーン) 

 ライヴハウスで聴くのとは違って、高いステージ上の山下は巨匠の雰囲気。アメリカ人メンバーと一緒と言うことで、かなりスインギーなジャズプレイとなっておりました。迫力もあるけれど、テクニック的に上手いなぁと関心させられます。円熟味のある、心地好い演奏でした。


★大野一雄「睡蓮」(92.12.3 江東区文化センター)

 この日の私はどうも感性の調子が悪かったようで、途中で眠くもなってしまい、せっかくの大野舞踏を受け止めきれませんでした。彼の命を賭けて踊る姿は、生半可な気持ちで表面だけ見ていても駄目なんだなぁと、思い知ったのでした。


★ティンゲルタンゲル(92.12.28 シアターコクーン)

 以前から行ってみたいとは思っていたのですが、今年は会社でチケットを貰うことが出来たので、これ幸いと見てきました。 吉田日出子などの劇団自由劇場メンバーを中心として、バンド演奏・歌・大道芸・芝居など何が飛び出すか分からないドイツキャバレー風ショウプログラムなのです。劇場の入り口からすでに異形の輩が徘徊し、客席にまで侵入している中で始まります。後は色々な内容が様々に演出されていて、わくわくしながら見ているだけ。意外で印象深かったのは、幻想的で美しい美術面でしたが、とにかく年末に(カゼがひどかったけれど)忘年の一時を楽しませて貰った感じでした。