ライヴ記--2000--

★板橋文夫&室内楽団 00.2.13 ル・クラシック

 ヴォーカルの前田祐希、クラシックの室内楽団(バイオリン、チェロ、クラリネット、フルート)と共演のコンサート。第一部はまず、板橋+前田の即興セッションでスタート。板橋のパワフルなピアノに負けないヴォーカルも素晴しく、楽しい演奏でした。次にビオラのパートをクラリネットが吹いての、モーツァルトの弦楽二重奏…クラリネットが存在感を発揮していて、面白い演奏でした。あとはチェロのソロでサンサーンスの「白鳥」と、フルートのソロは曲名を覚えていられませんでした。

 そして第二部にこの日の目玉、シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」を演奏したのですが、現代音楽の古典的作品ということで、始めに「聴く方も演奏する方もしんどい曲」という紹介があったとうり、かなりの難局であったことは確かです。メロディーなどよりも、短時間で終わる歌で組まれた曲の構成が聴きにくいのかもしれません。これがクラシックのピアニストでの演奏だったら、もっと聴いているのが辛かったのではないかなぁとも思います。

 指揮者がいないで演奏者が互いに呼吸を合わせるというのがジャズと室内楽の共通点だと思います。楽譜通りとはいっても、板橋文夫が中心になって異ジャンルの音楽家と曲を進めていく、そしてフォルテッシモではいつものように鍵盤を思いっきり叩いての演奏が、他のメンバーを刺激して新しいシェーンベルクの世界ができたのではないかと、感じたのでした(他の演奏で聴いたことがないので比較できませんが)。場所も、コンサートホールでなくサロン風の雰囲気だったことが、曲を優しく聴かせてくれたように思います。

 シェーンベルクの後、アンコールで演奏されたバッハは、ほっと心に染み入ってくるような絶品でした。

★さねよしいさこ「円形音楽会」 00.5.13 青山円形劇場

 毎年恒例のコンサートで通ってますが、今年は少しテンションが低くて、その分落ち着いていて聴きやすい感じでした。いつもは観客の頭上を気ままに飛び回りながらさえずる小鳥のようですが、今回は私たちと同じ地面に立って歌っているような身近さがあったのです。こんなことを言うと、さねよしさんもますます落ち込んでしまうかもしれませんが…きっと、自分自身を見直す時期だったのではないかな。それによってせっかくの天才が壊れてしまっては大変ですが、うまく進化して、また一段上へと跳んで欲しいと思います。なんといっても、この人の歌はどこからか借りてきたようなところのない、本当に自分の世界ほ表現ですから。

★AREPOSライヴ 00.7.1 南青山マンダラ

 久しぶりのアレポス、その間に出ていた新しいCDは手に入れて聴いていましたが、この日のライヴで始めて聴く曲も多く、とても新鮮な気分でした。今回はギタリストの  が参加し、ドラムもセットされてれいちさんが叩きながらの歌も数曲あって、なじみの曲がロック調にアレンジされたり、刺激的でした。ギター自体は控えめな感じでしたけれど。あらためて、アレポスの魅力を再認識できました。カジュアルなようで、至高の純粋さがあって、音自体への楽しみがあって、ミュージシャン同志の技術と心が穏やかに交流していて。ピアノのすぐ隣で聴いていましたが、清水さんの楽しんでる気持ちが強く伝わってくるし。れいちさんはいつまでも子供のようだし。心地よいバランスの妙が、最高です。

★AZMA「都電荒川線ライヴ」 00.7.29 都電荒川線貸切り電車

 早稲田から三ノ輪橋までを走るチンチン電車を1台借り切ってのライヴ、往復で2時間弱の旅。車窓の風景と車の揺れ、車輪とレールのきしむ音をバックに、マイクも電気楽器もない完全アコースティックな歌とサウンドが、非常に心地よく感じられました。三線を使って沖縄の歌や、少しエスニック調の曲を演るステキなバンドでしたが、活動はあまりしていないようで、もったいないことです。けれどこうした型にはまらない場所での演奏をやる心意気があるのは、すばらしい。ライヴ終了後には早稲田の小さな居酒屋を借り切って、2次会となりました。バンドメンバーとほとんどの観客が参加していたところに、アットホームな優しさを感じましたが、聴きに来ている人もまた、個性的でおもしろいのでした。