本屋でこの本を見つけたとき、思わずあっと声を上げそうになってしまいました。白倉由美…彼女のいくつかの漫画作品は、それは強烈な印象で私の心の中に残っています。特に「卒業・最後のセーラー服」と、そのラストでの救いを自ら否定して描き直した「贖いの聖者」という作品の衝撃は、忘れようがありません。その後、漫画界から姿を消していた彼女が、小説家として帰ってきたのは、非常によろこばしいことです。
さて、ミルナの禁忌、思えば漫画にも色濃かった終末思想が、より濃縮された世界として描かれた作品でした。世紀末の最後に書かれるにふさわしい作品だったと思います。たとえばエヴァンゲリオンの世界を取り込み、昇華させているようにも思います。タルコフスキーの「ノスタルジア」や「サクリファイス」で壁となっていた?黙示録を超えること、それがテーマだったのかもしれません。
美少女たちが、世界を救おうともがき、打ちのめされ、謎に閉じこめられ、それでも自分の存在そのものを武器に前進していく。それこそが少女だけが持つ力として描かれているようです。しかし、そうした「少女」の強さや美しさを持った娘が最近は目に付かなくなっているように思う。物語の中のミルナやネ・ムルナ、エリスという少女たちは、未来への希望であるとともに、失われた過去へのオマージュかもしれないなどとも思います。それこそが漫画家・白倉由美の描いていた純粋な少女たちの姿に重なるものでした。
とにかく、読んでいて迷宮に誘われ、共に痛さを感じるような、それでいて快い作品でありました。 |