ベスト・ライヴ−6

「ピンク・フロイド/ワールドツアー」


すべてはこのコンサートから始まりました。それまではめったに劇場などへ行かなかった私が、この日の刺激的な感動につき動かされ、頻繁に音楽や芝居や格闘技などをライヴで観に行くようになったのです。

ピンク・フロイドは、説明することもないほど有名な、プログレッシブ・ロックを代表するイギリスのバンドですが、私がどんな経緯で聴き始めたかは思い出せません。ただ、レコードを買い集めてはよく聴いていました。さらに「THE WALL」の映画試写会の招待状が送られてきたことから、その刺激的な映像を伴った音楽に、一層深くのめり込んでいたこともありました。そのピンク・フロイドが来日すると聞いては、行かないわけにいかなかったのです。

ピンク・フロイドの名は音楽性と同時に、コンサートの大仕掛けでも知られていました。レーザー光線や映像などを使うステージの先駆者であり、欧米ではドラッグとも結び付いて異様な空間が生まれると伝えられていました。日本ではそんな危ない雰囲気にはならないだろうけれど、ワールドツアーですから舞台演出は同じはずなので、大きな期待。

場所は東京・代々木第一体育館、ステージ右手のスタンド席で聴きました。大きな会場で遠目になりましたが、別に、アーティスト個々に熱狂的なわけではないので、顔がわからなくても問題はなし。アリーナ席を一望できるのは雰囲気を味わうのにはかえって効果的で、ステージ上部の円形スクリーンに写し出される映像も自然と目に入れながら、コンサートを楽しむことができました。 客層の年齢もけっこう高めで、落ち着いて音楽を聴けたのが良かった。まだ、いきなり総立ちなんていう習慣がなかったのかもしれません。

アーティストということでいうと、この時にはすでに中心メンバーのロジャー・ウオーターズが抜けていて、ファンの中にはこれではピンク・フロイドとは言えない、と思っていた人も多いと思います。でも私はデビッド・ギルモアのギターが好きなので、演奏自体には別にロジャーのベースがなくても構わないし…十分にピンク・フロイドだったと思います。

終始大音響に包まれ、ラストには円形スクリーンが開く大仕掛けで楽しませてくれて、こんなふうにアーティストと観客と時を共有できるライヴっていいなぁと実感して、帰途につきました。

結局、これがピンク・フロイドの2度め(1度目は1971年)にして最後の来日となり、歴史に残るコンサートとなったのでした。日本公演での収録ではないけれど、この時のワールドツアーはライヴCDにもビデオにもなっているので、今でもなつかしく振り返ることができます。