【トラック構成】 |
Tr.1 二十六ヶ月の刹那 |
対流圏の果て、蒼き成層圏。そこには、約二年の周期で流れゆく先を翻す大気の流れが横たわる。
目まぐるしく変化する対流圏の雲海の上には、静かに変化する大河の世界があった。 |
Tr.2 空の防人 |
上空20,000メートル。そこには紫外線や宇宙線を遮り、地上生命の全てを護るオゾンが広がる。
彼らの発する熱は、遥か辺境で死力を尽くして戦う防人のそれに似ている。
故に成層圏下で氷点下70℃にも下がった気温は、オゾン上面へ向かうにつれ0℃付近まで上昇してゆく。 |
Tr.3 天上のブルーリヴァ |
対流圏上面、積乱雲付近で生じる雷は、天空に向けて蒼い稲妻を放つ。
その蒼き流れに乗り、無数の妖精達が天上へと旅立ってゆく。 |
Tr.4 翅を広げた妖精達 -Splite Spread- |
成層圏の果て、上空50,000メートル。
オゾン達の戦場の最前線へと踊り出した妖精は、そこで一斉に赤く輝く翅を蒼茫の果てへと広げる。
どこまでも伸びゆくその光は、「スプライト」と呼ばれる壮大な天空の気象現象だ。 |
Tr.5 夜光の棲み処 |
成層圏の彼方、上空70,000メートル。
中間圏と呼ばれるその空間には、夕陽の残光に照らされ、蒼く輝く薄い雲……夜光雲が現れる。
これより上に雲はない。そしてこれより上は、形を保たぬエネルギー……魂の世界。 |
Tr.6 スポラディック・ゴースト |
上空100,000メートル。気まぐれに現れては消える局地的電離層。それがスポラディックE層。
熱圏と呼ばれる宇宙への入り口には、地上の声を気まぐれに反射する姿なき幽霊が住まう。 |
Tr.7 一万レイリーの戦乙女 |
幽霊達の庭から上空200,000メートルにかけて、優雅で神々しく、だが力強い光のカーテンが踊る。
戦死した勇敢な戦士達を従える戦乙女ワルキューレ達の鎧の勇壮な輝きは、天の川の100倍にも及ぶ。 |
Tr.8 かくも熱き神々の庭 |
上空一万キロ。熱圏の果て、大気圏の果て、外気圏の彼方。それが地球、この地上世界の最終境界。
護る防人もなく、踊る妖精も幽霊もなく、戦乙女達が遥か天上に見上げる神々の座。
世界の果ては、更なる未知の世界への入り口でもあった。 |
Tr.9 122億キロの虚空 -Last Message- |
太陽系の遥か辺縁。太陽風と渦巻く銀河の恒星間風とが激しく衝突する末端衝撃波面。
2003年、この遠く光も微かな虚空より、「彼女」からの「声」が届いた。
その声はあまりにか細く不鮮明で、光速にして12時間弱という遠大な距離、
そして何より彼女自身の余力から、それはきっと「最後の手紙」だった。
パイオニア10号。1972年3月、地球発。2003年1月22日……122億キロの虚空より、ラスト・メッセージ着。 |