武道峠(ぶどう峠) (長野県北相木村−群馬県上野村)

武道峠の碑

梅雨の最中、霧の志賀坂峠を越えて武道峠に向かう。
埼玉側は雨だった。群馬側は雲が低いが何とかもちそうだ。
しかし、空模様が怪しくなってきた。楢原トンネル辺りからは空も暗く、雨がパラつく。十石峠にしようか、武道峠にしようか迷っているうちに、分岐点を通過してしまった。道が細くなり、変だと思っていると十石峠街道と塩ノ沢峠林道との分岐点に着く。工事中の道路表示板が出ており、十石峠街道は通行止めになっている。塩之沢峠経由下仁田の案も浮かんだが、思い直して武道峠に向かう。急がないと暗くなってしまう。それだけが不安材料だ。
橋を渡って楢原に入る。道幅は狭く車1台分である。対向車が来たが、ほとんどぶつかりそう。谷は狭く暗く、雨が霧雨から粒に変わっている。
最後と思われる中ノ沢集落の人家の前を通過すると、本格的な登りになった。路面は悪くない。舗装されているし、幅も車がすれ違える分くらいはある。ただ、崖はコンクリートで固められていない部分もあり、そうしたところでは赤土や岩がむき出しになっていた。最近の雨で流れたり崩れたりしたらしく、道路の半分位まで赤土に覆われているところもあった。勾配は結構きつく、2速と3速を交互に使いながら登る。本格的な登りに入ってからは、対向車は工事関係者と思われるトラック1台だけだ。
地図の上では道はマムシ岳の斜面を這い、武道岳の本体にしがみつくように登っている。道が武道岳にかかったと思われる頃、視界が開けるようになった。頭上の険しい岩山が武道岳で、送電線の鉄塔が見えた。背後の岩山がマムシ岳だ。一方、下界は白一色の霧の海で、所々僅かに山の頂や斜面が見え隠れしている。
霧と雨の中、いつ果てるとも知れぬ登りが続く。対向車もない。自分一人が違う世界に迷い込んだような感覚に襲われる。
不意に峠に出た。
写真で見たことがある峠の石碑が立っているから間違いない。休もうかと思ったが、先客がいた。バイクが1台止まっていて、その人のものと思われる小さなテントが張られており、狭い広場はそれらが占有していた。そこは遠慮して少し下った広くなっている所で車を止める。雨足は一段と強くなっているように思えた。

長野県北相木村の谷を下る。
この村自体が北相木川の谷そのものを占めているのだが、小さな山村で国道にも面していない。村のメイン・ストリートが武道峠の県道である。最初は狭くきつい下りだったが、すぐに広くなり、路面にセンターラインが現れる程だ。長野側の特徴である広く懐の深い谷が続く。
雨はますます強くなり、南相木村へ至る県道との分岐点を過ぎると暗くなり始めた。途中、工事中だったりしたが、下るに従い路面が荒れていくようだった。小海町の市街地に入り、千曲川の橋を渡って馬流で国道141号線に入って武道峠の道が終わる。その頃には周囲はすっかり暗くなっていた。
(1993.7)


台風一過の晴れた土曜日の午後、再び武道峠を訪れた。
今日は秩父から土坂峠を越えて来て、万場の東、生利(しょうり)から十石峠街道を西に向かう。

平原、勝山、乙母、乙父と快調に走って楢原トンネルを抜けると砥根平。道はここで十石峠・塩之沢峠へ至る道と、武道峠を越える林道に分かれる。台風続きで心配していたが、思った通り十石峠は通行止め。迷わず武道峠に向かう。

白井、三岐、中ノ沢を経て武道峠の登りにかかる。途中、小海まで35キロの標識があり、周辺では渓流釣のおじさん達の姿が見受けられた。
前回より道が広く感じられるのは、天候の違いのせいだろう。神流川源流に沿って登り、ヤマメ釣の案内が出ているカーブをぐっと曲がると、登りも本格化する。それでも3速ないし4速でぐんぐん登れた。視界が違うと走りまで変わる(^^;
前には工事のトラックが1台だけだった対向車も、今回は多かった。足立ナンバーのプレリュードには若い男性が1人だけ。多分、ご同類だろう。危うくぶつかりそうになったクライスラーのワゴン車もあった。それ以外にも何台か。
下の方は晴れていたので期待したが、武道岳を見上げると、何と上は雲がかかっている。やがて、その雲に入ると何も見えなくなってしまった。ひたすらカーブを曲がり続ける以外に何もなくなってしまう。
やっと峠に辿り着いたが、期待していた眺望はまるでない。しかも、バイクの男女2人連れが何やら語らっているので、早々に退散する。多分、バイク雑誌なんかにはツーリングの穴場として紹介されているのかもしれない。そう言えば、登りの途中でツーリングの一団ともすれ違った。

きついカーブを曲がって北相木の谷へ下りていく。前回の記憶通り、すぐに広くなり、木次原を経て加志屋敷の滝の所で停車する。ここにはトイレがあるので有り難かった(前回も同じ場所で止まったのだが、雨と暗さで分からなかったのだ)。トイレを出て何気なく左の方を見ると、栂峠入口の看板が出ている。その奥には草の生えた畦道のような登山道が斜面の中腹へ這い登っていた。残念ながら峠の方は曇って何も見えない。
北相木の谷を下りていくと、途中で右『親沢・小海』の標識がある。前回は見落としていたが、地図を見るとこの道は北に見える尾根を越えて、もう1つ北の谷へ抜けるようだ。そこに親沢峠という名前がある。いつか機会があったら走ってみようと思った。
南相木村への分岐を過ぎ、尾根を回り込んでいくと舗装が途切れる。相変わらず工事中だった。しかし、舗装が戻り、前回は工事中だったもう1か所の方は、工事が終わっていた。
山の陰のため既に薄暗くなっているが、先を急ぐ程ではない。相木川に沿って走ると、あっけなく小海に着いた。前回は既に夕暮れで、かつ激しい雨の中を初めての道とあって、手探り同然に走って来た。だが、今日は余裕がある。馬流の交差点から国道141号線に入った。
(1993.9.12)


塩之沢峠から武道峠に向かった。

塩之沢峠では大型車が多くて閉口したが、今日はこの道にも大型車がいる。工事が行われているので仕方がないが、よりによって楢原の人家の間で出くわすとは運がない。行きつ戻りつ散々汗をかいて通り抜ける。そこを抜けると幅も広く、快適な道。神流川の上流に沿って走る。水がきれいだと谷を覗き込んでいた同乗者が言う。
三岐で左に浜平鉱泉への道が分かれ、神流川とも別れる。日航機墜落で一躍有名になり、地図にも載ることになった御巣鷹山への道もこれである。
その先の中ノ沢が最後の集落、と言っても2軒程である。そこから林の間をしばらく走り、マムシ岳の麓で方向を変えると登りとカーブが一段と厳しくなる。
その登りとカーブを黙々とこなしていく。幾つかカーブを過ぎると、先刻通った道は眼下になってしまう。次第に視界が開け、ぶどう岳の本体にとりかかる。送電線の鉄塔が立つ県境の稜線が今日ははっきりと見えるので、眺めは期待できそうだ。
何度か紛らわしい切り通しを抜け、峠に到着。予想通り東側は晴れ渡っている。諏訪山、天丸山と続く群馬・埼玉の県境の稜線の上に、両神山の険しい岩頭が突き出ている。これ程近く、しかもはっきりと見えたのは今日が初めてだ。幾度となく志賀坂峠を通りながら、遂に見えなかった両神山である。今日ははっきりと見えたので、それだけでも嬉しく、来たかいがあったというものだ。ただ、カメラを持ってくれば良かったと思ったが、それは後の祭り。

西側は既に西日に霞んで眺めは良くなかったが、東側の景色だけでも十分に堪能できたなと思いつつ、峠を下る。
前回来た時に工事していた小海の市街地の手前では、新しいトンネルができていて、市街地をバイパスして国道141号線に出られるようになっていた。
(1994.9.3)


6年ぶりの武道峠。今日は秩父から志賀坂峠を越えて来た。
中里村神ヶ原の集落を抜けると、国道299号線は快適な2車線の舗装路が続く。途中道の駅上野で休憩して、楢原に着くと標識が現れたがどうも以前と違う。そして、記憶にある狭い橋ではなく、ここまでと同じ立派な道が左に分かれていく。三岐までバイパスが通じていた。言うまでもなく御巣鷹山を訪れる人たちへの便宜のためだろう。6年も経てば、こんな山の中でも道は様変わりするものだ。
三岐から先は懐かしい道になる。昨日の雨で空気は一段と澄み、早くも枯葉が舞っている。それだけなら良いが、時折落石が現れるので要注意だった。峠までの道中でも、そこここで崩れている場所があり、工事が続けられていた。関東山地の地盤は意外に脆く、崩れやすいのである。
峠に着く。やや霞んでいたものの東側はそこそこの眺望。対照的に西側は雲が多く、八ヶ岳は拝めなかった。
北相木村へ下り、親沢峠に向かう。
(2000.10.21)

武道峠
北相木側から見た峠
北相木の谷
北相木の谷を望む。茂来山や四方原山は十石峠の谷との分水嶺の山々になる。
峠の北の岩峰
峠の北に聳える岩峰
両神山方向
峠から秩父方面を望む。中央の平らな稜線が両神山
御座山方向
峠の南西に聳える御座山(2112m)。残念ながら頂上は雲の中
三寸木から峠北の岩峰
三寸木の加志屋敷滝付近から峠の北の岩峰を望む

峠道の往き還りに収録した武道峠からの眺望へ

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