安房峠 (長野県安曇村−岐阜県上宝村)

この記事は安房トンネルが開通する前のものです。

代休の火曜日、今日は安曇野から飛騨高山へと走る。

東京出発は11時前。今日は飛騨高山まで行くぞと決めていたが、最悪泊まってもいいなという気分なので余裕があった。
中央道を走る。空は雲が多いものの、時折日が差し、気温はかなり高い。汗ばむような陽気だと天気予報でも言っていた。
初狩と諏訪湖で休憩し、諏訪湖で給油しておく。近くの山は見えるが、かなり霞んでおり、景色は期待できないようだ。

残雪の北アルプスの峰々を望む松本ICで下り、出口を右折して国道158号線に入る。
時刻は13時半過ぎ。高山まで約100キロ、所要時間は約2時間と計算した。

梓川の谷を目指して安曇野を走る。松本市から波田町に入り、しばらくは片側2車線が続くが、やがて1車線の普通の道になる。
傍らを松本電鉄の線路が並行して走る。架線の支柱にまだ木が使われているのが何とものどかで良い。
その松本電鉄も新島々で終点になると、両側に山がずっと迫ってくる。道も上りになり、やがてカーブして梓川を渡ると梓川村に入る。この辺りから路面も若干荒れはじめた。

稲核(いなこき)ダムが右下に現れる。梓川はここから事実上ダム湖の連続。地形としては狭く深い谷でダムには絶好の条件だろう。
水殿ダムを過ぎると最初のトンネルが現れる。古いトンネルで照明はなく、バスが辛うじてすれ違えるだけの幅だ。
奈川渡ダムの手前のトンネルは珍しい構造で、中で道が左右に分かれている。左は奈川村へ向かう野麦街道。国道は道なりに右へ向かう。トンネルを出ると道はダムを渡って再び奈川渡トンネルへ入った。これ以降のトンネルは、これまでのものより新しく幅も広くて照明がある。要するにダムが出来たため、本来は谷間を走っていた道が使えなくなり,新たにトンネルを掘ったようだ。ここから親子滝トンネル、木賊トンネルと長いトンネルが続く。
ダムを渡って3つ目のトンネルを抜けると信号。左に分かれる道は乗鞍岳に登って行く。道路情報案内板には乗鞍岳方面は積雪のため通行不能とあった。もう5月も末なのだから、実際に道路が使えるのは半年くらいなのだろう。
延々と続く梓湖を左下に見ながら進み、沢渡大橋を渡ると沢渡。上高地は5月20日から一般車通行止期間なので、上高地に行く人はここの駐車場に入れなければならない。そのための公営・私営の駐車場が道路の左右に続き、係員が乗用車と見ると差し招いたりする。もっともこっちは上高地には行かないので、無視して通過。
山頂から導水管が伸びているのが目印の湯川渡の発電所を過ぎると再びトンネルの連続となる。梓川は既にせせらぎとなっていた。川原に降りたら気持良さそうだ。

上高地入口の手前で工事区間に出会う。ここの対岸は最近水蒸気爆発があった場所だ。今も幾つかの噴気口から硫化水素の腐卵臭を伴う白い蒸気が吹き出している。確かここは安房峠トンネルの取付け道路の工事現場だったと思うが、完全に崩壊しており、これではどうしようもない。

平日なのに、人だらけの上高地入口を通過。ここまでも相当登っているが、安房峠の登りはここからが本番だ。いきなり凄い勾配とヘアピン・カーブが現れる。何せ狭い谷に面した急斜面に無理やり道を作ったのだから仕方がない。しばらく斜面を斜めにうねりながらすすみ、これ以上行けなくなると思い切り厳しいヘアピンで方向を転ずることになる。まるでスキーの初心者が斜滑降とキック・ターンだけで壁を下りているような状態だと走りながら思った。
見る見る高度を稼ぎ、斜面を北に向かって走ると穂高連峰が見えるようになる。走りながらなので、見れるのはそれぞれ一瞬なのだが、距離が近いせいか残雪と岩の色までくっきりと見え、十分にその迫力が伝わって来る。これまでこんな近距離から見たことがなかったから、余計にその感が強いのかもしれない。
木立の間を走っていたのが、ようやく視界が開け、ヘアピンからも解放される。道が尾根を巻くようになったので峠が近いかなと思ったが、まだまだ先だ。
平日だが結構対向車がある。そのうち、前に大型トラックが現れ、一挙に減速。あのヘアピンをどうして登ったのか分からないが大した物である。道幅がやや狭いところでは乗用車ともすれ違えない有り様だ。
安房山(2219m)からアカンダナ山(2109m)へ続く尾根の鞍部に出ると峠も近い。前方に立っている奇妙な構造物は安房峠トンネルの通気孔を掘っていると看板が出ていた。その脇が1812メートルの安房峠である。
峠には茶屋があり、トラックの後を走らされてうんざりしたのか、前を走っていた2台がさっと入る。無理をすればもう1台くらいは止められそうだったが、先を急いで通過。ここからは岐阜県、飛騨国の領域である。
前を行くトラックが峠の直下で道を譲ってくれる。そこからの下りは豪快。平湯の谷が見え、そこへ下る道も見えている。標高差はほぼ500メートルあるから、その下りも想像がつこうというものだ。ほとんど直線的に下るから勾配は凄いが、その代わりカーブは高速コーナーである。とはいえ初めての道なので慎重に走っていると、後ろから青いジープが追ってきた。地元の車と判断して躊躇なく道を譲る。案の定松本ナンバーで、勝手知った道らしくカーブに思いきり良く突っ込んで行く。お陰でこちらはそれに従って走れば良く、助かった(^^;。
数台の観光バスとすれ違う。登りが優先なので無論こちらは停車。その先でヘアピン・カーブが現れる。ただし信州側と違って2、3度続いただけで、再び平湯へとまっすぐ下った。
平湯温泉に入り、旅館が立ち並ぶ中で道は突き当たる。右は神岡へ至る国道471号線。国道158号線は左折。左折してすぐに名鉄のバスターミナルと併設された公営無料駐車場があり、そこへ入って一休み。

南の空には残雪に覆われた乗鞍岳が、高曇りの空を背景にどっしりとした姿を見せている。
乗鞍スカイラインにはまだ雪があるようなので、このまま飛騨高山に向かうことにした。
(1995.5.30)

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