脳内被害妄想物語


これは管理者が収容所生活ゆえの禁欲生活から

生み出された妄想の産物を文章に記したものである。

この内容をネタとして取るか、本気として取るかはすべてあなた次第・・・

物語を読むのも自由。読まぬも自由。

選択はすべてあなたにゆだねられてるのだから・・・


第1回

 

 朝――――――――――――。 

 「お兄ちゃん、おはようございます(にこっ」

 満面の笑顔を浮かべた妹(実は非血縁)の可憐に起こされる。

 思わずそのまま抱きしめてやりたくなる衝動を抑えて、挨拶を返す。

 妹に起こされて、台所へ。

 「あら、尚也さん。おはようございます」

 「はい、おはようございます。璃菜さん」

 そう返事を返した相手は親父の再婚相手の璃奈(りな)さん。

 親父とは年が離れているのだが、おれとは10くらいしか違わないので

 母親と言うより、年上の姉みたいなようなものだ。

 「どうしたんですか、尚也さん。ぼーっとして」

 「え、いや・・何でもありませんよ」

 席に着いて朝食をいただく。

 「いただきます」


 もぐもぐ・・・・・もぐもぐ・・・・・

 じーっ・・・・・・・

 もぐもぐ・・・・・もぐもぐ・・・・・・・

 じーっ・・・・・・・・・・

 可憐が食事をしてるボクの顔をじっと見ている。

 何だか気恥ずかしくなって、顔をそらす。

 「お兄ちゃん」

 可憐に呼ばれて、顔を向ける。

 ひょい、ぱくっ。

 「お兄ちゃんのほっぺたにご飯粒がついてましたよ・・・」

 えへへ・・と笑いながら、頬を赤らめる可憐。

 くすぐったい気持ちになりながらも「ありがとうな」と声をかけ、朝食を食べる。

 その光景を璃菜さんは優しい笑顔で見守っていた。


 制服に着替え、顔を洗い、歯を磨いて学校へと出掛ける。

 靴を履き、玄関を出て璃菜さんに挨拶。

 「ほら、可憐。早く行くぞ」

 「う、うん。お兄ちゃん、ちょっと待ってね」

 制服姿の可憐がとたとたと階段を降りて来る。

 「それじゃあ行ってきます」

 「はい、気をつけて行ってらっしゃい」

 璃菜さんの挨拶を背に家を出る。

 


 「飯田さん」

 家を出て少し歩くと、後ろから声を掛けられる。

 「ああ、氷沼か。おはよう」

 「はい、おはようございます」

 にっこりと微笑みながら挨拶を返す女学生。

 氷沼 悠理。

 おれの隣のアパートに住んでる同学年の女生徒。

 黒髪でロングヘアーでおとなしそうな印象が特徴だろうか。

 何でも氷沼の親御さんはどこかの資産家らしく、どことなく感じる

 お嬢様っぽい雰囲気はそこからなのかも知れない。

 

 「最近はめっきり寒くなってきましたね」

 「ああ、そうだな」

 10月半ばの朝。そろそろコートが欲しくなってくる季節だ。

 辺りを見回せば、一面の秋桜が咲いている。

 こういう景色の中。氷沼と一緒に通学するのもいいもんだな。

 秋を感じさせる景色を目に、歩いていると・・・

 「お兄ちゃん。今日は橘さんを起こしにいかなくていいの?」

 くいくいっと可憐がおれの袖を引っ張る。

 「うあ・・・・すっかり忘れてた」

 「橘さんも私と同じで朝は弱いんですよね」

 と苦笑する氷沼。

 「わりぃ。天音のやつを起こしてくる!先に行っててくれ」

 そう言い残して、走り出す。

 橘 天音。

 おれと天音はランドセルを背負ってた頃からの仲だ。

 世間一般で言うところの幼馴染ってやつだ。

 知り合った頃から、天音はおれにばっか着いてきて、見てると危なっかしくて

 ほっとおけない奴。それがおれの天音に対する印象だ。

 中学の頃からだろうか。

 朝の弱い天音を起こして学校に行く生活が始まったのは。

 この生活もそんな昔からやってたんだなぁ・・・と感傷に浸ってると、橘家に到着した。


 ピンポーン。

 ドアのチャイムを鳴らして、少し待つ。

 「はい、どちらさまですか?」

 「おはようございます。飯田ですが 天音のやつは・・・」

 「あら、尚也ちゃん。天音ったらまだ寝てるんですよ。悪いわね、毎朝起こしに来てもらって・・」

 「・・・やっぱりそうか。ちょっと天音を起こしてきますね」

 「あの子にも困ったものねぇ。私が起こそうとしてもちっとも起きないんだから」

 「はは・・気にしないでください。何かもう日課って感じですから」

 苦笑しながら天音の部屋へと向かう。


 コンコン。

 「天音・・・・起きてるか・・・?」

 声を掛けても返事が無い。

 「ったく・・・まだ寝てるのか・・・入るぞ、天音」

 ガチャ。

 「すぅ〜・・・・すぅ〜・・・・」

 ベットで幸せそうな顔で安らかな寝息を立てている少女。

 「天音、ほら天音。朝だぞ、起きろって」

 「すぅ〜・・・・・・・すぅ〜・・・・・・・」

 「起きろ、起きろ。早くしないと布団を剥ぐぞ」

 「ん・・・・んん・・・・・寒いの・・・やだもん・・・・」

 「そんなに寝てばっかだと、脳みそがとろけちまうぞ」

 「う〜・・・とろけちゃうの・・・・やだよぅ〜・・・・」

 「だったら早く起きようぜ、な?」

 「う〜・・・・うんー・・・・起きるー・・・・」

 「ようやく起きたか・・・下で待っててやるから早く来いよ」

 「うん・・・・あのね、尚也ちゃん・・・お願いがあるの・・」

 「ん、お願いってなんだ?」

 「手ぇ・・・引っ張って・・・・起こしてぇ・・・」

 「はぁ?」

 「手ぇ引っ張ってぇ・・・起こしてくれないとぉ・・・・起きられないんだもん」

 (天音激萌えッ!(*´Д`*))

 とか叫びそうになる気持ちを抑えて、手を貸してやる。

 

 「お待たせ、尚也ちゃん」

 「おう。そろそろ急がないと危険な時間だし、走るぞ」

 「う〜・・・朝から走るの嫌だよぅ・・・」

 「お前が早く起きないのがいけないんだろ・・・」

 やれやれと思いながらもゆっくりと走り出す。


 「ところでな、天音」

 天音に合わせて遅刻しないくらいのゆっくりとしたペースで走る。

 「なあに?尚也ちゃん?」

 「いい年して、その・・・尚也ちゃんって呼び方はやめてくれよ・・・・」

 「う〜・・・でも〜・・尚也ちゃんは尚也ちゃんであって、私にとっては昔から尚也ちゃんは

  尚也ちゃんだったし、これからも尚也ちゃんのことは尚也ちゃんで呼んでいたいなぁ・・・って」

 「・・・・・・・・・」

 聞いててよく判らなくなってきた。

 「・・まあ、いいや。天音がそう呼びたいんだったらもうそれでいいわ」

 半ば呆れながらも学校へと足を急がす。


 「あ、お兄ちゃん。それに橘さん」

 前方でおれらに気づいた可憐が手を振っている。

 「ふぅ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・可憐ちゃん、氷沼さん・・・おはよう〜・・・」

 可憐と氷沼に追いついた、天音が息を切らしながら挨拶をしている。

 「はい、天音さん。おはようございます」

 「橘さん。おはようございます」

 のどかな朝の光景であった。

 キーンコーン、カーンコーン・・・

 「やばっ!予鈴のチャイムだ!みんな急ぐぞ!」

 あっけなく終わってしまったのどかな朝の光景だった。