竜宮城は、絵空事の世界と思ってはいたが、この世に存在するのをこの目で見てきた。
そこは、ヒマラヤの小さな王国ブータン。
『グズザンポ』おはよう、こんにちは、こんばんわ、さようなら挨拶は全てグズザンポ。
面積は九州と同じ、人口70万、中国国境に7000メートルを越える雪山が幾つかある。鎖国体制から最近広く解放されたが、この国を訊ねた人は、まだ少ないと思う。
首都テンプー、『ゾン』城塞と訳す、
王室、行政、僧院、宿舎、貯蔵庫を併せた世界最大級の巨大な木造建築物がある。それが実に竜宮城的である。
この国の衣装を見てあっと驚く。
『ゴ』と呼ばれる男性の正装が、わが国の厚手の着物そっくり。
女性の服装は巻きスカート風の『キラ』。
秋の味覚の王者マツタケ、この国ではワンサと採れるが、食べる習慣がない。しいて値段を付けるとキロ当たり200円位という。わが国の店先には、内緒でブータン産の物が並んでいるらしい。
昔からの道路で、車より馬の数の方が多く遠くへ出かける時は、馬の背に食料寝具を積み、テクテクと自分も一緒に歩く。
私たちも、ドウルックパスという氷河湖の続く、4000メートルの雪の峠を歩いてきた。
外国人では、あなた方が初登行ですよと褒められた。
共同登山用具、個人装備、食料寝具一式等を運搬のために、ブータン馬12頭、馬方3人と、現地スタッフ10人(ガイド、コック、ボーイ)が同行、私たちメンバーは10人。
現在の日本では考えられない、ほんとに夢のようなヒマラヤ贅沢登山である。
男の子の遊びは、投げ矢、弓、石投げ。女の子は、ゴム飛び、石蹴り。
テレビなし、ラジオは夜3時間のみ、新聞は週1回刊行。映画館は首都に1軒のみ。貸しビデオテープ屋が繁盛している。