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92 超・暴走編7「竜女再来」(2)
2002.11.27(水)17:31 - ゲンキ - 22738 hit(s)

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第三章「眠リ兎ノ独白」

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 −1−


カコーン……

 静寂な空気を引き裂くでなく、逆に染み渡るかのように、その音は玉砂利の敷き詰めら
れた庭の中、ゆっくりと歩く一行の耳に聴こえてきた。それは水の入った竹と石とがぶつ
かった時に生まれる音で、なんでも「ししおどし」とかいう珍しいものらしい。
 と、いうようなことを一行に説明していたゲンキが、雲一つない青空を見上げて呟く。
「風流ですなぁ……」
「たまや〜……」
 追従するように口を開いたのは眠兎だ。何故そう言うのかは分からない。
「ははは、違いますよ眠兎さん。それは花火の時に言う言葉です」
 ゲンキが眠兎の間違いを指摘する。そして、一瞬目を閉ざしたかと思うと、
「正しくはこうです。かぎや〜……」
「それも違うわっ!!」

ばぎッ!!!

「まったく、こんな立派なニバン庭園で変なボケかますなっつうの」
「はっ、ははは……すいませんお嬢さん」
 毎度のごとくツッコミ一つで血塗れになりながら、ペコペコ頭を下げて謝るゲンキの視
線の先には、今回のお見合いの会場として借り受けたニバン風旅館「さざめゆき」の女将
の娘・ミフィオがいた。しっかりと結い上げた黒髪にニバン着物という一見普通の仲居さ
ん風の彼女だが、言動はどう見てもそれとかけ離れている。割と整った顔には、いかにも
気の強そうな、険のある表情。どうも機嫌が悪いようだ。
 それもそのはず。接客業にある人間にとって「忙しさこそ美徳」と考えている彼女なの
に、今日の旅館はゲンキ達の貸し切り状態。しかも彼等は客ではなく、単なる顔見知りな
のだから。母である女将にも「特別なことはしなくていい」と言われているし、忙しくな
ろうはずもない。むしろ暇で暇で仕方が無く、しようがないからこうしてお見合い場所の
下見に来た一行の案内役を買って出ている。
「ったく、なんで母さんはこんな奴に旅館のタダ貸しするんだろうね」
「いやあ、ほんとに助かりました。他じゃあ全部門前払いだったもんで」
 いつになく……というわけでもないが、ミフィオの言葉に低い物腰で応じるゲンキ。今
回、お見合いをするにあたって、その会場を探す為に四方八方駆けずり回ったのだが、ど
うも「じゅらい亭」の名がブラックリストの最上段に記されているらしく、ことごとく断
られてしまったのだ。
 そうして残ったのは、常連ズと面識のある女将が経営するニバン旅館「さざめゆき」た
だ一件だった。ワラにもすがる思いでここを訪問した彼等を、以前常連達に世話になった
ことで良い印象を抱いてくれていた女将は、快く迎え入れてくれた。
 かくして、ゲンキと眠兎の二人は午後からのお見合い開始の為に、会場の視察を行って
いるところなのである。中は一通り見て回った後で、今はミフィオの説明を聞きながら広
い庭園を散策していた。
「まあ、あんたらを出入りさせようなんて奇特な店は『じゅらい亭』か、うちくらいさ」
 苦笑……であるにも関わらず、妙に人懐っこく、嫌味のない明るさを持った笑みを浮か
べて、ミフィオは嘆息した。彼女も口では悪く言っているが、母を助けてくれたことのあ
る「じゅらい亭」の常連達に対して少なからず感謝の念と好印象とを抱いてくれている。
初対面で不機嫌な顔ばかりを見せつけられていた眠兎は、それを悟ってこっそり胸を撫で
下ろした。正直ホッとしたというやつだ。
「それにしても、ほんとに綺麗な庭ですね。真っ白というか……」
 ここに入ってきた時、思わず感嘆の吐息をもらしたことを思い出しながら、彼は改めて
庭園の中を見渡し、その美しさを堪能してみた。太陽の輝きを受けてともすれば目が眩み
そうになるほど白く見える玉砂利の敷き詰められた地面。そのところどころに一見何の規
則性もなく……だが、たしかな計算の元に配置されている灯篭。そして、「さざめゆき」
の敷地をグルリと取り囲む高い生垣の森。何層かに重ねて樹木が植えられていて、その高
さから周囲の建物も見えず、まるで本当に森の中に庭があるかのようである。
 植えられている木は、黒々とした幹の針葉樹だ。その色の暗さが玉砂利の白さをより一
層際立たせているようで、思わず眠兎は目を細めた。脳裏に焼きついた「白」というイメ
ージに、ふと脳裏に浮かんで来る姿がある。

(……あんな風に、お前も)

 黒と白のコントラストに目を奪われ、そんなことを考えたのは、ほんの一瞬のことのよ
うで、意外に長い時間だったらしい。気がつくと、ゲンキとミフィオは大分離れたところ
まで歩いて行ってしまっていて、立ち止まっているこちらに気付いて呼びかけてくれてい
るところだった。
「眠兎さ〜ん!!」
「早くこいよー!!」
 そんなことを口々に叫ぶ彼等の周囲には穏やかな空気が漂っている。そして、今自分の
立っている場所にも、それはある。かつてはありえなかったのに、確かに存在している。

(だから、なれるよ──)

 兵器だった自分が、人間に。夫に。そして、父になることで手に入れられたもの。それ
を、「彼」が手にできないはずはない。幸運の白い竜が、初めて自分の幸せを手に入れる
ことに、おかしなことなどあるものか。
「今、行きます!!」
 答えて、走り出す。友達としてしてやれることは、とりあえずこれだけだ。お膳立てと、
軽く背中を一押しすること。もっとも、彼の背中を押すのは自分一人だけではないのだろ
うが。たくさんの人に、愛されているから──カリオンは。

「──幸せに」

 それは、なんとなく昔の自分に言っているような、そんな独白だった。



 −2−


 ギュッと帯が締められ、ラーシャは一瞬窒息するかと思った。
「あ、きつかった?」
 ニバン着物の着付けをしてくれている風舞が、彼女の表情を見て帯をゆるめてくれる。
それでもまだ多少きゅうくつだったが、これ以上ゆるめて着物が脱げてしまったりしても
なんなので、「ちょうどいいです」と答えておいた。
 ちなみに「ニバン」とは、東の小国「ジャッポン」のこと。ジャッポネーゼ──ニバン
人は、自国のことを昔からこう呼んでいるのだ。いいやすいので、どちらかというとラー
シャもこちら名前の方が好きである。
「そういえば、ニバンの戦争って終わりました?」
「え、戦争? ああ、あれね」
 一瞬考え込んでから、すぐにこちらの質問を理解したらしく、風舞は思い出すように首
を傾げて軽く頷いた。ニッコリと微笑みながら、
「五年前にね、やっと終戦したの。今は、大分復興したみたいよ」
「そうですか……よかったです」
 ニバンには、十二年前に立ち寄ったことがある。その頃から既に国内各地が激しい戦時
下にあり、目を覆いたくなるような惨状をいくつも目にしたものだ。最近は仕事が忙しく
てすっかり忘れかけていたが、この世界に来てからなんとなく思い出し、どうなったのか
気になっていたのだ。まだ戦争が続いてるとは考えたくもなかったが、風舞の話ではちゃ
んと終結していたらしい。
「どうしたの、いきなり?」
「いえ、なんとなく……」
「そう?」
 特に深く問うことでもないと思ったか、それ以上は何も言わずに、着付けの細かいとこ
ろを手早く修正していく風舞。そんな彼女の白い手がパンとラーシャの腰の後ろを叩き、
いよいよ準備が整った。
「はい、できた。綺麗ですよ、ラーシャさん」
「ありがとうございます」
 ラーシャはついつい顔をほころばせた。見合い自体は乗り気でないが、ニバン着物には
興味あったので、それを着られてオマケに「綺麗」などと言われた日には、やはり嬉しく
てたまらない。中腰の体勢から立ち上がり、風舞が笑う。
「そうそう、スマイルスマイル。その調子で頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
 すっかり上機嫌のラーシャは、調子良くそんな風に答えた。風舞が「フフッ」と笑い、
彼女達の足下──、一階の食堂にゲンキ達が帰って来て、全ての準備が整った。
「さあ、いってらっしゃい」
 風舞のその言葉に押されるようにして、部屋を出て行くラーシャ。
 着物で下りてきた彼女を見て、興奮気味に騒ぎ出す常連達。

 今から数時間後に、二人の男女の運命が決まる──



 ──そして、その運命の鍵の一つを握る青年が、今セブンスムーンどころか、惑星全域
を覆うかのような巨大結界の中に身を置いていた。ゲンキの盟友・シウァル=ラヴァーズ
である。
「やれやれ全く……キリがない」
 立ちつくす彼が踏みつけているのは、傷付き倒れた異形の者。そして、たった今結界の
中に侵入してきた一団は、それとはまた別の異形の集団。時には「悪魔」と、そして時に
は「神」と呼ばれる強大な力の持ち主達。
 その異形の者達の狙いは一つ。この結界の主・大魔王ゲルニカ。だが、彼は今ここには
いない。゛極めて重要な用事゛のために、今回ばかりはここに来られない。
「だから……なぁ」
 噛んでいた噛みタバコを吐き捨てて、シウァルは長剣を掲げた。既にそれは、多色の血
で塗り固められていて、不気味な様相を呈している。だが、それでもまだ壊れることはな
いだろうと思えた。後、千や二千の敵を斬ったとしても、ビクともするまい。
「まぁ……万を越えると辛いだろうが、なんとかしてやるよ、俺が」
 してやるよ……というが本心ではない。これは、彼自身望んだことだったのだ。なにせ、
これくらい乗り切れなくては、一生かかっても追いつけそうにないのだから。だから、こ
のくらいのことはしなくてはならない。したかった。
「だが、こいつぁキツイな……」
 剣はまだまだ斬れるだろう。鎧もしばらく保つだろう。だが、自身の肉体が悲鳴を上げ
ている。こんなことは数年ぶりだった。
「不死身の肉体……か。今はあんたがうらやましいよ」
 悪態をつくだけの余裕があるのが、まだしも救いと言えた。



 −3−


「あいたたたた、押さないで押さないで」
「そんなこと言っても、集合時間に遅れるぞ」
「そうです、急ぎましょう」
 と、ゲンキと眠兎の二人がかりで背中を押され、ラーシャは店の外に出た。中からは、
常連達のあたたかい励ましと冷やかしの声が半々で聞こえて来る。
「あっ、はーい頑張ってきます!!」
 などと律儀に店内へ返しつつ、彼女が背中を押されながら「さざめゆき」の方へ歩き出
そうとすると、突然キキーッというけたたましい音を立てて、目の前に白いワゴン車が停
車した。丸っこい形状に不似合いなくらい、変に豪奢な装飾が施された、あんまり乗りた
いとは思わない車である。
 その後部座席のドアをスライドさせて、中に乗っていた黒髪をショートカットにした女
性が手をヒラヒラさせた。満面の笑みと共に、ラーシャに……というか、彼女の後ろにい
るゲンキに声をかける。
「お車の用意を致しましたわ。これで、会場へ向かいましょう?」
「おや、準備がいいですね可奈さん」
 ニヤリと、本人にしては相手のそれと違わぬつもりの笑みを返して、ゲンキが答える。
そうして彼と眠兎はラーシャを車に押しこめ、自分達も乗りこむと、スライド式のドアを
勢いよく閉めた。同時にワゴン車は走り出す。
「あ、あるいていかないんですか?」
 あまり乗りたくないと思っていた車に、あれよあれよという間に乗せられてしまってい
たラーシャが問う。その言葉に可奈は首を傾げ、ゲンキはニヤリと笑い、眠兎は彼女の着
ているニバン着物の裾あたりを指差した。
「その格好でですか?」
「あっ」
 言われてようやく気が付く。たしかに、この着物姿で街中を歩くのは少し変だし、何よ
りこれからお見合いだというのに、普通に歩いて行って着物が汚れてしまったりしたらマ
ズイ。それに気付いて、可奈が車を用意してくれたのだろう。
「ありがとうございます、可奈さん」
 それと、変な車だなんて思ってごめんなさい。そう心の中で付け加えて言うと、可奈は
頭を左右に振り、前の運転席を指し示した。
「お礼なら、彼に言ってあげて下さいまし。相模、ご挨拶を」
 と、その言葉に応えて、運転席に座ってハンドルを握っている三十代半ばくらいの男が
少しだけ顔をこちらに向けた。細面で理性的な顔立ちをした、黒縁眼鏡の似合う男性だ。
影のような黒いスーツが落ちついた印象を与える。
「お久しぶりでございます、ラーシャ様」
「え? あ……はい……え〜と……?」
 間抜けな返事を返しつつ、「誰だったろう?」と自問するラーシャ。顔にも名前にも何
となく憶えはあるのだが、どうもハッキリとは思い出せない。すると、そんな彼女の疑問
を察したゲンキ達が説明してくれた。
「憶えてないか、十二年以上前だもんな」
「相模とも、何度か顔を合わせてはいらしたようですけれど」
「可奈さんの家の執事さんですよ」
「相模 亮真です」
 最後に本人の口からフルネームを聞いて、ようやくラーシャの脳裏を掠める姿があった。
それでもまだおぼろげではあったが、確かに──十二年前のじゅらい亭、ゲンキ目当てで
やって来た可奈の後ろに、いつも物静かに控える青年の姿があった。
 当時、自分の方が色々忙しかったせいか、二度三度は互いの姿を見かけたかな……とい
う程度の知り合いでしかないが、たしかに憶えている。流れた歳月の分だけちゃんと歳は
とっているようだが、間違いなく運転席にいる男性は、あの時の青年だ。
「ああっ、思い出しました!!」
 パンと手の平を打ち合わせて、明るい陽射しを思わせる笑顔を彼の方に向けながら、ラ
ーシャは言った。
「いつも、可奈さんと一緒にじゅ亭へ来てた方ですよね?」
「そうそう、それで今日のお前のお見合い相手な」
 照れたように微笑む相模の代わりに、ゲンキが答えた。「そうなんですかぁ」とコクコ
ク頷きながら、ついつい浮かせていた腰を座席に下ろして、彼女はホッと一息つく。相手
のことをちゃんと思い出せて、安心したようだ。
 が、しばしの間を置いて立ち上がり、叫ぶ。
「ええっ!? ぃたっ?!」
 後半は、天井に頭をぶつけたせいである。



 「さざめゆき」に到着し、ゲンキ、可奈、眠兎に続いて、ラーシャがぶつけた頭を押さ
えつつ車を下りると、店の前では三人の青年が待ち構えていた。その中の一人がカリオン
だったので、どうやら彼等が他の見合い相手らしいと気付く。
 その見知らぬ二人の内一人は、昨日ゲンキに見せられた過去の映像の中で、真っ先に彼
女の写真に気付き、「美人」と評してくれた青年。青紫色の髪と赤紫色の目をしていて、
色白の肌。タキシードなど着ているが、慣れてないらしく、しきりに襟の辺りをいじって
いる。自分の身長より大きな長剣を背負っていて、こちらと目が合うとニパッと人懐っこ
く笑ってみせた。牙のように長い珍しい犬歯の持ち主である。
 もう一人は、先に述べた青年の持つ長大な剣と比べても、見劣りしないほどの長身を誇
る(本当に誇っているかは知らないが)黒人青年。おそらく、その背丈は二メートルを越
えているだろう。白黒メッシュの髪を無数の細かな三つ編みにしていて、少しゴーゴンに
似ている。瞳はミラーシェードのせいで隠れているが、なんとなくこちらも人懐っこい性
格をしているような感じがした。服は……カラフルなアロハシャツに、白いハーフパンツ
である。あまりニバン旅館の門前には似合っていない。
 そんな彼等の横に相模が立ち、五人の見合い相手の内、四人までが揃う。だが、最後の
一人の姿がどこにも無い。
「あれ? 一人足りませんね?」
 同じことに気付いた眠兎が、頭上に疑問符を浮かべる。他の面々も周囲を見回し、それ
らしき姿を探しているが、やはり見つからないようだ。それ以前に、最後の一人が誰なの
か知っているのだろうか?
「Gさん……あと一人って誰なんですか?」
「ん? それはだね……」
 ラーシャに訊ねられて、彼女の見合い相手を選定した張本人・ゲンキがクイッと自分の
アゴを持ち上げる。彼の目線が向く先にその場の全員が視線を集中させると、いつのまに
現れていたのか、すぐ近くの壁に背中を預けてよりかかる道化の姿があった。
「ああっ!?」
 驚愕しながらも、その男に向けてビシィッと指先を突きつけるラーシャ。昨日いきなり
彼女を拉致してセブンスムーンまで連れて来た、あの男ではないか。ゲンキの部下で、た
しか名前はベイシック。
「よろしくおねがいしますよ、ラーシャ殿」
「よ、よろしくって……何であなたが!?」
 ピエロメイクで爽やかな笑みを浮かべたベイシックに、くってかかる。すると、ゲンキ
が間に入り、「まあまあ」とラーシャをなだめた。
「こないだの事は、別にベイシックさんに悪気があったわけじゃないんだから」
「多分に悪気を含んでいたのは、長の方でしたな」
 言葉尻をとらえて笑うベイシック。ゲンキのことを「長」と呼びながら、あまり敬意を
払ってはいないようだ。「聖母」魔族には多いタイプである。
「まあ……たしかにそうですけど」
 と、突然意気消沈して引き下がるラーシャ。「おや?」と誰かが呟いたが、誰だかは分
からない。そうこうしている内に「さざめゆき」の門が開き、出迎えの仲居がやって来た。
「それでは、御案内いたします」
 仲居──ミフィオではない──が門の奥を指し示し、眠兎が頷くのを見て、そちらへと
進んで行く。黒人青年が真っ先にその後に着いて行き、剣を背負った青年がそれに続く。
素早くベイシックもならい、眠兎も歩き出した。可奈がラーシャの背中を押し、彼女の後
ろには相模が控えている。
「さあ、行くぞ」
 ニヤリと笑ったゲンキが、同じように背中を軽く押してくれる。それでようやく歩き出
したラーシャが門をくぐると、カリオンが一行の最後尾についた。どういうわけか、彼は
自分でも気付かぬうちに、この位置につくことが多い。
 そんな彼が、並んで歩くゲンキとラーシャの背中を見つめて、ポツリと呟く。
「仲の良い兄妹だなぁ……」
 そう、見えたらしい。




第四章「開幕」

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 −1−


 広いお座敷に通されてから、一分と経たない内に、それはやって来た。
「説明しましょう」
 突然現れた金髪のお姉さんが、そう言う。
 何故か妙に嬉しげだ。
「申し遅れましたが、私は当旅館に勤務する医者兼説明お姉さんの降三途 稲子です」
「なんかどうしても説明役を買って出たいというから任せました」
 ちょっと疲れた顔のミフィオがフォローする。
 途端、稲子さんが渋い顔をした。
「説明が減ってしまいますからフォローは結構ですよ」
「はいはい」
 もう何かを言う気力も湧かないのか、おとなしく後ろに下がるミフィオ。
 稲子さんは満足気に頷き、さっそく「説明」とやらを始めた。
「今回のお見合いのルールはセブンスムーンお見合い推進協会の設定した公式ルールに基
づくもので、詳しくは以下の通りです。」
 と言いつつ彼女が背後に視線を向けると、そこにはホワイトボードがすえつけられ、お
見合い三か条とも言える文字が並んでいた。

【一.お見合い相手との談話には必ず一時間以上、時間を設定すること。
 二.極力食事などの休憩を挟み、後にもう一度談話の機会を設けること。
 三.結論を出す為に三日の猶予を設け、それを過ぎたら再検討に入ること。】

「説明します。一、二についてですが、今回は男性側が五人いますので、最初の談話だけ
は別々に、それぞれ一時間ずつ。食事の後に今度は全員で一時間。また女性が一人だけと
いうことを配慮し、それぞれの話し合いの間に十五分の小休止を入れさせてもらいます」
 そこで一旦言葉を切り、何か質問はないかと目の前のじゅらい亭常連ズを見回す稲子さ
ん。すると、陽気な黒人青年オルメガが手を挙げていた。
「はい、そこのドレッドヘアの方」
「一日で全員とお見合いするのは、無理じゃありませんか?」
 外国人とは思えない流暢な発音で発せられた意見は、たしかにもっともなものだった。
五人もお見合い相手がいるのに、何もわざわざ一日でカタをつけなくたっていいじゃない
か。彼以外の四人のお見合い相手も深く頷く。

 だが、そうもいかない事情があった。

「それについては私から説明しましょう」
 稲子が嬉々として説明を始めようとした矢先、立ち上がったのは眠兎だった。彼は目の
前から発せられる鬼をも射殺しそうな殺気に満ちた視線をものともせず、勇敢にも言葉を
続けた。
「今回この会場を借りるにあたっては、一銭のお金も払ってません」
「えっ?」
「女将さんの全くのご好意によって貸して頂いてるのです」
 ゲンキと「さざめゆき」関係者以外のキョトンとしている一同を見回して、眠兎は嘆息
した。
「噂に名高き」
「悪名高き」
 ミフィオが付け足す。が、それを無視して、さらに続ける。
「我らじゅらい亭常連を迎え入れてくれる店は、じゅらい亭の他にはここしか無かったの
です。しかも女将さんのご好意によって無料。あんまり長引かせると、この店に多大な迷
惑をかけてしまいかねません」
「というわけで、多少強引ながら今日一日で全員のお見合いを済ませてしまおうと考えた
わけです」
 ゲンキが締めて、とりあえず納得顔になる常連ズ+アルファ。基本的に人が良い人物揃
いなので、この件に関してはこれ以上誰も何も言わないことに決めたようだ。と──
「次の説明に移ってもよろしいかしら?」
 稲子が笑顔で訊ねた。笑ってはいるが、額には怒りマーク。慌てて眠兎は座り直し、他
の者達も居住まいを正して、おとなしく次なる説明を待つ。なんとなく、これ以上彼女の
機嫌を損ねるのは危険だとその場の誰もが悟っていた。
 そうしてそれから三十分ほど、嬉々としてお見合いに関する諸々の注意事項などを述べ
た後、謎の説明お姉さんこと降三途 稲子は満足気に部屋を出て行った。ようやく奇妙な
重圧から解放された常連ズがホッとため息を吐き出していると、残っていたミフィオがポ
ツリと呟く。
「また何かしらの疑問や謎が生まれた時……稲子はまた現れる」
 ゴクリ……全員喉をならして黙り込んだ。



 −2−


 なにはともあれ、気を取り直して、お見合いが開始された。男五人はゲンキが用意して
いたクジを引き、ラーシャとの談話の順番を決める。それらを眺めていたラーシャは、ふ
と非常に不公平な気持ちになった。
「私だけ五時間……」
 それぞれ一時間ずつの談話を五回も繰り返さなければならないと思うと、少しばかり憂
鬱な気分になる。元々彼女のカース・ドラゴンという種は気の短い性質ではないけれど、
特別に気長というわけでもない。お見合いなどやったことがないので、果たしてどんな話
をするものなのかは知らないが、同じような会話が繰り返されるのだとしたら、あまり嬉
しいことではない。

(まあ、その心配は無さそうだけど)

 幸いというべきか、ゲンキと眠兎が選んだというお見合い相手五人は、見た目からして
もそれぞれ全く異なる個性を持った者達のようだった。スポーツ選手に執事に道化師。い
かにも冒険者らしい格好をしている二人も、性格は全く違って見える。
 この中の誰かと結婚している自分というのはまだ想像がつかない。そもそも相手が誰で
あろうと断るつもりなのだから、想像のしようもない。とりあえず退屈したりはしそうに
ないと、ちょっぴりホッとしながらラーシャは視線を彼等から外した。
「ん?」
 逸れた視線の先にいたゲンキが不思議そうに首をかしげる。目が合ったことで何となく
バツが悪くなり、さらに視線を動かすと今度は可奈と目が合った。
「はい?」
「い、いえ」
 なんでもないと手を振って、愛想笑いしながら立ち上がるラーシャ。その突然の行為に
周囲の視線が一気に集まり、慌てて座り直す彼女。
 赤い顔で縮んでいく姿をゲンキは心底不思議だという表情で眺めた。
「なにしてるんでしょうね、あいつは?」
「緊張なさってるのですわ。数時間後に運命が決まるかもしれないのですもの」
「ふむ、なるほど。そんなもんですか」
 可奈の言葉に、頷くゲンキ。
 そんな彼に、可奈はニッコリと妖しく微笑んで見せた。
「運命の殿方に巡り合えるかどうかが、女の幸せを決めるのですわ」
「うーむ、深いのですねぇ」
 またまた頷くゲンキ。こいつ絶対気付いてねぇぜってな態度に、可奈は今日も泣いた。



 そんなこんなの間に男性陣の間ではクジ引きに次ぐクジ引き(どうしてか何度も行われ
た)によって順番が決められ、いよいよ、お見合いの開始の時となった。
「はっはっはっ、それじゃあな諸君!!」
 と、一番をゲットしたアレースが意気揚揚とラーシャとの談話の為に用意された小部屋
に向かって歩いて行く。悔しげに見送るのは三番手となったオルメガだけ。後の三人は、
マイペースに順番待ちの間、いかにして暇を潰すかなどを考え始める。なんたって一番遅
いカリオンなんかには、四時間待たないと順番が回ってこないのだ。
「とりあえず、ひなたぼっこかな」
 午後のポカポカ陽気の中で、カリオンは数少ない趣味の一つを満喫することにした。



 アレースが入室してきたのを見て、ラーシャ達を小部屋まで案内して来てくれたミフィ
オが立ち上がった。彼女は部屋の外まで出て障子戸を閉めながら、ラーシャに向かって笑
顔を向ける。
「それじゃあ、頑張って」
「ありがとうございます」
 励まされたラーシャはそう答えて、退室する彼女を見送った。友達になれそうな人だと
考えながら、ひとまずそのことは頭の端に追いやり、姿勢を正す。
 正座をして待つ彼女の前には、大きな長方形の卓。上には喉を潤すための幾つかの茶器
と、先ほどそれらを使ってミフィオが淹れてくれた甘茶が二つ。
「あ、座っていいですか」
「はい、どうぞ」
 訊ねられて、すすめた目の前の席にアレース青年が腰を下ろす。
 二人の他には室内に人はいない。セブンスムーン式のお見合いでは、最初の自己紹介と
談話の際には、当人達以外の人間が立ち入らないことが一般的らしい。仲人達が勝手に話
を先に進めてしまったりしないように……ということらしいが。
 男女が二人っきりで一つの部屋に。そんな慣れない状況に、ちょっと不安になってラー
シャは目の前の青年を改めて見つめた。正確には、彼の身体から発せられている「力」の
強さを確かめた。

(やっぱり、この人も強い……)

 じゅらい亭常連が尋常でない者達の集まりだということは無論その一人であるラーシャ
自身も認識していたが、それでも久しぶりにそういった相手を前にすると、やはり驚かさ
れる。このアレースという青年と自分が戦ったとして、果たして勝てるかどうか。
 そんなことを考えてから、彼女はブンブンと頭を振った。まさか、お見合いの場で相手
を襲うような人間をG青年や眠兎が選ぶはずもあるまい。それ以前に、そんな人間がじゅ
らい亭常連の中にいるとも思えない。
 実際この青紫色の髪と赤紫の瞳を有する、野性的な顔立ちの青年は、とても爽やかな好
青年だった。彼はニッと八重歯の見える笑顔を浮かべながら、ラーシャの心配を打ち消す
説明をしてくれた。
「大丈夫ッスよ。俺はこう見えても結構硬派な『ナンパ師』だし、外にゲンちゃんや眠兎
さんがいるような場所で、命知らずな行動に出たりはしませんから」
 言われてラーシャは気が付いた。障子戸の向こう。ほんの少しばかり開いた隙間から覗
き込む二人分の目に。それらは、こちらと目が合うなりドタバタと騒がしく暴れて、廊下
の向こうへと逃げて行く。
 そして、しばらくすると隣の部屋に二人分の気配が現れた。よほどさっきので慌てたの
か、気配を隠すのも忘れているので、聞き耳を立てているのが、こちら側からでも良く分
かる。ついついラーシャは笑いをこらえきれず、吹き出した。
「プッ」
 ゲンキはともかく、眠兎まで。ラーシャがこの街にいない間の十二年で、彼も相当変化
したらしい。おかしくておかしくて、このまま大笑いしちゃおうかと彼女は一瞬考えたの
だが、アレースの期待するような眼差しに気付いて、ゴホンと咳払い。
「え、えーと……それじゃあ始めましょうか」
「そうですね」
 つとめて事務的に言ったつもりのラーシャの言葉に、実に楽しそうに頷くアレース。か
くして、じゅらい亭史上最大規模の「お見合い」の幕が、切って落とされたのだった。次
回に続く。




第五章「剣士 道化師」

 −1−

 続いた。
「あらためて自己紹介します」
 と、一度頭を下げてから彼、最初のお見合い相手は名乗った。
「アレース=A=フィールドビレッジ。じゅらい亭常連。職業は、一応剣士です」
 そんな言葉通り、彼はこんな時ですら、いつも背負っている大剣を手元に置いていた。
 その大剣を指して人の好い笑顔を浮かべながら、アレースは続ける。
「そして、こっちが相棒のアビです」
『こらこら、略すなよ』
 いきなり、大剣から声が発せられた。ちょっと驚いたラーシャに対して、彼(?)は、
アレースのものとそっくりな自己紹介を始める。
『アビスブレイド。じゅらい亭常連アレースの相棒。職業は、一応魔剣です』
「そうなんですか、私はラーシャ。教師をしています」
 ニッコリと微笑みながら名乗りを返し、ラーシャはペコリと丁寧にお辞儀した。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
『よろしく』
 同じように頭を下げるアレースと、ラーシャには頭がどこなのか判断できないけれど、
多分やっぱり頭を下げていそうなアビスブレイド略して゛アビ゛。
 そんな彼等にラーシャは問うた。
「それで、どちらとお見合いをするんですか?」
 アレースがずっこけた。
 アビが爆笑した。
 復活したアレースが即座に手を挙げる。
「はーい、俺です!!」
「あっ、やっぱり」
 頷くラーシャ。彼女は照れ笑いを浮かべながら、
「どちらかというと、アレースさんだろうなぁとは思ったんですよ」
 などと言った。どちらも何も、魔剣とお見合いなんて話はないでしょう? そう言いか
けるアレースだったが、ラーシャの顔に冗談を言ったという様子は無い。心底マジメに、
お見合いするのがアレースなのかアビなのか疑問に感じていたらしく、それに気付いた彼
は寸でのところで、ツッコミの言葉を飲み込んだ。
『うーん、なかなか良いボケッぷ(打撲音)』
 危うく危うい言葉を口走りかけたアビを眠らせてからアレースは、すかさず誤魔化しも
兼ねて本題に入る。
「というわけで、ラーシャさん」
「はい」
 姿勢を正し、心持ち緊張した面持ちでこちらの言葉を待つラーシャ。その表情に自分ま
で緊張しながら、アレースはゴクリと喉を鳴らし──
「けっ、結婚してくださいっ!!」
「はやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあいっ!!」

スパーン!!

 ハリセンを携えたゲンキが乱入して来て、アレースの後頭部を一撃した。ビックリした
ラーシャ達の前にさらに眠兎が現れ、ゲンキを羽交い絞めにして連れ出して行く。
「もう少し時間をかけて、シチュエーションを大事にぃ!!」
「ゲンキさん、落ち着きなさいっ!!」
 ジタバタドタバタ。眠兎の手によって連れ出されるゲンキ。再び静寂が戻った室内で、
卓に突っ伏していたアレースがむくりと起き上がり、復活する。
「いたたたたたたっ、ちょっと焦りすぎた」
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。俺って頑丈なのが取り柄ですし」
 そう言って笑うアレースに、つられてホッとした笑みをこぼすラーシャ。
 結局この後、アレースは持ち前の明るさと愛嬌で会話を進め、アビがそれをサポートし
て、ラーシャが笑う。そんな終始明るい雰囲気を保ったまま、二人と一振りの談話は終了
した。



 二人目の相手を見た瞬間、ラーシャは警戒をあらわにして、その男を睨みつけた。
「ベイシック=オズハです」
 道化の化粧を施した顔に、にこやかな笑みを浮かべて入室してくる男。
 ゲンキの部下にして、聖母魔族の魔王の一人。
 ベイシックは、ラーシャの険悪な視線をものともせずに彼女の真正面に座る。
 すかさずラーシャはこないだの文句を言ってやろうとした。しかし──
「先日は御無礼つかまつりました」
 などと言って、ベイシックが深々と頭を下げたものだから、そうもいかない。
「長の命とは言え、強引な真似を致しましたことを、お詫び申し上げます」
「うっ……そ、そう言っていただけるなら……」
 許すのが、大人というものなのだろう。しぶしぶラーシャは引き下がる。
「かたじけない」
 一度頭を上げてから、再び深々と下げるベイシック。
 もしかして、この人はそんなに悪い人じゃないのだろうか? ラーシャは思った。
 そして、これまでは興奮していたりして良く見ていなかった相手の姿を改めて見直す。
 赤白黄色のカラフルな帽子。その下からのぞく少し長い髪は真ん中から金と青に分かれ
ていて、肌は塗っているのか地なのか、とにかく真っ白。その上から道化師風の化粧を施
して、やはり帽子と同じく派手な衣服を身に着けている。
 悪人にはあまり見えない。
 だが、とりあえず常識的な相手でないことは確かだ。ラーシャは確信した。
「何でその格好なんですか?」
 こちらから自己紹介することも忘れて、最初に見た時から気になってしょうがなかった
ことを訊ねる。世の中色んな趣味の人間がいるから、これが普段着だと言われても納得は
出来ただろう。しかし、お見合いの場に道化師の格好をしてきた男の話となると、流石に
聞いたこともない。
 するとベイシックは顔を上げて、不思議そうに首を傾げた。まさに道化師という風に。
「何かおかしいところがありますかな?」
「何かというか……」
 全身おかしいところだらけでしょう──言いかけて、止める。相手の口ぶりからすると
彼にとってはこの格好こそが正装なのだろう。聖母魔族には様々な種族が集まる。どこか
に道化師姿を誇りとしている者達もいるかもしれない。その内の一人がゲンキの部下だと
いう可能性もある。
「いえ、ただ少しだけ珍しいなと思っただけです」
 そう答えたラーシャは大人だった。とっても優しいお姉さんだった。
 でもベイシックはあっさり肩をすくめて笑った。
「はっはっはっ、無論この格好はただの趣味ですとも」
「趣味かいっ」
 醒めた目でツッコミを入れる。
 ベイシックは両目を閉ざしながら、コクコクと感慨深げに頷く。
「うむ、良いタイミングですな」
「感心しないで下さい」
 再びツッコミながら、ふとラーシャは思った。この男、口調といい妙な趣味といい、誰
かを彷彿とさせるような気がする。

(誰だっけ? えーと……怪しい笑い方で、怪しい格好で、中身も怪しい人……)

 真っ先に浮かんできたのは、ラーシャの頭の中で常にトップ3の怪しさを誇る三人。
 その中でも条件に当てはまる者は一人。
「……あの、もしかして」
「ご質問ですかな?」
 こちらの声に、期待の眼差しで応じるベイシック。その瞳の色は黒い。まさかなぁと思
いつつ、ラーシャは訊ねる。
「実は、部下G……ゲンキさんだったりしませんよね?」

 爆笑された。

「うははははははははははははっ、私が長ですかっ!?」
「ち、違います!! ちょっと似てると思っただけですよっ!?」
 慌てて誤魔化そうとするが、もう遅い。ベイシックはその後数分間に渡って延々笑い続
けた後、呼吸困難に陥りかけてようやく止まった。
 そして、ふくれっ面のラーシャに対して、言う。
「はぁはぁ……まあ、あれですな。長と私が似ているのは、仕方無いことです」
「何でですか?」
「長の教育係をご存知ですかな?」
「え?」
 問い返されて、ラーシャは記憶の糸を辿った。たしか、昔じゅらい亭にいた時、一時期
ゲンキの教育係を名乗る女性が来ていたことがあった。クレインに好意を抱いて結構長く
この街に留まることになった彼女の名前は、たしか──
「詩音さんですか?」
「あれは私の姉でして」
 ラーシャはハニワになった。続いてムンクに変わり、最後にアメリカ人と化した。
「リアリィ!?」
「本当ですとも」
 誰も「何で英語がわかるんだ」というツッコミをしてくれる人間がいないので、会話は
そのまま進む。
「まあ、そういうわけで、私と長は似たような育てられ方をした仲なのですよ」
「はあ、なるほど……それで似てるんですね」
「そういうことですな」
 納得顔のラーシャに、笑顔で頷くベイシック。
 そして彼は、なんだかよく分からないことを言った。
「まあ、だからでしょうな。今回この見合いに参加したのは」
「え?」
 唐突すぎて全く理解できなかった。
 疑問符を浮かべるラーシャに、しかしベイシックはそのまま続ける。
「私は私を理解して、側にいてくれる誰かが欲しいのです」
 彼は真顔だった。もしかしたら、これこそ初めて彼が見せる真剣な顔かもしれないと思
うくらい、真剣な表情だった。夜の闇のような二つの双眸に見つめられて、ついついラー
シャは頬を赤らめる。
 ベイシックはそんな相手の反応には気付かずに、自分の過去を語る。
「私は元々純粋な聖母魔族に比べれば遥かに短命な種族の出です。しかし、大昔に起きた
戦争で活躍した功労として、先代大魔王から長い寿命をいただきました」
 それは本当に長い命だった。かれこれ数万年、ベイシックは生きつづけて来た。そして
その間、聖母魔族のために戦い続けてきた。何度も、何度も、何度も。
 辛くはなかった。ベイシックは先代大魔王を敬っていた。当代の大魔王も、同じ「姉」
によって育てられたためか、弟のように親しく思っている。なにより、彼は魔族達の暮ら
す世界の、故郷に良く似た景色が好きだった。
「あの世界を守ることが生き甲斐で、現に私は外敵から聖母魔族の<故郷>を守護すると
いう任を誇りに思っている。だが、それももう終わりに近い」
「終わりに?」
 仕事を引退するのだろうか? ラーシャはその程度に思った。
 しかし、ベイシックはそれ以上のことを容易く口にした。
「あとわずかで、私の寿命は尽きるのでしょう」
「なっ……!?」
「もちろん、わずかといっても、まだ人の一生程度の時間は残されています」
 残り数十年。おそらく百年には満たないだろう。それが彼の残りの命。
 そして、それを感じ取った時、彼は初めてあるものを欲した。
 残りの時間を、誰よりも自分の近くにいて、共に過ごしてくれる相手を。
「どうでしょう」
 ベイシックは、ようやくその一言を発する。
「私の側にいてはくれませんか?」
 ラーシャは、ようやく見つけたそれに値する相手だ。彼女となら、多分今までの人生の
中でも最良の時を過ごせるだろう。ベイシックには、そんな確信があった。
 しかしラーシャは──
「…………時間を下さい」
 まだ、そう答えることしか出来なかった。



 −2−


 二度目の休憩時間。とりあえずラーシャは、前の休憩と同じく部屋の外に出た。
 一時間ぶりの外気が肌に心地良い。空を見ると、青空が少し遠く見えた。
「こっちは秋だなぁ……」
 もうすぐ空はもっと遠くなる。そしたら冬がやって来て、自分は……。
 自分は……どこにいるのだろうか?
「どうした、ぼんやりして?」
「あっ」
 声をかけられて、ようやくラーシャは背後にゲンキがいることに気付いた。
「いつのまに?」
「いや、さっきからここにいたぞ」
「あ、そうなんだ……」
 ぼんやりと呟いてから、なんだか自分はおかしいなと思った。
 そんな彼女にゲンキは眉を寄せて訊ねる。
「本当にどうした? 調子が悪いなら、もう少し休んでても……」
「いいよ」
 答えて、また部屋の中に戻っていくラーシャ。
 いつもと違う相手の対応に少し驚いているゲンキ。
 それに気付いて、ラーシャは障子戸を閉める直前に、笑顔を見せた。
「大丈夫だから、心配しないで」
「そうか……無理するな」
 そんなゲンキの言葉を聞きながら、戸を閉める。
 部屋の中に戻ったラーシャは、静かに停止している室内の空気を嗅ぎ、思い出す。
 立て続けに二人の男性から聞いた求婚の言葉。
 これからさらに三人の男性から、同じ申し出をされるのかもしれない。
 そして……。
「Gさん」
 ベイシックの話を聞いて、思い出したことがあった。
 もしかしたら、彼は……。
「ラーシャさん」
 考えを遮るように外から声がかかった。可奈が、次の相手が来たことを告げる。
 ラーシャは障子戸から離れながら、しばし沈黙を保つ。
「……後で考えよう」
 頭の中を切り替えて、呟く。そして了承の言葉を返すと、三人目の相手が障子戸を開い
て入って来た。




第六章「陽気ナ男 静カナ男」

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 −1−


「ども、ハジメまして♪ マイネームはオルメガですねっ」
 いきなり陽気な調子で挨拶されて、ちょっと対応に戸惑うラーシャ。
 場の空気が瞬時にして一変したため、ちょっとついていけなかった。
 しかし、彼女も伊達にじゅらい亭常連をしていたわけではない。
 すぐさま調子を合わせて、陽気に返す。
「はじめまして、私はラーシャ=アスフェイズで〜すっ♪」
 言ってから、別に「♪」は必要なかったなぁと内心で呟く。
 だが、とりあえずオルメガにはその方が良かったらしい。彼は感激して叫んだ。
「オウ、ノリいいですねぇラーシャさん♪」
「ええ、ノリノリ(爆)ですとも♪」
 つられて、またやってしまった。
 だが、まあ何となくこの青年とは、こうした方が話しやすいようなので、ラーシャは気
にせず続けることにする。
「それで、オルメガさんはどうして私とお見合いをっ?」
「ハハハハ、それはもちろんラーシャさんを気に入ったからネ」
「あはは、それは嬉しいです♪」
 ラーシャは、妙に浮かれた気分になる自分に気付きつつも、なんだかあんまり気になら
なかった。


 などと、そんな会話を外で聞いていた眠兎とゲンキは「どうしたことか」と首を傾げる。
「さっきとエライ違いですね?」
「ううむ、これが世に言う『ロテン系フラセリュ人のサンバデアミーゴ』パワーですね」
「なんですか、それ?」
「説明しましょう」
 勤務医の稲子さんが乱入してきた。
「『ロテン系フラセリュ人のサンバデアミーゴ』パワーとは、ロテン系の人々の体から発
せられる特殊な生命力の波長『サンバプラス』に、通常どの人間も持っている波長『アミ
ーゴマイナス』が引き寄せられることによって起こる特殊な現象よ」
「具体的にはどういうことが起こるんですか?」
 などと眠兎が質問したからもう止まらない。
「説明しましょう。『サンバプラス』と『サンバマイナス』が引き合うことにより、人の
自律神経に変化が起こり……」
「いやまあつまり、ああいう風にみんな陽気になってしまうのですよ」
 と、笑い声の飛び交う室内を指差すゲンキ。次の瞬間──

 痛い音がした。

「ああっ、ゲンキさん……」
 廊下の奥に引きずられていく友の姿に眠兎は涙した。でも助けない。
 家には、彼の帰りを待つ妻と子供達がいるのだった。


 場面は戻って、部屋の中。ラーシャは非常に楽しく過ごしていた。
 まさか彼女はそれがロテン系フラセリュ人の特殊体質によるものだとは知らない。
 ついでにいうと、オルメガ自身も実は知らない。
 ロテン系の人間は大雑把なのだ。いちいちそんなことに興味は示さない。
 では、彼らが興味を示すものは何か?
 オルメガはスポーツ選手。彼らはとてもスポーツが好きだ。
 音楽も好きだ。食べることも好きだ。旅行も好きだ。
 そしてなにより、恋をすることが好きなのだ。
「ボク達の一番好きな言葉は、『ラヴ・アンド・ラヴラヴファイアー』ネー!!」
「あはははははっ、ラヴばっかりですねー!」
「イエス、愛は全てですネ!!」
 と、陽気にラーシャと語り合う彼は、試合中はとっても静かな男だ。
 よくチームメイトからは「お前は二重人格だ」と言われるくらい試合中とそれ以外の時
間の彼は違う。
 でも、どっちも彼の性格だ。彼はどっちの自分も好きだし、それと同じくらい今はラー
シャが好きになっていた。
「ラーシャさん、思った通り話しやすいネ。それにキレイだし、優しいネ。ボク、アナタ
みたいなヒトを探してたですヨ♪」
「あはははははっ、またまたぁ。お世辞ばっかり言っちゃって♪」
「オウ、おセジ違うネ。ボク本気ネ」
 首をフリフリ、オルメガは言う。そして、いきなり真顔になった。
 その表情は、まさしく試合中の彼のものだ。
「ボクたちロテン系の人間は、たくさん恋をするけれど、愛するのは生涯一人だけネ。そ
れロテン系としての誇り。ボクは、もうラーシャさんを愛すると決めたネ」
 それまでの陽気さからは想像も出来ない真剣さで言って、彼は続けた。
「ラーシャさん、ボクと結婚して下さい」
「ううっ……」
 予想はしていたことだが、また求婚されてしまった。言葉に詰まるラーシャ。たしかに
オルメガは陽気で楽しい人だし、話している限りは悪い相手ではなさそうだ。だが、生涯
を供にする相手として、良いのかどうか……。

(それに……)

 やっぱり、まだ彼女には踏ん切りがつかない。受けるにしても、断るにしても。記憶の
中に鮮明に残された「彼」の姿に戸惑いを覚える。
「……ありがとう」
 そう答えてから、結局またラーシャは考える時間をくれるよう願った。そうしなくても
まだ結論を出す必要がないことは知っている。でも、ここまで言ってもらって、何も答え
ないのは失礼な気がしたのだ。
「もちろん待ちますネ。それじゃ、愛してますラーシャさん♪」
 そう言って、終了時間よりちょっと早く退室していくオルメガ。
 後に残されたラーシャは、陽気に喋り続けた反動もあってか、深く深く嘆息した。



 −2−


 ラーシャの休憩時間。十五分の休憩を入れて、また次の見合いが始まる。その前に確か
めたいことがあって、ゲンキは一人で廊下を歩いていた。
「……」
 使われてない無人の部屋に入った彼は、いつもかけているサングラスを外す。
 すると、その左目だけが突然変化した。黒い瞳孔を持つ眼球から、白金色の光球へと。
 その目を使って、四方を見回す。そして、その動きがある一点で止まった。
「苦戦してるな……」
 奇妙な左目には、遥か彼方に張られた結界と、その内部の様子が映し出されている。
 盟友シウァル=ラヴァーズと、この世界に攻め入ろうとする者達との戦い。
「さて……」
 今だけでも手助けするべきか。少し悩んで、ゲンキは頭を振った。
 当人が望んでいないのだから、やめておいた方がいいだろう。
 それに彼なら、なんとかやってのけるはずだ。
「そろそろ戻るか」
 左目で見通してみると、ラーシャが休憩を終えて小部屋に戻ったところだった。
 どうやら、次の見合いが始まる時間らしい。
 ゲンキは部屋から出るため障子戸に手をかけた。しかし、その手が途中で止まる。
「……」
 彼は無言で気配を消した。そのままそろりそろりと後退する。
 サングラスをかけ直した彼の目には、まだその姿が映っていた。
 旅館の奥から歩いてくる姿。
 般若だ。
「顔文字『もがー』」
 ワケのわからないことを言った後、備え付けの押入れに隠れる。ここなら大丈夫。
 そう思った途端、部屋の障子戸が開く音がした。
 バカな、気配は消したはずだ。常人がこの場所に気付けるはずがない。
 いや、きっとただの偶然だ。そう考えつつも、布団を隠れ蓑にしようとした時──
「説明しましょう」
 そんな声と共に、足音が押入れの前で止まった。ゾッとするような沈黙が流れる。
「さっきあなたの体には発信機を取り付けました」
「はっ!?」
 慌てて自分の体を見下ろすが、もう遅い。

ガラッ

 押入れの戸が開かれた。目の前に稲子が立っていた。般若のような笑顔を浮かべて。
「来なさい」
「ひああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 再びズルズルと廊下の奥に引きずられていくゲンキ。悲痛な叫びが木霊する。
 この日この時の出来事は、後々この旅館にまつわる怪談話の一つとして、長く後の世に
語り継がれることとなる。めでたしめでたし。



 −3−


「あれ?」
「どうかしましたか?」
「いえ、悲痛な叫びが聞えたような……?」
「叫び声でございますか?」
 ラーシャの言葉に怪訝そうに眉をひそめて、相模は耳を済ませた。
 しかし、何も聞えない。
「気のせいでは?」
「気のせいですね」
 あっさり頷いて、ラーシャは目の前の男を見た。
 外見的には、多分今回の相手で最高齢の男だ。
 実年齢ではオルメガより上というだけだが、それでも四十近い。
 無論ラーシャよりも随分年上だ。
「おっと、そろそろですね」
 そう言って、きっかり一番美味しい時間を計り、お茶を入れてくれる大人だ。
 几帳面な大人だ。職業も執事だ。

(何でこんな人が、私とお見合いする気になったんだろう?)

 ラーシャはとても不思議に思った。
 心底から不思議だった。
 そんなこちらの心情を見透かすように、相模 亮真は口を開いた。
「実を言うと、今回こうして私が参加することは、私自身の意志ではありませんでした」
「ええっ? どういうことですか?」
 自分の意志でなければ、誰の意志でここにいるというのだろう?
 ラーシャの問いかけに、相模は苦笑ながら答える。
「可奈様です」
「可奈さんですか」
 納得できた。主人にお見合いを薦められては、断ることも出来ないだろう。
 しかし、ラーシャは少しばかり傷ついた。
 そんなイヤイヤお見合いするくらいなら、最初から断って欲しかった。
 気分を害した彼女に、だが相模はこう続けた。
「──しかし、実際にお会いして、間違いだったと気付きました」
 いつも通りの固い顔。ある意味とてもマジメな顔で、言う。
「こうして直にお話する貴方は、たしかに魅力的な女性だ。主とは言え、他人に薦められ
た相手などと……そう思っていましたが、確かめもせずに失礼な話でした」
 そして、頭を下げる。
 相模の紳士的な態度に、ラーシャは申し訳なくなった。
 良く考えたら、イヤイヤお見合いに臨んでいたのは自分だって同じだったのだ。つまり、
自分自身、彼や他の四人の相手に失礼なことをしていたということになる。
「すいません」
 ラーシャも頭を下げた。相模が驚く。
「どうされました?」
「私も、今日はGさんに言われてイヤイヤだったんです」
 正直にラーシャは告白した。本当はお見合いなんかしたくなかった。けれどG青年の言
葉に引っ掛けられて、仕方なくお見合いだけはして、全部断るつもりでいたのだと。
 すると相模は、しばらくの間、無言になった。
 怒ったのだろうか? 怖くなったが、ラーシャは頭を上げない。他の四人もそうだが、
まずはこの目の前の男性に許してもらわなければ。
 しばらくして、相模が口を開く。
「頭を上げて」
「はい……」
 おずおずと言われた通り、頭を上げるラーシャ。目の前の相模の顔は……怒ってはいな
かった。少なくとも、表情はいつも通りの無表情。怒っても見えない代わりに、許してく
れたのかも分からない。緊張感が張り詰める。
 だが、相模は予想外のことを言った。
「安心しました」
「へっ?」
 びっくりするラーシャの前で相模は笑っていた。
 今までの三人と比べれば、それが本当に笑顔なのかも分からないような、小さな微笑。
 口の端をほんの少しだけ持ち上げて、目許を細める。おそらく、じゅらい亭の誰も見た
ことが無い安堵の表情で、言葉を続ける。
「それだけ正直な心をお持ちなら、大丈夫でしょう」
「正直……ですか?」
「ええ」
 満足気に頷き、彼は席を立つ。
 そして困惑するラーシャに背中を向けながら、言った。
「結婚とは一生の大事。その相手を選ぶのに、慎重になることは必要です……ですが」
 ですが……どこか懐かしむような口調でそう呟き、続ける。
「慎重になるあまり、自分の気持ちを裏切ってはいけません」
 そして障子戸に手をかける相模の姿にラーシャは気付いた。彼が何故そう言うのかに。
「経験者からの忠告ですよ」
 最後に少しだけ振り返って、そう言い残し、部屋を出て行く相模。
 彼は、多分……誰かを失ったのだ。自分自身を裏切ったが為に。
 そして、そうなるなと伝えてくれたのだ。ラーシャに。
「……私に?」
 何故自分にそれを伝えてくれたのか? ラーシャには、分からなかった。




第七章「世界ヨリモ誰ヨリモ」

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 −1−


 体を揺すろうとする手が伸びてくるのに気がつき、カリオンは目覚めた。
「うわっ」
 ミフィオが飛びのく。起こす前にこちらが目覚めてしまったから、驚いたようだ。
「あ、すいません」
「え、なにが?」
 不思議そうに眉を寄せるミフィオ。そうか、カリオンは気が付く。
 普通は、近付いてくる人間の気配を察知して、目を覚ましたりはしないんだ。
 だから、そんなことで謝られても、相手には何のことだか分からない。
「いえ、なんでもありません」
 カリオンが笑顔を向けると、ミフィオは怪訝そうに首を傾げた。
 また何か間違ったかな? 考え始めた途端、腕を彼女に引っ張られる。
「それより、あんたの番よ」
「えっ、僕の番?」
 なんのことだったっけ? 記憶を探るのは一瞬の間だけで、すぐに思い出せた。
「うわっ、そうだった!」
 お見合いの真っ最中だということを忘れて、ついつい熟睡してしまっていた。
 慌てて身支度を整えるカリオン。眠兎の妻・みのりが用意してくれた真っ白な新品の服
に、ちょっとシワが寄ってしまっている。
「あああ、ごめんっみのりちゃん」
「なに言ってんの?」
 手でこすってシワを伸ばそうとするカリオンを、呆れた顔で引っ張っていくミフィオ。
 内心、こいつの奥さんになる女は大変だろうとか考えている。
 そして、その奥さんになるかもしれない女の待つ部屋の前へと男を連れて行く。
 そこには、眠兎が黙って立っていた。彼はこちらに気付いて、視線を向ける。
「カリオン」
「眠兎、どうしたんだい?」
「どうしたじゃないだろ」
 苦笑しながら近付いてきて、眠兎はカリオンの頭の寝グセを直してやった。
 そして、なんだか……なんともいえない表情で、励ます。
「がんばれ」
「うん、ありがとう」
 応えると、彼はその表情のまま去っていった。カリオンは首を傾げる。
「なんか嬉し泣きしてるような顔だったね」
「その通りでしょうよ」
 ハァ〜と深く嘆息して、ミフィオはカリオンの背中を押す。
「ま、がんばんなさい」
「うん、ありがとう」
 またさっきと同じように応えて、カリオンは部屋の中に押し込まれた。
 背後で障子戸が静かに閉ざされる。
 瞬間、カリオンは硬直してしまった。
「あっ……」
 部屋の真ん中に配置された座卓。その奥についた女性が、そんな声を出す。
 びっくりしたような、どこか安心したような声。
 数時間ぶりに見る、ラーシャ=アスフェイズがそこにいた──



 果たして、たった数時間見ていなかっただけで、こんな気分になるものなのか。
 ラーシャの前に座ったカリオンの、それが感想だった。
 ドキドキする。まともに相手の顔を見られない。声を出すのも躊躇われる。
 参ったなぁと、彼は胸中でのみ言葉にした。
 こんな気持ちになるのは久しぶりすぎて、どうすればいいのか忘れている。
 とりあえず深呼吸して落ち着こう。彼は深く息を吸い込んだ。
 そして、ふと考える。
 自分は今、ラーシャと同じ空気を吸っているのだなぁと。
 結果──
「げほっげほっ!!」
「だ、大丈夫ですか?」
 咳き込んで、心配されてしまう。馬鹿な考えに自分でむせてしまったのだ。
「えとっ、お医者さんを呼びましょうか?」
「だ、大丈夫……です」
 なんとか呼吸を整え、稲子を呼びに行こうとする彼女を止める。
 ラーシャは心配そうだったが、本人が言うならと、一応座り直してくれた。
 そんな彼女に見守られながら、カリオンは海より深く反省する。
 危うく、自滅してお見合いを中止にしてしまうところだった。
「危なかった……」
 そう呟くと、
「病気なんですか?」
 誤解された。慌ててカリオンは否定する。
「いえもう全然健康体です。すいません、ちょっとした手違いです」
「はぁ……?」
 なんだか良く分からないといった顔で首を傾げるラーシャ。仕方ない、カリオン自身も
今のは良く分からなかった。
「ともかく、改めて名乗らせていただきます。カリオン・ザ・ホワイトナイトです」
「ラーシャ=アスフェイズです。種族はカース・ドラゴンです」
 こちらの自己紹介に応じて自らも名乗り、頭を下げるラーシャ。
 その内容に、カリオンは驚いた。
「ドラゴン? ラーシャさんもドラゴンなんですか?」
「えっ? 私"も"……?」
 疑問符を浮かべる彼女の表情に、カリオンは自分の素性を明かしてないことに気付いた。
 遅ればせながら、己の正体を明かす。
「僕もドラゴンなんです。種族は『青き瞳の白き竜』です」
「えっ、じゃあホワイトドラゴン……」
「はい、そうです」
 驚いたのか、無表情になるラーシャとは対照的に、カリオンは嬉しくて笑顔になった。
 相手も自分と同じドラゴン族だと知って、親近感が増したのだ。
 カース・ドラゴンなる種族は実を言うと知らなかったが、ドラゴンには違いない。
「そう……ドラゴン……ですか」
 おや? カリオンは首を傾げる。てっきりラーシャも自分と同じで親近感など抱いてく
れたのではないかと思ったのに、どうにも表情が暗い。もしかして、彼女はドラゴン嫌い
(自身もドラゴンだが)だったりするのだろうか? 不安な想像が脳裏をよぎる。
 しかし、そんなこちらの不安を消し飛ばすように、ラーシャは次の瞬間、明るい笑顔を
浮かべてくれた。
「奇遇ですね、こんなところでドラゴン同士がお見合いだなんて♪」
「え? あ、ははは。そうですねっ」
 いきなり調子が変わったのでちょっと戸惑いながらも、やはり笑顔で応じるカリオン。
 元々笑顔の似合う二人だ。場の空気は一気に和んだ。
「ははは、そうなんですよ、じゅらいさんにはお世話になってて」
「私もですよ。たとえば私が幻希様のおつかいでフラムスに行った時なんか……」
 と、共通の話題である「じゅらい亭」のことを中心に会話を進めていく二人。
 昔行った冒険のこと。常連達のこと。
 それらを介して、少しずつ自分達のことを互いに伝えて行く。
「そうなんです、私はそれで幻希様達について行くことにしたんです」
「へええっ、そうなんですか、僕は」
 と、とにかく色んなことを話した。セブンスムーンに来た時のこと。つい最近起こった
こと。眠兎はどうだとか、ゲンキはどうだとか、その他にも色々。
 そのうち、二人の話題はだんだん常連達の今と昔の変わりように移って行った。昔はい
たのに、最近は見なくなった常連や。昔と立場が変わった常連。
 そして──
「そういえば、何人か結婚したみたいですね」
 そのカリオンの発言がキッカケで、突然会話は停止してしまった。
「あ……」
「……」
 ラーシャが顔を赤くして、それとなく視線を逸らす。カリオンも同様。
 片方が『不用意な発言だったなあ……』と考えているところだけが違う。
 気まずい沈黙が、室内に訪れた。
 その沈黙を先に破ったのは、カリオンだった。
 彼はしばらく何かを考え込んだ後、おもむろに顔を上げて、ラーシャに決意の眼差しを
向ける。
「……ラーシャさん」
「……はい」
 こころなし、さっきまでとは違う、暗い表情で顔を上げるラーシャ。
 しかし、構わずカリオンは言った。
「僕は、まだ貴方と会ったばかりです。話をするのもこれが二度目だし、たった二回で僕
にラーシャさんのことが理解できたとも、僕のことを理解してもらえたとも思いません」
 だけど──カリオンはハッキリと自覚していた。今朝、彼女と初めて会った時から、自
分の中に芽生えたこの感情が何なのかを。
「でも、僕はラーシャさんを愛しています」
 ハッキリと断言できる。今日会ったばかりで、まだ付き合いは浅いけれど、この想いに
間違いはない。自分はラーシャを愛している。
「この世の誰よりも、どんなものよりも、僕には貴方が大事です」
 昔、カリオンには今と同じ想いを抱いた相手がいた。
 その女性は世界に滅びをもたらそうとする『敵』を守ろうとする騎士だった。
 それでもカリオンは彼女を愛していた。
 愛していたが、世界を守らねばならなかった。
 どちらかをとらねばならなかった。両方を得るという選択肢は無かった。
 そして、カリオンが選んだのは──「世界」だった。

(もう、間違わない……たとえまた同じ選択肢を出されても、僕は──)

 カリオンは、相手の答えを待った。今すぐに結論が出るとは思えない。でも、少しでも
早く知りたかった。ラーシャの言葉は、ラーシャの瞳は、ラーシャの想いは、自分に向け
らるのかどうかを。
 だが、そんなカリオンの予想を裏切り、ラーシャの瞳はどこにも向いていなかった。
「……ラーシャさん?」
 また顔を俯かせる彼女に、カリオンは怪訝な眼差しで問いかけた。しかし答えは何も返
らず、そうこうしているうちに、カリオンはあることに気が付く。
 ポツリポツリという雫の落ちる音。小刻みに震える肩。耳を澄まさなければ聞えないよ
うな、微かな嗚咽。ラーシャが、泣きじゃくる声。
「ラーシャさん……」
 何故彼女が泣いてるのかカリオンは知らない。でも、するべきことは知っていた。
 彼は立ち上がり、ラーシャの側に移動する。そして黙って、その肩を抱いた。
「……っ……っっ……」
 ラーシャの嗚咽は止まらない。涙がとめどなく溢れて、畳を濡らす。

 彼女は嬉しかったのだ。
 そして哀しかった。

 他の誰かが言ったなら、嘘のように聞えるカリオンの言葉。でも彼が言ったならそれは
真実以外の何物でもなく、それが嬉しかった。

 そんな彼の言葉で自分の内に芽生えつつある想いに気付き、哀しくなった。「彼」を裏
切りそうな自分が、この上なく嫌に思えた。

 ラーシャは泣く。カリオンに抱かれ、子供のように宥められながら。
 時間が来るまで……泣いていた。



 −2−


 遠い遠いあの日の、遠すぎて霞んで見える幻。

 故郷に帰りついたと錯覚するほど、懐かしい風景。

 山に囲まれた村。森に包まれた神殿。

 少年と暮らした、優しい記憶──



「ラーシャさん」
 呼びかけられて、ようやくラーシャは我に還った。
「お食事の準備が出来たようですわ」
 にっこり笑って、可奈が廊下で待っていた。
「はい、今行きます」
 答えて、さっきまでいた小部屋の前まで戻って行く。
 庭の玉砂利が、歩く度に心地良い音を立てた。
 履き物を脱いで屋根の下に入ると、眠兎が廊下の奥から姿を現した。
「あ、いたいた。準備できましたよ」
「はい、それじゃあ行きましょう」
 と、引き返す眠兎の後ろを、ラーシャの手を引いてついていく可奈。
 その後ろ姿に、ラーシャは今更違和感を感じた。
「可奈さん」
「なんですか?」
 ゆっくり歩きながら、振り返る可奈。
 艶やかな黒髪が、ほんの少しだけ揺れる。それが違和感の源。
「髪を切ったんですね……」
 記憶の中にある彼女の髪は、もっと長かったはずだ。
 そんな今更の質問にも、可奈は快く答えてくれる。
「あ、これですか? これは……まあ、願掛けといったところです」
「願掛け?」
「ええ、普通はそういう場合伸ばすのでしょうけど、私は元々長かったので」
「短くしたと」
「ええ」
 可奈は、少し恥ずかしそうに頷く。
 それだけで、どんな願いをかけていたのか分かろうというものだ。
「叶って、良かったですね」
「ええ」
 頷いた女性は、とても幸せそうだった。ラーシャにもその気持ちは分かる。
 分かっている、はずだ。しかし──

(もしも、また「彼」と会えたとして……私は、笑えるの?)

 今は、そう感じる。もし奇跡が起きて、「彼」と再会できても、今の自分は本当に可奈
のように笑顔を見せることが出来るだろうか?
「いいなぁ……」
 うらやましさに、ついつい呟く。幸いそれを聞き取った者はなく、三人はそのまま食事
のための大広間に入った。
「おお、これで全員揃いましたね」
「そのようです」
 ゲンキの言葉に広間を見渡して、二度頷く眠兎。
 広間には既に、五人のお見合い相手と、仲人のゲンキとが集まっていた。
 見ると、食事の乗った膳が五つずつ、二列になって並べられている。
 その内、廊下に近い側の列には、五人のお見合い相手。
 奥の側の列には、ゲンキ一人が座っていた。他の四つの膳は空いている。
「ほら、真ん中に座るといいよ」
 ゲンキの手招きでラーシャが導かれたのは、奥の列の真ん中の席だった。
 その右隣に眠兎。左隣に可奈。さらにその奥にゲンキという順番で座る。
 向かい側は、向かって右から相模、カリオン、アレース、オルメガ、ベイシック。
 たしかに全員揃っていることを確かめて、眠兎とゲンキが頷き合った。
「さて、それでは」
「休憩も兼ねて、お食事に入りましょうか」
 その瞬間──ラーシャ達の向かい側に座る五人の間で、火花が散った。
「ははは、まあどうぞどうぞ」
「オウ、サンクスですネー」
 火元はアレースとオルメガだった。酒を勧めるアレースと、勧められるオルメガ。
 二人とも顔は笑っている。でも目が笑ってない。
 陽気なようで、おそろしく鋭い目で相手を牽制している。
「ふむ……なるほど」
 冷静にそんな二人を観察しているのは、ベイシックだった。
 こちらも、なにやら含みのある笑みを浮かべている。
 そんな彼の視線に気付いたオルメガとアレースが絡んでいくが、ベイシックはふらりふ
らりと巧みに両者の攻撃をかわす。
「って、攻撃って……」
 自分の脳裏に浮かんだ単語に戦慄を覚えるラーシャ。これは食事ではなかったのか?
 しかし、そんな緊迫感をものともしない者達もいる。
「これがニバン料理かぁ……初めて食べましたよ、僕」
「そうですか、私はニバン出身なので、懐かしく感じます」
 と、カリオンの新鮮な感動に相模が郷愁で返したかと思えば、
「あれ? 相模さんもニバンの方でしたか?」
 ゲンキが、そんな質問をする。そして、
「ええ、ニバンの南境界地区の生まれです」
「ああ、あそこはいいところですよね。僕はもう少し南に住んでましたよ」
「なるほど同郷でしたか、それは奇遇ですな」
 ゲンキと相模が打ち解けた。可奈がすかさず会話に入り込む。
「ゲンキ様、ニバンには別荘があるのですけれど、よろしければ今度ご一緒に……」
「おお、それは素晴らしい。是非家族連れでお邪魔します」
「あ、じゃあ僕も家族連れで」
 眠兎が旅行計画に割って入ろうとしたが、可奈の裏拳で沈黙させられた。
 それを見て、カリオンが一言。
「相変わらずだなぁ」
 まさにその通り。心の中で深く同意して、騒がしい食事風景を眺めるラーシャ。
 アレース、オルメガ、ベイシックの三人は相変わらずドタバタしている。
 こころなし、こういうことに関わる機会の少なそうなベイシックは嬉しそうだ。
 可奈とゲンキも、相変わらずの調子で夫婦漫才をしている。
 いっそ、ほんとにくっつけばいいのに。そう考えるのは、自分や相模だけじゃない。
 眠兎は気絶している。カリオンは、本当に美味しそうに食事している。
 そして、ふと気がついた。
「あれっ?」
 どういうわけか、膳が一つ余っている。眠兎の隣、こちらの列の右端にポツンと。
 気になって、ラーシャはゲンキに問い掛けた。
「あの、Gさん?」
「なんだい?」
「お膳が一つ余ってますけど?」
 そう言われて、ゲンキはようやく思い出したというように、自分の額を手の平で打つ。
 そして、わざわざ席を立ち、余った膳をラーシャの前まで持って来てから、言った。
「お前はたくさん食べるだろうと思って、二人分注文してたんだったよ。いやあ、流石は
ラーシャ。見事に思い出させてくれ──」

 とりあえず、吹っ飛ばしておいた。



 気を取り直して食事を再開。もちろん、お膳は一人分だけ。未練は……あんまり無い。
 久しぶりにハシを使って食べる料理は、少し食べ辛かった。
 しかし、「さざめゆき」の調理人が用いる南ニバン独特の甘い味付けは、カース・ドラ
ゴン種の舌にも合う。
 ここ何年かは経済的な事情から、勤務先(学校)の食堂で三食済ませる日々が続いてい
たため、久しく味わってなかった高級料理は感動するほど美味しい。
 カース・ドラゴンの味覚を考慮してくれない学食のおばちゃんには悪いが、これらの料
理とあちらの食事とでは雲泥の差がある。
 ついつい嬉しくて、気が付くとラーシャは二つ目のお膳に手を伸ばしていた。が──
「……」
「はっ?!」
 視線に気付いて、慌てて手を引っ込める。
 危ない危ない……頭を振って、自分を諌めた。
 そして、視線の主を探すと──探すまでもなかった。
『……』
「うっ……」
 全員がこっちを見ていた。あまりに痛快なラーシャの食べっぷりに感嘆している。
 ポンと肩を叩かれて後ろを振り向くと、ゲンキが笑っていた。
「遠慮するなよ」

ズドンッ!!

 とりあえず、もう一度沈黙させておく。
 おかげで視線が更に深く突き刺さってきた。
「あ。あはははは♪」
 笑って誤魔化すと──
「は、ははは……いや、いい!!」
 乾いた笑いを返してから、唐突にアレースが断言した。
 こちらがビックリしている間に、オルメガがそれに続く。
「イエス!! パワフルなレディーは、とても魅力的ネー!!」
「そうですよ、美味しそうに食べた方が、作ってくれた人も喜びます」
 自分も美味しそうに食べながら、カリオン。
 ベイシックと相模も、彼の言葉に深く頷いた。何か覚えがあるらしい。
 と、またまた復活してきたゲンキが、自分の席につきながら呟いた。
「そんなわけで、折角用意したんだから」
「食べて下さいな、ラーシャさん」
 可奈までもがそう言う。そんな風に言われたら、ラーシャだって仕方が無い。
「はい、いただきます」
 本当に仕方なく、仕方ないんだってばと自分に言い聞かせて、彼女は二つ目のお膳にハ
シをつけた。そして、さきほどのように、素晴らしい滑らかさでニバン料理の数々を胃に
収めてゆく。
 このままでは、気絶している眠兎の分まで食べるのではないかと、その場の全員が危惧
するほどに……。




〔ツリー構成〕

[22] ゲンキ=M 2001.12.24(月)19:09 ゲンキ=M (143)
・[23] 短編 じゅらい亭日記・特走編「聖夜〜虹と太陽〜」 2001.12.24(月)19:12 ゲンキ=M (16136)
・[24] あとがき 2001.12.24(月)19:20 ゲンキ=M (856)
・[25] 感想:短編 じゅらい亭日記・特走編「聖夜〜虹と太陽〜」 2001.12.25(火)11:43 藤原眠兎 (433)
・[26] 感想感謝でーす♪ 2001.12.25(火)16:51 ゲンキ=M (366)
・[27] うーん、うらやましい。(ぉ 2001.12.25(火)20:52 クレイン (1259)
・[28] 感想感謝2! 2001.12.26(水)00:32 ゲンキ=M (792)
・[90] 長編 じゅらい亭日記──超・暴走編7「竜女再来」 2002.11.27(水)17:24 ゲンキ (996)
・[91] 超・暴走編7「竜女再来」(1) 2002.11.27(水)17:28 ゲンキ (48213)
・[92] 超・暴走編7「竜女再来」(2) 2002.11.27(水)17:31 ゲンキ (57614)
・[93] 超・暴走編7「竜女再来」(3) 2002.11.27(水)17:34 ゲンキ (53509)
・[94] 超・暴走編7「竜女再来」(あとがき) 2002.11.27(水)17:44 ゲンキ (1083)
・[141] 感想 2003.6.8(日)10:22 藤原 眠兎 (530)
・[168] うぃさっさ 2003.12.24(水)15:02 ゲンキ (111)
・[96] 長編 じゅらい亭日記・遁走編「聖夜−幸せの白い花−」 2002.12.24(火)15:21 ゲンキ (462)
・[97] じゅらい亭日記・遁走編「聖夜−幸せの白い花−」前編 2002.12.24(火)15:25 ゲンキ (52057)
・[504] 削除
・[98] じゅらい亭日記・遁走編「聖夜−幸せの白い花−」中編 2002.12.24(火)15:28 ゲンキ (47780)
・[99] じゅらい亭日記・遁走編「聖夜−幸せの白い花−」後編 2002.12.24(火)15:30 ゲンキ (34765)
・[100] じゅらい亭日記・遁走編「聖夜−幸せの白い花−」あとがき 2002.12.24(火)15:31 ゲンキ (960)
・[101] お疲れ様です。 2002.12.28(土)11:04 じゅんぺい (256)
・[107] ありがとうございます 2003.2.24(月)14:51 ゲンキ (168)
・[142] 感想 2003.6.8(日)10:29 藤原眠兎 (587)
・[169] なんというか 2003.12.24(水)15:03 ゲンキ (169)
・[122] 短編 じゅらい亭日記──超・暴走編8「その日、彼女は」 2003.3.16(日)17:50 ゲンキ (1163)
・[123] 短編 じゅらい亭日記──超・暴走編8「その日、彼女は」 2003.3.16(日)17:51 ゲンキ (20724)
・[124] 短編 じゅらい亭日記──超・暴走編8「その日、彼女は」あとがき 2003.3.16(日)17:52 ゲンキ (1714)
・[143] 感想 2003.6.8(日)10:39 藤原 眠兎 (405)
・[170] ばふぉー 2003.12.24(水)15:05 ゲンキ (79)
・[147] 漫画 じゅらまんが大王 2003.6.30(月)23:11 ゲンキ (189)
・[148] 漫画 じゅらまんが大王1 2003.6.30(月)23:18 ゲンキ (263)
・[152] 感想(画像の投稿ってできたんですね!) 2003.7.7(月)02:37 星忍とスタ (322)
・[156] ご感想ありがとうございます 2003.7.7(月)23:42 ゲンキ (261)
・[149] 漫画 じゅらまんが大王2 2003.6.30(月)23:21 ゲンキ (215)
・[153] 感想(おそるベシ、風舞さま) 2003.7.7(月)02:39 星忍とスタ (48)
・[157] ……ひい 2003.7.7(月)23:43 ゲンキ (32)
・[151] 漫画 じゅらまんが大王3 2003.6.30(月)23:23 ゲンキ (278)
・[154] 感想(インパクト) 2003.7.7(月)02:40 星忍とスタ (64)
・[158] すごいですよね 2003.7.7(月)23:44 ゲンキ (40)
・[160] おお、4コマ漫画だ! 2003.7.10(木)07:31 じゅんぺい (252)
・[167] うへへ 2003.12.24(水)15:01 ゲンキ (79)
・[197] 漫画 じゅらまんが大王4 2005.3.30(水)22:59 ゲンキ (302)
・[199] 感想 2005.4.25(月)11:41 CDマンボ (199)
・[200] 感想どうもでーす 2005.4.30(土)09:33 ゲンキ (139)
・[165] 短編 じゅらい亭日記特走編2「聖夜 魔王の祝日」 2003.12.24(水)14:58 ゲンキ (18491)
・[166] あとがき 2003.12.24(水)15:00 ゲンキ (192)
・[171] うわー…(笑) 2003.12.24(水)19:36 じゅ (582)
・[172] お疲れ様でした〜☆ 2003.12.24(水)19:47 CDマンボ (258)
・[173] 何は無くとも 2003.12.24(水)20:18 藤原眠兎 (372)
・[176] 短編 じゅらい亭日記奔走編2【聖夜 ジングルオールザウェイVer.J】改 2003.12.26(金)01:27 ゲンキ (16950)
・[177] あとがき 2003.12.26(金)01:29 ゲンキ (242)
・[178] かんそうー 2003.12.26(金)02:06 藤原眠兎 (345)
・[188] 短編 じゅらい亭日記・哀走編【聖夜〜彼が余計な知識を仕入れたら〜】 2004.12.22(水)05:36 ゲンキ (817)
・[189] 短編 じゅらい亭日記・哀走編【聖夜〜彼が余計な知識を仕入れたら〜】 2004.12.24(金)00:55 ゲンキ (49950)
・[190] 短編 じゅらい亭日記・哀走編【聖夜〜彼が余計な知識を仕入れたら〜】あとがき 2004.12.24(金)01:18 ゲンキ (585)
・[191] 感想 2004.12.24(金)23:35 CDマンボ (215)
・[192] 感想ありがとうございます 2004.12.24(金)23:43 ゲンキ (151)
・[201] 短編 じゅらい亭日記・狂走編<モンスター・ハンターJ> 2005.7.23(土)14:50 ゲンキ (272)
・[202] じゅらい亭日記・狂走編<モンスター・ハンターJ> 2005.7.23(土)14:54 ゲンキ (64063)
・[203] 感想〜☆ 2005.7.23(土)23:29 CDマンボ (315)
・[204] 感想 2005.7.24(日)00:46 眠兎 (178)
・[205] 久々じゃのう(笑 2005.7.25(月)04:38 幾弥 (422)
・[206] 感想ありがとうございます 2005.7.25(月)11:30 ゲンキ (1008)

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