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220 異次元戦士ブラスター第二話『発端となる帰郷』
2006.4.24(月)06:00 - じゅんぺい - 9177 hit(s)

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 異次元警察本部の次元パトロール隊隊長、アッシュ=ベルフラン。純平が所属する隊の
隊長である。
 二十三歳という若さで本部内でも上位に位置する階級に着任し、能力・性格も申し分な
いので、誰からも尊敬されている。
 いつもの通り、青いGパンに黒いTシャツの私服姿である純平は今、その隊長の勤務室
に居た。大きなデスクの上は散らかり放題で、それを気にすることもなく椅子に軽く腰掛
ける白いジャージ姿のアッシュと、デスクの反対側で[休め]の姿勢をして立つ純平。
 「う〜ん、難しいなあ」
 アッシュは銀色の髪を少し掻くと、腕を組みながら椅子に深く座りなおした。純平は隊
長の言葉を待つ。
 「異次元戦士とバレたら、確かにその人たちにも危害が及ぶこともあるだろう。しかし、
その気になればいくらでも調べられてしまうからなあ。異次元のことがバレなきゃ会って
もいいんじゃないか?」
 最後の方はかなり軽く言ってのけた隊長。純平は難しい顔をして尋ねる。
 「本当にいいんっすかねえ?」
 「バレないように気をつければいいんだよ。それに緊急発信機もセットしてあるしな。
でも、あんまりたくさんの知り合いには会わない方がいいぞ。バレやすくなるからな」
 「分かりました。どうも、ありがとうございました。失礼します」
 軽く敬礼をすると純平は部屋から出ていく。アッシュは笑って純平を見送った。部屋の
入口のドアが閉まると、アッシュはポツリと言葉をもらす。
 「自分は何を守るのか、どうして守るのか・・・よく考えてこい」



 純平は街中を歩いていた。多少変わってはいるが、見慣れた風景の中を進む。街の規模
はそんなに大きいというわけではないが、まあそこそこである。
 (こんなにゆっくり帰ってくるのは三年ぶりか。懐かしいなあ)
 帽子を深くかぶって通行人の間を器用にすり抜けて行く。超次元戦闘マシンはこの世界
の文明にNGなため、愛機であるバイクはこの世界に着くと同時に異次元に戻した。
 純平が所属する部署は、様々な次元の世界をまたにかけた事件が無いか、多世界をパト
ロールするのが主な任務である。よって時には剣と魔法の世界、さらにはサイボーグが往
来する世界などに行くこともある。そんなわけで、純平は・・・・
 (妹は元気にしてるかな?)
 故郷の世界にやってきていた。
 (見つからないように、見つからないように・・・)
 こそこそと街の中を進む純平。今のところ、誰にも気づかれていないようだ。
 (隊長はああ言ってたけど、見つかったらややしいことになるよな、絶対)
 確信を持って頷いていると、古く大きな門の前に着いた。門には[巳滄流古武術(みそ
うりゅうこぶじゅつ)]とある。純平が昔通っていた武術の道場だ。記憶が確かなら昔
となんら変わりがないように思える。
 何もかも変わらないのなら、もうすぐ道場生たちが夕方の練習に来る時間だ。そう考え
ると、純平は道場を覗きたくなった。しかし、見つかると色々面倒なことになるは確実で
ある。
 「うちの道場に何か用?」
 門の前でうろうろしながら悩んでいる純平を、後ろからだれかが訪ねた。はっとして振
り返ると、いつの間にか若い女性が立っている。白のGパンに黄色いシャツ。そして長い
黒髪を後ろでまとめて運動をしやすくしている。目つきからしても男勝りな性格をしてい
そうだ。
 (い、いかん、この状況は非常によくない!)
 純平は体を硬直させて、冷や汗をだらだら流している。一方、女性の方もびっくりした
顔で純平を見ながら固まっている。
 「ああぁっ、アホ!?」
 沈黙を破ったのは女性の方だった。純平は慌てて女性の口を塞いで落ち着かせる。
 「しーっ! みんなには内緒なんすから、大きな声を出さないでくださいよ」
 いまいち相手を落ち着かせるセリフになっていない純平。女性は口を塞ぐ純平の手を跳
ね除けて、シャツの襟首を掴む。
 「お前、勝手にふらっと旅に出やがって! それどころかまたふらっと帰ってきて皆に
は内緒だとっ? いい加減にしろ!!」
 少しずつ首が絞まっていって、純平は苦しみもがきつつ弁解を試みる。
 「い、いえ、これには色々事情がありまして、と、とりあ、えず、落ちつ、いて、は、
話を・・・・・・きゅぅ」
 そろそろ色んな意味でやばくなってきた純平を見て、女性は仕方なく手を離した。純平
は尻もちをついて咳き込む。
 「アホ。とりあえずうちでゆっくり話を聞くよ」
 「さ、颯樹さん、昔からアホって呼ぶの、もうやめません?」
 巳滄颯樹(みそうさつき)。巳滄流古武術道場師範の孫娘である。純平と同い年で、居
なくなる三年半前まで一緒に武術を学んでいた。気が強いのは相変わらずのようだった。
 巳滄流古武術黒帯の颯樹に首根っこを掴まれて、純平は為すすべもなく颯樹の家へと引
きずられていった。
 「いや、あの、これには色々と事情が・・・」
 「今日はとことん説明してもらうからね」
 そしてその日が次の日に変わるころ、純平はやっと颯樹を説得することができたのだっ
た。



 次元の狭間には小さな世界が点在し、その一つには巨大な黄金宮殿が存在する。宮殿の
面積はとても広く、宮殿の外側の部分の材質は金でできている。
 その宮殿の最奥部にある謁見の間。様々な色の光が天井から不規則に間を照らし、壁や
柱がたまに生きているかのようにうごめいている。
 その謁見の間で、額から一本の太い角を生やし赤いマントを羽織った二十歳代前半の男
が柱の一つにもたれかかっている。刃物のような鋭い顔つきで静かに目を閉じ、何かを待
つ。しばらくすると何かを感じ取ったのか、ゆっくりと目を開けた。
 「てこずっているようだな、悪魔大元帥」
 一本の柱の影から這い出てくるかのように年老いた女が現れた。白いローブに身を包み、
白髪の年老いた女は、悪魔大元帥と呼んだ男にゆっくりと近寄る。しかし悪魔大元帥はそ
れを無視するかのように黙ってその場に立っている。
 「死霊大元帥よ、人のことを言えた義理か?」
 声は二人のものではなかった。年老いた女が憎らしげに謁見の間の入口を見ると、人間
型のロボットが緑のマントを羽織って現れ、硬く重い金属音を鳴らしながらゆっくりと入
ってきた。
 年老いた女、死霊大元帥が二メートルを越えるロボットを下から睨み上げる。
 「うるさい、機械大元帥! 異次元戦士どもが邪魔さえしなければ、今ごろは・・・」
 イラ立って床を一度強く踏みつける。金属がこすれる特有の音が謁見の間に高く響いた。
機械大元帥が目のズームカメラを動かし、一度大きく頷く。
 「確かに異次元警察、そして異次元戦士は邪魔な存在だ。すでにいくつもの組織がやつ
等に潰されている。・・・・・このままでは主のお怒りに触れてしまうぞ」
 「悪魔大元帥よ、今回の件は大丈夫なのだろうな?」
 死霊大元帥が後ろを振り返って、柱にもたれかかっている悪魔大元帥に尋ねる。悪魔大
元帥は体をぴくりとも動かさず、口だけを動かした。
 「ただ土地を集めて研究施設を建てる。ただそれだけだ。何に怯えている?」
 ふんっと、侮蔑する態度で二人を見る悪魔大元帥。二人は何か言おうとはしたものの、
互いに悪魔大元帥から顔をそらす。そして機械大元帥が口を開いた。
 「戦艦を一つ貸してやろう。奴らが出てきたらそれで木っ端微塵にしてやるのだ」
 「・・・使うことは無いだろうがな」
 悪魔大元帥はそう言うと、柱から背を離し、ゆっくりと謁見の間を出て行った。残った
二人の大元帥は侮蔑しかえすように悪魔大元帥が出て行った入口を睨んでいた。



 翌日の昼過ぎ、純平は目を覚ました。真夜中に颯樹をなんとか説得し、帰ってきたこと
を内緒にしてもらうことを約束して安心した純平は、居間で(颯樹の家族はみな旅行中だ
った)寝かせてもらったのだ。
 布団を片付け、ボーっと居間の小さな木の椅子に座る。着けたまま寝た黒いグローブを
なぞっていると、颯樹が白い道着を着てやってきた。
 「あ、颯木さん。おはようっす」
 「よし、ちょっと来い」
 「・・・え?」
 何の前フリもなく、颯樹に襟首を掴まれ引きずられていく純平。連れてこられたのは道
場だった。床や壁の全てが木製で、隅には木刀や長棒、木短剣などが置かれている。
 「勝負しろ」
 道場内の真ん中に純平を放り出すと、衝撃的な発言をし、軽いストレッチを始める颯樹。
純平は颯樹の言葉の意味を理解できず、数秒固まったあとやっと気づいて、間抜けな声で
尋ねた。
 「・・・は?」
 「久しぶりに勝負だ。アホが一度も本気で勝負をしないで居なくなったからな。またい
つあたしの前に現れるか分からないから、丁度いい機会だろ?」
 機嫌よく笑う颯樹に対し、純平は慌てて止めに近づく。
 「ち、ちょっと待ってくださいよ。いきなりなんなんすか? 僕はいつだって本気でし
たよ!?」
 颯樹は純平の言葉を無視してストレッチを続ける。必死に止めようとあたふたする純平
だったが、颯樹を止めることは出来ないようだ。
 「行くぞっ!」
 そう叫ぶと颯樹は純平に殴りかかった。が、あたふたしつつも純平は一歩後ろに下がっ
てかわす。
 颯樹はかまわず攻撃を仕掛けてくるが、純平はそのたびに一歩下がってかわし、たまに
手や足で皐月の攻撃をさばいていく。道場の端に追い詰められると、それに気づかずにま
た後ろに逃げようとして・・・・
 ガンッと、後頭部を道場の壁にぶつける。声にならない声、つまり息を吐くだけ吐いて
後頭部を両手で勢いよくさする。
 「ふざけるな、真面目にやれ!」
 「真面目っすよ、俺」
 渾身の力を込めた颯樹のパンチを後頭部を抑えながら軽くよけつつ、純平は否定した。
しかし、それが颯樹の神経を逆撫でしただけだったりする。見る見る皐月の顔に怒りが浮
かんできた。
 「はあっ」
 颯樹は無理やり純平の腕を掴むと、複雑に関節を極めて、背負い投げの要領で純平を投
げた。
 「ぐへっ」
 道場の木の床に背中を勢いよく打ち付けられて、純平は情けない声を出した。颯樹は我
に返って青ざめる。
 「だ、大丈夫か!?」
 近寄ってきた颯樹に対し、純平は上半身を起こしてこともなげに応じた。
 「大丈夫っす」
 颯樹は安心した半分、一つ疑問が浮かんだ。投げる前に関節を極めた時、本気でやって
しまったため、普通は腕の骨が折れているか脱臼はしているはずなのだ。しかし、今の純
平の様子を見る限りでは――
 「アホ、何とも・・・ないのか?」
 「え、何がっすか?」
 背中をさすって立ち上がる純平だが、腕を痛めた様子はない。
 「ほらほら、もうすぐ道場生たちが来る時間っすよ」
 首をかしげる颯樹だったが、純平に促されて道場の練習の準備にとりかかった。



 夕方、一日の練習を終えると、颯樹は白い道着姿のまま道場で座禅をする。目を閉じて、
心を落ち着かせるのだ。
 「師範はいるか?」
 道場の入り口の方から突然声がした。颯樹は目を開けて、ゆっくりと立ち上がる。入り
口には迷彩柄の服に身を包んだ男が一人立っていた。
 「またあんたか。何度も言うけど、道場を閉じる気はないよ」
 「師範はいるかと聞いている」
 「道場に入る時は靴を脱いでもらいたいな」
 迷彩服の男は表情を変えずに、靴を履いたまま道場に入ってきた。颯樹は立ち上がり、
迷彩服の男と対峙する。
 「師範はどこだ」
 「脅し屋も忙しそうだな。悪いけど今は居ないよ」
 「では、予定変更だ」
 迷彩服の男は突然、颯樹に向かってきた。颯樹はカウンターを狙って蹴りを放つが、男
はあっさりと見切ってかわした。構わず颯樹は攻撃を続ける。その後幾度か攻撃が当るが
決定打が出ない。
 男は、焦りを見せる颯樹の隙をついて足を払い、颯樹を床に倒した。
 「大事な娘がケガでもしたら、さぞ商談は早く済むだろうなあ」
 男は不気味にニタリと笑って、身動きできない颯樹の顔に拳を叩きつけようとする。が、
 突然、男と倒れた颯樹の間を何かが飛んでいった。「ゴッ」という音とともに、飛んで
きた方とは反対側の壁に棒が一本突き刺さる。
 男は拳を途中で止めたまま、ゆっくりと横を見る。鍛錬道具を飾った棚の横に、いつの
間にか純平が立っていた。
 「次は俺が相手だ」
 純平はゆっくりと男に近づいていく。男もゆっくりと純平の方へと向き直り、改めて戦
闘の構えをとった。颯樹は倒れたままの状態で純平と男とを見る。
 男がこちらへと駆け出すと同時に、純平はその場に立ち止まって姿勢を低くした。
 「受けろ、このブロォッ!」
 男が拳を自分の顔面へと放つスキを見計らって瞬時に腰を捻り、その勢いを上乗せして
右の拳を男のみぞおちに放つ。
 ドンッという衝撃音と共に、男が数メートル後方まで吹き飛ばされた。道場の壁に叩き
つけられ、床にくずれおちる。
 「女性の顔を狙うたあ、くそふざけた奴だ」
 男を殴った姿勢のまま、純平が怒気をはらんだ声で言った。颯樹が呆気にとられている
と、純平は視線に気づいて慌てて颯樹に手を借した。
 「今の技、見たことないな?」
 「え? あ、いや、炎轟一式(えんごういちしき)という・・・」
 純平の言葉を遮って、いつの間にか立ち上がった男が横から襲いかかってきた。純平は
一歩もその場から動かず、男のパンチを受け流しつつその流れで肘を打ち込む。
 また吹き飛ぶ男を無視して颯樹を立たせると、純平は思い出したように顔をしかめる。
 「やべっ、仕事に行かないと・・・」
 慌ててどこかに行こうとする純平だが、右腕が動かずつんのめりそうになる。ゆっくり
右腕の方に視線を向けると、颯樹が腕を掴んでいる。
 「あのう・・・僕、仕事があるんですけど・・・・・」
 「・・・お前、変わらないな」
 聞かなかったことにしてまた動こうとするがやはり腕を掴まれていて動けない。颯樹は
言葉を続けた。
 「普段は情けないくせに格闘技ではいつもあたしの一歩前を行く。この3年半の間、あ
たしはさらに強くなったはずなのに・・・」
 「そんな、大層な。・・・で、なんで、右腕を掴んだままなんすか?」
 「・・・・・・最後の肘技の名前はなんて言うんだ?」
 何かをふっきるかのように首を振り、ぎこちない笑顔で聞いてくる颯樹に対し、純平は
少し考えたあと・・・
 「え、技?」
 「だから、今の技だよ」
 純平は男が吹き飛んだ壁の方を見た。
 「あれ? 男が居なくなってるんすけど」
 「いいんだよ。それより教えろって!」
 自分の感情をごまかすように颯樹は無理矢理話しを進めて、純平を困らせる。純平はと
りあえず口を開いた。
 「はあ。いやあ、技名はさつ・・・いや、何でもないっす」
 途中で言葉を濁した純平は、慌ててごまかした。颯樹は不機嫌な顔で迫ってくる。
 「何を言ってるんだ? 教えろよ」
 「いや、あの、その・・・」
 うろたえる純平に颯樹は更に詰め寄った。純平はたまらず一歩あとずさる。
 「何て名前なんだよ? さあ、言え!」
 しどろもどろになっていると、純平が突然何かに気づいてあっさりと掴まれた腕を柔ら
かく引き離した。颯樹が驚いている間にも、純平は急いで外に出て行く。
 「すぐ戻ってきますから!」
 颯樹はただ純平が出ていった道場の入口を呆然と見ていた。展開が速すぎる事態に頭が
ついていけず、今までの出来事は夢なのだろうかと自分の頬を軽くつねってみた。
 「夢じゃない・・よな?」
 わずかな痛みだけが現実だと言っていたが、颯樹には事の展開がどうしても理解できな
かった。



 道場近くの林の中で、純平はさっきの迷彩服の男と対峙していた。風が通る音だけが林
の中に響く。二人はいつでも戦闘できる状態で向かいあっている。二人の距離は間に数本
の木を挟んで10メートルほど。
 「邪魔なウジ虫め、八つ裂きにしてやる」
 言葉を言い終えないうちに男の体に変化が起きた。両方のこめかみから小さな角が真っ
直ぐに生え、体の筋肉が膨張し、純平を威嚇するように目が赤く光る。もう人間ではなく、
悪魔そのものだった。
 純平はもうすでに気づいていたのか、大して驚きもせずに言葉を発する。
 「烈破!」
 純平の全身が一瞬青く光り、次の瞬間にはメタリックブラックのボディが姿を現してい
た。
 悪魔は予想だにしていなかったのか、驚いて数歩あとずさる。
 「異次元戦士、ブラスター!」
 気合を発する言葉が純平、ブラスターから出る。
 「お前がさっき戦った女性はな、全国古武術大会上位入賞者なんだよ。普通の人間が勝
てるわけねえだろ」
 挑発された悪魔は、異様に鋭い歯をかみしめて、怒りをあらわにした。凶悪な口からソ
フトボールの玉ほどの火の玉をブラスターへと高速で吐き出す。ブラスターはその場から
動かず、左手を前にかざした。
 「アタック・シールド!」
 瞬時に左手から半径1メートルほどの半透明で青い円が現れ、障壁となって、向かって
くる火の玉をかき消した。ブラスターはまた改めて戦闘の構えを取る。
 「派手な地上げをしてやがるから怪しいと思って調べてみたら、やっぱりな。俺の大切
なものに手を出す奴はぶっ飛ばす!」
 両手の拳を握り締め、気合を漲らせるブラスター。 実力ではかなわないと認めさせられ
た悪魔はブラスターに怒声をあびせる。
 「貴様を骨一つ残さず灰にしてやる!!」
 一瞬のめまいと共に、辺りが薄暗くなり生命の気配が遮断される。そこはもう次元の狭
間であり、さっきまでいた世界とは何のつながりもない。周りが同じ風景なのは、無理矢
理次元の狭間を開いたためにさっきの世界の風景が写りこんだためだ。
 ブラスターが周りを見回すと、さっきまでいた悪魔の姿が消えていた。代わりに、耳を
つんざくような轟音が空から響いてくる。音の発信源を目のスコープのズームで探すと、
遥か遠くの薄暗い空から巨大な蛾のような形をした戦艦がゆっくりやってくるのを捉えた。
どす黒くカラーリングされた戦艦からは巨大な大砲がいくつものびている。間違いなくさ
っきの悪魔が乗っていることを直感したブラスターは、次に自分の危機を察した。全長百
メートル以上の戦艦では相手が悪すぎる。
 (・・・ちっ、やってみるか。しかし、今の俺の意思だけであれが操作できるのか?)
 心の中で不安と疑問がかけめぐる。しかしそうしている間にも敵の戦艦の轟音は近づい
てくる。
 切り札はある。が、場に出せるかどうかはやってみなければ分からない。自分の実力で
できるかどうか、ブラスターには自信が持てなかった。しかし、このままでは確実にやら
れる。ブラスターは決心して左の拳を顔の前まで持ってきた。
 ブラスターは全神経を左手のクリスタルに集中し、それを言葉にしていっぺんに解き放
つ。
 「アルディオース!」
 ブラスターが叫ぶと同時にクリスタルが青く輝き始めた。すると敵の戦艦の飛ぶ轟音を
かき消すようにさらに大きい轟音が空間を揺るがし、天空が切り裂かれ、巨大な戦闘艦が
飛んできた。全長二百メートル以上を誇り、左右対称の縦長の艦体は白と青の綺麗なカラ
ーリングを見せ、小さな前翼とX字の大きな後翼が特徴のこの戦闘艦の名はアルディオス。
異次元警察が誇る超次元戦闘母艦、五号艦である。
 「超次元変形、モード、エクスカリバー!」
 ブラスターの言葉を合図にアルディオスが変形し始めた。前翼はしまわれ、後翼は上下
が一つとなり折れ曲がると、艦の中部横から出てきた拳とつながって腕となり、艦の前方
部分が左右に分かれて足となる。
 最後に艦の後方部から人型の顔がせりだし、勇猛な戦士への変形が完成する。そのころ
には敵の戦艦がスコープのズームを使わなくても見える距離に来ていた。敵の砲撃がアル
ディオスをかすめて爆発する。ブラスターは焦る心を抑え、また全神経をクリスタルに集
中し、アルディオスの遠隔操作を再開する。
 「ライトニングバスター!!」
 ブラスターの言葉が終わると同時にアルディオスの右腕の拳が細かく変形し、腕も微妙
に内部の構造が組み変わっていき、最後には戦艦の主砲級以上の巨大な砲身が現れた。右
腕の肘近くに現れた横穴に左の拳をまるごと差し込むと、アルディオスのエネルギー全て
が右腕の砲身に集まる。
 そして砲身を敵の戦艦に向けた。
 「シュート!!」
 ブラスターが右の拳を全力で前に突き出すと、アルディオスの右腕の砲身から大口径の
青いレーザーが発射され、まるで巨大な剣のように敵の戦艦を貫き、爆発させた。すさま
じい爆発音と炎が、疲れて両ヒザを地面につけるブラスターと、雄雄しく立つアルディオ
スをしばらく包んだ。



 街はずれの人通りの少ない道を純平と颯樹が歩いている。道や建物を夕焼けが赤く染め
ていく。
 純平は自分が居なかった3年半のことを颯樹から聞いていた。
 「・・・そうっすか、妹が道場に・・・」
 「アホが道場で練習しているのをいつも見てたからな。同じことをしているのが嬉しい
んだよ」
 複雑な表情をする純平を見て、颯樹が軽く笑う。
 「良い妹じゃないか。アホが大好きなんだよ」
 颯樹は照れて何も言えない純平を見てさらに笑った。
 「ま、細かいことは分かんないけど、皆には黙っといてやるよ。アホが変わってなくて
安心したしな」
 純平の背中を右手でバンバン叩いて笑う颯樹。純平は、颯樹のさりげない心遣いに感謝
した。この3年半の間、妹の世話も見てくれていたのだ。純平は言葉にはあまり出さなか
ったが、心の中で何度も颯樹に頭を下げていた。それにあんまり言葉にすると逆に颯樹に
起こられるのだ。「しつこいな! あたしは好きでやってただけだっ!!」とでも言って
蹴られていただろう。
 「おっ、ここまでだな」
 颯樹が立ち止まった。純平も立ち止まる。目の前には車が通る大通りがある。
 「それじゃあ、失礼するっす」
 「今度は・・・いつ来るんだ?」
 一歩前に踏み出した純平にためらいがちに尋ねた颯樹。純平は少し考えたあと、軽く言
った。
 「今度からはしょっちゅう来るようになると思いますよ」
 「・・・今度は妹に会ってやれよ」
 純平は、笑って見送る颯樹をあとにして歩き始めた。帽子を深くかぶって背中ごしに手
を振りつつ、すぐそばの信号が青になった大きな横断歩道をゆっくりと渡る。
 颯樹は他の横断者とすれ違っていく純平を見送っていたが、横断歩道を渡りきると同時
に信号が赤になり、車が動き始めて視界を遮られ始めた。そして一台大きなトラックが一
瞬純平との視界を完全に遮ったあと、純平の姿はいつの間にか消えていた。颯樹はよく目
をこらして見てみたが純平はどこにもいない。少し考えたあと、軽く溜息をつく。
 「・・・ほんと、不思議なやつ」
 颯樹は笑って大通りを後にし、家路についた。


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