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219 異次元戦士ブラスター第一話『その名は異次元戦士ブラスター』
2006.4.24(月)05:57 - じゅんぺい - 9118 hit(s)

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 青年は部屋に入った。黒い短髪に黒い眼、中肉中背で引き締まった体つきをしている。
服装はGパンに黒いTシャツ、その上にサバイバルチョッキを着て、さらに両手にはドラ
イビンググローブをはめていた。しかし、左手のドライビンググローブの甲からは半球体
のクリスタルが顔を覗かせている。
 青年が入った部屋には1つのデスクとそこの席に座る1人の男が居た。青年よりも年齢
は少し上ぐらいで、銀色の髪に白い服装で統一している。
 男は散らかっているデスクの上に置いていた足をどけ、ゆっくりと立ち上がった。笑顔
で緊張した様子の青年を迎える。
 「よし、来たな」
 男は右手を青年の前に差し出した。青年は少し間を置いてから自分も右手を出し、強く
握る。
 「ブラスター、いよいよ正式にお前のパトロール域が決まった」
 ブラスターと呼ばれた青年、新條純平は姿勢を固く伸ばして目の前の男、自分の上司で
あるアッシュの言葉を待つ。
 「お前のパトロール域は、お前の生まれ育った世界だ」
 2人は異次元警察に所属する戦士である。異次元警察とは多世界間に渡る犯罪を取り締
まる組織であり、2人はその中でも次元パトロール隊に所属している。アッシュは次元パ
トロール隊々長で、純平はその新米隊員であり、ブラスターという名は仕事上のコードネ
ームとして呼ばれている。異次元警察に所属するものは異次元戦士と呼ばれ、戦闘などの
際には異次元警察で開発されたアイテムを使って戦うこともあるのだ。
 純平は異次元戦士訓練養成所を3年半で卒業し、次元パトロール隊に配属されたばかり
だが、この度正式な任務を行うことになった。つまり次元間のパトロールである。
「はい! 頑張りますっ」
 直立不動で返事をする純平にアッシュは苦笑する。
 「まあ、気を楽にしろ。お前1人で守るわけではないんだからな」
 「はい!」
 相変わらずなことに今度は笑って純平の肩を叩くアッシュ。
 「よし、行って来い。次元パトロール隊々員、ブラスター!」
 純平は力強く敬礼をした。



純平は改めて、座っていた座席を座りなおした後、何度か深呼を繰り返した。視線を真
っ直ぐ前に向けると、壮大な景色が窓越しに広がっていた。巨大な格納庫内を、大勢の整
備員たちや機材を運ぶ車などが動き回っているのが小さいながらも分かった。さらにその
景色は少しずつだが動いている。
 視線をすぐ下に落とすと、今度は様々な計器類等が目の前に広がっている。純平はもう
一度だけ深呼吸をした。
「エネルギータンク、よし!」
 メーターの1つに目をやり、確認を取る。
 「次元転移システムよし! 空間移動システムよし! 武器管制システムよし!」
 そこで純平の身体がぴたっと止まった。少しして、
 「・・・・・おっと、艦内配備機は・・・全て異常なし!」
最後の確認を終えると、もう一度視線を真っ直ぐに前に向けた。景色はもう動いておら
ず、一本の大きな発進口にたどり着いていた。
純平が乗っているのは異次元警察が誇る巨大戦艦、超次元戦闘母艦である。異なる世界
と世界の合間にある次元の間を自由に往来できる戦艦であり、1人からでも操縦できる、異
次元警察の技術が結集された戦艦なのだ。
 発進許可が下りるのを待つ純平だが、突然、呼び出し音と共に通信モニターに文章だけ
が映った。予想外の出来事に慌ててモニターの方へ顔を向ける。
 『新しい次元パトロール隊員に光があらんことを!』
 立ち上がって操縦席の窓から下を見ると、整備員たちが整列して手を振っているのが見
える。文章を送ってきてくれたのは、どうやら彼ららしい。
純平は笑って座席に座ると、気合を入れて手元の大きなレバーを掴んだ。
 「アルディオス、発進!!」
 手元のレバーを力強く押し上げる。間もなく、一瞬強いGを感じたが、すぐに治まった。
だが戦艦は動き出していた。発進口内には轟音が響き、戦艦が飛び出していく。
 凄いスピードで景色が窓の外を流れていく。それを見ながら、純平は自分の身体に力が
入るのを感じた。
 「・・・さあ、行こう!」
 自分に言い聞かせるように純平は声を発した。



 純平は艦内の居住区へとやってきた。今日からこの戦艦が自分の家となり、基地となる。
月に一度以上は必ず本部に出向かなければいけないが、それ以外はこの戦艦で暮らすこと
になる。
 自動ドアが開き、個室の中に入った。ベッドとテーブルが1つずつと、棚がいくつかあ
るだけであとは何も無く、白い壁が個室内を余計質素に思わせた。
 「さて、まずは何から取り掛かろうかな」
 個室内を見回す。現在この艦は自動操縦によって世界と世界の間、つまり次元の狭間を
移動している。次元の間に居れば戦艦の存在は見つからないので、普段は次元の狭間を漂
うのだ。
 個室の飾りつけをしようかと考えていた時、艦内に音が鳴り響いた。これは通信の呼び
出し音だ。
 慌ててブリッジへと急ぎ、通信のモニターのスイッチを押す。すると、モニターに1人
の男の姿が映った。
 『ブラスター、緊急の任務だ』
 モニターに映ったのは隊長のアッシュだった。隊長は本部の隊長室から各隊員に指令を
出している。
 「緊急な任務ですか?」
 『そうだ。お前の担当域外だが、とある場所に潜入し、次元を超えた犯罪の証拠を突き
止めてもらう』
 「・・・分かりました」
  隊長は口にくわえたタバコにマッチで火をつけると、思い出したように純平に尋ねる。
 『・・・・・そういえば、妹さんは元気か?』
 「たまに様子を見る限りでは元気ですよ」
 仕事柄、家族や知り合いには何も話していないし会えない。そもそも純平は自分の生ま
れ育った世界で旅をしていることになっていた。しかし、たまに遠くから妹の様子を見て
いるのを隊長は知っているのだ。
 「・・・それで、場所は?」
 純平は話を戻して、緊張した表情で隊長に尋ねた。



 翌日、純平は異次元警察の任務におもむいていた。暗い建物の中を進んで行く。
 「・・・・・それにしても・・・」
 建物の中を見回す。夜中なのでほとんど見えないが、高級そうな絨毯に壁の大きな彫刻、
きれいに並ぶ大きな柱などがある。
 「城に潜入工作とは聞いたことが無いな・・・・」
 この城の司祭が、魔力で強化した怪物を違う世界に売りさばいているという。そいつを
捕まえるのが、今回の任務だ。
 「表の顔が司祭とは考えたもんだ」
 そうつぶやいて、城の廊下を進む。見張りの衛兵は今のところいない。逆にそれが恐い
のだが。城の敷地は大きく、城の内部もとてつもなく広い。純平は時々来た道をメモに取
り、迷わないようにする。記憶力に自信が無い純平にとっては、この作業は大切なのだ。
絨毯のおかげで楽に足音を消し、純平は迷路のように複雑な城の中を探索していった。
 横幅が広い通路を進んでいると、前方に明かりが見えてきた。純平は慌てて柱の1つに
身を潜める。ガンッと側頭部を柱にぶつけて声が出そうになったが、なんとかこらえた。
 明かりがだんだん近づいてきて、その正体がランタンを持った見回りの兵士であること
が分かった。純平は太い柱を器用に使い、兵士からの死角をキープして兵士が通り過ぎる
のを待つ。
 兵士はこちらに気づかず、通り過ぎていった。
 (警備は普通か・・・・・)
 思ったより手薄な警備のようである。純平はまた、ゆっくりと進んでいった。
 しばらく進んで行くと、大きな木製の扉に突き当たった。鍵や罠がないのを確認して開
ける。
 中は大きな円形のホールになっていた。特に飾り気もなく、柱が憮然と並んでいたりす
るだけだが、壁にいくつか火のついた蝋燭がかけてある。誰もいないのを確認して中に入
ると、ホールの反対側にまた木製の扉があるのが見える。警戒しながらゆっくりと歩き、
ホールのちょうど中央まで来た時、不意に後ろから気配を感じた。
 振り返ると、黒い影がこちらに猛スピードで向かってくる。慌てて横に飛びのくと、純
平は黒い影を目で追った。影はどうやら人のようで、純平にまた向かって来る。
 (この城の警備か!?)
 腰を低くして敵の攻撃を迎えうつ。敵は飛び蹴りを放ってきて、純平はぎりぎりで横に
かわした。が、敵は純平のすぐ傍に着地すると、しゃがんで足払いをかけてくる。純平は
飛んでかわしたが、すぐ追ってきて殴りかかってくる。左手で捌きつつ回転して右手の裏
拳を入れる。
 が、敵は一歩後ろに下がってかわす。純平も数歩下がって相手と距離を取った。
 油断無く構えて敵を観察する。明かりが少ないため確証は持てないが、相手はローブを
身にまとっているようだ。
 「貴様、この世界の人間ではないな」
 敵の方が先に切り出して近づいてきた。鋭い目をした若い男だ。純平は何も答えず、男
を見ている。
 「大方、異次元警察の人間だろう」
 純平はその言葉にギクリとした。今自分が着ている服装はこの世界の市民が着ている一
般の服だからだ。左手のクリスタル=異次元警察だと分かる要素はほとんどないはずであ
る。そもそも、異次元警察の存在は極秘中の極秘で、信頼できる協力者と多世界間に渡る
犯罪組織に対してのみ、抑止力という意味などを込めて、存在のかすかな情報を流してい
るだけなので、異次元警察の名を出すということは・・・
 「誰だ?」
 純平が声色を低くして聞き返す。決して相手から目をそらさず、相手の動きを全て見逃
さない。相手の強さは互角かそれ以上。一瞬でも隙を見せれば命とりになる。
 「貴様が異次元戦士なら敵ではない」
 「・・・味方でもないんだろ?」
 「好きにしろ。俺は先を急ぐ」
 男はそう言うと、さっさと向かい側の扉に歩いていく。純平は少し待ったあと深く息を
吐き、男の後を追った。
 扉の前で二人は立ち止まり、扉をよく観察する。純平はしゃがんで扉の隅を見た。黒い
小さなボックスが目立たないように設置されている。
 「赤外線センサーか」
 純平は手早くボックスを取り外してセンサーを無効化する。剣と魔法が支配するこの世
界には明らかに無い技術だ。
 「やはり、この奥か」
 男は扉を開けて、またさっさと進む。そして純平もまた後を追った。
  


 扉を抜け、目の前の階段を下り、地下の奥深くまで来ると、沢山の牢屋が並んでいる通
路に辿り着いた。冷たい風が通路を流れている。通路に音は無く、風だけが存在を語りか
けているようだ。
 「実験体だ」
 男が牢屋の一つを見て言った。純平が男の視線を追うと、牢屋の中に少女が一人うずく
まっている。
 女の子の足を見てみると、逃げられないように両足のアキレス腱が切られていた。傷の
痕からして、最近捕らえられたのだろう。服装はこの世界のものだ。
 純平は牢屋の錠を壊して牢の中に入った。男は黙って純平を見ている。
 少女は2人に気づき、恐怖に顔を引きつらせて手で這いながら、牢の隅に逃げた。純平
はその場でしゃがみ、悲しそうな目で少女の顔を見る。
 「もう大丈夫だよ。そんな酷いことをした奴等は全員ぶん殴ってやるからね」
 純平はチョッキを脱ぐと、ゆっくりと近づいて少女にかけてあげた。少女はまだ少し警
戒しつつもじっとこちらを見ている。言葉は通じているはずだ。
 さらには髪を無理やり切られたようだ。いびつな形になっている短い髪の先を見て、純
平は怒りを抑えられないほどに感じた。
 「・・・家族は?」
 「・・・・・・・パパとママとお兄ちゃん」
 少女が震えた声で言った。純平は頷くと、
 「絶対、会わしてあげるからね」
 一瞬、少女と自分の妹の面影が重なる。
 最後に自分がかぶっていた帽子をかぶせ、立ち上がって振り向くと牢のわきの壁に男が
もたれかかっていた。純平は牢を出て男の前を通り過ぎる。
 「感情に流され過ぎだ。それが命とりになるぞ」
 男が言った言葉を純平は聞いてはいたが、答えはしなかった。



 長い通路を進み、いくつかの牢の前を通り過ぎると、不意に男が立ち止まった。
観ると、男が牢の一つを見ている。純平も見てみると、牢には中年の男がいた。格好はこ
の世界のものである。中年の男は激しい拷問を受けたらしく、服はボロボロで体のあちこ
ちから血が出ていた。
 男は牢の錠を壊し、中に入って中年の男の傷の具合を確認する。どうやら、男の目的は
中年の男のようだ。
 純平はそれを確認すると、先を進むことにした。
 「お前、名は?」
 牢の中から男が突然尋ねてきた。純平は立ち止まると、
 「・・・あんたは?」
 逆に聞き返す。男は特に反論せずに答える。
 「羽佐間(はざま)だ」
 すぐさま答えを出した羽佐間を見て純平は少し驚いたが、すぐ平静に戻った。羽佐間が
信頼できる男に何故かその時は思えた。
 「・・・新條だ」
 純平も答えると、羽佐間たちを残して再び一人で通路を歩きだした。自分にはやること
が残っている。
 またしばらく進むと、一つの扉に突き当たる。通路はここで終わっているため、もう一
度周りを確認すると中に入ることにした。
 鍵も罠もなく、ゆっくりと扉を開ける。中はさっきのホールと同じくらい大きな部屋に
なっていて、中央には機械仕掛けの椅子、壁沿いには様々な器具を並べた棚がある。ここ
で怪物を作っているのだろう。
 ふと気づいて上を向くと、たくさんの火の灯った蝋燭が吊るしてある。部屋の隅々が見
えるくらい明るいのはこのためだろう。
 「!?」
 さらに上を見ると、人が数人飛び降りてくるのが見えた。慌てて飛び退き、戦闘態勢に
入る。黒い装束に身をつつんだ者が五人。暗殺者のようだ。
 「最初からこの部屋に居やがったか!?」
 暗殺者たちは問答無用で襲いかかってくる。恐怖心を抑えるため気合を入れて、敵を迎
え撃つ。
 一人目がナイフを片手に持って襲いかかってきた。左手で、敵のナイフを持っている方
の腕を掴み、捻ってバランスが崩れたところに右手で相手のあごに掌でアッパーを入れる。
 すぐさま、後ろに振り返りつつ蹴りを放つ。タイミングよく敵の一人のみぞおちに突き
刺さって、相手は崩れ落ちた。
 三人目は両手にナイフを一本ずつ持ち、飛びかかってきた。純平も真上に素早く飛び上
がると、飛びかかってきた相手の顔に後ろ回し蹴りを放つ。まともに蹴られた相手は、4
〜5メートルほど吹き飛んで気を失う。
 その後、四人目と五人目を叩きのめし、純平は入り口の方へ振り返った。いつの間にか
司祭特有の白いローブを着た、三十歳代の男が立っている。首からは聖印がぶら下がって
いる。
 純平は左手を突き出して拳を限界まで握りしめた。
 「烈破!」
 青い光が全身を一瞬包み、次の瞬間にはメタリックブラックの全身スーツをまとった純
平が立っている。
 「異次元警察か。そろそろ来ると思っていたよ」
 司祭はそう言うと、目を赤く光らせ、全身を変化させ始めた。
 「しかし、商売の邪魔はさせんぞ!!」
 司祭の全身の筋肉が膨れ上がりどす黒く変色する。服はビリビリにやぶけて凶悪な体を
覗かし、さらには一瞬のめまいと共に周りが少し薄暗くなる。さっきまでとは違う空間に
なった証拠であり、ここでなら騒ぎが他に漏れることは無い。これは次元の狭間の特有の
もので、風景は先ほどまでとは変わりが無いが、生命や常識をまったく受け付けない空間
なのだ。
 それを黙って見ていた純平=ブラスターは、
 「俺は人を殺さないが・・・」
 瞬時に、左手に柄頭の無いロングソードを転送させる。
 「てめえは人間じゃあねえなあ!」
 剣を握りしめ、相手を睨む。つい先ほど前までは本格的な任務に対する緊張があったが、
今は怒りが身体を支配されている。
 司祭だった怪物は不気味に笑うと、何か見えない衝撃波を口から吐き出した。
 普通の人間には避けられない速さだが、ブラスターは素早く飛び退いて、不適に笑う相
手を見る。衝撃波は後方の壁に当たると爆発を起こした。
 「レーザーブレード!」
 ブラスターは剣を右手に持ち替え、左手で刃をなぞっていく。エネルギーをまとった刃
が青い光を放ち始め、薄暗い空間を明るくする。
 怪物がこちらに向かってまた衝撃波を吐き出すと同時にブラスターが動いた。衝撃破を
切り裂き、一瞬で司祭の後ろに駆け抜け、あまりのスピードでブレーキをかけた両足から
煙を上げつつ、怪物の何メートルか後方で剣を横に薙いだ姿勢のまま止まる。
 上下二つに割れた衝撃波が後方の壁で爆発を起こし、怪物はブラスターの元いた場所を
見たまま、ピクリとも動かない。腹部には青い線が真一文字に光っている。
 ブラスターが剣を地面に思いっきり突き刺さした瞬間、怪物の体が大爆発を起こした。
ブラスターはその場から動かず、荒れ狂う爆炎の渦の中に姿を消していった。
 


 「はい、証拠等は全て消滅させました。もちろん、城の人たちにも見つかっていません」
 人気の無い街はずれに止めてあるバイクの通信マイクに純平は答えた。異次元警察で作
られた超次元戦闘マシンであり純平の愛機であるバイク『グランランサー』を使って、本
部にいる隊長に連絡を入れているのだ。あの後、純平が脱出する時にはもう、羽佐間の姿
は無かった。羽佐間の素性が気になるが、今はどうしようもない。
 「あの、隊長。お願いしたいことがあるのですが・・・」
 一度マイクから離れてバイクの上で眠っている少女を見た。短い髪に無理矢理ピンクの
リボンをつけている。よほど大切な物なのだろう。純平は再びモニターを見る。
 「・・・ケガをした少女を救出したのですが・・・・」
 純平は言いにくそうだったが、隊長には分かったようだった。厳しい顔で、
 「異次元警察の医療技術は、関係者以外は重要人物にしか使えないのは知ってるだろ?」
 「しかし・・・」
 純平が反論しようとしたが、隊長は話を続けた。
 「でも、重要人物なんだろ?」
 純平はなんのことか分からずに答えられない。隊長はいたずらっぽく言う。
 「重要な人物なら使わざるをえないだろう?」
 純平は隊長の言っている意味にやっと気づき、大きく頷いた。
 「はい。とても重要な人物です!」



 街は活気に満ち溢れている。大通りではたくさんの通行人と共に、馬に乗った衛兵や重
い荷物を担ぐ商人たちの姿がある。その中にはボロい旅人のローブを着た純平の姿もあっ
た。
 「お花はいかがですか?」
 少女が道の真ん中で花を売っている。長い髪に結んであるピンクのリボンは、少女が歩
くたびに揺れる。
 「あのう・・・」
 純平は少女に近寄って話し掛けた。
 「花を一輪くれる?」
 「はい、2ジェルです」
 少女は笑顔で竹の籠から小さな花を一輪出し、純平に渡す。純平は受け取るのと一緒に
代金のコインを払った。
 「ありがとうございましたっ」
 満面の笑みでペコンと頭を下げお礼を言う少女に純平が尋ねた。
 「一人で売ってるの?」
 「ううん、パパとママのお店を手伝ってるの」
 「お兄ちゃんは?」
 「お店だよ。お兄ちゃんを知ってるの?」
 首をかしげる少女に純平は苦笑して、
 「いや、勘だよ」
 不思議そうな顔をしていた少女は、もう一つ聞いてきた。
 「お花、どうするの?」
 「妹にあげようと思ってね。・・・じゃあね」
 軽く手を上げて、少女と別れた純平は再び通りを歩きだした。後ろからまた元気な花売
りの声が聞こえてくる。
 通りを歩いていると、前方に自分と同じような格好をしている羽佐間が立っているのに
気づいた。純平はこちらを見て立っている羽佐間に近づく。
 「つくづく甘い奴だ」
 冷たい表情を変えずに、羽佐間が純平に言う。二、三メートルの距離で純平は立ち止ま
り、黙って羽佐間を見ている。羽佐間は軽く溜息をつくと、純平の方へと歩き始めた。
 「・・・だが」
 純平の横を通り過ぎる時、羽佐間は口を開いた。
 「あの時お前がいなければ、俺も同じことをしていただろう」
 純平が振り返ると、羽佐間はさっさと人ごみの中に消えていった。純平は軽く笑うとロ
ーブの内側から帽子を取り出して深くかぶり、自分も人ごみの中に消えていった。



 早朝、小さな部屋で少女が目を覚ました。十歳前後の、こげ茶色の髪を揺らす白い肌
の少女は、布団を「よいしょっ」とどかしてベッドから降りる。
 「?」
 猫柄のパジャマ姿の少女は、窓際にある机の上に花が一輪置いてあることに気づいた。
机の前まで行くと何気なしにその花を手に取ってみる。周りをよく見てみると、いつの間
にか窓が開いていたらしく、白いカーテンが風にそよいでいる。少女は再びその花を見る。
 その花を見ていると、少女はなぜかうれしかった。


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・[237] あとがき 2006.4.24(月)07:29 じゅんぺい (303)

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