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127 電波大系 ジュラハザード2(リレー小説)
2003.3.22(土)00:35 - ゲンキ - 5995 hit(s)

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第一話 前編


 コストグラウンドの中心──かつてGPBと呼ばれる巨大なエネルギー体がそびえたっ
ていた場所は、謎の四人組によってGPBが焼き尽くされた今、かつてのような静かで平
穏な時を取り戻していた。
 特殊エネルギーの供給源であったGPBを失ったマルター使い達は少しずつその力を失
い始め、少しずつ普通の人間としての暮らしを取り戻し始めている。無論、中にはマルタ
ーの力にしがみつき、全く変わろうとしない者達もいたが、今やそれはコトスグラウンド
の中でも、ごく一部の少数派だけである。
 と──その平和の訪れた森から、今日も一人抜け出そうとする者の姿があった。今だ、
能力を失った人間にこの森での暮らしは過酷すぎる。中には、こうして森を離れ、外界を
目指す者もいた。

 だが、その少女はどこかそれらとは違った。
 透き通るような真っ白い肌と真っ白な髪の毛。幼いながらも美しい顔立ちと、赤い瞳。
 そんな容貌に似合わぬボロ布をつなぎ合わせただけの着衣。

「……ちゃ……ん」
 遠く彼方を見る、呆けたような顔で何事か呟き、頼りなくゆらゆらと揺れるような歩調
で歩く。
 そんな、まるで夢遊病者のような彼女は、本来なら今だにマルターの力を捨てきれない
でいる者達の、格好の標的だった。さもなくば、か弱い娘が一人。獣のエサにでもなって
いただろう。
 だが、結局少女は何事も無かったように森を抜け、そのまま荒野の果てへと歩いていっ
た。その背中を、森の内部から無数の眼が見つめる。マルターの能力を留めた者達。マル
ターの力を失った者達。誰もが、同じ「目」で少女を見送る。

 一つとして変わらぬ、「怯えた」目で──




【電波大系ジュラハザード2
       第一話 TATEYAMAジャンクション】




「へっくし!」
 盛大なクシャミをかましながら、じゅらいは雪山の上を歩いていた。
 登っているわけではない。今はとりあえず、歩いて、そして探していた。
 やがて、一面の「白」の中に、ポツンと浮き出た「黒」を見つけ出す。
「ああ、いたっっ!!」
 叫ぶなり駆け寄って、じゅらいは雪の中に半分以上埋もれている黒マントを掘り出した。
「くーちゃん黒いから判りやすかったよ!!」
 元ネタも知ってる人には判りやすい……もとい、そうしてじゅらいによって雪中から救
出されたのは、おなじみじゅらい亭の電脳ナンパ師。副業で電脳召喚師もやっているとい
うクレイン=スターシーカーだった。
 彼は雪の中から助け出されるなり、ガチガチと歯を鳴らしながら一言。
「う゛……う゛う゛う゛……眠い……」
「しっかりするのだ、くーちゃん!!」
 じゅらいは死に向かおうとする親友に、愛のムチをくれてやった。

ビシッバシッゲシッドカッゴキャッベキッビシッ

「目が覚めたかくーちゃん!?」
「え、永眠……しそう」
「しっかりするのだ、くーちゃん!!」

 リピート。

「もう目が覚めました、やめて」
「念のためもう一回」

 リピートリピート。

「あれ、くーちゃん?」
「……」
 クレインは気絶していた。じゅらいはそれを眠ったものだと思い込み、もう一度手を振
り上げるが──
「やめなさい」

ズガゴンッ!!

 背後からの痛烈なツッコミで、クレインともども気絶する。
 仲良く倒れている二人を見下ろし、ツッコミクイーン・ルネアはぼやいた。
「あたし一人で運ぶの?」
 手近に仲間は気絶している二人組しかいなかった。



第一話 後編


 じゅらいがクレインを掘り起こし、ルネアがフライパン片手に彼等に接近しつつある時、
ゲンキと幾弥は、またも二人揃って敵の真っ只中にいた。
(ひーっ!?)
(ど、どうしましょうか?!)
 ここは山頂へと続くロープウェー。そのゴンドラの中で、二人は息を殺しながら下界を
窓の外の様子を伺っていた。

 そこにいるのは、ドラゴンドラゴンドラゴンドラゴン、少年○ース、ドラゴン。

 ドラゴン尽くしだ。その全てが「ホワイトワイバーン」と呼ばれる近年発見された新種
のドラゴンで、翼長が10mほどのドラゴン族としては小型のもの。
 だが、小型と言ってもドラゴンはドラゴン。しかも、ザッと見ただけでも十匹近いホワ
イトワイバーン(以下、『WW』と呼称)が停止したゴンドラの周囲を旋回しながら飛び
回っているのだ。
 さすがの魔王と変化鳥も今回ばかりは大ピーンチ、というやつである。
(幾弥ちん、ぴんちっ!!)
(冗談言ってる時ですかぁ?!)
 と、珍しくゲンキがツッコミに回ってみるものの、小声なのでいまいちキレが悪い。状
況は全く改善されていなかった。
(と、ともかくさっさと行ってくれることを願いましょう)
(そうっぴね。気付かれたら大変っぴ)
 と、幾弥が言ってから、二人は気付かれた場合にどうなるかを考えてみる。
 一般的なドラゴン同様、『WW』は雑食らしい。
 ということはお肉も食べるのだろう。
 二人とも、じゅらい亭のメニューに名前が載ってるような天然食材冒険者だ。
 多分見逃してはくれないだろう。
(絶対見つからないようにしましょう)
(絶対見つからないようにするっぴ)
 互いに余裕のない表情で頷きあい、早速それまで以上に気配を殺す努力をする。
 しかし、こういう時に限って余計なものが生まれるものだ。
(…………)
 微妙に青ざめた顔で、虚ろな視線を宙に這わせるゲンキ。
(どうしたっぴかゲンキさん?)
 幾弥が訊ねると、ゲンキは口を半開きにして、ちょっとアクビに似た状態になった。
 それだけで幾弥は彼の身に何が起きているかを悟る。
(だめっぴゲンキさん、それだけは!!)
 と、慌ててゲンキの口を押さえにいって幾弥は己の迂闊さを悔いた。
 彼の見事な鳥羽が、ゲンキの鼻にトドメの一撃を加える。
「へっ……へっ……」
(ひいいっ!?)

「へっくしょん!! ……うう、ちきしょうめい」

 ゲンキがお約束のセリフと共に鼻をすすりあげた、その時だ。

ブシュー

 いやーな音がガラス窓の向こう側から聞えてくる。二人がそろってそちらを見ると、白
く曇ったガラスの向こうに巨大な目玉。

『ひっ──ひあああああああああああああああああああああああああっ!!!』

 悲痛な叫びが、ここタテヤマ山脈の峰に木霊した。



 そして、さらにそこから3Kmほど離れた山小屋の中では──
「みのりちゃん、寒くない?」
「ううん、眠兎くんがいるから平気」
 ラヴラヴオーラを発し続ける二人が、いたりした。
 無論語るまでもなく、片方はじゅらい亭最強と名高き冒険者・藤原 眠兎。
 そしてもう片方は彼の恋人で、じゅらい亭で日夜ウエイトレスとして働く四季 みのり。
「もしも少しでもカケラでも寒さを感じたら私に言って下さいね?」
「うん、でも大丈夫。眠兎くんが一緒だから」
 二人以外の人間がこの場にいたら間違いなく「寒さも消し飛ぶわ」とツッコミたくなる
ほど熱を発し続ける二人は、別にデートや旅行の類でここに来ているわけではない。れっ
きとしたお仕事である。
「それにしても皆、帰りが遅いね?」
「がんばってるんだと思う」
 外に出て行った三人と一魔王と一羽がどうなっているのかは知らず、のんびりムードで
くろつぐ二人。外のことなどどうでもいい。今、ここにいる二人だけが真実なのだってな
雰囲気だ。
 それはともかく、彼等と外に行った合計五体の冒険者が、ここタテヤマ山に来た理由は
二つある。一つは、今現在ゲンキと幾弥の周囲を旋回している『WW』達が、最近この近
辺に世界中から終結しつつあるという噂があり、その真偽の確認をしてほしいという依頼
が、じゅらい亭に舞いこんだからである。
 そして、もう一つは、こっちこそがクレインやルネアをはじめとする一部の常連達を突
き動かした真の理由とも言えるのだが──ゲンキの、いつもの電波な発言のためだった。


 二日前──セブンスムーンでじゅらいから今回の調査依頼についての説明を受けた後、
ふとゲンキが天井を見上げた。
「どうかしましたか?」
「受信中です」
 謎の一言だけを残し、しばらく無口になるゲンキ。周囲の常連達はごく一部を除いて、
ついていけずに後退った。
 そして、おもむろにゲンキが一言。

『ホワイトワイバーンの集う地に、奇蹟の秘薬あり』

 奇跡──という単語にして、何人かがピクリと素早く反応した。レジェはテープレコー
ダーまで用意している。
 秘薬──という単語には、JINNが素早く反応した。その手には早速試験管が握られてい
る。

『秘薬は愛の薬……手にしたものには、至上の愛が授けられよう』

 愛──という言葉にクレインが、火狩が、ルネアが、眠兎が、みのりが、その他の常連
達が怪しく目を輝かせた。早速パーティーを組み始める気の早い者も何人かいる。

『ホワイトワイバーンの集う地へ──』

 ポツリ。呟くように言ってから、ゲンキの言葉は途切れた。
 そしてふっと表情が元に戻り、一言。
「差出人は『RR』さん。受信した電波メールの内容は以上です」
「うおお、すげぇ。メール機能内蔵魔王ッスね」
「改造したい……」
 花瓶が感心して、JINNが何やら危ないことを言うが、とりあえず他の皆は聞いてない。
 それぞれパーティーを組む相談をして、組んだ先から出て行ってるからだ。
「じゃあ、僕は戦力的に見て、じゅらいさんチームに」
 ちゃっかりゲンキは、最強チームにもぐりこもうとしていた。


 かくして『奇蹟の秘薬』を求めてタテヤマ山脈までやってきた常連ズ。
 一部に『WWの調査』を優先させているパーティーはあるものの。
 かつてない、常連ズ同士の争いの予感を秘めて──

                                次回へ続く(爆)


〔ツリー構成〕

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・[155] 電波大系 ジュラハザード3(リレー小説) 2003.7.7(月)03:25 星忍とスタ (2953)
・[187] 電波大系ジュラハザード3 第二話「マホカンタ様がみてる」ver1.2 2004.1.26(月)03:40 じゅらい (2496)
・[207] 電波大系ジュラハザード episode1:RECKLESS WAVE 2005.10.27(木)20:03 じゅらい (364)

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