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119 連作「プロローグ 全ての冒険の始まり・・・・・・」
2003.3.15(土)13:35 - ぴぃ - 2599 hit(s)

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―レオノア王国首都マキス 歓楽街―

「お前にやる酒なんざねえ、帰れったら帰れ!」
一人の酔っ払いが酒場から転がりでる。
道端に伸びたように大の字になったその人物を見下ろすように立つ
巨漢は酒場のマスターである。
「そーいわんでよぉ、頼むよ親父、一杯だけだからよぅ……」
ザンバラな黒髪に顔中に一面不精髭の男は死んだ魚のようなうつろな目でマスターを見た。
もっとも左目は剣の鍔を模した眼帯に覆われているので右目だけだが。
ふと、マスターの顔がこわばる。その目の中にあるなにかを感じたようだ。
「う、うるせぇ、とっととどっか行け!」
マスターは中へ消えた。
「ち……ちくしょう、俺がなにしたってんだよ……ちくしょう……。」
周りの雑踏を歩む人間達の目も自然とこの男にいってしまう。
「なんだぁ……オ、オメエラァ……」
罵声に蒼くなった者達はかかわるまいと足早に去っていく。
よろよろとその男は歩き出した……ただ宛てもなく……。
よろよろとした足取りでどの程度歩いただろうか。歓楽街をすぎ、静かな町並みの中であった。
つまずいた拍子に座り込んだその男はそのまま動かなくなった。
その前に一人の人影。黒いローブで覆っているため外見はわからないが異様に細い。
フードを外したその姿。流れるような金色の髪に紅い眼、そして彼女が人間ではないことが、
一目でわかるのは、頭部についているのが紛れもなく狐科の動物の耳だからである。
「不快だわ、こんな人間のためにこんな汚らしい所にこなければ行けないなんて!」
ここは街の山の手≠ノ当るはずだが、彼等にとって人工物は嫌悪の対象でしかない。
容赦のない蹴りが倒れている男のわき腹にヒットする。
「…う……うう……。」
堅いブーツのつま先がアバラの内側に入ったため、一瞬呼吸がつまり、その痛みで
男は目を開けた。
「あんた……ル……シーダ……」
超然と男を見下ろす女〜ルシーダ〜は男がゆっくりと身を起こすのを待った。
「なんの……用だ……」
「使役に決まっているであろう。おぬしは私達の下僕。それ以外の何者でもない。」
「わたし……たち……?」
酒のせいで目がまわる。
その視界の中に同じく黒いローブの人影がひっそり立っていた。
その姿を認め、男は頷いた。
「わかった、少し時間をくれ、酒を抜いて、身支度を整える……」
「よかろう、そのようなナリで私達の住処にこられても困る。3日くれてやろう。
それ以上こなければ此方の命運は決まったと思うがよい。エミーナ、さっさとこの汚らわしい
界隈からでるぞ。」
2つの黒いローブは闇の深みに消えた。
それを見送り、男は空ろな視線を目の前の地面に向けた。




               ☆
―ネムリア王国王都クリエ―

ロールバックする四年前の忌まわしい記憶……


夜空が紅く染まっていた。
1つの国がまさに終焉を迎えようとしていた。
燃え上がる炎の中、玉座に座る王は脇に立つ剣士を見た。
口髭もオールバックの髪もどちらかと言うと白髪のほうが多く占める
剣士はそれでも超然と立ち尽くしていた。
「ヴァリウス、すまぬな。わしはお主になんの見返りもやれん。」
「御案じなさいますな。地獄はまだまだ刈り取る領地も多いと聞き及んで
おります。この報酬はそちらで頂きまする。」
老齢の剣士、ヴァリウスは王を見るでもなくそう言い、腰の長刀を
スラリと抜き放った。
玉座に乱入してくる敵兵が見えた。
「お主の弟子、パールと言ったか、無事、逃げ延びたかの?」
「さて。」
そう言いヴァリウスはなぜか苦笑を浮かべた。
「奴はそこそこの実力の上に類稀な運を持ち合わせておりまする。」
「ふむ。」
頷いて、王も立ち上がった。ケープを脱ぎ、彩色豊かな鎧を露わにする。
王も腰の剣を引き抜いた。
「お主の前でまともに戦うのは初めてだったな。師、ヴァリウスよ。
評価は地獄で聞こう!」
二名の姿が敵兵に猛然と挑み、その姿が見えなくなるまでものの数分と
かからなかった……。



                ☆
暗闇に光る銀光を素早く払いのけ、パールは国境に少しでも近づこうと
走る。
顔の左半面を覆う出血は並みの量ではない。飛来した流れ矢が左目に突き
刺さったのは数分前。激痛を堪え、引き抜いたが、治療する暇もなく、襲
いかかる敵兵を切り飛ばし、払いのけ、すでに1時間が経過していた。
1度は木の窪みに隠れ、なんとか切り取った袖を顔の左側に巻きつけ、凌い
だもののそれまでの出血は並みではない。
「片目とは不自由なものだ。」
狙いが逸れる。目測より数センチの誤差を毎回修正しながら切りかからなければ
ならない。名の知れた騎士や剣士が来たらその狂いも、修正によるわずかな時間差
も命取りになるだろう。
王国剣術指南役に師ヴァリウスが抜擢され、その名声も高い北流剣術の1派
藤(とう)派。その次世代を担う実力の剣士として免許皆伝の栄誉を受けた
パールであるが、名声で敵兵は倒せない。特に戦場と言う、ある意味異常な精
神状態の中では剣士などはあまり役に立たないのである。
師ヴァリウスとはすでに別れを交わしており、いかなる状態であっても彼は
流派を絶やさぬよう、逃げ延びることだけを言い含められていた。
さすがにはじめは煮え切らなかったパールもこの段になってぐずぐず言っては
いられなかった。
不思議なことに卑屈な感情も後悔もなく、戦闘がはじまるや一目散に国境を
めざした。そう、流派を一人で守り抜く。これ以上の戦いはないのである。
敵の声が遠のき、ふとパールは周囲に目をやった。
月明かりはない。ただ広がるのは鬱蒼と生い茂るオークの原生林。
血走った眼で周囲をうかがいつつ、ボロボロに刃こぼれした薙刀を捨てる。
逃げて4〜5時間というところだろうか?
「ここは……」
森は不気味に静まり返っていた。
もとよりどちらかと言えば温和な顔つきの彼だが、それでも眼光は鋭い。
利かぬ左側に絶えず神経を集中し、眼以外のもので異常をを捉えようとはかる。
《幻魔の森》、彼はそう言う名で呼ばれる国境近くの森について記憶があった。
この森ではよく行方不明者がでるという。同時によく晩聖節の夜には蛍火が森
に集まり、死者が集会を開くと囁かれている。
迷信とも言われるが、魔法や、死霊術があるこの世界、それだけとも言いきれない。
噂には極数%の事実が含まれることが多いのである。
背後にざわめきを感じる、彼を追って来た一隊だろう。
パールは足を速めた。
不意に矢が数十本飛来した。
「しまった!」
飛びのきながら切り払うが数が多すぎた。
肩に、背中にわき腹に突き刺さるクロスボウ。
跪くパールに襲い掛かる10数人の人影。
ギリッと奥歯を噛み締める。
「藤派流儀、彩明!」
居合抜きに放たれた剣が独特の瑠璃光を放ち、周囲を覆う。
チンッ
鞘に収まる剣の澄んだ音が周囲に木霊し、崩れ落ちるいくつかの音が続いた。
正面から踊りかかる人影を切り裂き、返す一撃で後ろの敵の剣を弾き落す。
不意に囲みの一部が崩れた。
素早くそこに飛び込み、走り出す。
ひどい出血とそれを煽る激しい動きにパールの意識は朦朧としてきた。
石畳の感触を最後に、パールは意識を失った。



                ☆
どれくらい、というには短かすぎる時間が流れた。
月明かりだけが光の元だった。傷ついた体には重すぎる鎧を脱ぎ捨て、小袖
だけになってパールは周囲を見渡した。
「こ、これは……」
周囲を圧する巨大な石作りの神殿。
屋根の瓦に刻まれる刻印はパールの知らぬ神のものだった。
不意に空が暗くなりはじめる。
急激に悪天候へと変化する空に妙な違和感を覚えつつも朦朧とした意識には
それを考えるスベはない。ただ中へ、濡れないところへ行くのが精一杯だった。
中に入るや、不意に周囲に光が満ちた。
目がくらみ、思わず膝をつくパールの頭に強烈な衝撃を持って心話が響く。
我が聖域を人血で汚すとはなにか!この地の信者は我が教義道理も知らぬか!
一括する声に思わずうめいて頭を抱える。
ふと、前面の祭壇、光の中心に二つの人型を認め、パールはそれを見極めようと
顔を上げた。
「す……すまぬが……信者では…ない……。すぐに立ち退くゆえ、ゆるしてくれ……。」
2つの人影を取り巻く光が緩んだ。金と銀、宙に浮く妙齢の美女は異なる2色の光をまとい、
それと同じ瞳と髪をしていた。
それで聖地を汚した罪を償えると思うてか、痴れ者が!
しかしルシーダ姉様、この者……
後ろに控えた銀色の女神が金色の女神に語る。
面白い相をしております。《血》を与えるのもよいかと
怒りに身を震わせる金色の女神、ルシーダは静かに言う銀の女神の声に不意に冷静さを取
り戻す。
この男が、か?
とは言え、あれをまずどうにかしないとなりますまい。
視線の先にはパールを追ってきた兵士の唖然とした顔があった。
素早く剣に手をやるパールを銀の女神が手で制した。
礼儀を知らぬ輩よの、ならば家畜、獣と同じ。人でいる必要などないわ!
1歩前に出た金の女神はそう告げ、サッと手を振るや、不意に鎧の戦士達が消えた。
(な……な……)
そこに不意に現れた犬に猫にリス、サル、野豚……
それらは何を感じたか一声嘶くと一目散に外へ消えた。
この女神は短気らしい、とこんな時に考えてしまうパール。
まったく同じ外見ながら、後ろにいる、銀色の女神と雰囲気が違うのはそのあたりの
性格の差だろうか?不意にクスクスと銀色の女神が笑う。
あらあら、そんなことを考えてますと短気なお姉様に動物にされてしまいますわよ?
ぐっと詰まるのも無理はない。心が読まれているのだ。
さあ、エミーナ、さっさと用事を終わらせてこの汚らわしい世界から出ましょう。
ところで、あとはこの無礼な男の処分だけど。
銀の女神、エミーナは頷くと彼に近寄った。
かぐわしい花の香りが鼻腔をくすぐる。鈴蘭のようだ。
柔らかい銀色の光が淡くパールを包むや、ふと痛みが消えていることに気がついた。
あなたには我らがなにか、教えておく必要がありますわね。っとその前に……
エミーナがさっと手を振るとあたりの風景が一変した。天も地もない満天の星が360度
ひしめく巨大な空間。
「なっ……」
悲鳴を上げかけるのも無理はない。彼らは宇宙というものを知らないのだから。
しかし落ちつくやパールはその広大な空間に心奪われる。銀色の燐粉が宙に舞い、
エミーナと呼ばれた女神のひんやりとした手がパールの額に当てがわれた。
凄まじい勢いで流れこむ異界の知識にビクッと体を震わせたパールであるが、特に
抵抗もせず、与えられるものを受け入れて行く。
彼女はいずれの世界にも属さぬ双子の女神。運命を司るエスティマの2柱神、宵の
女神ルシーダと暁の女神エミーナという。
我らが社を汚した罰を与えます。そう、ある使命を、というより宿業を与えると
言うべきですね
両者は人のいない動物のみの世界エスティマの運命を司る神であり、人を嫌う。
それゆえに人の中に流れる血液を不浄のものとする。
そなたには我ら2人の代行者となって次元を旅し、異界にて任を果たしてもらう。
それが罰だ。
と、ルシーダ。憎憎しげにいうが、あまり感情がこもっていないように感じるのは気のせい
だろうか?
ほらほら、全部あなたの思っていること、聞こえてしまっていますよ?
とエミーナが笑いながら注意する。
でも、そなたにはそれしか生き残る道はありませぬ。
と、真顔に戻っていうエミーナをパールがじっと見た。
「断ったら?」
死にます
即答が帰ってきた。
すでにあなたは死にかけております。ですから生き残るなら受け入れるしかないでしょう。
「そうだな、生き残れという師の遺言もあるゆえ、受け入れるしかあるまい。」
血が止まったので、パールは眼の包帯をはずした。
眼はどうにもなりませんでしたわ、眼があるならともかく、ないのでは治しようも
なかったので。
眼窩の空洞に、眉をしかめて言うエミーナに剣のツバと紐で眼帯を作りつつ、パールは頷いた。
「しかたあるまい。して、その宿業に従うとして、これからどうすればよい?」
行ってもらうところはその時にでも伝えよう。しかしその前に……
頷いたエミーナが左手を、言葉を発したルシーダが右手を手に取った。
我らが下僕の証たる<刻印>を与えん。
その両手に金と銀の痣が刻まれた。
さあ、行け、なにかあるときは私から声をかける。それまでこの地へ足を踏み入れるな
ふと気がつくとパールは森の中にいた。
「……。」
遠くの空が赤い。恐らく王城が燃えているのだろう。
パールは森を抜けるべく歩き出した……
それから3年、ルシーダの声は届かず、滅亡した王朝の剣指南役の弟子であったパール
は褒賞がかけられ、影に忍ばざるおえなかった。
彼の生活はひたすらすさんで行った。

     

                    ☆
再びレオノア王国首都マキス―――
みすぼらしい貧民街にて・・・・・・

長屋に戻ったパールはまず万年床と化している布団に身を寄せた。あっという間に眠りの門
を叩く。どこでもどんな時でも眠れるように、彼は訓練されていた。そしてきっちり1時間後
眼を覚ますや髭を剃り、髪をまとめる。刀の柄を腰に固定する組み紐で、髪をまとめ、その
紐に一本の簪状の髪止めを通した。
服も板金入り皮鎧も、靴もボロボロなので、残りの金をはたいて買い換えた。
先ほどの酔っ払いだと誰がわかろう?まったく別人のようだった。
路地でふと足を止める。賞金首を捜すビラに自分の名と顔があった。
それを剥がし、丸めて捨てる。
「まあよかろう……」
そう呟いて、パールは町を後にした。
相変わらずオークの木の森は異様な雰囲気をかもし出してる。
森へ入り10分、不意にパールは足を止める。
不意になにかが動き、黒い影は猛然とパールに飛びかかる。
鋭い抜刀音と鈍い音が立て続けに鳴り響いた。地面に激突して動きを止めた、人らしき物体に
は目をやらず、刀を両手で構える。
冬香離魂刀……
刀身の煌きが鈍く青白いのは結露しているためと、刀身から湧き上がる強烈な冷気ゆえにつ
いた名。ルシーダが彼に授けた刀。その剣の持つ強烈な冷気は持ち主の回りの風景すら凍ら
せるという。掠めるだけでも腕の1本くらい切り落とされる凄まじい切れ味の刀。
そう、それは不思議な光景だった。20度近い気温が急激に下がり、あたりに白い霜がおり
始める。周囲が白くなるなかで、もう一人、黒い影が立ち塞がる。
「北流藤派継承者パール殿とお見受けする。」
その男は不思議な姿をしていた。全てが黒であった。皮膚すらも黒曜石ほどに黒かった。
この凄まじい冷気の中でも、男は平然としていた。
「貴公は?俺は先を急ぐ。」
「九鬼流赤王派 フェンという。他流試合が禁止のお主の流派だが、今なら別に制約もあるまい。
立ち会っていただこう。」
おそらく町からつけてきたのだろう。
パールの晴眼に対し、フェンは抜かずにゆったりと剣に手を置いているだけ。
「抜刀術か……」
九鬼流の主流は居合であったことを思い出した。
腰の短い刀をさらに引き抜き、左手にもつ。
「ニ刀か。しかし防げるかな俺の居合が。」
チンッ
そう言うや、高い澄んだ音が響いた。
なんの抵抗もなかった。なにも見えなかった。ただ一筋、パールの頬に紅い線が走った。
パールが目を細める。
(思ったより早い。)
パールが動いた。
真正面からの突撃、パールの右手の太刀がキンッと鋭い音を立てた。突き出される黒烏の
小太刀がフェンの顔をかすめる。
つうっと再度パールの顔に紅い筋が走る。
そしてフェンの上着が袈裟懸けに切れた。そう、上着のみ。この状況下で下の服には一点の
切れ筋すらついてない。
フェンの表情が一変していた。パールにはフェンの動揺が見て取れる。
フェンには見えなかったのだ、1刀目ではなく、服を切った2刀目、黒い小太刀による影刃が。
パールは小太刀を仕舞った。そして冬香を両手で構える。
第二刀から第一刀への変更、それは彼の本気を意味する。
その落ちついた挙動が逆にフェンの動揺を誘う。晴眼から右八双へ。
パンッ!
ステップ音が響いた。両者の交錯は一瞬。パールの踏みこみに対し、居合で返そうとした
フェンは刀を抜けなかった。
パールの鉄の篭手をつけた左手の拳がフェンの刀の柄頭を痛打し、抜く暇を与えなかったのだ。
「お見事……完敗だ……」
ずるり……
左胸から背につき抜けた冬香がゆっくりと抜け、フェンが仰向けに倒れる。血は流れない。
フェンの死体は凍結していた……。
後も見ず、パールは歩き出した。
森には元の暖かさが戻りつつあった。



                      ☆
不浄の血で我が聖域を汚さなかったのはおおいに結構。
社に入るや心に直接響く声。
「来たぞ、ルシーダ、どうすればいい?」
いつの間にかルシーダがいた。パールの後ろ、今くぐってきた鳥居の前。
再度ここをくぐるがよい。されば世界が開けるであろう
「ことが終わったら、どう連絡をつける?」
余計な心配をせずともよい、ところでお主はこの地に未練はあるかの?
「特にはないが?戻れぬのか?」
ルシーダは首を横にふる。
そんなことはない、が、時間軸が狂うのでな。同じ時間にはもどれぬ。
次に戻るのがこの世界の10年後か、はたまた1000年前かそれとも5分後か
予測できんだけじゃ
主だった友人とは国が崩壊して以来連絡をとっていない。
それゆえ別段問題はなかった。
「かまわんよ、もどらなくても困ることはあるまい、最も飛ばされた場所によるがな。」
ふむ、では門をくぐれ
ルシーダがすいっと脇へどく。その後ろにはエミーナが静かに立っていた。
ことはお主がこの因果にかかわるよう細工をした。それゆえ、事前の説明はなしじゃ。
それと……
ルシーダここで一呼吸置く。
飛ばされる先が必ずしもお前向きとはかぎらぬ。苦境に陥ることもあるかも知れぬが……
「しかたあるまい、それでも俺に選択権はないのだからな。
最も、遂行できなくてもその場合は勘弁してもらうよりないが……」
フンッとルシーダ、鼻をならす。
私もエスティマの運命神、お主の運を変えることくらい造作もないわ。とはいえ、油断
はせぬことだ。生き残るだけではなにも生まれぬのだからな。さあ、行け、エミーナとて
次元間の門を長く開けておくのはそう容易いことではないのだ。
頷いて、パールは門の前に立った。
お気をつけて。
エミーナの声が響いた。軽く会釈し、そこに足を踏み入れる。チリチリとした軽い痛みが体を
かけ、次の瞬間、パールは光の中にいた。
こうしてパールは次元の旅人となったのである。
その耳に、いや、直接心に語りかけるエミーナの声。
さあ、運命を変えてみて、あなたの行き先それは……

パールの全ての冒険はここから始まったのである。


〔ツリー構成〕

[118] ぴぃ 2003.3.15(土)13:25 ぴぃ (177)
・[119] 連作「プロローグ 全ての冒険の始まり・・・・・・」 2003.3.15(土)13:35 ぴぃ (15388)
・[120] 連作「パール(ぴぃ)」―じゅ亭登場編― 2003.3.15(土)13:56 ぴぃ (16585)

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