brotherhood

      彼らがエンターテインメントの世界を席捲し、
      駆け抜けていった5年間の記録です。


chapter 1. Debut
  • ブルースブラザースは、1978年4月22日、サタデーナイトライヴの
    ゲスト・ミュージシャンとしてデビューを果たした。



  • ディティールに異常なまでに凝ることで有名なダン・アクロイドは、
    既にこの時点でほぼ完ぺきなエルウッド像を作り上げることに成功
    している。
    身体にピッタリとフィットした黒のジャケット、ストレート・スリムの
    黒いパンツ、正確にシングルノットに結ばれた黒い細身のネクタイ、
    金色のタイメックス・デジタルウォッチ、黒のポークパイ・ハット、
    そしてサングラスはレイバンNo.5022-G15。

  • 一方、ベルーシの方はスーツこそ黒の上下だが、三つ釦を全て留めて
    カチッと着こなしている上、ダークブラウンの帽子をかぶっている。
    サングラスもキャッツアイタイプのものを着用。



  • 2人は、有名なロックプロモーター「ドン・カーシュナー」に扮した
    ポール・シェファーのイントロダクションで登場した。
    「ロックコンサートにようこそ!1969年、今や伝説になったチェッカー
    レコードのマーシャル・チェッカーがこの私を、シカゴのサウスサイドに
    ある小さな、しかしファンキーなクラブでブルースを唄う新人に引き会わ
    せてくれました。
    そして今日、彼らはもはや単なる伝統的なブルースバンドでは無く、
    音楽市場を震撼させる存在へと成長したのです。
    皆さん!ジョリエット・ジェイクと彼の物静かな弟エルウッド、
    ブルースブラザースの登場です!」

  • 「Hey Bartender」が彼らのデビュー曲となった。

  • 番組のレギュラーバンドであるサタデーナイト・バンドのメンバーが
    バックを務めた。
    後にブルースブラザース・バンドのリーダーに指名されるポール・
    シェファーは、このバンドのキーボード奏者だった。

  • ロックプロモーター「ドン・カーシュナー」はポール・シェファーの
    当たり役となった。第2シーズンでは、ビル・マーレイ扮するラウンジ
    シンガーの相方ピアニストとカーシュナーの2役をこなし、番組の準
    レギュラーの座を獲得した。

  • サタデーナイトライヴの売り物の一つは、毎回トップミュージシャンが
    ゲストとして登場し、ライブ演奏をすることだった。
    番組レギュラーのコメディアンがミュージシャンとし唄い踊る姿を、
    観客は始め戸惑いの目で見ていたが(ジョークなのか本気なのか分から
    なかった為)、やがて2人の真剣なパフォーマンスに引込まれ、拍手と
    歓声が沸き上がった。

  • この日のプログラムを初期の最高傑作の一つとして高く評価されている。
    ホストはスティーブ・マーチン。(番組史上最多ホスト/12回を記録)
    ブルースブラザースのデビューに加えて、
    チェコ・ブラザース(フェストランク・ブラザース)、
    キング・タットも登場している。

  • 番組の終わりにブルースブラザースは再度姿を見せ、「I don't know」を唄った。

chapter 2. Blues was born
  • ブルースブラザースのプロトタイプは、サタデーナイトライヴの
    第1シーズン(1975/10〜1976/7月)に登場した人気キャラクター
    「Killer Bees」が唄う「King Bee」だと言われている。

  • アクロイド自身も90年代に入ってからは「ブルースブラザースを番組で
    やりたいと言ったら、最初は蜂のコスチュームでやれ、と言われた」と
    語っているが、初期の2人へのインタビューや当時の関係者の証言を
    綿密に調査していくと、「King Bee」とブルースブラザースは無関係で
    あることが分かる。アクロイドは、ベルーシの死後10年を過ぎてから
    意図的にブルースブラザースの歴史を新たに整理したのだろう。
    その歴史は実際よりもドラマチックで、感動的でさえあるが、ここでは
    可能な限り「事実」に基づく歴史に迫ってみたい。


  • サタデーナイトライヴは、アメリカ3大ネットワークの一つ、NBCが
    1975年10月11日午後11時30分にスタートさせたコメディ番組。
    殆どのキャストが無名だったが、ライヴならではの危ないギャグと
    計算しつくされたコメディが渾然一体となって凄まじいエネルギーを
    発揮した。更に毎回豪華なホストとゲストミュージシャンが登場すると
    あって、オン・エアと同時に若者を中心に熱狂的に受け入れられ、
    瞬く間に超人気番組となった。

  • 放送3回目にして、成人視聴者層を対象にしたニールセンの調査では、
    その週に放送されたどの番組よりも(月曜夜のフットボールよりも)
    高い視聴率を獲得した。(成人男性では、実に75%のシェアを獲得)

  • 放送開始時のメンバーは、ジョン・ベルーシ、ダン・アクロイド、
    チェビー・チェイス、ジェーン・カーテン、ギャレット・モリス、
    ラレイン・ニューマン、ギルダ・ラドナーの7人。
    彼等は自ら「Not Ready for Prime Time Players」と名乗った。
    (「ゴールデンタイムにはまだ早いヒヨッ子達」という意味)



  • 「Killer Bees」はサタデーナイトライヴ第1回から登場している。

  • 彼等が「King Bee」を唄ったのは、第1シーズン中盤、1976年1月17日
    のことだった。



  • 番組の人気は日増しに高くなっていくというのに、有名になったのは
    チェビー・チェイスだけ、という状況に、ベルーシも相当なストレスを
    感じていたようだ。
    新たなキャラクターを作りだそうと必死だった彼は、1週間前の番組では
    ゴッドファーザーのパロディを見事に演じて喝さいを浴びることに成功。
    翌週、ブルース・マンをネタにしたスケッチをやりたいとプロデューサー
    のローン・マイケルズに提案。話し合いの結果、「Bees」の衣装を着て
    ブルースを唄うことになった。

  • 当時ベルーシはパンク=ロックに夢中だった。
    ジミ・ヘンドリックス、ローリング・ストーンズ、ドアーズをお気に入り
    のミュージシャンとして挙げている。ブルース発祥の地と言われるシカゴで生まれ育ちながら、ブルースは殆ど聴いた事が無かった。

  • アクロイドは重度のブルース・マニアで、12歳の時には既にオーティス・
    レディング、サム&デイヴ、ジェームズ・ブラウンを聴いていたと言う。



  • アクロイドは黒いソフト帽にサングラスという、50年代のブルースマン
    の姿を模したコスチュームを蜂の衣装の上に着て、ブルース・ハープを
    演奏。

  • ベルーシはメイン・ボーカル。ワイヤー・フレームのサングラスを着用。
    得意の「ジョー・コッカー」のネタのように、唄の最後でハジけ、床を
    転げ回る姿に観客は爆笑。この日最も受けたスケッチの一つだった。

  • この「King Bee」は、「The Best of John Belushi」「The Best of
    Blues Brothers」等のビデオに収録されている。

  • 冷静に観ると、リズム&ブルースを心から愛するブルースブラザースと
    「King Bee」が掛け離れていることは一目瞭然だ。
    ベルーシが演じているのは、例え観客の反応が無くてもひたすらコール&
    レスポンスを繰り返す自己陶酔したブルース・マンの戯画化された姿で
    ある。
    (日本のコメディアンが演歌歌手のパロディを演じるようなものか。)
    そう考えると、「単なるブルース・マンのパロディでは弱い」と考えて
    蜂の衣装を着せたローン・マイケルズの判断は、プロデューサーとして
    間違っていなかったことが分かる。


  • こうして、全米トップ・コメディアンへの階段を順調に駆け登っていく
    ベルーシとアクロイドだったが、彼等2人の中にブルースブラザースの
    アイデアが生まれるまでには、更に2年もの時間が必要だった



     

    TO BE CONTINUED


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